TEXT BY まいしろ
「なれるのは一握り」と言われるアーティストの世界。
だが、実際の人気ランキングには必ずといっていいほど「話題の新人アーティスト」が入っているし、最近は人気が再燃したベテランアーティストが急にチャートインすることも珍しくない。
実は思っているより「ブレイク」はできるのではないか。
そんな希望を胸に、「1年でどれくらいのアーティストがブレイクするのか」を調べてみた。
【調査方法】
・Billboard Japan Hot 100 Year End 2011年-2021年のデータを使用。
・各年にランクインしたアーティストのうち「過去3年間に一度もチャートインしたことがないニューフェイスのアーティスト」のみをカウント。
・改名したアーティストは同一としてカウント。
・同一のアーティストが別名義で活動している場合は別のアーティストとしてカウント。
■年により“ブレイクしたアーティスト数”は結構違う
ひと言に“ブレイク”と言ってもいろいろあるが、今回はBillboardが発表している年間ヒットチャート『Billboard Japan Hot 100 Year End』にランクインしたかどうかを判断基準にブレイクを数値化していこうと思う。
では、10年分のチャートデータをもとに、年間ランキングに「過去3年間に一度もチャートインしたことがないニューフェイスのアーティスト」がどれくらいいるのかを調べてみる。
ブレイク・再ブレイクしたニューフェイスのアーティストは、毎年だいたい15~30組ほど。
どう感じるかは人によるが、数字上は「平均して毎月1~2組が年間チャートに入るぐらいブレイクしている」と考えると、意外と多いと言えそうだ。
また、音楽が好きな人ならなんとなく「今年は新人が多かったな」「ここのところ新人を見かけないな」という感覚があると思うが、実際ブレイクしたアーティストの数は年によって2倍ほどの違いがある。
例えば、あいみょんやOfficial髭男dismらが注目を集めた2018年が15組だったのに対し、YOASOBIや瑛人が人気となった2020年は25組と、ブレイクの数に開きがある。
どういう理屈でニューフェイスが増えたり減ったりしているのかははっきりしないが、「3年に一度ぐらいの間隔でニューフェイスが増える」という傾向がありそうだ。
■2021年にブレイクしたのは?
では、具体的に2021年にあらたに『Billboard Japan Hot 100 Year End』にランクインし、ブレイクしたのはどのアーティストだったのか。一覧表で見てみよう。
LiSA×Uruのようにすでに人気のあるアーティストのコラボレーション企画を始め、記録的なロングヒット曲「うっせぇわ」を送り出したAdoや映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソングとして注目を集めたAwesome City Club「勿忘」、TikTokをきっかけに広まっていった川崎鷹也「魔法の絨毯」、昨年デビューでありながら早くも年間ランキングに食い込んだINI「Rocketeer」など、全体的には「たしかにブレイクしたな」と思わされるアーティストが並んでいる。
また、いろいろな見方ができるが、2016年以降チャートを賑わせてきたK-POP発のブレイクアーティストが少なかったこと、同じく例年チャートを賑わせるジャニーズや坂道系の新人アイドルグループが少なかったこと、逆にシンガーソングライターのブレイクが多かったことが、2021年の傾向だったと言えそうである。
毎年、チャートを彩るブレイクアーティスト。今年もどんな音楽が聴けるのか、楽しみである。