miwaが約5年ぶりとなるニューアルバム『Sparkle』をリリースした。本作には「リブート」(ドラマ「凪のお暇」主題歌)、「ティーンエイジドリーム」(アニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」オープニングテーマ)、「神無-KANNA-」(劇場版オリジナルアニメーション映画「神在月のこども」主題歌)、「DAITAN!」(ドラマ「妖怪シェアハウス」主題歌)などのタイアップ曲に多彩な新曲群を加えた全13曲を収録。そこには混沌とする時代を眩いばかりの“Sparkle=輝き”で包み込む希望のメッセージがたっぷりと注ぎ込まれている。今までにない新たな表情も感じさせてくれる本作の制作について、miwa本人にじっくりと話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY もりひでゆき
■一緒に過ごせる時間をより大切に
──昨年12月に大阪、横浜、東京で6公演開催された「miwa Billboard Live Tour 2021 “miwa CLASSIC”」はいかがでしたか?
念願のBillboard Liveだったので、すごく楽しかったです。初めてチェロとバイオリンを入れた編成で、生音の良さをあらためて感じてもらえるライブになったんじゃないかなと思います。弦の良さをより感じてもらえるように、「月食~winter moon~」「オトシモノ」「片想い」といったバラードを選んだりもしましたね。食事をしながら、お酒を飲みながらゆっくり座って楽しんでもらうというスタイルも私にとっては初めてだったので、実現できてよかったです。ライブ後、「お酒を飲みながら自分が中学時代に出会った曲を聴いていると、大人になったなぁって感慨深い気持ちになりました」っていうファンの方からの感想をいただけたりもして。そういう意味では、みんなと一緒に月日を重ねてきたんだなって、あらためて強く実感できたライブでもありました。
──有観客でのワンマンライブは久しぶりでしたよね。
そうですね。今まではライブができること、お客さんの前で生演奏をお届けできることが当たり前だと思っていましたけど、コロナ禍を通してそれが当たり前ではない状況になってしまったわけで。そうなるとひとつひとつのライブをより大切なものとして感じられるようにもなったし、またいつ会えるかわからない状況の中、一緒に過ごせる時間をより大切にしようって思う気持ちが強くなりましたよね。一曲一曲を今まで以上に大事に届けるようになったと思います。
■一人称ではなく、同じ時代を生きる“僕ら”“私たち”
──そんなBillboard Live Tourのファイナル公演で発表されていたように、今回、約5年ぶりとなるニューアルバム『Sparkle』がリリースされました。その仕上がりに関してはどんな感想を持っていますか?
かなり幅広くいろんなジャンルの曲が入ったいいアルバムになったと思いますね。リード曲となっている「Sparkle」が象徴的ですけど、今回の曲たちはどれも一人称ではなく、同じ時代を生きる“僕ら”“私たち”のことを歌ったものになっていると思うんですよ。世の中的にはなかなか人に会うことができなくて距離が生まれてしまっている状況だと思いますが、だからこそ一緒に生きていることを感じられるような、そして一人ひとりが自分らしく輝けるような、そんなアルバムになっているような気がします。聴いてくれる人にとって、何か新しい一歩を踏み出す力になってくれたら私としてはすごくうれしいですね。
──今おっしゃったような全体に通底する空気感、テーマのようなものは、約2年にわたるコロナ禍が影響を及ぼしたところもあったのでしょうか?
いえ。実は今回のアルバムは2年前にはもうほぼほぼ完成していたんですよ。
──え、そうだったんですか?!
完成が見えたタイミングでコロナ禍に入ってしまったので、ライブやプロモーションが思うようにできないだろうということでリリースのタイミングを改めて見定めた感じだったんですよね。その間にも新曲のリリースは続いていたので、そういった曲たちを加えた状態で今回ようやくリリースすることになった感じなんですけど、収録曲の大多数は2年以上前に書いた曲なんです。ただ、コロナ禍に直接的に影響を受けた曲でなかったとしても、今のタイミングでリリースされることでまた違った意味を持って届くような気がしているところは私の中にもあったりはするんですよね。
──miwaさんは常に普遍的な曲を書かれているので、どんな時代にも寄り添うものになるのは必然だと思いますけど、コロナ禍だからこその意味を感じさせる曲が多いですもんね。
そうですね。曲を書いていたときには想像もしなかったような世界になっているので、その中でまた違った意味合いを持ってメッセージが響いたらいいなと思ってます。
──デビュー10周年目前の2019年にリリースされたシングル「リブート」のときに、「ここから第2章が始まる気持ち」とおっしゃっていました。その気持ちは今回のアルバムに注がれた感じですか?
