再現度の高いコスプレが反響を呼び、現在TikTokのフォロワー数は120万人を突破。週刊プレイボーイ、FRIDAYなど多くの表紙を飾り、女優としてはTBS『リコカツ』、EX『ドクター X 〜外科医・大門未知子〜』、東海テレビ/フジテレビ系列の土曜ドラマ『顔だけ先生』などに出演。そんな多方面で活躍するあかせあかりが、2月23日にシングル「恋ノ行方」でメジャーデビューを果たした。今作はTVアニメ『その着せ替え人形は恋をする』のエンディングテーマに選ばれており、楽曲・MVとも注目を集めている。今回、音楽活動についてはもちろんのこと、彼女の生い立ちについても聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 真貝聡
PHOTO BY 大橋祐希
■小学生の頃から『プリキュア』がすごい好き
──ご活躍を見ていて、1打席目で必ず結果を出す人だなと思いました。
結果、残せていますかね(笑)。
──初めてTikTokに投稿して多くの方に注目されたのもそうですし、初グラビアでいきなり『週プレ グラジャパアワード2020』最優秀新人賞に選ばれたのも、初めて出演した音楽番組『CDTVライブ!ライブ!年越しスペシャル!2021→2022』で指原莉乃さんが「あかせあかりちゃんかわちい」とツイートしたのも、初めてのMV「恋ノ行方」が公開から1ヵ月で300万回以上も再生されたこともそうですし。
すごい調べていただきありがとうございます。
──ちゃんと結果を出してますよ。
ありがとうございます(笑)。もともとはコスプレがきっかけで芸能のお仕事をやらせていただいて、お芝居やグラビアだけでなく、こうして歌う機会まで!しかも初めての歌番組が大晦日ということで、お母さんとか親戚からも「嘘でしょ!」みたいな反応がありました。何が何やら自分でも状況把握ができなかったですね。
──各方面での活躍が目覚ましいですけど、逆にやりたいことや、目標に近づけなかったり、努力の成果が形にならなかったりしていた時期もあるわけですよね?
そうですね。芸能活動を本格的にスタートさせるために、高校卒業と同時に愛知から上京したのですが、事務所に所属したからといってすぐにお仕事があるわけじゃなくて。同い年の子たちの「専門学校に通ってます」とか「就職して仕事を始めました」という報告を耳にするたび、私は好きなことだけをやっていて大丈夫なのかな?と不安にかられていました。
──自ら選んだ道だけど、これで正しいのか?っていう。
楽しいですが、これって本当に将来のためになるのかなと思った時期はありましたね。今となっては、あのときに身につけたコスプレの技術が今回のMVに活かされているため、良かったなと思います。
──そもそもコスプレを好きになったのはいつですか?
小学生の頃から『プリキュア』がすごい好きで、「私もプリキュアになりたい!」と言ってました。おもちゃ屋さんに行くと、コスチュームが売っていると思うのですが、ああいうのを着てキャラクターになりきることが、昔から好きだったんですよ。
──中学生になって、女優さんのオーディションを受けたんですよね。
そうです。『シーブリーズ』のCMオーディションを受けたのですが、落選してしまって。もちろん小さい頃からの夢だったので諦め切れるものじゃなかったんですけど、母からは「このオーディションに落ちたら女優は諦めてください」と言われていて。「それでも良いから受けたい」と自分で言った手前、一時は夢を諦めました。高校に進学するときには「芸能の道は諦めること。そしてアニメが好きなことを周りには隠してください」と母に言われて。
──どうして?夢と好きなことは別ですよね?
母がアニメや漫画を好きではなかったことが大きいです。高校で女優さんになる夢はキッパリと諦めて、アニメや漫画が好きなことも周りに隠していました。
──家で漫画やアニメを読んだり見たりするけど、外では興味がないフリをしていた。
我慢してました。そしたら次第に“素の自分を知られて、友達に嫌われたらどうしよう?”という不安が大きくなって。
■このまま自分を隠しても意味ないじゃん!と
──ますます自分を出せなくなった。
だけど、高校2年生のときにこのまま自分を隠しても意味ないじゃん!と思い、隠すのを辞めたんです。それをきっかけにアニメ熱がより高まって、コスプレイヤーさんのこともちゃんと知るようになりました。
──それでもお母さんには隠していたんですよね?
