TEXT BY レジー(音楽ブロガー/ライター)
音楽ファンの生活の中に“当たり前のツール”として浸透しつつあるストリーミングサービス。そんな中で、“利用者における若年層の比率が高い”“TikTokでの流行とのリンクなどチャートに独特な特徴がある”のがLINE MUSICです。本稿では、LINE MUSICの10月度のランキング上位30曲に目を向けながら今の音楽シーンのトレンドを探ってみたいと思います。
■あらたなボーイズグループの時代へ
10月の1位に輝いたのは5人組ダンス&ボーカルグループの超特急「Добрый день」(ドーブリジェン)。超特急は9月の「같이 가자」(カチ カジャ)に続けての1位獲得です。
この2曲は11月10日にリリースされるアルバム『Dance Dance Dance』の収録曲ですが、「Добрый день」はロシア民謡のコロブチカ(フォークダンスもしくはテトリスのBGMでお馴染み)の要素を取り入れた楽曲をダンサーの4人が歌うというトリッキーなもの。思わずリピート再生したりダンスをマネたりしたくなる不思議な中毒性は、TikTokなどを介して音楽がコミュニケーションツールとして使われる昨今の世相を反映しているように思います。
その超特急を筆頭に、10月のトップ10には男性のダンス&ボーカルグループが国内勢で4曲(超特急、INI、BE:FIRST、JO1)、韓国勢(Stray Kids、ENHYPHEN)も含むと6曲もランクイン。
2010年代はどちらかというと女性のグループアイドルの動きがムーブメントとして取り上げられることが多めでしたが、この一年ほどで今度は男性グループの動きが一気に活性化してきました。
なかでも注目は11月3日に同時メジャーデビューを果たしたINIとBE:FIRST。
『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』から輩出されたINIの「Rocketeer」(2位)はK-POPマナーの力強いダンスナンバー、『スッキリ』にて放送されたオーディション『THE FIRST』から生まれたBE:FIRSTの「Kick Start」(6位)はオーディションでも使われたメロウなトラックを生かした温かみのある楽曲とそれぞれのカラーが出ています。この先それぞれがどんな個性を磨いていくのか楽しみです。
■“世界観×生身”の黄金律
“音楽がコミュニケーションツールとして使われる”ことのわかりやすい事例が、LINE MUSICとLINEのプロフィールBGMの連動。そのプロフィールBGMのランキングで2位に入っているのが、10月の月間ランキングでも14位にランクインした夜のひと笑い「ミライチズ」です。
この曲はHoneyWorksによるオリジナル楽曲ですが、様々なコンテンツとのコラボを介して名をあげてきた存在の曲を人気のカップルYouTuberが歌うという構造は、“世界観を持ったプラットフォーム”と“生身のキャラクター”のかけ算という点で非常に今時のインターネット的な組み合わせではないかと思います。
統一感のある設定やムードと存在感のあるアイコン、情報過多な今のネット空間でキャッチーさを保つにはこの双方が必要です。
ちなみに夜のひと笑いですが、11月3日に「【無期限活動休止】今まで本当に有難う御座いました【釣りじゃないです】」という動画をYouTubeにアップしたばかり。プライベートの関係性が表現活動とダイレクトに繋がっているだけに、その背景と今後が気になります。
そんな“世界観×生身”の考え方において共通しているのが、24位のMAISONdes「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」。
「どこかにある六畳半アパートの、各部屋の住人の歌」という設定のもと、りりあ。やyama、さとうもかといった最近注目を集めている才能をタイムリーに起用しているこのプロジェクト、今回の「ヨワネハキ」では「寄り酔い」がTikTokなどで話題を呼んだ和ぬかと20歳の女性シンガーのasmiをフィーチャー。
すでにこちらもTikTokで大きな支持を集めると同時に「THE FIRST TAKE」の再生回数も600万回オーバーとなっているこの曲ですが、ダンサブルな中にどこか懐かしさの漂う不思議な魅力には編曲で参加している100回嘔吐(ずっと真夜中でいいのに。「MILABO」の編曲も担当)の貢献も欠かせないのではないでしょうか。
MAISONdesは11月24日に新曲「ラリー、ラリー feat. Pii, meiyo」のリリースも予定されており、この先もシーンに刺激的な話題を提供してくれそうです。
以上、10月の注目ポイントをお届けしました。マスメディアの情報や既存の音楽評論とはどこか異なるムードを持ったLINE MUSICのランキング、ぜひこの先も定点観測してみてはいかがでしょうか。
