■「Zepp Tokyo終わらなきゃいいのに、時間が巻き戻ったらいいのに、タイムマシンでもあったらいいのに」(のん)
のんが、12月25日にZepp Tokyoにて有観客ライブを開催。2時間超にわたって熱すぎるパフォーマンスを披露し、満員に膨れ上がった客席を圧倒し続けた。
のんは、新型ウイルス感染症が広がり始めた昨年2月、自身が主催する音楽フェス『NON KAIWA FES vol.2』を断腸の思いで無観客形式での開催を決断。同年5月からはギタリストのひぐちけいとともに、無観客配信ライブ『のんおうちで観るライブ』をスタート。いつか、お客さんの前でライブ活動再開が実現するのを待ちながら、これまでに13回もの無観客配信ライブを行ってきた。
そんななか、感染症の状況がようやく緩和されたこの時期、のんに僥倖が届く。2022年1月1日に閉館するZepp Tokyoのスケジュールに空きが出たのだ。Zepp Tokyoは、のんが音楽を始めた頃から目標にしてきた会場。偶然とはいえ、その夢がついに実現することになった。かくして開催に至ったのんの最初で最後のZepp Tokyoワンマンライブ。メンバーは盟友・ひぐちけいに加え、今年5月の『おうちで観るライブ』以来、のんのサポートには欠かせなくなったベースのなかむらしょーこ、ドラムのナガシマタカトが参加。盤石の体制で臨んだ初のZepp Tokyoでのステージがいよいよ始まる。
開演時間になると、会場にはズシンズシンと地響きが。ステージに貼られた煙幕に、シャドーで浮かび上がったギターを持った恐竜(これが“のんザウルス”か?)が足を踏み鳴らす。続いて、爆音のディストーションギターがかき鳴らされ、バンドが演奏を始める。煙幕が鮮やかに降ろされると、ステージにはメンバー4人がそれぞれのポジションで構える。のんの真っ赤なテレキャスターがイントロを爪弾くと、1曲目がスタート。ゾクゾクするほど、かっこいいオープニングだ。
この日ののんの衣装は、左右の袖がタータンチェックとストライプ、胸元には大きな白いリボンに、フラワープリントのパンツ。そして背中には大きな恐竜の尻尾! パンキッシュでアバンギャルドながらキュート。配信のコメント欄にも「かわいい!」と称賛の声が並ぶ。客席をじっと見据えながら真摯な姿勢でマイクに向かうのんの姿は、実に凛々しい。ひさしぶりの有観客ライブということもあって、いくぶんか緊張しているように見える。
まずは4曲を立て続けに演奏し、ここでのんは衣装替え。今度は右に黄色、左に赤の大きなリボンが付いたグリーンチェックのジャケットを羽織って登場。この日の観客には入場時、のんからのクリスマスプレゼントとしてミニタンバリンが配られた。声を出せない代わりに、タンバリンを鳴らしてほしいというのんからの気持ちだ。観客と共にタンバリンの叩き方の練習を経て、次の「僕は君の太陽」で、のんはハンドマイクに持ち替え、花道まで出てきてタンバリンアクションを実践し、客席と一体感を作っていく。
「ゆっくり飛んでけ」は近田春夫のアルバムにのんが書き下ろした曲で、セルフカバーはこの日が初披露。身体を大きく揺らしながら客席を煽る。この頃になると、オーディエンスとの呼吸や間合いも取れてきて、のんの表情もリラックスしてくる。「ノンノン・ソング」は、カジヒデキがのんをテーマに書いた楽曲。カジヒデキのアルバム『GOTH ROMANCE』(2019年発表)に収録され、のんはデュエットでも参加した曲だが、ライブで披露するのはこの日が初めて。前半はアップチューンのロックテイスト曲が並んだが、こちらはキュートでポップなナンバーだ。
ここからはカバーコーナーとなる。「プン・プン・プン(オコリンボ リンボ)」「I LIKE YOU」はのんが敬愛する忌野清志郎のRCサクセション。THE BLUE HEARTSの「キスしてほしい」は、昨年公開された主演映画『私をくいとめて』とコラボしたマルコメ恋愛発酵学会CM曲。原曲と違ったスローテンポのアレンジでしっとりと歌われ、KIRINJIの「エイリアンズ」もかつてCMでのんが歌ったバージョンでの披露。透き通るような声を場内に響かせ、オーディエンスもじっと聴き入る。照明も幻想的な風景を作り出す。