母に「私もいつかコスプレしてみたい」と言ったら、「絶対にやめて」と言われてしまい。
──だいぶ太い釘を刺されましたね。
まだコスプレしていないときに、ですよ。とはいえ、ちょうど反抗期だったので“なんで、そこまで口出しされなきゃいけないんだ!”と思い、母に隠れてコスプレをするようになりました。ですが、それがある日バレてしまい、今まででいちばん大きな親子喧嘩をしました。母はそのときの喧嘩は嫌な思い出らしいのですが、アレがなかったら今の活動ができていないと思うので…反抗して良かったなと思います(笑)。
──「夢を追うのは中学までにしなさい」とか「アニメが好きなことは隠しなさい」とか、結構厳しい印象があるんですけど、親御さんは厳格な方なんですか。
厳格というか、母は私のやることを1から10まで決めたいタイプかなと思います。
──小さい頃からそういう感じ?
小学生まではいろいろやらせてもらえていたのですが、私が中学に入ったタイミングで「ちゃんとした学校へ行きなさい」など言われるようになりました。私が一人っ子というのもあると思うのですが、“娘にはちゃんと進路を決めて、しっかりした仕事に就いてほしい”という思いがあったみたいで。「芸能の仕事は稼げる見込みがあるわけじゃないのに、ずっと追いかけたってしょうがないでしょ?夢なんて若いうちだけだよ。高校生になって将来の進路に“女優さんになりたい”なんて書くの?」と言われました。
──お母さんの言うことは、ごもっともですね。
母としては「美容に興味があるなら美容学校に行くとか、服を作るのが好きなら服飾の学校に行く道もあるじゃん」と。それで、また進路のことで喧嘩をしたんです。私の中で将来のビジョンがちゃんと決まっていたら、そこまで言われなかったと思うのですが…。
──しかし、そんなお母さんはアムラーだったとか。
安室奈美恵さんがとても好きだったこともあり、学生時代の母はすごいギャルでした。昔の写真を見たら「ピース!ピース!」みたいな感じだったのに、なんで私はこんなに言われるんだろうと(笑)。
──お母さんとしては若い頃にいろいろと自由な期間を過ごして、10代で結婚もしたから、あのときにこうしていたらもっと違う人生が待っていたんじゃないか、と考えるのかもしれないですよね。
結果的に私が隠れてコスプレを始めなければ、この仕事には就けなかったと思いますし、あのときじゃなくてもいずれはコスプレをしていたと思います。遅かれ早かれみたいなところはあるのかなって(笑)。
■『鬼滅の刃』のコスプレをしてTikTokでバズるように
──最近はコスプレイヤーが雑誌の表紙を飾ったり、もっと言えばハロウィンの盛り上がりでコスプレが徐々に市民権を得ているような気がするんですけど、当時は今よりもマニアックなものだったんですか。
今ほどオープンじゃなかったと思います。高校3年生でコスプレを始めたのですが、それをクラスメイトに知られたときは、「あの人、コスプレやってるんだって」と周りから言われましたね。そんな中、高3の夏休みが終わる頃、私が『鬼滅の刃』のコスプレをしてTikTokでバズるようになったんです。そしたら急に「この前、コスプレしていたアニメを観たよ!」と言われて「…そ、そうなんだ」みたいな。
──ガラッと反応が変わったわけですね。
突然「TikTok見たよ!この前やっていたアニメの漫画持ってる?」と言われて「あ、あるよ」みたいな。
──ハハハ。すごい戸惑ってる。
最近はコスプレをしている人が増えてきたじゃないですか。そういう方たちのおかげで、世間のコスプレに対する免疫が薄まりつつあるかなって思います。
■「ええ…初っ端からアニメのタイアップですか」と驚きでした
──TikTokによってあかりさんは世に出て、多方面で活躍されるようになりましたが、今回のメジャーデビューはどういう経緯で決まったんですか。
事務所の方から「コスプレはもちろんだけど、それ以外にどんな仕事をしたいの?」と聞かれて「女優さんをやりたいです」と言ったんですね。そしたら「他にもいろんな方面があるけど、女優さん以外にやりたいことはある?」と。いろんな方面と言われても、何があるのかわからなくて「例えば何がありますか?」と聞いたら「歌はどう?」って。試しに歌を聴いていただいたら「良いじゃん!いつか音楽活動ができるようになると良いよね」と言われて、アニメタイアップのお話が来たんです。「ええ…初っ端からアニメのタイアップですか」と驚きでしたね。もともと知っている漫画だったので。
──原作を知ったのはいつ頃?
