■「無事陽性者も出さず今日という日を迎えられたのは、一人ひとりの応援があって、“この場所を守りたい”という意識が生まれたから」(SUPER★DRAGON・古川毅)
SUPER★DRAGONが、全国ツアー『SIX DAY』の最終公演を12月19日に立川ステージガーデンで開催した。
9月にスタートした今ツアーは、ボイスドラマとリンクして全6公演それぞれに異なるセットリストで異なるストーリーを展開させる“マルチストーリーライブ”という初の形態。5公演のストーリーを積み重ね、遂に物語の結末が明かされたファイナル公演では、ニューアルバム発売などのサプライズ発表もあり、会場に集まったBLUE(SUPER★DRAGONファンの呼称)にあらたなエンターテイメントの形を提示してみせた。
物語の始まりは、クローンと人間による戦争が勃発している未来から届いた1通のメール。“争いの原因は未来の世界でクローン技術を悪用したAmoyh(アモイ)なる人物であり、彼が犯した6つの事件を阻止して未来を変えてほしい”というミッションを与えられた9人は、メールの送り主から提示されたヒントを元に、Amoyhの悪行を各公演でひとつずつ阻止してきた。
しかし、いまだ未来は変わらず、この日、彼らに与えられたラストミッションは、Amoyhに巨大な資金源をもたらす宝石の違法取引を阻止すること。そして、前回の横浜公演で唯一Amoyhの顏を見た池田彪馬から「Amoyhは俺にそっくりだったんだ」という衝撃的な告白が場内に流れると、9人がステージに現れ、大きな銅鑼の音を皮切りに、グルーヴィーな「WARNING」でファイナルの幕は開いた。
ステージ後方のLEDに浮かぶ“WARNING”の文字に、自分自身への苛立ちをぶつけたリリック、客席でBLUEが振る青い光は、まさに、これから巻き起こる事件への“WARNING=警告”を示すかのよう。さらに、身の内からあふれ出しそうな想いを野獣味あふれるサウンドとパフォーマンスに載せた「LRL-Left Right Left-」、自分自身を挑発する情熱のラテン曲「La Vida Loca」と、攻撃的なラップも織り交ぜたシンクロ率の高いダンスパフォーマンスで、アグレッシヴに魅せてゆく。その根本にあるのは、“Amoyhとは自分のクローンなのか?”という疑問の中で生まれた“己とは何者か?”という真摯な問いかけ。裏を返せば、それはSUPER★DRAGONの音楽が持っているメッセージ性の強さの表れでもある。
以降、LEDモニターを全面に張り巡らしたステージに近未来を思わせるサイバーな映像を投影しながら、ボイスドラマと楽曲、リリック、パフォーマンスが密接に結びついたライブを展開。取引現場に潜入した9人それぞれの身長、年齢、血液型のパ―ソナルデータが打ち出されるコンピューター画面をバックに、メカニカルなソロダンスでメンバー紹介を兼ねる見せ方も上手く、最年少の柴崎楽がかました艶っぽいムーブには、いわゆる“可愛い楽ちゃん”からの脱却も感じさせられた。
そこからAmoyhに捕えられてのパートでは、9人全員がマグライトで客席を照らしてBLUEを沸かせた「City Noise」に、何気ない日常へのノスタルジーを感じさせる「Distance」と、涼やか&温かみのあるナンバーでチルアウトな空気を演出。上下二段構えの舞台セットを活かして巧みにポジションを入れ替える立体的なステージングも見応えあり、青空を一面に映し出したLEDセットに腰かけて贈られた「雨ノチ晴レ」の爽やかでポジティブな響きは、どんな窮地からでも未来を救わんとする彼らの想いとリンクしているかのようだ。
そこで脱出を誓ってからは、メンバー自身の意向が色濃く反映された「X」に「Burning in the nights」というシリアスな楽曲を続けざまに投下して、本公演の一つのクライマックスへと突入する。
“全てに意味があるのさ”と意味深なリリックを覗かせた「X」は9月の結成6周年当日にリリースされた最新作で、「Burning in the nights」は昨年のコロナ禍真っただ中に制作されたナンバー。いずれも闇を越えて見出す光への希求がテーマになっており、ブラックホールのような背景映像から各メンバーが現れては消えるような視覚トリックも神秘的で、対照的にステージの上段センターで鷹揚に椅子に腰かける池田の姿が、“彪馬”の向こうに“Amoyh”を感じさせる。そこで、ただ単にアグレッションを爆発させるのではなく、抑えた情感の中に目を奪われるような精緻なダンスを織り込んで、静と動のメリハリで魅了してくれるのがうれしい。
