FUKA/BORI
【DIG / 04】奥田民生
SIDE A「マシマロ」
東京スカパラダイスオーケストラ・谷中 敦がホストを務める、曲やアーティスト自身について深く掘って語る最深音楽トークコンテンツ『FUKA/BORI』(フカボリ)。
第4回に奥田民生が初登場。代表曲のひとつ「マシマロ」を語る。「マシマロ」がターニングポイントになった理由とは?
■0:00 ようこそ、最深の音楽へ
谷中:どうぞ、FUKA/BORIへようこそ。
奥田:はい、はい、どうも、どうも。今日はどういったご用件で。
谷中:たっぷり、いろんなお話を。音楽の話意外と一緒にね、しないんでね。こういう時にしたいと。
奥田:音楽の話するんですか、今日?
谷中:そうですよ、はい。
奥田:うん。わかりました。
谷中:はい。よろしくお願いします。どうぞ。
奥田:音楽の話か。
谷中:(笑)。
■1:02 奥田民生のターニングポイントになった曲「マシマロ」
奥田:「マシマロ」という曲は僕の中で結構売れたんですよ。
谷中:(笑)。ずっと売れてる印象ですが。
奥田:あの曲って超簡単じゃないですか。あれスカパラでやったら絶対つまらない。パパパパ…って言ってるだけだから。
谷中:メロディーだけでいうと。
奥田:メロディーが全然変わらないですよ。
谷中:シンプルですもんね。
奥田:で、売れるってどういうこと? みたいな。
谷中:それは自分の中でも驚きだった?
奥田:驚きというか、今まで頑張って小賢しいメロディーとか作ってきたのが何だったんだと。これでいいのかと。で、あの辺からこんなふうになってったんですよ。
谷中:そういうことなんですね。
奥田:ターニングポイントとしてはね。
谷中:自分の中では発見だったということなんですかね。
奥田:発見つったって何度もできるもんじゃないしね。また簡単なの作りやがってってなるから。だけど、これ良い曲できたとか思うと大体駄目ですね。
谷中:自分の思ってるのと聴いた人の印象のズレがあるということですか?
奥田:そうかね? タイミングもあるかもしれないですけど。あんまりそういうことは考えないでいいのかなと。
谷中:ご自分の中でもひとつ気が楽になった瞬間ということもあるんですか?
奥田:そうですね。それもある。適当でいいやということにはなったかもしれないですね。
谷中:民生さんがソロになる前のユニコーンの時も転調を多用したような曲だったりとかすごい大変な曲いっぱいあるじゃないですか。
奥田:ある。
谷中:そういうこともいろいろやっていく中で、ソロになって 「マシマロ」でこんな簡単でいいのかっていうのがまた生まれたということはあるんですか? 流れの中で。
奥田:だからそういう転調してカッチョイイとかというのをもうさんざんやって、飽きたというか何というか。もうちょっとシンプルでいいんじゃないのという感じになった頃にこの出来事がね 。「マシマロ」売れたじゃんと。ほらねと 。いいのよ転調なんてしなくても、みたいなことじゃないですか。
谷中:そういう意味では発明的な曲ではあるんですね。あんなシンプルで。
奥田:作ったカロリーなんてめちゃめちゃ少ないですからね。曲的には。
谷中:カロリーという点でいうと、作った時間っていうかこの曲が浮かんで歌詞を作ってみたいなの期間的にはどれくらいの…?
奥田:いや、すぐでしょ? どこに時間かけるのよ。あの曲のどこに時間かかるの?
谷中:(笑)。なんか考えた末に出るとかっていうこともあるじゃないですか。
奥田:なんであんな曲作ったかももう忘れましたから…あれですけど。
谷中:2000年ということですね。22年前という。
奥田:2000年から俺はだからどうでもよくなってきたということですね(笑)。どうでもよくなってもう20年経つんですね。
■5:20 タイトルと歌詞
奥田:これ「マシマロ」ってタイトル最初に付けたんですよ。
谷中:そうなんですね。
奥田:なんかさ、スピッツの曲っぽいじゃない? カタカナで「ロビンソン」とか。
谷中:そういうことか。
奥田:で、「ロビンソン」もだって、なんで「ロビンソン」なの? っていうタイトルでしょ。だからとりあえず「マシマロ」っていうタイトルにしようと思って。で、できてみたらどこにもマシマロっていう言葉が入ってないから最後に付け足したんですよね、一応。お断りをしたというか…そうです、すいませんでしたと(笑)。「“マシマロ”って言っておいて出てこなかったです。すいません」って。えらいだろ? だからスピッツはそこを謝ってないわけよ。
谷中:(笑)。
奥田:「“ロビンソン”が出てきません、すいません」と言っていない。そこが俺との違いだよね。
谷中:根本的なことを聞きたいんですけど、“マシュマロ”ではないんですか?
