FUKA/BORI
【DIG / 04】奥田民生
SIDE B – 奥田民生を深掘り
曲やアーティスト自身について深く掘って語る最深音楽トークコンテンツ「FUKA/BORI」(フカボリ)。第4回に奥田民生が登場。
SIDE Aでは代表曲のひとつ「マシマロ」を語ったが、SIDE Bでは影響を受けた楽曲を通して奥田民生自身を深掘り。奥田民生から見た、玉置浩二・井上陽水の魅力とは?
■0:00 ようこそ、最深の音楽へ
奥田:SIDE B。
谷中:SIDE Aはありがとうございました。
奥田:はいはい。
谷中:もう楽しすぎて。
奥田:SIDE B、話すことありますかね?
谷中:ありますよ、たくさん。いっぱい語ってください。よろしくお願いします。
奥田:お願いします。
谷中:お座りください。
■0:52 奥田民生 音楽の原点
奥田:歌ったりするのは好きは好きでしたけど、テレビ見てね。西城秀樹さんとかジュリー(沢田研二)とか好きだったんですけど。10歳ぐらいのときにいとこのところにギターがあったのでそれを触ってたらおばちゃんが買ってくれたんですよ。ガットギターだったんですけど、間違えて。それを弾き始めたぐらいのときにたぶん同じぐらいのタイミングでダウン・タウン・ブギウギ・バンドのコンサートに連れてってくれて。ライブを初めて見たんですよ。
谷中:それもおばさまがですか?
奥田:そのいとこが。それでバンドを格好いいなと思って…そんな感じ。10歳ぐらいのときに。その後ビートルズを知って…みたいな。そしたらもうテレビでCharさんとか世良公則さんとか原田真二さん、新御三家っていうんですかね。あの辺も出てきて…ぐらいの感じですかね。やっぱバンドに興味があってバンドをやりたいなと思ったんですよ。やっぱ演奏を見るとね。生演奏は衝撃でしたよ、だいぶ。
それでそのあといとこってだいぶ年上なんですけど、仲間内でバンドとかやってたんですよ。それも練習とかも見に行ったりとかして。そういうのもね何かすごいリアルに。そんな身近なとこで演奏するんだ、みたいな。それも結構影響あったなと思って。
谷中:ガットギターっておっしゃいましたけど、そのガットギターを随分長い間弾かれてたんですか?
奥田:ガットギターにエレキの弦張ってずっと使ってたんですけど、もちろん中学になるぐらいまでは使ってましたよ。でも壊れるんですよね。ここ(ペグ部分)が。鉄の弦のせいでボロボロになっていって安いアコギを買ったんじゃなかったけな? また。
谷中:そのギターってどうやって覚えたんですか?
奥田:歌本。「明星」とか「平凡」の付いてくるね。あれ書いてあるじゃないですか。押さえるところも一応書いてあるから。一番最初だからベンチャーズのテケテケテケテケ…っていうのをいとこのギターで習って。それを延々俺がやってるのを見たおばちゃんがギターを買ってくれたんですよね。別にね、ギターそんなうまかったわけでもないですし。ただ歌本で覚えてるのもあるから、やっぱ歌を歌うためのものというか、伴奏するものというか、そういうイメージですね。だからギターの早弾きがうまくなりたいとかそういうのじゃなかったですね。
谷中:そうやってギターを弾きつつ歌もずっと歌ってこられて。
奥田:バンド…だから最初は僕ボーカルじゃなかったですから。
谷中:そうなんですか!
奥田:ギターだったんだけど。
谷中:それはおいくつのころ?
奥田:中学ぐらいからバンドをやり始めて、高校のときにボーカルが受験勉強するって言うんでしょうがなくボーカルをやったんですよね。その辺からですね、ボーカルになったの。
谷中:ボーカル俺いけるんじゃねえかなって思った瞬間とかあるんですか?