そして敵の手から脱出すると、「俺のクローンなら俺が制裁をくだしてやる」と池田が決意を語り、メンバー内ユニットのファイヤードラゴンとサンダードラゴンの二手に明かれて、Amoyhを追跡すべくダンス&パフォーマンス。まずはファンク曲「On My Way」で、二階ステージに上がった年長組のファイヤードラゴン4人がサイケデリックに見せると、一階ステージでは年少組のサンダードラゴンが、レゲエ曲「Caravan」で力強いステップを踏む。
そこで間髪入れず、ジャン海渡、田中洸希、松村和哉とスパドラの誇る3MCがステージ上段にせり上がり、「Set It Off」で苛立ちをハードにぶちまけるという流れも実にスリリング。その階下でソロダンスを披露した飯島颯を筆頭に、他メンバーも曲に書かれた社会への怒りをAmoyhへの怒りに変換して、体全体で表現する。こうして物語を構成できるだけの種々様々な感情を、これまでSUPER★DRAGONは歌ってきたのだ。
ついにAmoyhを追い詰めた9人。池田とそっくりの顏を持つ彼は、もともと人間の生活を豊かにしたいという純粋な気持ちからクローン開発に多額の投資をしていたが、やがて死んだ人間を蘇らせることを目論み、それを禁忌と拒まれて技術ごと自分のものとしようとしたことを暴露する。長い時を生きながらえながら技術の進化を待っていた彼だが、その野望も潰えて「終わりだ……すべて終わりだ」と呟くAmoyh。
事件が解決してからは怒涛の終盤戦が開幕し、スパークする火花を背に田中のヒューマンビートボックスが炸裂する「Untouchable MAX」から、「手に持ってるもの全部振り回して!」と煽る全英詞曲「Dragonfly」、志村玲於が勢いよくステージにポップアップする「Mada’ Mada’」と、ヘヴィロック曲を次々投下。熱くなる客席にジャンが「お前ら最高だぜ!」と叫ぶと、そのままセルフタイトル曲「SUPER★DRAGON」へと雪崩れ込み、爽快な4つ打ちビートに乗せて“俺達が時代を変える”と堂々たる意志を謳い上げる。歯切れのよいパフォーマンスの終わりには、救われた未来から“ありがとう オレたちの希望”と感謝のメールが。こうして6公演、“SIX DAY”にわたるAmoyhとの闘いは幕を閉じたのだった。
考えてみれば、495日ぶりの有観客ライブとして4月に行われた『NEO CIBER CITY』も、未来のクローンたちのドラマが題材となっており、今回の『SIX DAY』の物語も同じ世界線にあるという解釈もできる。自らのクローンを製造し、そこに命と自我を与えられるとしたら、そもそも“自分”とは何者なのか? 何をもって“本物”と定義できるのか? そんな一筋縄ではいかない難題にSUPER★DRAGONがチャレンジできるのも、EDMからメタルまで多彩なジャンルをのみ込み、培ってきた世界観の広さと深さ故なのだろう。そして、どれだけの極限状態であっても、結局、世界を切り拓くのは自分自身の意志だけなのだと彼らは知っている。
シリアスな本編から一転、アンコールではストーリーから抜け出して、ようやく素の“SUPER★DRAGON”としてトーク。鉄道好きタレントとしての活動も絶好調な伊藤壮吾が恒例の車掌アナウンスを披露し、「ホームのアナウンスじゃなくて今日は車内アナウンスだね」と指摘してきた柴崎に「よくわかったね!」と顔をほころばせれば、松村は「声が低すぎるのは許してください。叫びすぎました」と謝罪する。しかし、FCツアーを除けば約2年ぶりの全国ツアーなのだから、テンションが上がるのも当然だろう。
続いて、セットリストを毎回半分変えたいというメンバーの希望に対応してくれたスタッフに感謝を述べ、ジャンは「4ヶ月という長いスパンで期間をかけてBLUEのみんなと会えるのはうれしかった」と語り、飯島は「構成や振り付けにも少しだけ関わって、ライブ一つひとつを創り上げる喜びを知れた」と想いを吐露。古川毅も「このツアーは毎回が初日で毎回が千秋楽。緊急事態宣言の出ている中、最初はキャパ半分から始まったけれど、無事陽性者も出さず今日という日を迎えられたのは、一人ひとりの応援があって、“この場所を守りたい”という意識が生まれたから」と伝えてくれた。
