■「将来的に阿部寛さんのようになっていくんじゃないかと、期待していた時代もありました」(北村匠海)
4月8日に公開される映画『とんび』の公開直前イベントが、3月24日に開催され、主演の阿部寛、北村匠海が登壇した。
幾度途切れても必ず繋がってゆく親子の絆を描く本作で、父・ヤスを演じた阿部は「この映画は、人々の間に距離が出来てしまった今の時代だからこそ、人々の近さを表すこの映画が広まるといいなと思いました」と本作への思いを語り、息子・アキラを演じた北村は「親子限定イベントということで、親御さんと並んで恥ずかしそうにしている方や、色々な方がいますね。皆さんとほっこりとした時間を過ごせればと思います」と、喜びの表情を見せた。
今回、親子役として初共演を果たした阿部と北村。お互いの印象を聞かれると、「初めて会ったときに、ちょっと似てるかなと親近感を非常に感じました。本当にトンビが鷹を生んだようにしっかりしていて、こういうイベントでもいい発言を言ってくれるので、すごく頼りにしてます」と、まるで本物の息子を誇らしく自慢するように語る阿部。北村は、照れた表情を見せながら、「子どもの頃から少しずつ顔が濃くなっていったのですが、将来的に阿部寛さんのようになっていくんじゃないかと、期待していた時代もありました。うちは、父も母も弟も濃い顔をしていて、阿部さんはちょっと父に似ていたりもするので、今回親子役を演じられるのも、とても光栄でした」と、自身の父と阿部の意外な共通点を明かした。
また、撮影中の意外な一面を聞かれた阿部は「映画の中で(北村に)怒られるシーンがあるのですが、その北村くんと普段の北村くんのテンションの違いにびっくりしました。その日一日凄いショックを受けたというシーンがありました」と明かし、北村は「寡黙にお芝居に向き合われている方というイメージが子供の頃からあったのですが、情熱をもって大黒柱として現場で常に真ん中にいてくださったので、僕は本当に絶大な信頼をもって阿部さんの胸に飛び込んでいく毎日でした。中でもお子さんの話をされているときが、凄いキラキラしていました。現場でも、ご結婚されている方たちとのリアルな親トークを現場でしていて、すごくほっこりしたのと同時に、チャーミングな一面も見られて意外だなと思いました」と、お互いのギャップについて語った。
そして、本イベントに集まったのは、登壇した阿部と北村の役柄と同じ、親子100名。来場した親子の中から3組の親子に、「この場を借りて言いたいこと」“言い分”をぶつけ合い、さらに阿部と北村がそれぞれ親と子の立場に立ってその“言い分”を後押し、“親子の絆”を深めていくコーナーを行った。
最初に登場したのは、中学生の娘とその父。父が発表したのは、「最近、あまり学校の話などをしてくれなくなったり、一緒に出掛けてくれなくなった。たまには一緒に出掛けてほしい」という、思春期の娘に対する切実な想い。会場にいる親たちからも大きく頷き共感を得られている中、娘は、「ずっと秘密にしてたことなんですけど、実は中学に入ってすぐに、彼氏ができて……」という衝撃の告白をすると、父は言葉を失ったように驚き、さらに会場中も温かな笑い声が起こった。
「いずれはこういうことがあると思っていたのですが、思ったより早くにきて、動揺しています」と、動揺を隠せない父に、「お父さん、辛いですね」と同情する阿部。北村は「これは距離をとっているということではなくて、大人の階段を上っているので、温かく見守ってあげてください。多分、映画界が恋愛映画をやりすぎたのかな」とコメント。さらに、「今、学生時代よりも親と仲良くなったんですよ。どこか素直に話せなかったり、抱えているものを打ち明けられないことが中学校の頃は凄く多かったんですけど、今になって、友達みたいに一緒にお酒飲んで昔話をしながら、楽しくやっていたりするので、いつかこの日をお酒のつまみにできる日があるのかもしれないですね」と、北村自身の親子関係を交えながら、父娘に対して愛のある言葉を伝えた。
次に登場したのは、20代前半の社会人とその母親。母が「息子が学校の林間学校などの時に、内緒で旅行に行ってしまった」ことを謝罪すると、息子は「実は内緒で埼玉から東京に引っ越していた」とカミングアウト。さらに「洗濯機がないので買ってほしい」とこの場に便乗したおねだりもすると、会場は笑いに包まれる。
北村はそんな息子に対し、「コインランドリーもいいぜ?(笑)僕が20歳で一人暮らしを始めたときは、コインランドリーを待ってる時間やコインランドリーの匂いは好きでしたね。あとひとつ言えるのが、自分で稼いでそのお金で買うっていうのが、すごく愛着もあるし、ちゃんと自分が今自立してるんだなと感じたりすると思うのでコインランドリーもいいぜって、ちゃんと自分で仕事して胸張って洗濯機買えるぐらいになったら最高ですよね」とコメント。完璧なアドバイスをする北村を見た阿部は、「いいこと言うでしょ? もうコインランドリー行くしかないでしょ」と、“自慢の息子”を誇らしげに語った。
そして最後に登場したのは、20代学生の娘と、母親。母からは、「意味不明な寝言を言わないでほしい」と、娘は「どんな親よりも母が心配性で、心配しないでほしい」という主張をお互いに吐露した。
自身の親も同じく心配性だったという阿部は、「僕も20代前半の頃、先輩の家に泊まりに行ったときに、親がそこら中に電話しまくって、物凄い恥ずかしい思いをして、親に凄い怒ったという経験があります」というエピソードを語りながら、父親の立場となった現在の視点からは、「親は子供を信じてあげるということがすごく大事だと思います」とアドバイス。さらに北村も、「うちの母も凄い心配性でしたね。8歳から芸能活動をしていたので、ひとりで遠くに行くことも多かったです。親御さんの心配以上に子供たちが行く場所はわくわくが詰まってたり、良い人生経験になると思います」と、自身の経験を語った。
最後に会場に集まった親子に向けて、北村は「我々は皆誰しもに父と母がいて、そのふたりから生まれてくる。自分も大人になっていくにつれて、親のありがたさを感じるようになり、もっと子供の頃に気づいていれば良かったなと思うこともいっぱいあったりします。この映画にも親子の愛情がちりばめられています。親子はいつまでも絶対に繋がれているものですし、そういうことを再確認できる映画になっています。是非、楽しみにしていただきたいです」と、阿部は「親子ってそんなに器用じゃないと思うんですよね。この映画はまさにそうで、お互いに親のこと子供のことを大事に思っているんだけど、それがうまく表現できなくて。でもその中に、人の絆や感動があります。人というのはどこかしら欠けているものだと思うので、皆で支え合っていく。今の時代だからこそ見る意味のある映画になっています」と思いを伝え、温かな雰囲気の中、イベントは終了した。
映画情報
『とんび』
4月8日(金)全国劇場公開
出演:阿部 寛
北村匠海 杏 安田 顕 大島優子
濱田 岳 宇梶剛士 尾美としのり 吉岡睦雄 宇野祥平 木竜麻生 井之脇海 田辺桃子
田中哲司 豊原功補 嶋田久作 村上 淳
麿 赤兒 麻生久美子 / 薬師丸ひろ子
原作:重松 清『とんび』(角川文庫刊)
監督:瀬々敬久
脚本:港 岳彦
配給:KADOKAWA イオンエンターテイメント
(C)2022『とんび』 製作委員会
映画『とんび』作品サイト
https://movies.kadokawa.co.jp/tonbi/