奥田:(笑)。いやでもビートルズみたいな曲もやったりとかしてると、ボーカルがいるけど俺も歌うわけじゃないですか。ハモるっちゅうか。だから歌に対してはやってましたからね。メインボーカルではなかったけど。だから割と自然だったんですよ、ボーカルになったのも。ただ恥ずかしかったですよ、やっぱり。またこの話出てきました。ギターのほうがよかったなと、今でも思います(笑)。
谷中:奥田さんの新たなきっかけとなった曲として挙げていただいた曲があるわけですけども。
奥田:これは安全地帯の「恋の予感」、“なぜ”ですね。
■5:31 「恋の予感」
奥田:これはね、高校の終わりぐらいにちょうど安全地帯が出てきて聴き始めたんですけど。安全地帯の曲をギターでやってみようとするとむずいんですよ。コード進行とかが。それで知らないコードとか出てくるんです。それですごいコードの勉強になった曲。曲っていうか 「恋の予感」だけじゃなくて、全部アルバムとかも聴いて全編そうなんですけど。メジャーセブンとか、何これ? みたいな。僕としてはそれも驚きだったんですよ。すごいきれいな曲作るなと思って。曲も作り始めたころなんで。
谷中:なるほど。
奥田:参考にしてたんですよね。
谷中:曲も作り始めたころにそうやっていろんなコードも…今まで使ってなかったようなコードが出てくるっていうものに夢中になったっていうのはすごい大きいですね。
奥田:大きい、大きい。それですごい参考になりました。ありがとうございます。
谷中:安全地帯でもたくさん名曲がありますけど、特にこの曲を選んでいただいた理由は?
奥田:この最初の出だしのコード進行が好きだからですね。俺の曲今でもよく出てきますよ このパターン。皆さん参考になさってください。
谷中:これ詞もいいですね。
奥田:(井上)陽水さんが詞だったんだね、この曲。
谷中:一緒にやられてますよね。陽水さんとね。
奥田:陽水さんと一緒にやって作詞の仕方っていうか…。
谷中:それ聞きたいです。
奥田:もうなんかその辺の物から…なんでもいいんです。花瓶なら花瓶で。「これできたよって」って言ってこれさっきのあれですよね? みたいなやつなわけ。
谷中:なるほど。目にしたものをそのまま。
奥田:だけど、それをそのままじゃなくてあの感じあるじゃない? なんか。言い回しっていうの。独特のあれでやるから。その辺のものが、その辺のものじゃなくなるんですよ。
谷中:なんでも音楽に変えられちゃうってことなんですね。
奥田:そうか、そういうことかと。だから取っ掛かりは何でもいいだなとか。そういう意味ではなんかまあもちろん技術が必要ですけど、作り方としては勉強になったんですよね、それで。
谷中:それはあれですか。どちらが先なんでしょう? 「マシマロ」より後ですか?
奥田:前。
谷中:じゃあ「マシマロ」にもつながってるのか。
奥田:つながってる…か?(笑) いや、でもあの技術があるからね。やり方は真似することができてもあんなにはならないよね。
谷中:雑誌かなんかで読んだのかな。陽水さんがずっとNHKの教育テレビをずっと見てますみたいな話をされてたことがあって。
奥田:やっぱね、普段からそうやってアンテナを張っておかないと駄目なんだな。
谷中:(笑)。なんで急にそんなモードに入ってるんですか。
奥田:何にも浮かんでこないもんだって。
谷中:大体でもみんな書いてるみたいですよ。メモを。
奥田:メモでしょ? それやらないのよね。
谷中:メモがマメな人は悩まないみたいですよ。曲作ったり歌詞書くときに。
奥田:なんかでもさ、こう思い浮かんでさ、いやでもこれメモするほどじゃないみたいな。ていうのばっかりじゃない。全部メモするほどじゃないんだよ。でも、それをしとけば違うのかな。確かにメモね。メロディーとかも浮かぶときあるんですよ。それがいざ曲を作るときに思い出せたらいい曲だと。忘れるようならいい曲じゃねえってメモもしてないわけ。で、忘れてるんだよね。メモ大事だわ。しますわ。します!
谷中:いいと思いますよ本当に。
奥田:しますよ(笑)。するかな?