まだ1、2巻くらいしか出ていない頃に、コスプレイヤーのお友達から「この漫画が面白いよ!今からだったら追えるよ」と言われて読むようになりました。まさか自分がその作品のアニメタイアップを務めるとは想像していなかったので、決まった瞬間はうれしいよりも困惑の方が勝っちゃって。今となってはうれしい気持ちが勝っているんですけど。
■ヒロインの喜多川海夢ちゃんに寄り添っている
──「恋ノ行方」のデモが届いたときは、どんな印象を受けましたか。
ヒロインの喜多川海夢ちゃんに寄り添っているなと思いました。これはあのシーンの感情だなとか、あのときのことを言っているフレーズだなとか、読むだけで原作を思い出せるような。それでニヤけちゃいますし、改めて海夢ってかわいいなと思いますね。
──あとはMVですよね。どういう流れで制作を進めていかれたんですか。
あくまで『その着せ替え人形は恋をする』に寄り添った映像にしたいため、監督さんとイメージを擦り合わせながら作っていきました。踊りに関してもキャラクターごとに少しずつ変えたり、それこそ海夢の元気でリアルが充実している感じを出して、なおかつ黒江雫たんもブラックロベリアも、コスプレしているのは私ですが、あくまで海夢なので。雫たんの格好ができてうれしくてたまらない海夢の内面が出てきちゃうところなど、そういう細かいニュアンスも大事にしてます。
──メイクとウィッグ作りはご自身でやられたんですよね?
ウィッグやカラコン選びから自分でやりました。雫たんのウィッグはもともと原色の紫だったのですが、ちょっと暗めに染めたりとか、海夢のウィッグもグラデーションになるように毛先だけ染めていたり、セットも自分でやっています。今はウィッグっていろんな色があるので、わざわざ自分で染めなくても良いのですが、キャラクターに近づけるためにはできている色のウィッグを買うより、自分で染めて一手間加えたほうが、さらに近づけるんじゃないかなと。染色をしたらサラサラな髪質になるように、シリコンスプレーをしてカットもしました。
──かなりの手間がかかってる!
もともと趣味で染色などをやっていたので、自分が好きでやっていた経験が活かせれましたね。ただ、以前は3時間くらいあればできたのですが、今はひとつのキャラクターに10時間以上も時間をかけちゃうことが多くて。ウィッグを洗って染めて乾かして、まだ色が薄いと思ったら染め直して温めてとかもあるので、全然時間が足りないです。でも「恋ノ行方」のMVは時間をかけて良かったと思えるクオリティになっているので、苦労した甲斐がありました(照)。
──「輝きフォトグラフ」はどんな楽曲になっていますか。
「恋ノ行方」が作品のストーリーに沿っているのに対して、「輝きフォトグラフ」はキャラクターに沿っていると思います。キャラソンチックな感じに仕上がっていると思うので、リア充を表現するように歌いました(笑)。
──恋するピュアな少女味が強い気がしました。
そうですね!久しぶりに学生時代に聴いていたようなラブソングっぽいものとか、少女漫画チックな作品を聴いたり読んだりして。おかげで初々しい気持ちを表現できたかなと思います。
──「ダイスキ」もあかりさんのキラキラした歌声が際立っていますね。
「ダイ ダイ ダイ」 とか掛け声も結構あるので、いろんなキャラクター性を持って歌いました。カラオケに収録されたら、学生さんとかみんなで盛り上がってくれたらうれしいです。曲調はK-POPチックなのですが、私の歌い方も相まってアニソンっぽくなっていますし、ファンの方に向けて“いつもありがとう!大好きだよ!”という気持ちを伝えられたかなと思います。
──今作は3曲並べた時にストーリー性がありますよね。
「恋ノ行方」で好きな人が現れて、「輝きフォトグラフ」で恋をして、「ダイスキ」で付き合った、みたいな流れですよね! 「ダイスキ」は通常盤でしか聴けなくて、初回限定盤ではMVのメイキング映像が入ってるのでどっちも聴いてほしいし、観てほしいです。
■女優さんを目指すきっかけが、幼稚園の頃に観た『魔女の宅急便』
──最後に聞きたいのが、あかりさんの場合はお芝居でも歌でも“演じる”というのが共通していて、どちらも自分とは違う人間になれるのが魅力だと思うんですよね。そういう変身願望を叶える最たるものがコスプレ。さらに紐解くと、女優さんになりたいと思っていたのも変身願望の表れだと思うんですけど、どうですか?
