TEXT BY 岡本 明
■“変わらない”ロックンロールを放つ、SIX KICKS ROCK&ROLL
6ヵ月連続シングルリリース“SIX KICKS ROCK&ROLL”で話題を集めている、ザ・クロマニヨンズ。
本プロジェクトの口火を切った第1弾シングル「ドライブ GO!」は、シンプル極まりないサウンドとボーカルで、これぞ王道と言い切れるロックンロールが心地いいナンバー。カップリング曲「千円ボウズ」も楽しげなコーラスで満たされ、どちらも一度耳にしただけで印象に残る楽曲に仕上がっている。
続く、第2弾シングル「光の魔人」は高揚感のあるメロディに切なさが混ざるポップな一曲。カップリング「ここにある」では、極端に少ない歌詞の繰り返しだけで自らの生き方を発信し、熱いサウンドと鋼のように鋭く突きささるボーカルの一貫性こそが彼らの持ち味だと再確認できる楽曲たちが収録されていた。
■シンプルがゆえの“純度”を体感できる「大空がある」
そして、10月27日に発売された第3弾シングル「大空がある」。
簡潔なバンドサウンドを基調としているのはこれまでと変わらないが、フレーズも含め徹底的にシンプルな構成なので、ボーカルがより強く響いてくる。真島昌利のワイルドなギターカッティングで幕を開け、曲の中でもシャッフルのカッティングが跳ねたビート感をもたらしているため、これまで以上に軽快なノリを生むアレンジになっている点も見逃せない。
ストイックなまでに音数を抑えたリズム隊の持つ一体感もこれまで同様に素晴らしいが、ここでは“間”を生かしたアンサンブルが光る。そのせいもあって、甲本ヒロトのボーカルが強靭さを増して伝わってくる。
そして、この曲の作詞作曲は真島昌利なのだが、前作のカップリング曲「ここにある」に通じるような、極端に少ない歌詞で世界を表現しようとする方法がとられており、空の広大さ、宇宙の果てしなさをごく普通の言葉で端的に描き出している。昼間の太陽の眩しさに目を細め、夜空の漆黒の闇に感動を覚える…そんなスケール感のある情景がみずみずしく綴られているのだ。
さらに、間奏部分に甲本ヒロトのポエトリー・リーディングふうの言葉が挟み込まれているのも興味深い。また、何度も繰り返される“大丈夫だ”という言葉は、コロナ禍の閉塞状況に向けたリフレインにもとれそうだ。
同作のカップリング曲は「爆音サイレンサー」。爆音なのにサイレンサー(消音器)、という組み合わせのユニークさが彼ららしい。アップテンポでマイナー調のメロディが一気に走り抜けていく、ライブで盛り上がりそうなナンバー。“爆音で夢を見る”という甲本ヒロトの歌詞は彼らの生きざまにも思えてくる。
今後は11月24日に第4弾「もぐらとボンゴ」、12月22日に第5弾「縄文BABY」、2022年1月19日に第6弾「ごくつぶし」と、タイトルを聞いただけでは想像もつかないシングルが予定されていて、ワクワクさせられる。
■リアルな息づかいを宿す、ザ・クロマニヨンズの作品たち
なお、第6弾シングルと同日にはCDアルバムもリリース。そちらにはこれらのシングル曲、カップリング曲のほか、ボーナストラックが収録される(アナログのアルバム発売予定はなし)。
コロナ禍の影響もあり、オンライン化された日常が当たり前のようになっている、先の見えない現実。音楽の世界にあっても、リリースもライブの本数も激減してしまった。
しかし、どんな時代になっても変わらないロックンロールの魅力を体現しているザ・クロマニヨンズの作品たちは、間違いなくリアルな息づかいを宿している。
ライブはまだ先の話になるかもしれないが、CDやレコードの持つリアルな鳴りや響きにこそ、音楽の持つ力があると確信できる今回のシリーズ。今後を楽しみに待ちたい。
リリース情報
2021.10.27 ON SALE
SINGLE「大空がある」
ザ・クロマニヨンズ OFFICIAL SITE
https://www.cro-magnons.net/
“SIX KICKS ROCK&ROLL”特設サイト
https://www.cro-magnons.net/sixkicks-rock-roll/