■バンドセット、弾き語り、iPad+ハンドマイク…。多様なスタイルでシンガーソングライター・崎山蒼志の魅力を披露!
2月12日、シンガーソングライターの崎山蒼志が東名阪バンドツアー『TOUR 2022「Face To Time Case」』の最終公演を東京・渋谷のSpotify O-EASTで開催した。
2月2日にメジャー2ndアルバム『Face To Time Case』をリリースした崎山蒼志。
「逆行」(Amazon Primeドラマ『賭ケグルイ双』主題歌)、「嘘じゃない」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第5期2クール目エンディングテーマ)、リーガルリリーとの共作曲「過剰/異常 with リーガルリリー」などを含む本作は、音楽ファンの間で高い評価を獲得。自身初となるバンドツアーでも崎山は、独創性とポピュラリティを共存させた素晴らしいステージを見せてくれた。
ライブの軸を担っていたのはもちろん、アルバム『Face To Time Case』の収録曲だ。まずは鋭利なガットギターとノスタルジックな歌が共鳴する「船を漕ぐ」、オルタナティブロックの流れを汲む「過剰/異常」を披露。圧倒的なオリジナリティに貫かれたボーカルによって、観客の心をグッと引き寄せる。宗本康兵(Key)、GOTO(Dr)、有島コレスケ(Ba)との緊張感に満ちたアンサンブルも素晴らしい。
さらに心地よい高揚感をたたえたアッパーチューン「Undulation」、崎山が中学生のときに原曲を作った「Samidare」と1stアルバム『find fuse in youth』の楽曲を演奏。最初のMCで会場に足を運んでくれた観客に感謝を伝えたあと、ライブは早くも最初のピークへと向かう。
水野良樹(いきものがかり)との共作による「風来」では、ドラマティックな旋律、「我が儘な君の風でこの溜息を攫ってよ」というフレーズを高らかに響かせる。そして「幽けき」では、洗練されたコード進行と浮遊感のある旋律によって幻想的な世界を生み出す。この2曲の演奏は、アルバム『Face To Time Case』の充実ぶりを改めて証明していたと思う。
このあとは、崎山の多彩な音楽性を体感できるシーンが続いた。
まずはドラマーのGOTOとともに「Pale Pink」「水栓」。先鋭的なトラックと生ドラムによる刺激的なビートを浴びながら、崎山はハンドマイクで自由なパフォーマンスを繰り広げた。そして“iPad+ハンドマイク”で演奏された「Water fall in me」からはひとりのステージへ。「逆行」、「懐かしいというか、昔やっていた曲です」という「並行する夜を」、さらに「A Song」を崎山の原点ともいえる弾き語りで歌い上げた。
再びバンドメンバーを呼び込み、ライブはクライマックスへ。大らかなボーカルが印象的だった「find fuse in youth」、未来へのポジティブな意志を描いた「嘘じゃない」によって豊かな感動を生み出す。「もう終盤です。リラックスと熱意を持ってやります」というMCのあとは、「通り雨、うつつのナラカ」「花火」「Helix」を続け、会場のテンションをさらに引き上げてみせた。
『Face To Time Case』に込めた“土地が持つ記憶と向き合う”という意味をオーディエンスに告げ、本編ラストの「タイムケース」へ。意外性に満ちたコード展開、独浮遊感のあるメロディ、深いメッセージ性が融合したこの曲には、シンガーソングライター・崎山蒼志の魅力が凝縮されていた。
鳴り止まない手拍子に導かれ、再びステージに登場した崎山。改めて感謝の言葉を口にしたあと、シークレットゲストの石崎ひゅーいを呼び込むと、フロアからは大きな拍手が巻き起こった。まずはふたりで共作した「告白」。思春期の始まりのピュアな心情を描いた歌を崎山、石崎が声を合わせて描き出す、超レアなシーンが実現した。さらに石崎のオリジナル曲「ひまわり畑の夜」も。小学生の頃から石崎のファンだったという崎山にとって、これ以上ないプレゼントだったと言っていいだろう。
最後はバンドメンバーとともに「潜水」を爆音で演奏。強烈なテンションに貫かれたサウンドが炸裂し、ツアーのラストを締め括った。
アルバム『Face To Time Case』を中心に、アーティストとしての驚くべき進化を体現してみせた崎山蒼志。この先、彼の音楽はどこまで広がっていくのかーー。今後への期待がさらに膨らむ圧巻のライブだった。
TEXT BY 森朋之
PHOTO BY KEIKO TANABE
リリース情報
2022.02.02 ON SALE
ALBUM『Face To Time Case』
崎山蒼志 OFFICIAL SITE
https://sakiyamasoushi.com/