奥田:“マシュマロ”じゃないのよ。なんでだろうね 。“マシマロ”とも言うみたいな。一応認識だったよ、俺は。言わない?
谷中:そういうふうに言う人もいるよと。
奥田:ちょっと待って。今さらそんな根本的ことを言う?
谷中:ハハハ(笑)。
奥田:「マシュマロ」…そう「マシュマロ」ではないよ。そこは分かってるよ、俺も。間違えたんじゃないよ。
谷中:そういうね 、「マシマロ」っていう響きがね。
奥田:そこが俺的にはスピッツっぽいなと思ったんですよ。
谷中:歌詞の話に戻りたいんですけど、最後の“マシマロは関係ない”に行くまでのところの歌詞がすごく良いなと思って。“君のスカートの模様 部屋のかべ紙にしよう”君に口出しは無用 ただ静かに見ていよう”君とともにいれるよう 日々努力し続けよう”って。
奥田:まあ「よう」って言いたかっただけですよ。
谷中:めっちゃ良くないですかこれ。
奥田:まあでもスカートの模様を壁紙にする奴はいないです。
谷中:雰囲気は分かりますよ。
奥田:つい書いてしまったけど「そんな奴おるかい!」と自分で突っ込みながら。「なんでスカートやねん!」と思いながら。
谷中:意外とでも僕はありかなと思いました。ちゃんと。
奥田:まあ勢いで書いてますからね、歌詞なんてね。何か恥ずかしいなやっぱ歌詞の話とかするの。まあ恥ずかしいから最後に「関係ない」とか言っているのもあるからね。照れ隠しですよね。
谷中:だけどなんかそのナンセンスっぽくその力抜けた感じで言ってる事柄の中にいろんなものの真理がね。
奥田:いやいやいや。あるかな、そんな。
谷中:そういう所がね、結構節々にあるのは効いてるなと思うんですよね。
奥田:まあだからその歌詞も要は気にしないとかって言ってるじゃないですか。それもさっき言ったようないろんなことを経てあんまり気にしなくてもいいんじゃないか? って思い始めてる頃の心とかが出てるんですね。
■9:00 カウンターカルチャーとして
奥田:これ別に何用とかじゃないもんね。某CMで流れましたけど、それ用に作ったわけではなかったと思うし。アルバムにこんなのが1個入ってるっていうだけで済むから、別に何のプレッシャーも無いし適当に作ったっていうと怒られますけど。めちゃめちゃ力抜けてますよ、たぶん。
谷中:その力抜けててカッコイイというところもね、民生さん発明だったなと思ってるんですけどね、僕は。
奥田:だからあれですよ。昔はあるじゃないこんな曲いっぱい。だけど、最近のポップスというか曲ってみんなちゃんとしてるでしょ。そんなじゃない曲でヒットしたりした曲、昔はあったと思うんだけどなみたいな。そんな考えもあったのかね。それこそ桜井(和寿さん)とか 桑田(佳祐さん)とかが良いメロディー作るじゃないですか。みんなやっぱりそれ憧れたりして、みんなそうやってそれをしないといかんみたいな風潮の中、メロディー1個みたいな 。そこが受けたんですかね。
谷中:だから世の中での立ち位置みたいな部分も意識するってわけじゃないですけど…。
奥田:いや、でもしますよ、やっぱり。
谷中:カウンターパンチ的な。
奥田:カウンターカルチャーの人だと思ってますからね。世の中がこっちに行ってる時に一緒に行かないですもんやっぱり。ちょっとね、違うことしないと目立たないなみたいなところはもちろんデビュー当時からありましたし。そういうこと…ですかね。
【「15曲でわかる奥田民生」プレイリスト】
谷中:当時のことを思い出してもらいたいんですけど、「マシマロ」を出した時の なんとなくの反応とか覚えてます? やっぱり売れたわけですけど。
奥田:反応? でも別に何か変なことやったとか新しいことやったと思われる感じも別になかったよ。普通だったんじゃないかな。「反響が多いです」みたいなこともなく…。
谷中:またね今と違いますもんね。SNSとかもそんな無いし。
奥田:そうよ。だって分からないでしょう、俺らには。今は分かるのか。いろんなね、お客さんの声が。
谷中:お客さんの声響きまくりますからね、今ね。
奥田:当時はだから良かったね、そういう意味では。出してりゃいいんだもんね。
谷中:そうですね。考えずに出来ますね。
奥田:駄目ならね、売れなかったりライブに来なかったりするだけの話だから。そうなんだよね。昔はなんかあんまりそんなこと考えなくて良かったよね。もうだから大ヒットするわけでもないし、全く売れないわけでもないし…みたいな時期なんですよ。もうこれから俺がサザンのようにボカーンと売れることはもうないだろうと。だからもうなんとなくこう…位置っていうものがこの辺にいるなみたいな分かってくるじゃないですか。
