TEXT BY 永堀アツオ
■彼らはバンドであって、バンドではなかった
昨年12月にパシフィコ横浜国立大ホールにて開催された3DAYSライブ『DISH// 10th Anniversary Live』で、DISH//はバンド結成10周年を記念したリテイク企画「再青」(さいせい)をスタートさせることを発表した。彼らが2018年までにリリースしてきたシングル曲やアルバムの人気曲、ライブのキラーチューンなどを“現在”の彼らの演奏と声でリテイクする、“過去”と“未来”をつなぐプロジェクト。「再青」というプロジェクト名には、「あの青春を再び」と「今の4人の音で再生する」というふたつの思いが込められていた。そして、年が明けた2022年1月から4月にかけて、毎月1日に2曲ずつを配信リリース。毎月配信してきた計8曲のリテイク楽曲に加え、新録2曲を追加した計10曲をコンパイルしたのが、4月6日にリリースされたリテイクコレクションアルバム『再』である。ここで、ポイントとなるのは前述した“2018年”という年である。歯に衣を着せず、オブラートも包まずに言うと、それまでの彼らはバンドであって、バンドではなかったのである。
今から10年前。2011年12月25日に事務所の選抜メンバーでバンドとして結成されたDISH//。俳優としても活躍中の北村匠海(Vo/Gu)は当時14歳、矢部昌暉(Cho/Gu)は13歳で、共に中学2年生。2学年上の橘柊生(DJ/Key)は16歳で高校2年生。矢部は中学のギター部に入っていたが、エレキとアコギの判別も曖昧なほどで、メンバーの誰も楽器が弾けないという状態でのスタートとなった。
2012年6月10日にインディーズレーベルからシングル「It’s alright」をリリース。この頃は歌とダンスがメインで、“ダンスロックバンド”と銘打ち、楽器を持って踊るがまだ演奏はできず、いわゆる“エアーバンド”であった。
そして、2013年6月19日に、アニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』EDテーマに起用された1stシングル「I Can Hear」でメジャーデビュー。同年12月20日に開催された初のZepp Tokyoライブはソールドアウトし、2014年は初の全国ホールツアー、日比谷野外音楽堂でのワンマンライブを開催。2015年1月1日には日本武道館での初ワンマン公演が実現し、チケットは一般発売開始から5分でSOLD OUT。メンバーは地道に楽器練習を続け、2016年1月1、2日の武道館2days公演では、歌、ダンスに加えて、「I Can Hear」「皿に走れ!!!!」「好きになってくれてありがとう」の3曲をバンドで生演奏。同年夏の日比谷野外音楽堂でのワンマンライブの頃からは、1:歌とダンスのみの“ダンス”スタイル、2:楽器を演奏しながら歌って踊る“ダンスロックバンド”スタイル、そして、3:歌と演奏のみの“バンド”スタイルという3つのスタイルが定着した。
楽器を弾きながら歌って踊る“ダンスロックバンド”の道を歩んでいた彼らだが、デビュー5周年を迎えた2017年1月1日に開催された3年連続4回目となる武道館公演『DISH// 日本武道館単独公演’17 TIME LIMIT MUSEUM』のアンコールで、新メンバーとしてドラマー泉大智の加入をもって、かねてより北村を中心としたメンバーが志向していた“ロックバンド”としての姿勢を強めていくことになった。
■ダンスロックバンドからロックバンドへの移行
同年8月には、OKAMOTO’Sのオカモトショウが作詞作曲を手がけ、OKAMOTO’Sが編曲を担当した10枚目のシングル「僕たちがやりました」をリリース。ライブでは、3つのスタイルの割り合いが次第に変化していき、2018年末に新木場STUDIO COASTで開催されたワンマンライブでは、楽器を持たずに踊るダンス曲はほぼなくなった。当時、北村は「7年前にダンスロックバンドとしてスタートして、今、やっと演奏しながら踊るダンスロックスタイルが形になったような気がします」とこれまでの道のりを振り返っていたが、この日を境にダンスロックバンドからロックバンドへの移行が始まったように思う。
そして、2019年の夏に、大雨の富士急ハイランド・コニファーフォレストで行われたキャリア史上最大規模の野外ワンマンライブ『DISH// SUMMER AMUSEMENT’19 “Junkfood Attraction”』を経て、冬に開催したセルフタイトルを掲げた全国ライブハウスツアー『LIVE TOUR-DISH// -2019』をもって、DISH//は自他ともに認める“ロックバンド”になった。
冒頭に書いたバンド結成10周年を記念したパシフィコ3days公演には、スペシャルゲストとして、コラボ楽曲「僕らが強く。」「沈丁花」でコラボしたはっとり(マカロニえんぴつ)、メンバーが憧れの先輩と尊敬するOKAMOTO’S、ストリーミング再生回数が4億回を達成するほどの社会現象を巻き起こした「猫」の“生みの親”であるシンガーソングライターのあいみょんが登場した。3日目のあいみょんは「紅白でお会いしましょう」と笑顔で軽やかに去っていったが、初日のはっとりからは「ライブ見てたけど、めちゃめちゃロックバンドだね。熱くなっちゃった」と称賛を受け、2日目オカモトショウは「ロックバンドのDISH//と一緒にやれてうれしいです」という言葉を残した。この言葉に何よりも感激したのはメンバーたちだろう。北村は「14歳からDISH//を歩み始めて。最初はギターを持って踊っていたけど、演奏はできていなくて。右も左もわからないながらも、それでも少しずつ前に進んでやってきました」と振り返り、「バンドに憧れた少年たちは、今、胸を張って、バンドとして生きています!」と声を上げた。
■血が通った楽曲に“再生”し、青の時代に立ち返り進む
最初は楽器も弾けなかった中高生たちが音楽に目覚めて没頭していく中で、演奏力を高めていき、作詞作曲もこなすようになった。そして、デビュー当時に「音源になっている曲はスタジオミュージシャンに演奏してもらっているけど、いつか自分たちでバンドでやります」と言っていた“いつか”がバンド結成から10年目にやってきたこと。──その鮮やかな成長の奇跡がとても眩しく映る。バンドとして、自分たちの音楽を自分たちの血が通った楽曲に“再生”し、青の時代に立ち返りながら、先へと進んでいく。ひとつのゴールであり新たなスタート。DISH//にとって、バンドとは青春であり、青春とは音楽への情熱や憧れを意味している。その情熱がある限り、彼らの青春は、バンドはこれからもずっと続いていくだろう。
リリース情報
2022.04.06 ON SALE
ALBUM『再』
ライブ情報
LIVE TOUR -DISH//- 2022「今」
6/7(火)【大阪】オリックス劇場
6/8(水)【大阪】オリックス劇場
6/24(金)【神奈川】パシフィコ横浜国立大ホール
6/25(土)【神奈川】パシフィコ横浜国立大ホール
6/29(水)【愛知】名古屋国際会議場 センチュリーホール
6/30(木)【愛知】名古屋国際会議場 センチュリーホール
DISH// OFFICIAL SITE
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