TEXT BY 森朋之
■三パシの世界観を端的に示す「青春なんていらないわ」に新たな息吹を与える
『THE FIRST TAKE』第197回は、三月のパンタシアが初登場。代表曲「青春なんていらないわ」をピアノ1本のオリジナルアレンジで披露した。
三月のパンタシアは、ボーカリストの“みあ”を中心としたプロジェクト。“終わりと始まりの物語を空想する”をコンセプトに掲げ、ボカロP、シンガーソングライター、バンドのソングライターなどジャンルを超えたクリエイターとのコラボを重ねながら、独創的にしてポップな音楽世界を作り出してきた。
2018年以降は、みあが書き下ろした小説を軸にした音楽制作がスタート。思春期の痛みや憂い、どこかにあるはずの希望を映し出すストーリーをもとにした楽曲は、幅広い層のリスナーに支持されている。
「青春なんていらないわ」(2019年発表のアルバム『ガールズブルー・ハッピーサッド』収録)は、音楽×小説×イラストを連動させたプロジェクト「ガールズブルー」の第1弾楽曲だ。みあが2018年に手がけた原案小説『青野先輩』(「先輩」を改題)をベースにして、作詞・作曲を“n-buna(ヨルシカ)”が担当。“三パシ”のビジュアルを担う“ダイスケリチャード”がイラスト、SixTONES「共鳴」のMVも手がけた“えむめろ”が映像を制作したミュージックビデオは1,200万回再生を超えており、このユニットを象徴する楽曲として知られている。
昨年11月には素顔を公開したビジュアルを発表し、みあは「ここからまたはじまる物語を、一緒に紡いでもらえたら嬉しいです」とコメント。初挑戦となる『THE FIRST TAKE』は彼女の生パフォーマンスを目撃できる貴重な機会となったわけだが、プレッシャーや緊張を物ともせず、その類まれな表現力と豊かなパフォーマンスセンスを見せつけてくれた。
ヘッドホンをつけ、マイクの前に立った彼女は、ピアノの音を確かめるように頷く。軽くリップを震わせたあと、「お願いします」という言葉とともにパフォーマンスをスタートさせた。
最初に聴こえてくるのは“小さく遠くで何かが鳴った”というフレーズ。夏の情景とともに、子供と大人の間で揺れる不安定な状態、そして、葛藤や不安に押しつぶされそうになりながら、どこかで未来に期待しているアンビバレンツな心情を描き出していく。
みあは一点を見つめ、「青春なんていらないわ」に込められた物語を紡ぐことに集中。瑞々しさとリアルな手触りを感じさせる歌声にグッと引き込まれてしまう。
抑制された表現が印象的だったAメロ、Bメロから一転、“明日に期待はしたいけど/明日の私にはもう期待しないで”というラインからは彼女自身の感情が溢れ出し、“ねぇ青春なんていらないわ”というサビでは、圧倒的なエモーションを放った。
デビューから5年、奥行きのあるストーリー性をたたえた楽曲を歌うことで彼女は、シンガーとしてのポテンシャルを確実に広げてきた。“一発撮り、やり直しなし”の『THE FIRST TAKE』は、彼女のリアルで生々しいボーカル表現を堪能できる理想的なシチュエーションだったと言えるだろう。
最後の“この夏ももう終わり”のあとの吐息のようなブレス、そして、歌い終わった直後の憂いを帯びた溜息も印象的。三パシの世界観を端的に示す「青春なんていらないわ」に新たな息吹を与える、鮮烈なパフォーマンスだった。
三月のパンタシアは、3月9日にニューアルバム『邂逅少女』をリリース。みあが手がけた小説『再会』をもとにした本作には、の子(神聖かまってちゃん)、北川勝利、山内総一郎(フジファブリック)、ホリエアツシ(ストレイテナー)、ボカロPの水野あつ、遼遼など多彩なクリエイターが参加。大切な人との再会を軸にしたストーリー、豊かさを増した音楽性、そして、みあの繊細にして鋭利な歌声が有機的に結びついた作品に仕上がっている。さらにアルバムリリース後には、初の東京・大阪ツアー『三月のパンタシア LIVE2022『邂逅少女』』を開催。小説×音楽を軸にした三パシのエンターテインメントはここから、さらなる進化を遂げることになりそうだ。
リリース情報
2022.03.09 ON SALE
ALBUM『邂逅少女』
ライブ情報
三月のパンタシア LIVE2022『邂逅少女』
2022.03.18(金)大阪・なんばHatch
2022.03.27(日)東京・Zepp Haneda
詳細はこちら
https://www.phantasia.jp/news/archive/?536819
YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q
三月のパンタシア OFFICIAL SITE
https://www.phantasia.jp/