あのDOPING PANDAが帰って来た!
今年解散から10年ぶりに再結成を発表し、SNSを含めて多くのファンやリスナーをザワつかせた彼ら。そして、早くもセルフ・タイトルを冠したニューアルバム、その名もズバリな『Doping Panda』と付けられた作品がここに到着。
その中身はドーパン・ファンの期待に応えながら、新たなフェーズに進んだ魅惑のサウンドに仕上がっている。今回はYutaka Furukawa(Vo、Gu)に再結成から今作に辿り着くまでの経緯について、じっくりと語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 荒金良介
PHOTO BY 大橋祐希
■こんなに待ってくれた人がいるんだなと
──今年DOPING PANDA(以下、ドーパン)が10年ぶりに再結成を発表しました。個人的にもとてもうれしく、SNS上でも大きな反響がありましたよね。Furukawaさん自身はどういう風に受け取りました?
反響には驚きましたよ。もちろんそれなりにビックリしてくれるかなと思い、再結成したんですけどね。でも自分の中では予想以上でした。4月の東名阪Zeppツアーの先行販売も始まったのですが、こんなに待ってくれた人がいるんだなと。
──昔からのファンもそうですが、解散後の10年間にドーパンの存在を知った人も多いんじゃないかと。
SNSにもそういうコメントも多かったので、解散後に興味を持ってくれたファンも結構いるんだなと。それはこれから始めるにあたり、心強くはありますね。メンバー3人もただの懐メロで終わらないようにと考えてますからね。よく言われていたんですよ、時代が追いつかなかったみたいな。
──ドーパンは早すぎたと(笑)?
そう!冗談じゃないよと。もしそうであるならば、また始めるのでそれでもいいのかなと。
──まずは今回の再結成の経緯から教えてもらえますか?
遡ると、20年に話が出たんですよ。19年にフルカワユタカで『epoch』という4枚目の作品を出し、ツアーファイナルがO-WESTで、自分の中では納得する形でやれたんです。12年に解散して、13年にソロ活動を始めて、本当に山あり谷ありで…谷あり、大渓谷あり、谷ありで…ソロの難しさを漏れなく味わいましたからね。で、19年の『epoch』ツアーはひとつの到達点であり、形になるのに6、7年かかるんだなと。だから、19年の段階ではまったくドーパンの再結成は考えてなかったです。
──あっ、そうなんですか。
その後にバンドと弾き語りのミックスで47都道府県を回ろうと思ってましたからね。それでコロナ禍に入り、47都道府県の計画が頓挫したんです。で、今もやっているFanicon(*デジタルファンクラブ)を20年3月に始めて、そのおかげでコロナ禍の自分のルーティンができて、毎月新曲を書くことが血肉となり、それがドーパンの新曲を書くうえでのデモを作りのスキルに繋がっているんです。
──なるほど。
たぶんそのあと、20年夏にマネージャーに「ドーパンやるとか、どう思う?」と軽く話したことが最初です。同じ時期にドーパン時代にお世話になった方から「ドーパン、可能性あるかな?」とメールが来たので、それもきっかけになりました。
──Furukawaさんはそこで再結成を決めたんですか?
いや、僕ひとりで決められないので、Hayato(Beat/Dr)、タロティ(Taro Hojo/Ba)にも聞いてもらえますかという話になり、20年10月頃に3人の意思疎通が取れたという。
──Hayatoさん、タロティさんの反応はいかがでした?
Hayatoが前向きだったのは意外でした。お互いの波長が合うタイミングがあるんだなと。タロティに関しては「全然、弾けないよ」と言われたけど、二つ返事でしたね。
──それで再結成後はすぐに新作を出そうと?
そのときは全く考えてなかったです。
■10年前のドーパンと闘える音源になる気がしなくて
──えっ、そうなんですか。
作るイメージも沸かなくて。昔は僕がマッドサイエンティストみたいになり、今洋楽を超えるにはこういうアプローチしかないと言って、それにHayato、タロティが付いて来てくれたのがドーパンの制作だったんです。でも今からやるのであれば、そういうことじゃないだろうと。Hayatoはチャットモンチーのマネージャーとして学んだことがあるし、タロティはベースは趣味みたいな感じになり、10年現場から離れていてその温度差もありますからね。自分もソロをやって来たけど、またそのスイッチを入れられるかなと。とてもじゃないけど、10年前のドーパンと闘える音源になる気がしなくて。
──なるほど。
復活してやりたかったことのひとつが同世代のバンドと対バンしたかったんですよ。メジャーで活動していた当時は、同世代・同時期に活動していたバンドたちとほとんど対バンしなかったので、やってみたいなと。それと、この10年で知り合った仲間もいますからね。あと、the band apartとやっていた『mellow fellow』(共同イベント)もやりたいとか。
──いいですねぇ!