谷中:自分の立ち位置が。
奥田:立ち位置なのか…でもそれで別にいいかと思うし、そこにいさせてもらえるだけでありがたいくらいのことじゃない? そんなくらいの歳でしょ、時期的にも。なんかもうそんなに戦略を考えることもないだろうし。
■12:43 MV裏話
谷中:ミュージックビデオもね、すごいユニークですけれど面白いなと思って。
奥田:あれはまあCM絡みもあったんですけど当時CBSソニーのビル…もう無いけど、今。“黒ビル”と言われてた市ヶ谷のあそこ、昔ながらのCBSソニーのロゴがでっかく屋上にあったでしょ。あれがカッコ良くて。松田聖子のシングルの裏に全部そのロゴが当時書いてあったの。あのロゴに憧れがあってあれの真下で撮影できて良かったなと。
谷中:あれずっと下からナメて撮ってるところですよね。
奥田:そうそう。こう見えてね、こっちから撮って。あの何て言うの? あれ何のマーク? あれ目玉? 目玉に足が生えてるみたいなやつなんですけど。あれ昔からずっと変わらずあのままあそこのビルにはあって。あれがカッコイイなと思ってたんですけどね。そういえばさ、あのビデオで丸さん…丸山(茂雄)さんが出てたんだけどエピックソニーの。
谷中:懐かしいです。
奥田:俺、当時CBS…ソニーって3つあるんですよ。CBSソニー、エピックソニー、キューンソニー。今もっとあるのかな? それで俺はCBSソニーにいて、あれ怒られてる画なんですよ。
谷中:そうですね。
奥田:なんか上司に怒られてる画で、俺はこう「すみませんでした」って丸さんががーってやってて、別に声は拾ってないから声は別に要らないんだけど「おまえなんでエピックに来なかったんだ」って怒ってるの。
谷中: ほんとに怒ってるんですか?
奥田:「そんな俺に言われても」とか言いながら。
谷中:渡辺満里奈さんも出てました。
奥田:満里奈ちゃんと麻布の下着屋のところでロケしたんですよ。
谷中:すごい雰囲気出てましたね。
奥田:なんかね、ちょっとなんかこう小芝居とかね。
谷中:いや小芝居って言いますよね。
奥田:普段やらない小芝居をやってるんですよ。
谷中:(笑)。ミュージシャンはわりとそういうの小芝居って照れで言うんですよね。
奥田:そうよ。だから芝居するのだって嫌いですもん。恥ずかしいじゃないですか。やる人はやりますよ、そりゃあ。ミュージシャンと芝居と両方やる人いますけど、やらない人はやらないんですから。
谷中:民生さんの恥ずかしいということにちょっと今興味が湧きました。
奥田:何ですか。恥ずかしいですよ。
谷中:どういう時恥ずかしいですか?
奥田:基本恥ずかしがり屋ですから。まず人前で歌うのも恥ずかしいですよ。
谷中:ほんとですか。
奥田:恥ずかしいですよ、そりゃ。
谷中:ずっと歌ってますよ。
奥田:そうなんですよ。あと曲作るのが何より恥ずかしいですね。
谷中:ほんとですか。
奥田:恥ずかしいだろだって。よくすぐ歌詞できた瞬間送ってくるよね、恥ずかし気もなく。
谷中:俺恥ずかし気ないですね。そういう意味ではね。
奥田:あんなの俺恥ずかしくてできないよ。あんな歌詞できたってピュっと。だから恥ずかしいからどうやってごまかすかというのをね、常に考えてますよ。
谷中:もうそんなわけで「マシマロ」のお話を深掘ってしまってすみません。
奥田:「マシマロ」の話だけでこの番組が成り立つなんてすごい。あんなメロディーが2個ぐらいしかないのに。
谷中:ありがとうございました。さてSIDE Bでは 奥田さんが影響を受けてきた音楽の話をたっぷりとうかがいます。よろしくお願いします。
奥田:よろしくお願いします。
『FUKA/BORI』
第4回 奥田民生
SIDE A:「マシマロ」を深掘り
3/22(火)22:00 公開予定
SIDE B:奥田民生が影響を受けた楽曲を深掘り
『FUKA/BORI』
https://www.youtube.com/playlist?list=PLi1F8vriz0_WL3yKBwFfP68Mkx7f8Y4KV
『THE FIRST TIMES』OFFICIAL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCmm95wqa5BDKdpiXHUL1W6Q
奥田民生 OFFICIAL SITE
https://okudatamio.jp/
谷中 敦 OFFICIAL Twitter
https://twitter.com/a_yanaka