さらに「皆さんに対面で会えない期間、自分ひとりで深く考える時間が増えた」という池田から、「過去を振り返って後悔しても何の意味もない。過去の幸せな思い出は、これからどんどん超えていけると胸を張って言うことができます。僕たちの未来に向けて、すべての人に向けて、この曲を歌います」と、未発表の新曲「-Tweedia-」を初披露。田中から池田、古川とエモーショナルなボーカルを歌い繋ぎ、2番では松村とジャンのラップも入る柔らかなナンバーは、池田を中心に伝えたいメッセージを練ったという楽曲で、それぞれの道に歩む人々に向けた祝福の歌と言ってもいい。その想いを丁寧に繋ぐようなダンサー陣の振り付けにも温かな想いが籠り、客席で揺れる青い光と呼応するように“花を君へ”の文言で餞を送る。ちなみにTweedia(トウィーディア)とは、日本語でルリトウワタとも呼ばれる花の名称で、花言葉は“信じあう心、幸福な愛”。生歌一本で贈る直球勝負のバラードは、まさにスパドラ史上初と言っていい挑戦で、嬉しいサプライズプレゼントに客席からは大きな拍手が贈られた。
サプライズは続き、この曲が収録される4thアルバム『Force to Forth』が2022年3月23日にリリースされることも発表。フルアルバムのリリースは実に2年半ぶりで、「制作にどんどん関わって、俺たちの想いがより強く籠っている」というジャンの言葉からも自信の程がうかがえる。このアルバムを携え、3月からは全国6都市9公演にのぼるライブハウスツアーを回るというのだから、BLUEの期待も倍増だろう。さらに、1月12日にリリースされる配信シングル「Purple Moon」が、TBS『よるのブランチ』の2022年1〜2月のエンディングテーマに決定したという報せも。同番組にレギュラー出演する古川も「僕たち史上最高傑作になると思う」と胸を張ったので、アルバムの前に、まずはこちらをチェックしてほしい。
そして「皆さんが進むそれぞれの道の先を照らす光を作っていきたい」(古川)というMCから、感動的な流れで絆を歌うラストナンバー「SOUL FLAG」へ……と思いきや、いきなり松村をメンバーで取り囲んで胴上げしたりと、最後の最後にスパドラらしいノリが爆発。
楽曲の持つシリアスな特性やディープなメッセージ性、それらを成立させる高いスキルゆえに、とかく年齢以上に大人びた側面がフィーチャーされがちな彼らだが、実際はメンバーの半数以上が10代の青少年である。むしろ年齢相応の無邪気さを持つからこそ、そのメッセージを真っ直ぐに突き刺してくる、そんな彼らを客席の青いライトが支え、押し上げているように見えたのは、きっと目の錯覚ではない。客席を見渡して「1年前はこんな景色が観れるなんて正直思ってなかったです。これからもその大きな愛で僕たちを包んでください。倍以上の愛を返すので」と感慨深げに古川が告げたように、SUPER★DRAGONにとってBLUEは真にかけがえのない存在なのだから。
【セットリスト】
M1.WARNING
M2.LRL -Left Right Left-
M3.La Vida Loca
M4.City Noise
M5.Distance
M6.雨ノチ晴レ
M7.x
M8.Burning in the nights
M9.On My Way
M10.Caravan
M11.Set It Off
M12.Untochable MAX
M13.Dragonfly
M14. Mada’ Mada
M15.SUPER★DRAGON
EN1.-Tweedia-
EN2.SOUL FLAG
TEXT BY 清水素子
PHOTO BY 笹森健一
リリース情報
2021.12.15 ON SALE
Blu-ray『NEO CYBER CITY -SPECIAL EDITION-』
2022.01.12 ON SALE
DIGITAL SINGLE「Purple Moon」
2022.03.23 ON SALE
ALBUM『Force to Forth』
SUPER★DRAGON OFFICIAL SITE
http://super-dragon.jp/