TEXT BY 柚月裕実
■瞬きするのも惜しいくらい
雨あがりの夜と思しきタイミングで集結した6人の男たち。その視線の先に何があるのか───。
2022年1月5日リリースのSixTONES 2ndアルバム『CITY』に収録の「Rosy」が、トム・ホランド主演映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(1月7日公開)日本語吹替版の主題歌に起用された。12月10日にはSixTONESのYouTubeチャンネルで「Rosy [YouTube ver.]」が公開され、現在までに動画再生数310万回(12月20日現在)を突破している。
MVの始まりは意外にも無音。前後から集まり一列に並んだ6人。松村北斗が脚をピタリと揃えたところで、疾走感あるリフと共にドライブシーンへとスイッチ。レザーグローブでハンドルを握るのは田中樹。夜風に吹かれ、気持ちよさそうに前髪を上げる森本慎太郎。両手を挙げ、わずかに天を仰いだジェシー。後続車のライトを背に、軽くリズムをとるように首を揺らすメガネ姿の京本大我。ドアに左腕を乗せ、ハンドルを握りながら眉間にしわを寄せる高地優吾、後方からの強い光に照らされた松村北斗は右前方をみつめる。メンバーを映し、再び松村に戻ると少し表情が和らいでいた。わずか14秒、展開が読めなさすぎて、瞬きするのも惜しいくらい。ここから円網に引っかかったように離れられなくなっていく。
■日本語吹替版の主題歌として堂々たる存在感を放つ
歌い出しはSixTONESの6人。激しさと疾走感溢れるロックサウンドにのせて、これでもかと詰め込まれた言葉を畳みかけるように歌う。イントロからスピード感ある展開、サクサクと刻まれる映像には爽快感すら覚える。
Aメロの“毒にまみれ”のように『スパイダーマン』のエッセンスがふんだんに盛り込まれ、ところどころに差し込まれた韻の心地よさ、“あんたがったどこさ”に童歌を思わせる…タイトル「Rosy」とは対照的にほぼ日本語で構成された歌詞。日本語吹替版の主題歌として堂々たる存在感を放つ。
映画の劇中でキーとなるものといえばコスチュームもそのひとつ。MVでは黒を基調としたスーツに、場面によってはグローブを合わせる。全体的にタイトめなシルエットで、ストライプや漆黒のジャケット、レザーの艶感からは、力強さと色気が漂う。ひときわ目を引くのが京本の片襟の白。インナーのシャツは黒地でシャープな白い格子が蜘蛛の糸を彷彿とさせる。
■メンバーの歌声や歌唱シーンで“6つの音”を印象づける
あおり気味なアングルとスピード感あるカメラワークによってオーラを感じ、横顔はどこかミステリアス。ユニゾン、ペアでのユニゾン、ソロ…メンバーの歌声や歌唱シーンをじっくりと捉えることで“6つの音”を印象づける。Bメロで森本をセンターにしたフォーメーション、聴く者の心を射抜くような京本のハイトーンボイスの美しさ…繊細さとダイナミックさの共存もSixTONESならでは。
オープンカーでみせる田中の勝利を収めたかのような表情と、松村の不敵な笑み。スーツを脱いだ街中のシーンでは、どこか少年ぽさも…疾走感をそのままに、表情ひとつで時を止めるかのように爪痕を残す。
エッヂの効いた楽曲から賑やかな世界を想像しなくもないが、セットは思いのほかシンプル。無機質なコンクリート風のフロア、心情や情景描写に合わせた照明の演出に留めたのは「Rosy」の世界に集中させようという潔さを感じる。だからこそ彼らのパフォーマンスから物語が立ち上がってくるのだろう。まるで映画を観ているかのよう。『2021 FNS歌謡祭 第2夜』(フジテレビ系)でのTV初披露時も同様。他のアーティストとは異なるカメラアングルも相まって、スタジオが高層ビルの屋上かと錯覚するほどのストーリーの立ち上がり方だった。今回、振り付けを担当したのはダンスアーティストグループGANMI(Sota、Kazashi、SUN-CHANG、AOI、Yuuki、Dyson、Ryoga)。『スパイダーマン』シリーズならではのスピーディーかつハードなアクションを思わせる場面もあれば、縦に横にゆらりとした滑らかな動き、中でも指先まで神経を尖らせた手の動きが印象的だ。
■「その6人は“ヒーロー”か“ヴィラン”か」
YouTubeには「その6人は“ヒーロー”か“ヴィラン”か」と記されているが、MVにはパフォーマンスと共にストーリーが敷かれている。冒頭のパラパラと集まるシーンから、それぞれの表情の変化、ドライバー、2台に分れたメンバー構成が意味するもの…考察も広がりをみせている。
■音楽にこだわりながらフレームを拡大していくSixTONES
タイアップと切り離しても、疾走感あるロックチューンには、次々と知らせが舞い込むSixTONESのスピード感とが重なる。田中がラジオ番組『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送)で、「主題歌としては映画、作品がメイン。そこを彩るものとして曲がある」と作品へのリスペクト、謙虚な姿勢をのぞかせる。また、男の魅力のひとつとして“跳躍力”を挙げていたが(本気か冗談か…)、スパイダーマンの能力のひとつに跳躍力があるし、1stアルバム『1ST』で「待ってろ、世界。」と掲げた彼らが、世界的な人気作品の日本版主題歌を掴んだ。そんな目覚ましい進歩“跳躍”もファンとしては誇らしい。
ジャニーズのグループとして、音楽にこだわりながらフレームを拡大していくSixTONES。彼らの活躍や、目指す先を心震わせながら追いかける喜びを、それも大きな作品とともに重ねられたことを幸せに思う。
現在公開中のMVは、あくまでも“YouTube ver.”。「その6人は“ヒーロー”か“ヴィラン”か」──フルサイズではどんなメッセージ、展開が待っているのか。
*高地優吾の「高」は「はしごだか」が正式表記。
リリース情報
2022.1.5 ON SALE
ALBUM『CITY』
SixTONES OFFICIAL SITE
https://www.sixtones.jp