【「15曲でわかる奥田民生」プレイリスト】
■9:54 玉置浩二・井上陽水の声
奥田:やっぱでも玉置さんとかすごいと思いましたよ。その当時から。今もすごいけど。1回ライブ…じゃないや 。テレビでさ、Mステか。玉置さんアコギで持って出てきてそのままそこで生演奏してるののリハ…カメリハを見て「ううう」って最初に言ったんですけど、うまっ!て思いました。それだけで。
谷中:その最初の発声だけで。
奥田:まいりましたって思いました。
谷中:すごい。何かそれ伝わってきますね。声の出し方も…。
奥田:すごいよね、何か。
谷中:根本からやっぱり体の鳴らし方というか。体も楽器なんだなって。
奥田:やっぱ声の質っていうの? それこそ陽水さんなんてさ。何その声! みたいな声じゃないですか。めちゃめちゃ通るじゃない。あれはもうめちゃめちゃ破壊力ありますよ、武器として。普通の人が声を届かせようとしていうか…いろいろやるんですよ。大体みんな。ちょっとこう普段話してる声と違う周波数で。俺とかハードロックバンド出身の人とかはリハとかでさ聞こえないじゃん自分のボーカル。
谷中:周りがうるさくてね。
奥田:安いスタジオのPAなんてちっちぇえから、その中でどうにかして聞こえないかっていってもちろんでかい声出すんですけど、出し方もそういうふうになってくるわけ。だからメタルな歌い方になってくるんですよ。そういうので俺はこうなってるんですけど。そうじゃない陽水さんなんてもうしゃべり声からして居酒屋の奥のバイトの子がこっち向くからね(笑)。わーってしてる居酒屋で「すいません」って言ったら「はい」って一番向こうからバイトの子が。
谷中:張り上げた「すいません」じゃないんだ。
奥田:「すいません」ぐらい。いいっすよね。
谷中:素晴らしい。すごいですね。
奥田:俺だってそりゃヘビメタの声で言ったらそりゃ振り向きますけど。なんつうの? ポテンシャルが違うなと。
■12:48 ユニコーンとソロ
谷中:せっかくなので他にも色々うかがいたいと思うんですけども。ユニコーンでの活動とソロでの活動はどんなふうに違うと思いますか?
奥田:一番大きな違いはやっぱり作業が多いことだよね。ソロは。
谷中:ソロのほうがね。そうですね。
奥田:曲もたくさん作らなきゃいけないし、歌も演奏もユニコーンはなんなら5等分ですから。そこは一番違いがあるところですけど。もうそんなになんか音楽性がどうのとかそういうところはあんまり変わらないですね。昔はだからやっぱりまあ解散したからソロになったんですけど、ユニコーンでやってないことでやりたかったことをやってみようとかそういうふうな考えでしたけど。再結成してもうごっちゃになってますからね。どっちでもいいやみたいになってますからね。だからあんまり違わなくなってきてるんですよ。ライブにしても楽だしね。責任もね、5等分だからそこもでかいよね。
谷中:パワーも5倍… まあ5倍までいかないかもしれないけど、でもバンドってそういうね人数分だけやっぱりエネルギーも。
奥田:でもソロも弾き語りはまあちょっと違うけど、ソロもバンドですからね。だからまああんまり変わらない。人が違うっていうだけの話かなっていうぐらいですけど。だから弾き語りが一番その…個人的にはですよ。やりがいがない。だって誰からのこの刺激も受けずに自分で盛り上げて自分でやらなきゃいけないじゃない。
谷中:自家発電っていう。
奥田:もともと恥ずかしがり屋なのに。
谷中:(笑)。よくやりましたよね。
奥田:それはねいつもね、今から俺一人きりでこんだけ歌うんかみたいなのを最初に思ったらもう急に恥ずかしくなるから。
谷中:でもその一人きりで球場でとかよくやってますよね。
奥田:ほんとだよ。球場はね、分からないんだよ、お客さんが遠過ぎて。いるか、いないかも分からない。離れてる。
谷中:恥ずかしくない。
奥田:いまいち恥ずかしくなかった。ライブハウスのほうが恥ずかしいですよ、そりゃあ。近いから。めちゃめちゃいるけどよく分からないんですよ。表情とか見えないじゃん。だからなんかこう 「あっ失敗しただろ、今」みたいな顔が見えないじゃん。だからあんまり緊張しなかったんですよね。もうなんか心配してる状況じゃないっていうかもう…すご過ぎて。でもやっぱり弾き語りが一番だからこう…嫌だなっていうことはないけど。