【2021年10月 LINE MUSIC 月間ランキング 】
01「Добрый день」超特急
02「Rocketeer」INI
03「Scars」Stray Kids
04「流れ弾」櫻坂46
05「You (Prod. SUGA of BTS)」ØMI
06「Kick Star」BE:FIRST
07「The Feels」TWICE
08「Tamed-Dashed」ENHYPEN
09「水平線」back number
10「Prologue」JO1
11「Anniversary」平井 大
12「CALL」Stray Kids
13「Cry Baby」Official髭男dism
14「ミライチズ」夜のひと笑い
15「黄色」back number
16「X」SUPER★DRAGON
17「ドライフラワー」優里
18「シャッター」優里
19「夜撫でるメノウ」Ayase
20「Permission to Dance」BTS
21「Butter」BTS
22「Rock with you」SEVENTEEN
23「雲の上」心之助
24「ヨワネハキ( feat.和ぬか & asmi)」MAISONdes
25「YOKAZE」変態紳士クラブ
26「きらり」藤井 風
27「踊」Ado
28「STAY」The Kid LAROI & Justin Bieber
29「海のリビング」鈴木鈴木
30「夏音」優里
31「シンデレラボーイ」Saucy Dog
32「勝たんしか症候群」たかやん
33「すきっ!~超ver~」超ときめき♡宣伝部
34「怪物」YOASOBI
35「Dynamite」BTS
36「ツキミソウ」Novelbright
37「かわいいよる。」neるne
38「沈丁花」DISH//
39「MIRROR MIRROR」平井 大
40「明け星」LiSA
41「CITRUS」Da-iCE
42「夜に駆ける」YOASOBI
43「群青」YOASOBI
44「三原色」YOASOBI
45「大正浪漫」YOASOBI
46「なにやってもうまくいかない」meiyo
47「勿忘」Awesome City Club
48「Bluma to Lunch」BLOOM VASE
49「BOY」King Gnu
50「怪盗」back number
51「真生活 (feat. 案山子) [Cover]」Kotoha
52「Stand by me, Stand by you.」平井 大
53「虹色の戦争」SEKAI NO OWARI
54「Curtain Call( feat.Taka)」清水翔太
55「カレンダー」川崎鷹也
56「Shining One」BE:FIRST
57「ってか」日向坂46
58「ハート」あいみょん
59「炎」LiSA
60「같이 가자」超特急
61「私じゃなかったんだね。」りりあ。
62「トマソン」マカロニえんぴつ
63「ナイモノネダリ」音虎とErii
64「Buddy」平井 大
65「Favorite (Vampire)」NCT 127
66「点描の唄 (feat. 井上苑子)」Mrs. GREEN APPLE
67「U+Me=LOVE」7 LOVE Minutes
68「クリスマスソング」back number
69「半分相逢傘」原因は自分にある。
70「My Universe」Coldplay X BTS
71「題名のない今日」平井 大
72「ピーターパン」優里
73「Pretender」Official髭男dism
74「イージーゲーム (feat. 和ぬか)」natsumi
75「10月無口な君を忘れる」あたらよ
76「Snake」Medusa
77「往け」LiSA
78「Bushido」Good Gas, JP THE WAVY
79「うっせぇわ」Ado
80「napori」Vaundy
81「ギラギラ」Ado
82「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」DISH//
83「ハレンチ」ちゃんみな
84「フィクション」sumika
85「Brighter」INI
86「Love Song」Uru
87「HAPPY BIRTHDAY」back number
88「昨日は戻らない」豆柴の大群
89「虹」菅田将暉
90「花占い」Vaundy
91「シル・ヴ・プレジデント」P丸様。
92「いつか」Saucy Dog
93「魔法の絨毯」川崎鷹也
94「ラブレター」YOASOBI
95「花束のかわりにメロディーを」清水翔太
96「あいまって。」山本 彩
97「もう少しだけ」YOASOBI
98「恋人ごっこ」マカロニえんぴつ
99「なんでも言っちゃって (feat. JP THE WAVY)」LEX
100「阿修羅ちゃん」Ado