2018年にベストアルバム(『miwa THE BEST』)をリリースしたことで、自分の中ではひと区切りできたイメージがあったんですよ。なので、また新しい気持ちでいろんなクリエイターの人たちと一緒に新鮮な気持ちで楽曲を作っていたところはあって。それは今回のアルバムにしっかり反映していると思います。とは言え、“新しいmiwaを見せなくちゃ!”みたいな気持ちは特になく、純粋に一つひとつのクリエイションを楽しむことを大事にしていた感じですけどね。
──今回も様々なクリエイターとのコライトで生まれた曲がたくさん収録されていますね。
はい。これまでお世話になっていた方はもちろん、新しい出会いも結構多くて。新しい刺激を受けながら曲作りをすることが純粋に楽しかったし、それによって面白い曲がたくさん生まれたなって思います。一緒にコライトする人にとって制作の進め方が全然違ったりもするので、それも楽しみながらやっていますね。
──タイトル曲になっている「Sparkle」はher0ismさんとコライトされています。これはどんなイメージで作られた曲なんですか?
この曲は2017年くらいに作ったんですけど、そのときは特にアルバムを意識することもなく、単純に“Sparkle”をテーマに書いてみたいなと思ったんですよね。この曲を作る前にher0ismさんと一緒に作ったのが「We are the light」で、そこでは“誰もが誰かの光になり得る”というテーマで歌詞を書いたんです。今回の「Sparkle」では“自分の内側から、自分らしく輝く”というテーマにしたかったので、そのタイトルとテーマをher0ismさんにお伝えしたうえで、一緒に作っていった感じでした。
■アルバムを意識し始めたときに、“Sparkle”をタイトルに
──それが結果的にアルバムのタイトル曲になったと。
はい。アルバムを意識し始めたときに、“Sparkle”をタイトルにしたいなって思ったんです。なので、それを最初に決めたうえで、収録する曲たちを選んでいったところもありました。アルバムのアートワークなんかに関しても、この「Sparkle」という曲から膨らませていったものですし。
──「Sparkle」は2017年にできたことを考えると、今回はかなり生まれた時期に幅のある楽曲がまとまったアルバムだと言えそうですね。
そうですね。4年…いや、もうちょっと幅があるかも。「君の声が」はかなり前に作ったデモを掘り起こしたものですし。これまでも様々な時期の曲を一枚のアルバムとしてまとめることはあったので、そこは特に珍しいことではないというか。ただ、曲っていうのは作っている時代を切り取っている部分もあったりはするので、そういう部分では“今の時代に合っているんだろうか?”みたいな気持ちは若干ありますけどね(笑)。
──ご自身の中での嗜好やモードの変化もありそうですしね。
そうですね。サウンドに関しては時代観を感じるところはあるかもしれないですね。この曲を作ったときはこういう曲が好きだったんだな、みたいな(笑)。でも、メッセージとしては変わらずに響く部分はあるし、さっきもお話したように今だからこそ違った意味が生まれたりすることもあるので、あまり気にはしなかったですけどね。今リリースするために改めて整えたりしたところもなかったです。
──「Sparkle」で幕を開けるアルバムは冒頭の3曲がすごく気持ちいいですよね。サウンドにも、歌詞に込められたメッセージにも、聴き手を奮い立たせてくれるものがある。
「Sparkle」を1曲目にすることをまず決めたうえで、全体の曲順を考えていきました。オープニングはいいグルーブが続いていく流れを結構意識したんですよ。「Sparkle」の後には、自分らしく生きることの美しさを歌った「CLEAR」、自分らしさを持って突き進む意志を歌った「リブート」へと流れていく。それぞれ曲調は違いますけど、メッセージとしては強い意志を持った3曲が頭に並んでいる感じがしますね。
──2曲目の「CLEAR」はいつ頃にできた曲なんですか?