当時はあまり人と一緒にやってこなかったので。ただ、活動を続けてきた同世代のバンドと今改めて対バンするとなると、懐メロ・バンドではしんどいことになるよ、というアドバイスも受けまして。それならば僕、Hayato、タロティの10年を表現した新曲が必要じゃないかと。シングルでも1曲でもいいから、新曲を出したいなと。それが2021年の頭で、そこで「Imagine」ができたんですよ。まだソニーから出す話もなかった頃ですね。
──再結成して、同世代のバンドと対バンするならば、新曲は必須だろうと。
新曲がないのはダメだと思いましたからね。
──今作を聴いて、Furukawaさん、タロティさん、Hayatoさん、このメンバー3人が演奏したら、ドーパンの音になるんだなと改めて痛感しました。
それは本当にみんな言ってくれるんです。でもそれがいちばんうれしい言葉ですね。SNSのファンのコメントでも「ドーパンだ!」、「ドーパンのまま進化している」と言われることがいちばんうれしかったし、再結成した甲斐があったなと。今回の制作もイキイキしてましたからね。早かったですよ、止まらなかったです。
■思った以上にこのときを待っていたんだなと
──へぇー!
ソニーから音源が出せることになってエンジンがかかったし、作曲しているときは夢のようでした。これはドーパンの曲なんだな、マスタリングもテッド・ジェンセン(*ノラ・ジョーンズやグリーン・デイなどを手がけている)にやってもらえるから、手を抜けるわけないじゃん!って(笑)。もちろんソロの頃も手を抜いていたわけじゃないですけどね。思った以上にこのときを待っていたんだなと。自分の内側から溢れ出てきて、3、4曲並行して書いてました。
──それは凄いですね。今作を完成させて、自分ではどんな作品に仕上がったと感じています?
ドーパンの『Performation』(インディーズ時代の1stアルバム/2001年)から『YELLOW FUNK』(メジャー時代のラスト4thアルバム/2011年)まで、全部毛色が違う作品を出してきたけど、ドーパンだったじゃないですか。今作は今まで出してきたもののすべての要素が入ってます。「BS」には『Performation』の要素があったり、「Hello」には『decadence』(2009年)、「You don’t love me」には『WE IN MUSIC』(2004年)ぽさがあったり、すべてのアルバムの要素があるから、ドーパンなんですよね。それがセルフ・タイトルにも繋がっている感じはあるかな。
──やっとこれぞドーパンと言える作品ができたと?
いや、それも違うなあ(笑)。やり切った感じはないし、次のドーパンも見据えてますからね。再結成して、ラスト作『YELLOW FUNK』の続きでもないし、97年に結成して12年に解散した15年のでっかい塊の続編を作れたなと。結果そうなっただけだけど、絶対そういうものにしたかったんですよ。
──というのは?
後期ドーパンの4つ打ち、ダンス・ロックだけじゃないものを作りたかったはずだから。かといって、初期ドーパンのパンクに戻るのも違うし、15年間を網羅した作品にしたかったんだろうなと。
──解散して、10年の時を経たことが大きいんでしょうね。それで今作から「Imagine」をMV曲に選んだ理由は?
僕はずっと「Silhouette」だったんですよ。いちばんキャッチーだし、ニューソウルというか、シティ・ポップのちょっと先みたいで今っぽいかなと。逆に言えば、ドーパンぽくはないんです。しかもこの曲はファンクラブ用に書いたものが元ネタで…それとだいぶ形は変わったんですけどね。この曲は最後に出したデモで、それまでのデモだけだと、作品としてキャッチーさと最先端な感じが足りないと思い、そう言えばあの曲があったなと思い、それをドーパンに寄せたんですよ。それをMVに推していたけど、いざ一度話し合ったときに「Imagine」という意見が出て、メンバー2人も同じ意見だったんです。
──ああ、そうなんですね。
ドーパンのために10年ぶりに初めて書いた曲でしたからね。メンバーに推された形もすごくバンドらしいし、素晴らしい着地ができたなと。「Imagine」は『YELLOW FUNK』感もあれば、『decadence』の暗さもあるし、「MIRACLE」(2006年)、『DANDYSM』(2006年)みたいな明るさもあるから、メジャー時代のドーパンらしさがたくさん詰まっているなと。
──そして、「Kiss my surrender」は今作の中でもっともバンド感が強く出た楽曲ですね。
そうですね。BPM早めの曲を書こうと思って。これは僕の中で「GAME」なんですよ。タロティのスラップで始まる曲で、『Performation』の一個前のシングルに入っているんですけど。
──インディーズ時代の1stシングル「Dream is not over」(2000年)収録曲ですね。
そう!ドーパン楽曲の中で唯一あの曲だけタロティと共作なんですが、当時流行っていたSNAIL RAMPとかに彼が影響されてリフを持ってきた曲なんです。でも僕は、単純だからあまり好きじゃなかったんですよ(笑)。だけど、ライヴの人気曲としてずっと残ったんです。で、2022年版の「GAME」を書いてみようと。結局、似た感じの曲にはならなかったけど、僕が今「GAME」を書いたらどうなっただろう、という遊びです。タロティからもいい反応が来ましたからね。
──「Kiss my surrender」が今作に入っている意義は大きいと思います。
大きいですよ!それで2曲目に入れてますからね。日本語の歌詞の中に「beat addiction」に出てくる“溢れ出す欲望を 逆らわずためそうよ”と似たフレーズを入れてますからね。ふんだんに遊びを入れたつもりです。
──あと、「Can’t you hear the music?」は凝ったアレンジに引き込まれる曲調でいいフックになってますよね。
ドーパンの真骨頂と言えばアカデミックなロックなので、そういう曲を入れたくて。リズムやアレンジをヒネらせて…2000年代のBECK、FOALS、LCD Soundsystemとかがやっていたアプローチですね。単純な進行なんだけど、リズムの重ね方とか、コード進行的にもテンションコードで単純に聴こえないようにしていたから。
──ドーパン解散前は常に海外のトレンドを意識してましたが、今作ではレイドバックしつつも、自分たちらしさを打ち出そうと?
