■「今回こうしてご一緒させていただけて、めちゃくちゃうれしいですし、ハッピーな言葉しか出てこないです」(桐谷健太)
「海の声」の国民的大ヒットでも知られる人気俳優・桐谷健太。
現在公開中の主演映画『ミラクルシティコザ』の劇中で弾き語りしている「マーミーの歌」をベースに、沖縄ミュージックに造詣が深い宮沢和史(ex.THE BOOM)をサウンドプロデューサーに迎えて完成させた「遣らずの雨と、光」が配信リリースされた。
これを記念して、桐谷健太×宮沢和史の対談オフィシャルインタビューが実現。必然的かつ運命的な出会いだったとしか思えないエピソードの数々――。いかにして名曲「遣らずの雨と、光」は生まれたのか。
【桐谷健太×宮沢和史「遣らずの雨と、光」対談インタビュー】
――桐谷さんは「中学時代からずっと支えてもらった」と語るほど、宮沢さんの音楽を愛聴されていたそうですが、桐谷さんにとって宮沢さんはどんな存在だったんでしょうか?桐谷健太(以下、桐谷):中学の卒業式のあとに「からたち野道」をウォークマンで聴いて号泣しながら帰ったり、散歩しながら「釣りに行こう」を聴いて気持ち良い気分になったり、お風呂の中でもTHE BOOMの曲をよく聴いていましたし、高校でバンドを組んで、僕はドラムだったんですけど、最初にみんなで覚えて演奏した曲が「月さえも眠る夜」だったんですよ。それを演奏し終わったあとに感動して、みんなと抱き合った思い出もあって。それぐらい、本当に宮沢さんの音楽にはずっと支えられてきました。
宮沢和史(以下、宮沢):僕も尊敬する先輩方の音楽に憧れて、これは自慢でもあるんですけど、僕が好きになった先輩たちは今でもみんな格好良いんですよ。なので、今の桐谷さんの話を聞きながら、僕も先輩たちみたいに失速せずに格好良い音楽をやり続けなきゃなと、身が引き締まりました。そう思わせてくれる存在がいてくれる、これはうれしいことですよね。
桐谷:こちらこそ、今回こうしてご一緒させていただけてめちゃくちゃうれしいですし、ハッピーな言葉しか出てこないです。宮沢さんにお会いできてサウンドプロデュースしていただけた…こんなに幸せなことはないです。5歳のときに映画を観て「このスクリーンの中に入りたいな」と思った瞬間のような、うれしいとか、楽しいとか、そういう純粋な気持ちだけで新しい道が広がっていったあの感覚が、こうして宮沢さんとご一緒できたことでまた芽生えているんですよね。改めて「純粋に楽しむということだけに命懸けていきたいな」という想いが強まっています。
――宮沢さんは、桐谷さんに対してどんな印象を持たれていたんでしょう?
宮沢:「海の声」を聴いて「歌にもチャレンジするんだ」と思ったし、友達であるBEGINの島袋優さんも作曲で携わっていたので、すごく身近に感じたりもしていました。僕は南米にライブや作品づくりでよく行っていて、そのうち日系人の人たちと交流することが僕のライフワークになってきて。そこには沖縄から移民してきた人がたくさんいて、日系人のお祭り、催し物になると沖縄の人たちが多くを占めるんですが、「海の声」がヒットしたときに、本当に彼らがうれしそうで。要するに、世界中の日系人も含めたウチナーンチュが共有できる、例えばエイサーを踊るとかね、「この曲をみんなで踊れるんだ」という喜び。久しぶりに沖縄系のヒット曲が生まれたから、そのときの若い子たちのうれしそうな姿を間近で見て「本当によかったね!」と思ったことはいまだに憶えています。
――THE BOOM「島唄」の世界的ムーブメントと同様の現象が「海の声」でも起きていたんですね。
桐谷:めちゃくちゃありがたいことですよね。うれしいです。あと、僕の中で「海の声」でうれしかったことと言えば、宮沢さんがライブで「島唄」を歌うために三線を準備して「さぁ、歌おう」ってときに、ジョークで「海の声」を歌ってくれたんですね。そしたら、みんな「うわぁー!」と盛り上がってくれて、そこで宮沢さんが「違うでしょ」ってノリツッコミするんですけど(笑)、自分はそれに「俺が歌っている曲を!」とめちゃくちゃ感動してしまって! あれは本当にうれしかったですね。
――ここまでのおふたりの話を聞いていて、今回の「遣らずの雨と、光」での共演は必然的だったんだなと感じました。実際、どのような流れでご一緒することになったんでしょう?