いつ頃だったかなあ。2017年とか18年くらいだったと思います。NAOKI-Tさんと大知(正紘)くんと作っていく中で、最近は面と向かうよりも文字の世界で生きることのほうが多い時代だよねっていう話になったんですよね。
──メールやSNS上でコミュニケーションをとることが多いですもんね。
そうそう。だから文字、言葉というものを大事にしたい気持ちを、自分自身にフォーカスする意味合いも込めて書いていったところがあったと思います。曲として晴れ渡った空のようなイメージを持っていたので、タイトルは「CLEAR」にしましたね。
■スマホの中で起きていることに目を向けた恋愛の曲
──4曲目の「UUU」もNAOKI-Tさんと大知さんとのコライトによる曲ですね。
この曲は10代とか20代前半の若い登場人物をイメージして作っていきました。そういう世代はスマホの中やSNSで起きていることがリアルな現実だったりするじゃないですか。その中で起きた問題はその中で解決する、みたいな。なので、スマホの中で起きていることに目を向けた恋愛の曲に仕上げていったんですよね。
──曲の構成やメロディの譜割りに遊び心が感じられますね。
そうですね。ヒップホップとかK-POPを意識したようなサウンド、メロディを、遊び心を交えてやってみた感じで。歌詞に関しても韻を踏んで言葉ノリを大事にしたりとか。そういったテイストはNAOKI-Tさんが得意なので、いろいろアドバイスをもらいながら挑戦させてもらいました。Aメロはちょっとラップっぽい雰囲気があって、そこは結構難しかったですけどね(笑)。
──7曲目にはほっこりした雰囲気の「Holiday」が。これは日本テレビ系「ぶらり途中下車の旅」エンディングテーマとして書き下ろしされた曲ですね。
以前、「ぶらり途中下車の旅」に「タイトル」(シングル「リブート」のカップリング曲)という曲を書き下ろしたことがあって。そのときは人生を旅に例えたメッセージ性の強い曲だったので、2度目となる今回は純粋に旅することを歌いたいなって思ったんです。ほんとにぶらりと旅に出かけるような楽しい曲になるように、アコギで作っていきました。
──「タイトル」同様、山口隆志さんがアレンジを手掛けています。
ちょっとカントリーっぽい要素を感じるような、アコギの良さを生かしたアレンジですよね。特にリクエストをしたわけではなかったんですけど、私のデモから雰囲気を感じ取っていただけて、すごく軽やかで楽しいアレンジになったのがうれしかったです。この曲はコーラスワークもけっこう効いてると思うんですよ。普段はわりと自分でコーラスをつけるんですけど、この曲は山口さんがラインを決めてくれて。そこにいつもとは違った雰囲気が出ていたのでおもしろかったです。
──8曲目は4つ打ちのアッパーチューン「Aye」。ラブソングとして受け取りましたが。
たしかにラブソングにはなっているんですけど、深いラブソングというよりは、夏フェスなんかで盛り上がるようなライブ映えする曲というイメージのほうが強いかもしれないですね。とにかくみんなで盛り上がる曲にしたいなって。はじめてスパニッシュに挑戦してみたので、それにふさわしい若干の色気を出すために恋愛の要素を入れた感じでした。
■今まで通りのライブができる日への希望にもなれば
──この曲も含め、ライブが楽しみになる曲も今回は多いですよね。
そうですね。「Sparkle」なんかも、“僕ら”っていう人称を使っているので、みんなで一緒にシンガロングするようなイメージを持ちながら作っていったところもあるので。コロナ前に書いた曲が多いですけど、こういったライブ映えするであろう曲を聴いてもらうことで、今まで通りのライブができる日への希望にもなればいいなと思います。
──12曲目「君の声が」は、ものすごくあたたかな印象を持つラブソングです。
この曲を作った当時、エド・シーランが大好きだったので、エレキギターのラブソングを作りたいなと思ってNAOKI-Tさんとコライトしていったんですよね。自分のレパートリーを振り返ってみても、アコギのラブソングはあったけど、エレキのラブソングはなかったなと思って。歌詞に関しては、“出会いの奇跡”や“何度出会っても恋をする”といったちょっとロマンチックな世界を表現することを意識しました。
──この曲では非常に情感に満ちたボーカルが響いていますが、アルバムとしては楽曲のテイストに合わせた多彩な歌声を味わうことができます。今作を通して、ご自身のボーカルに関してはどんな印象を持っていますか?