そうですね。今もポスト・ロックぽい音だったり、FOALSが出たての頃の感じをやっているイギリスの新人バンドもいるし、10年前だったら一周してまた新しいんじゃないかと。
──その辺もニュートラルになってますよね。個人的にはさきほども話に出た「Silhouette」がいちばん好きで、ギターのカッティングは「Transient happiness」(2002年)ぽさを感じました。これはもうドーパン必殺のダンス・ロックですね。
そこは狙ったところはありますね。リフは懐かしさを感じてもらえるかもしれないけど、アウトロのカラッと抜けるカッティングは今っぽさも出てますからね。
──かと思えば、「Wonderland」、「You don’t love me」のような肩の力が抜けた曲調も入っているところがいいなと。
「Wonderland」は初めて打ち込みじゃなく、自分でピアノを弾きました。うまくはないけど、らしさは出ているんじゃないかと。「You don’t love me」の鍵盤ソロも自分で弾いてますからね。昔は打ち込んだ方がしっくりきたんですけど、それは年齢や今のモードもあるのかなと。あまりカチッとしてないですもんね。そういう意味でも人間味が出ていると思います。今はグリッド音楽じゃないですか。そこに逆らいたいわけじゃなく、自然とこうなったんですよ。そういう緩さもありつつ、音のリッチさはちゃんと出ているかなと。
──早くも次作が楽しみですよ。では、改めてセルフタイトルにした理由を聞いてもいいですか?
ドーパンはメジャーに行ってから、『YELLOW FUNK』以外はアルバム名がすべてDで始まっているんですよ。それでDでいろいろ考えたんですけど、どれもしっくり来なくて。ああ、いちばんいいDがあったなと(笑)。
──結果的に今作はセルフタイトルがバッチリとハマりましたね。
本当にそう思います。
■みんなが聴きたい曲をやるべきツアーだと思ってます
──4月から5月にかけて東名阪Zeppツアーが始まります。どんなツアーにしようと思ってますか?
新譜もそうですが、僕らもやりたい曲がたくさんあるんです。ただ、知ったときには解散していたというファンもいるので、その気持ちには応えたいなと。だから、新譜中心というより、やるべき曲を全部やりたいなと。こないだリストアップしたんですけど、時間に限りもあるから、全然足りないんですけどね(笑)。でもみんなが聴きたい曲をやるべきツアーだと思ってます。それで新作のツアーではなく、再結成ツアーと銘打ちました。
リリース情報
2022.03.02 ON SALE
ALBUM『Doping Panda』
ライブ情報
『∞ THE REUNION TOUR』
4/23(土) 東京・Zepp Haneda
5/7(土) 大阪・Zepp Osaka Bayside
5/8(日) 愛知・Zepp Nagoya
5/22(日) 東京・Zepp Haneda
プロフィール
DOPING PANDA
ドーピングパンダ/1997年結成。2000年7月、single「dream is not over」でインディーズデビュー。以降3枚のアルバムをリリース。2005年4月、mini album「High Fidelity」でメジャーデビュー。以降4枚のアルバムをリリース。数々のロックフェスへの出演やヨーロッパツアーの開催など2000年代後半を代表するロックバンドとして活躍するが、2012年4月19日 TOKYO DOME CITY HALL でのライブをもって解散。2022年1月28日、解散発表から10年の時を経て、3月にフルアルバム「DOPING PANDA」のリリースと再結成を発表。同年4月からは、新作を引っ提げた東名阪Zeppワンマンツアー「∞ THE REUNION TOUR」を開催。
DOPING PANDA OFFICIAL SITE
https://dopingpanda.com/