TEXT BY 森朋之
■大きな注目を集めたピアニストのCateen(角野隼人)との共演
昨年8月、東京2020オリンピック開会式で東京スカパラダイスオーケストラとともに「愛の讃歌」を歌唱。2年連続の出場となったNHK紅白歌合戦ではNHKウィンタースポーツテーマソングの「Fly High」をパフォーマンスするなど、大舞台を通して、その類まれな才能を示してきたシンガーソングライターmilet。今や日本の音楽シーンを代表する存在となった彼女は2022年、こちらの想像を超えるような飛躍を続けている。
今年2月には「Ordinary days」(ドラマ『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』主題歌)、「One Reason」(映画『鹿の王 ユナと約束の旅』主題歌)などを収めた2ndアルバム『visions』をリリース。さらに大きな注目を集めたのが、YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』におけるピアニストのCateen(角野隼人)との共演。「Ordinary days」(2/4公開)、「Fly High」(2/16公開)を特別アレンジで披露し、YouTubeチャンネルには国内外から絶賛コメントが殺到した。
ジャンル、シーンを越えた表現を続けるmilet。2ndアルバム『visions』からわずか1ヵ月後に届けられた新作EP「Flare」で彼女は、音楽性、ボーカル表現を含め、アーティストとしてのさらなる進化を提示してみせた。
表題曲「Flare」(TVアニメ『王様ランキング』第2クール エンディング・テーマ)は、稀代のヒットメイカー蔦谷好位置とのコライト/プロデュースによる楽曲。蔦谷とのセッションは、「Ordinary days」について2度目となる。
■親しみやすいJ-POP感と現在進行形のグローバルポップを融合
最初に聴こえてくるのは繊細な響きをたたえたピアノのフレーズ、そして、“流されまいと先回りしてた今日を 昨日が吸い込んだ”というライン。さらに豊かな低音を軸にしたトラック、心地よいソウルネスを感じさせるホーンやパーカッションによって高揚感を少しずつ上げ、“一番に光れ 笑われても 手を繋いでいるから”というサビとともに圧倒的な開放感へと結びつける。楽曲の後半ではエレキギターや生ドラムを押し出し、有機的なサウンドへとシフト。親しみやすいJ-POP感と現在進行形のグローバルポップを融合させ、より幅広い層のリスナーを共振させる楽曲に仕上げている。
■最後の一節に感じられる、彼女自身のリスナーに対する真摯な思い
彼女自身が手がけたリリックも素晴らしい。“No one can take your place”(誰もあなたの代わりにはなれない)というメッセージを軸にしたこの歌は、まったく先が見えず、混沌を深める社会の中で自己肯定感を削られ続けるすべての人の心をしっかりとライズ・アップしてくれるはず。また“あなたに歌ってる待ってる/この場所で歌ってる待ってる”という最後の一節には、彼女自身のリスナーに対する真摯な思いが感じられて、どうしても心を掴まれてしまう。
その他の収録曲も魅力的だ。2曲目の「Before the Dawn」は、彼女の音楽的盟友とも言えるTomoLowとの共作によるナンバー。オルタナカントリー、エレクトロなどを自然に融合させたサウンドメイク、日本語と英語を交えた独創的にしてエキゾチックなフロウ、凛とした強さと繊細な表情を併せ持ったボーカルなど、miletが追求し続けるハイブリッドなスタイルに根差した楽曲だ。(個人的な感想だが、カントリーを現代的なポップスに昇華しているという意味で、USインディーの至宝“Big Thief”との親和性を感じた)
■縦横無尽に広がるサウンドとともに、シンガーとしての豊潤な魅力
さらに1stアルバム『eyes』に収められた「Somebody」(プロデュース/Toru(ONE OK ROCK))をツアーバンドTHE SEVENTH HEAVENとともにリアレンジした「Somebody -Acoustic Session-」、そして、NHK交響楽団との共演による「Fly High -Orchestra Ver.-(milet with NHK交響楽団)」を収録。カントリー、ロック、エレクトロからクラシックまで、縦横無尽に広がるサウンドとともに、シンガーとしての豊潤な魅力をたっぷりと堪能できる1枚となっている。
作品を発表するたびに、“この人の音楽はどこまで広がるのだろう?”という思いを強めてしまうmilet。1月から行われている『milet live tour “visions” 2022』でも彼女は、自らのポテンシャルをさらに高めているはず。この先もmiletは期待を遥かに上回るスピードで進化と変化を繰り返すはず。そのスリリングな姿勢もまた、彼女が多くの音楽ファンを引き付けている理由なのだと思う。
リリース情報
2022.03.09 ON SALE
EP「Flare」
milet OFFICIAL SITE
https://www.milet.jp