最近はロックな曲が増えたので、そういったサウンド感の中でのボーカルスタイルがひとつ確立した実感はありますね。デビュー当時はソフトな歌い方を習得することを意識して、なるべく息を多めにした歌を心掛けていたんですよ。そこから考えると、今は真逆とも言えるアプローチを突き詰めている感じかもしれないです。
──「Storyteller」のボーカルなんかはめちゃくちゃロックでかっこいいですもんね。
ありがとうございます。あの曲は新しく買ったマイクを試したくて、レコーディングはマイマイク持参で臨んだんですよ。マイクによって歌の聴こえ方が結構大きく変わったりもするので、それが楽しくていろいろ試すことは多いですね。
■当初の予定から2年が経ったことで、新たな意味が生まれた
──アルバムのラストには「Who I Am」のAlbum versionが収録されています。いいエンディングですね。
当初はアルバムの1曲目をこの「Who I Am」にしようと思っていて。ただ、リリース時期が後ろ倒しになったタイミングであらためて曲順を考えたときに、1曲目を「Sparkle」にするのであれば、最後の曲は「君の声が」がいいんじゃないかなという気持ちになって。じゃあ「Who I Am」をどうしようかと思ったんですけど、これを最後に置けば、いい流れで1曲目の「Sparkle」に戻れるような気がしたんですよね。メッセージ的にもいい循環が生まれるなというか。そこにもまた、当初の予定から2年が経ったことで、新たな意味が生まれたような気がします。
──オリジナルバージョンとはボーカルテイクが少し変わっているところがありますね。
今回のバージョンのイントロサビの英語の部分は、実はLAのher0ismさんのスタジオで歌ったデモのテイクなんですよ。曲を作ったときならではの特別な感情がのっているボーカルだと思ったので、今回改めてそれを使うことにしました。レコーディングのときに出る歌の良さももちろんあるんですけど、曲が生まれた瞬間に自分から出てきた声には、その瞬間ならではの良さがあるんだなってあらためて感じましたね。
──本作のリリース日からは大阪、東京、愛知を巡るツアー『miwa concert tour 2022“Sparkle”』もスタートします。
久しぶりにバンドでのライブになるのですごく楽しみです。今回はロックなナンバーからみんなで盛り上がれるナンバー、じっくり聴いてもらう曲まで、いろんなバリエーションを見せられるセットリストになると思います。しっかり演出も盛り込もうと思っているので、期待していてほしいですね。お客さんはまだまだ声は出せないし、いろんな制約のある中でのライブではありますけど、このご時世にライブができることへの感謝の気持ちを持ちながら、最高の一体感を作り上げようと思います!
リリース情報
2022.02.23 ON SALE
ALBUM『Sparkle』
ライブ情報
miwa concert tour 2022 “Sparkle”
3/19(土) 東京・TOKYO DOME CITY HALL
3/20(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
プロフィール
miwa
ミワ/1990年6月15日神奈川県葉山生まれ東京育ち 2010年大学在学中にデビュー。
翌年発表した1st アルバム「guitarissimo」でアルバムチャート1位を獲得した。 2012年には「ヒカリヘ」が大ヒット、大学の卒業式と同時期に初の日本武道館公演を実施し、翌年にはNHK紅白歌合戦に初出場を果たす。 武道館や横浜アリーナでアコギ一本の弾き語りライブを成功させたり、 日本最大規模の合唱コンクール「NHK全国学校音楽コンクール課題曲」(中学校の部) の作詞曲を担当するなど活動の幅を広げつつ、アーティストとして確固たる地位を築き上げている。
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