L’Arc〜en〜Cielとファンとの30年。新作「FOREVER」から読み取る“未来永劫続く絆”

TEXT BY 森朋之

■30周年をオーディエンスとともに共有にしたい

L’Arc〜en〜Cielが結成30周年を迎えた。千葉幕張メッセ国際展示場1-3ホールで行われた結成30周年記念バースデーライヴ『30th L’Anniversary Starting Live“L’APPY BIRTHDAY!”』に続き、9月5日、7日、8日の大阪大阪城ホール公演から全国ツアー『30th L’Anniversary TOUR』がスタート。新型コロナウイルス感染防止の対策を施したこの公演のなかでhyde（Vo）は、「『ああ、会えてよかったな』と思って。ここへ来るのにいろんなドラマがあったと思います。葛藤もあったと思います。来られなかった人の空席もあると思いますけど……今日のために感染対策がんばってくれて本当にどうもありがとう」とコメント。30年のキャリアを支えたファンへの感謝を率直に口にした。

アニバーサリーイヤーに伴い、新曲が発表されたこともファンにとってはうれしいニュースだ。

まずは5月31日に突如としてデジタルリリースされた「ミライ」。hydeの作詞作曲によるこの曲は、タイトルが示す通り、未来への希望を高らか歌い上げたミディアムチューンだ。その根底にあるのは、“30周年をオーディエンスとともに共有にしたい”という強い思いだろう。

■アニバーサリーイヤーの幕開けを鮮やかに映し出している

麗しいストリングスで幕を開ける「ミライ」の軸を担っているのは、神聖にして力強いメロディラインと壮大なバンドサウンド。そのなかでhydeは、“孤独じゃないんだ”とリスナーに語り掛けるように歌う。クライマックスは、“今虹がかかり一つに繋がる”というライン。“虹”はもちろん、L’Arc〜en〜Cielのこと。この歌詞は4人のメンバーとファンとの絆を実感させると同時に、アニバーサリーイヤーの幕開けを鮮やかに映し出しているのだと思う。

さらに9月29日にはニューシングル「FOREVER」がリリースされた。作詞作曲はtetsuya。「疾走感のある夏らしい爽やかな曲をイメージして作りました」（tetsuya）というアッパーチューンだ。心地よいスピード感をたたえたサウンドのなかで、解放感に溢れた旋律が広がるこの曲はL’Arc～en～Cielの新たなサマーチューンとして浸透していくことになりそうだ。楽曲の後半でピアノと歌だけになり、その直後に再びバンドが疾走する構成もドラマティックだ。

■“本当に大切なものの在り処”を示す「FOREVER」

「『ミライ』の次にリリースする楽曲『FOREVER』。未来永劫、続いていく、そんな思いも込めました」（tetsuya）という歌詞も心に残る。個人的に印象的だったのは“本当に大切だった事は（I remember） / 目に見えない惑わされず研ぎ澄ませ”という一節。コロナにより大きく変わってしまった世界のなかで、多くの人が戸惑い、前に進めないまま立ちすくんでいる。“本当に大切なものの在り処”を示すこの曲には、「ミライ」と同様、オーディエンスの心に寄り添い、背中を押すパワーがたしかに宿っていると思う。

■ファンのことを意識し、励ます楽曲たち

振り返ってみるとL’Arc〜en〜Cielは、常にファンのことを意識し、励ますような楽曲を作り続けてきた。“夢を描くよ”というフレーズが大らかに響き渡る「MY HEART DRAWS A DREAM」（作詞 hyde/作曲 ken）、アグレッシブな演奏とストリングスとともに“Good luck my way 信じる道へ”という前向きなフレーズが飛び込んでくる「GOOD LUCK MY WAY」（作詞 hyde/作曲 tetsuya）、エッジの立った音像と“壁の乗り越え、新しい世界に飛び出していくんだ”という思いが共鳴する「New World」（作詞 yukihiro/作曲 yukihiro、hyde）、そして、“涙枯れ果てても大切な/あなたがいるから”という真摯な思いを描いた珠玉のバラード「あなた」（作詞 hyde/作曲 tetsuya）。