漫画とかドラマもそうなのですが、昔からストーリー性の高い作品に触れるのが好きで。その理由は私じゃない人生を見れるのと、私の知らなかった世界を知れるのが大きいです。自分だけだったら絶対に思いつかなかった視点が、新しく知識として入ってくるツールだと思うんです。もちろん刑事物や医学物のようなリアルっぽい作品にも触れるのですが、やっぱりファンタジー物が好きです。私が女優さんを目指すきっかけが、幼稚園の頃に観た『魔女の宅急便』でした。
──あ、それがルーツなんですね。
小学生から高校生になるまでは「私は、プリキュアになりたい」ってずっと言ってたんですよ。しかも、ただの願望じゃなくてリアルになれると思っていて(笑)。
──発想が面白いですよね。『魔女の宅急便』や『プリキュア』を観て影響を受けたのなら、アニメの制作会社に就職しようとか声優になろうとするのが普通だけど、キャラクターに直結させて「自分があのキャラクターになるんだ」ですから。
声優さんという職業があることや、イラストを描いているクリエイターさんがいるという考えがなくて。『プリキュア』は『プリキュア』だったんです。
──裏を見ないってことですね。
キキはキキだったし、純粋にキャラクターは生きているんだ、という気持ちでいたので。だから、女優さんになればキキになれると思っていたんですよね。
──小学校低学年くらいだったら“自分はプリキュアになるんだ”と本気で思うのもわかるんですよ。でも、高校生にもなって──。
高校生にもなって(笑)。
■『プリキュア』になれないことはわかっていますが
──失礼しました(笑)。高校生になっても、そういうピュアな気持ちを持てたのはどうしてなんですかね。
手が届かないからこそ追いかけたいというか。昔から自分にないものが好きなんです。高校生の時、七夕にスーパーへ行くと短冊が飾ってあって。私が「プリキュアになりたい」と書いたら、みんなは「は?嘘でしょ!?」って。私の中ではネタじゃないんですよ。さすがに今は大人ですから『プリキュア』になれないことはわかっていますが、声優さんでもアーティストさんとしてでも携わる可能性があるじゃないですか。追いかけていれば、いつか叶うんじゃないかなと思います。
──そういう意味ではコスプレって究極ですよね。声だけじゃなくて、衣装やメイクまでキャラと共存するわけですから。
究極の愛です。私にとってコスプレは、キャラクターに対する“特大の愛の形”なんです。
リリース情報
2022.02.23
SINGLE「恋ノ行方」
プロフィール
あかせあかり
アカセアカリ/再現度の高いコスプレで反響を呼び現在のTikTokフォロワー数は120万人を突破!週刊プレイボーイ、FRIDAYなど多くの表紙を飾り、女優としても活躍の場を広げ、TBS「リコカツ」、EX「ドクターX ~外科医・大門未知子~」、東海テレビ/フジテレビ系列 土曜ドラマ「顔だけ先生」などに出演。2022年2月23日にSACRA MUSICより、シングル「恋ノ行方」でメジャーデビュー。TVアニメ「その着せ替え人形は恋をする」エンディングテーマ(2022年1月より好評放送中)を担当。
あかせあかり OFFICIAL SITE
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