まもなく閉館するZepp Tokyoでライブができたことを、のんは「奇跡が起きた!」と、改めてその喜びを噛みしめる。ここでのんは冒頭に登場した恐竜の尻尾を背中に装着。「Zepp Tokyoで尻尾を付けるのも今日で最後」と感無量気味に話し、「Zepp Tokyo終わらなきゃいいのに、時間が巻き戻ったらいいのに、タイムマシンでもあったらいいのに」と「タイムマシンにおねがい」へ鮮やかに繋げる。同曲は2017年に発表したデビューカセットに収められた楽曲で、これまで数え切れないほど演奏してきただけに、実に堂々とした歌いっぷりで客席を圧倒。「こっちを見てる」は自身が主催する『NON KAIWA FES vol.2』が感染症の拡大を受けて無観客開催を余儀なくされた際、のんが怒りを込めた書いた楽曲。あれから1年10ヵ月。ようやくオーディエンスを入れた状態でライブが開催されたこの日に、この曲を歌えることに、特別な思いがあったことだろう。
続いて、スクリーンにはのんが監督・主演を務め、来春2月25日に劇場公開される映画『Ribbon』のトレーラー映像が上映される。この映画は、劇伴をひぐちけいが担当。ベースのなかむらしょーこ、ドラムのナガシマタカトもサントラに参加した。主題歌はサンボマスターが本映画のために書き下ろした「ボクだけのもの」。本編最後はこの曲を、このバンドでカバー。もちろん初披露だ。女性ボーカルでコーラスも入ると、サンボマスター版とは違ったパワーポップ感が増す。エンディングの「La La La…」では場内が総立ちとなり、コーラスに合わせて心の中で歌う。歌い切ったあとの、のんの“ドヤ顔”がかわいい。
いつものコンサートだと、ここでアンコールを求めて大きな声が場内に響きわたるが、今日のライブは声出し禁止。ここで観客は思わぬ行動に出る。入場時に、のんからのクリスマスプレゼントと配られたタンバリンを「ア・ン・コー・ル」のリズムに合わせて叩き始めた。これはたちまち客席中に伝播。賑やかなタンバリンでのコールとなった会場に、のんとひぐちけいのふたりがニコニコしながら登場。そして花道ステージの最前方まで進み、ふたりでオリジナルの「クリスマスソング」を演奏。続いて、バンドメンバーふたりが加わり、ラストはのんのライブで、ここぞ! というタイミングで演奏される鉄板メロコアナンバー「わたしは部屋充」を声の限りに歌い、広いステージを右に左に、そして花道にと動き回り、オーディエンスの熱気に応えていく。そして「良いお年を! じゃあね!」と客席に別れを告げてステージを降り、全21曲、120分に及んだ有観客ライブは終了した。
この日のライブの模様は、2022年1月2日23時59分まで見逃し視聴が可能なので、ぜひチェックしてみよう。
■2021年12月25日 Zepp Tokyo『のんザウルス in Zepp Tokyo 1st Last LIVE』セットリスト
01.スーパーヒーローになりたい
02.やまないガール
03.正直者はゆく
04.さぁいこう
05.僕は君の太陽
06.むしゃくしゃ
07.ゆっくり飛んでけ
08.あることないこと
09.涙の味、苦い味
10.へーんなのっ
11.ノンノン・ソング
12.プン・プン・プン(オコリンボ リンボ)
13.I LIKE YOU
14.キスしてほしい
15.エイリアンズ
16.タイムマシンにおねがい
17.ナマイキにスカート
18.こっちを見てる
19.ボクだけのもの
< ENCORE >
20.クリスマスソング
21.わたしは部屋充
PHOTO BY 南賢太郎(FOCUS STUDIO)
『のんザウルス in Zepp Tokyo 1st Last LIVE』見逃し配信 チケット購入はこちら
※見逃し視聴期間:2022年1月2日(日)23:59まで
※チケット販売期間:2021年12月30日(木)23:59まで
https://speedylive-non.zaiko.io/_item/345470
のん OFFICIAL SITE
https://nondesu.jp