TEXT BY 田中久勝
■音楽が素晴らしい人は人間性も興味深い人ばかり
『THE FIRST TAKE』の制作チームが手がける音楽体験プラットフォーム『THE FIRST TIMES』。その新たなYouTubeコンテンツとして立ち上がった“最深音楽トークコンテンツ”『FUKA/BORI』(フカボリ)が早くも話題だ。ホストの東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦がゲストと共に、その音楽が生まれた裏側にどんな物語があったのか(SIDE A)、そしてその音楽を生んだミュージシャンの血になり肉となっているのはどんな音楽だったのか(SIDE B)を掘り下げていく。
谷中はこのコンテンツがスタートするにあたり「ミュージシャン同士、ロックフェスティバルのバックステージで会うときにも、近況を報告しあったり世間話をしたりで、音楽の話をじっくりする機会は中々なかったりします。自分自身は、この『FUKA/BORI』で、聞きたかった話や、知ることのなかったミュージシャンとしてのルーツに繋がるお話を、たくさん聞いてみようと思っています。なぜならば、音楽が素晴らしい人は人間性も興味深い人ばかりだからです。これから視聴してくださる方々と音楽にまつわる物語の旅に出掛けられることを、心から楽しみにしています」──とコメントしているが、ミュージシャン同士が腰を落ち着けて、音楽の物語の旅をまさに楽しんでいる様子は、何時間も観ていたくなるほど興味深い。
記念すべき第1回目のゲストはCreepy Nuts。代表曲「かつて天才だった俺たちへ」について深堀りし、自身もターニングポイントのひとつと認めるこの曲がどのようにして作られたのか、R-指定とDJ松永がそれぞれの視点で振り返っている。SIDE Bはふたりの初期衝動、音楽のルーツを辿り、DJ松永が涙する場面も。第2回目のゲストはUVERworldのTAKUYA∞が登場。SIDE Aでは「EN」(ドラマ『アバランチ』主題歌)について深堀りしている。「EN」が生まれたきっかけやボーカル構築の方法、同曲が持つ可能性など、バンドにとって大切な作品への思いを丁寧に語っている。1月25日に公開されたSIDE BではボーカリストになるきっかけがMINOR LEAGUE「GRIND」だったと、アーティスト・TAKUYA∞の原点を始め、メンバーとの関係性やファンの存在の大きさを素直に語っている。そしてTAKUYA∞の元に届くファンの声や想いによって、アーティストとしての指針が変化したという、まさに“最深”部を語ってくれている。
■根幹にあるのがそのアーティストへのリスペクト
ホスト役の谷中とアーティスト達が胸襟を開いて語り合っている。それは互いに最大限のリスペクトを持って向き合っているからだ。東京スカパラダイスオーケストラはこれまで数多くのアーティストとコラボし、ファンを楽しませてきたが、その根幹にあるのがそのアーティストへのリスペクトだ。どのコラボ作品も熱さとそして優しさが“カッコ良さ”に昇華している。『FUKA/BORI」もそうだ。
■インタビュー記事、ラジオ、テレビから得られない感動
そしてなにより谷中の懐の深さにアーティストは感激し、同時に安心し、飾らない言葉で胸の内をまさに“吐露”しているようだ。「どっしりと優しく俺たちを受け止めて下さった谷中さん」というR-指定のコメントにもあるが、先輩であり“同志”でもある谷中の一つひとつの言葉がアーティストに響き、これまで語ってこなかったことも思わず口に出してしまう、その現場の“空気感”が伝わってくるのが生々しくていい。こうして文章を書いている身としては悔しいが、雑誌やサイトで、何万字のインタビューを読んでも伝わってこないことが、この20分前後のコンテンツでは“ビシビシ”伝わってくる。それは空気であり、お互いの思いが交錯して生まれる“熱”だ。熱が感動を生み、視聴者からのコメントをみると、やはりインタビュー記事、ラジオ、テレビから得られない感動を受け取っているようだ。“最深”を語るということは、視聴者の心の深いところまで、届いているということだと思う。
これからどんなアーティストが登場するのか楽しみだ。“ただの”対談ではなく、谷中という最強のインタビュアーが、ゲストが「話したい」という空気を作り、そこに何時間でもいたくなる居心地のいい「空間」を生みだし、待っている。そこに一歩足を踏み入れると自然と音楽の“深いい話”をしたくなる。『FUKA/BORI』、恐るべし──。
「THE FIRST TIMES」YouTubeチャンネルトップページ
https://www.youtube.com/channel/UCmm95wqa5BDKdpiXHUL1W6Q
https://www.youtube.com/playlist?list=PLi1F8vriz0_WL3yKBwFfP68Mkx7f8Y4KV