桐谷:映画『ミラクルシティコザ』の劇中で、僕の演じるハルの恋人が人を殺してしまって、それで僕が血まみれになりながらエレキギターで弾き語る「マーミーの歌」が原曲になっているんですけど、そのシーンを観た映画のプロデューサーが「絶対に音源化したいです」と仰ってくれたんですよね。でも、歌詞もワンフレーズしか出来ていないモノだったし、その時点ではいまいちピンと来てなかったんです。そしたら「宮沢さんにサウンドプロデュースしていただけることになりました」「え?」みたいな。なので、僕からすると本当に導かれるようにここまで来れた感じなんですよね。気持ち良い船に乗っからせてもらった感覚というか。
――レコーディングにはどんなモードで臨まれたんですか?
桐谷:宮沢さんから「この歌は、男の強いんだけど、弱い。弱いんだけど、強いところが見えるといいよね」と仰っていただいたんですけど、それが自分の中ですごくピンと来たので、その想いだけを歌に滲ませていこうと思って。そしたらこの曲における歌の正解が見えた感覚になったんです。
宮沢:僕は今回、敢えて映画を観ないでやろうと決めていて。映画を観てしまうと、その世界観や俳優・桐谷健太のイメージに引きずられてしまうので、あくまでひとつの独立した音楽作品として制作に臨んだんです。もし映画を観てから取り組んでいたら、僕も紫(※映画『ミラクルシティコザ』のキーパーソンとなる、実在する沖縄のハードロックバンド)大好きだし、知り合いだし、もっとアメリカンロック寄りの曲になっていたと思うんですけど、その格好良さは映画の中で体感できるだろうし、桐谷さんの個性には日本やUKのロックに近い世界観のほうが良いかなと思って。ただ、歌うのは久しぶりと伺ったので、まず仮歌を歌ってもらったんですよ。
――「遣らずの雨と、光」は3年3ヵ月ぶりの新曲ですもんね。
宮沢:その仮歌の時点で「まだ本調子ではなさそうだけど、こうなったら上手くいくな」というこの歌の着地点が見えたんですよね。それから長い期間があったわけじゃないんですけど、あとで話を聞いたら、撮影の合間にも田んぼとかで発声練習していたみたいで、本番の歌入れでは見事に1回目から世界観が出来上がっていたから「ここまで仕上げてくれたのか」と。そのエネルギーと情熱とプロ根性には「すげぇな」と素直に思いました。で、僕の中ではわりと早い時点でオッケーを出したんですけど、そしたら桐谷さんのほうから「後半、もう少し温度を上げて歌ってみたい」と提案してくれて、それでやってみたらすごくハマって。そういうところも含めて見事だなと思いましたし、その結果、男らしさや男のセクシーさみたいなモノを感じさせてくれる、すごく良い歌になったなって。
――そんな「遣らずの雨と、光」で繋がったおふたりなんですが、この先でまたご一緒できる機会があったら、どんなことをやってみたいですか?
宮沢:「海の声」のイメージとはまた違う、クールでセクシーな音楽をちょっとソリッドなバンドでやっても格好良いと思うので、そこで一緒に歌ったりしてみたいです。今回のレコーディングに参加してくれたバンドメンバーは、本当にみんな幸せそうに演奏してくれたので、彼らを呼んでライブするのもアリだと思うし。あと、それとは真逆ですけど、沖縄のフェスで三線持って一緒に歌ったりしても楽しいだろうね。そのまま沖縄で一緒にうまいもん食ったりしたい(笑)。
桐谷:沖縄の居酒屋で呑んでいるあいだに歌い始めちゃったりとかしたいですね(笑)。それはめっちゃ楽しいし、幸せだろうなぁ。宮沢さんとはもう出会わせていただいちゃったので、また何かご一緒できる日がやってくると信じていますし、それを楽しみにしています!
TEXT BY 平賀哲雄
PHOTO BY Jumpei Yamada
リリース情報
2022.02.16 ON SALE
DIGITAL SINGLE「遣らずの雨と、光」
映画『ミラクルシティコザ』作品サイト
https://miraclecitykoza.com/
桐谷健太 OFFICIAL SITE
https://www.universal-music.co.jp/kiritani-kenta/