谷中:純粋なソロっていう本当に全部自分でこう…空間を作り上げなきゃいけないということはありますよね。
奥田:「俺は今日よくやったぞ」とかって言うのもね…なんか…(笑)。なんか一緒にやる人がいるといないはだいぶ違うよね。まあただね、ギターと歌で一応共演してるのよ。どっちも自分だけど。ギターはこういうことを弾いて歌はそのタイミングとかも一緒じゃないんです。ずらしたりしてるんですよ。それはだからバンドとは言わないけども、その気持ちはあるんですよね。
谷中:本当にデュオみたいな部分もあるわけですね。一人でやりながらね。
奥田:そうなんだよ。
谷中:それは面白いですね。
奥田:そこはね、いろいろやるのよ。実は。
■16:48 奥田民生 最新の”シンプル” 「太陽が見ている」
谷中:この曲もとても「マシマロ」じゃないですけど、すごいシンプルじゃないですか。なんかサウンドもすごいシンプルだし…歌を聴いたときに、前に民生さんとお話させてもらったことあるかないか忘れちゃいましたけど、淡々と歌うっていうことについてなんか話されてた気がするんですけど。感情込め過ぎるのは駄目なんだ、みたいな。この「太陽が見ている」もすごくこう…平易に歌ってる部分とかが心にびしびし来る部分が自分にはあったんで。その歌い方に対する意識っていうのはどうなんだろうと。
奥田:淡々としてるみたいな曲は結構好きですけどね。基本的に。歌い方もだから…だんだんいわゆるビブラートをかけるのをやめて平たんにしていったんですよ。ユニコーン始まったころはもっとビブラートあったんですけど。なんか楽器っぽくなりたいというか。まあ楽器でもビブラートあるやつはあるけど、演奏から浮かないで馴染みたいみたいなイメージがあって。やっぱりこれハモる役から来てるからかなと思うんですけど。俺の人生で。
だから、いわゆるシンガーの人とかって要するにオケがあって、オケからもうボーンって浮いてるじゃないですか。ものすごい存在感で。そうじゃなくて、こっちに、オケに行きたかったんだよね。だからこんなことになったんですね。
谷中:感情を込めるっていうことに対して、感情を込め過ぎるなんか泣けちゃうっていうか。泣いちゃうからそんな感情込めないんだよみたいなことをおっしゃってたと思うんですよ。
奥田:涙もろいからね。自分の歌で泣くのが一番最悪じゃないですか。自分で盛り上がってうおーって歌ってぼろぼろ泣いてたらアホかおまえはってなるから。そうやって心をもうちょっとね。落ち着かせないと。
谷中:歌われ方がすごく良くてちょっとじわっと来ちゃいましたけど。
奥田:そうですか。ありがとうございます。ソロの作品じゃないですか。だから最近もう オファーが来ないとやってないんですよソロは。まあまあライブはやるときはやるけど。だから前作…これの前の作品が「ハクション大魔王」なんです。その前が「チコちゃん(に叱られる!)」かな。オファーが来ないとやらないんで。お願いします! オファーを。
ソロってやっぱりさ、後回しになるんですよ。一人で何にもないのに曲作ろうとしないからもう。なんか必要じゃないし、今は。だからアルバムとか例えば作り始めてあと3曲ぐらい作らなきゃなみたいのないのよね、今あんまり。だからまあこうやって本当に頼んでくれる人がいると助かります。ありがとうございました。
『FUKA/BORI』
https://www.youtube.com/playlist?list=PLi1F8vriz0_WL3yKBwFfP68Mkx7f8Y4KV
『THE FIRST TIMES』OFFICIAL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCmm95wqa5BDKdpiXHUL1W6Q
奥田民生 OFFICIAL SITE
https://okudatamio.jp/
谷中 敦 OFFICIAL Twitter
https://twitter.com/a_yanaka