FUKA/BORI
【DIG / 01】Creepy Nuts
SIDE A かつて天才だった俺たちへ
曲やアーティスト自身について深く掘って語る最深音楽トークコンテンツ『FUKA/BORI』(フカボリ)。
記念すべき第1回にCreepy Nutsが登場。自身の楽曲について語るSIDE Aでは、ストリーミングヒット曲「かつて天才だった俺たちへ」を深掘り。キャッチーな楽曲タイトルに込められた想い、2人のラリーが生み出すもの、「かつて天才だった俺たちへ」を通して見えたCreepy Nutsの楽曲作りの過程など、谷中 敦とCreepy NutsのR-指定、DJ 松永による3人のトークの全貌をここに記す。
■0:00 ようこそ、最深の音楽へ
FUKA/BORIは、音楽を嗜好品のように味わう、最深音楽コンテンツ。SIDE Aは、自身の楽曲を深掘り。音楽の最深部に光を当てることで、気づかなかった魅力が輝きだす。ようこそ、最深の音楽へ。
※『FUKA/BORI』ホストをつとめる、東京スカパラダイスオーケストラ・谷中 敦が登場し、本日のゲスト・Creepy Nutsを招き入れる。
谷中:今日はよろしくお願いします。
Creepy Nuts:よろしくお願いします。
谷中:楽しみにしていました。
Creepy Nuts:ありがとうございます。
谷中:どうぞ! フフフ(微笑み)。
※谷中に誘導され、3名がそれぞれの場所へ着席。
DJ 松永:谷中さん、ひとりの時、そこにいて(カメラの横からその光景を見ていると)画になりすぎてて。
R-指定:うん。
■0:49 Creepy Nutsのターニングポイントになった曲「かつて天才だった俺たちへ」
谷中:何かこの曲から何かだいぶ大きな変化があったということなんじゃないかなというとこで 、この曲を選ばせてもらったんですけれども。すごく大きな変化が起こったということはあるんですか?
R-指定:1年単位で何か自分らの状況とか考えとかも、本当にこう積み重なっていっている感じというのはありまして。谷中さんが言ってくれたとおり、恐らくそのターニングポイントの一つであることは間違いないというか、それがもう積み重なっていっている中の一つで。自分らで作ってての段階で僕が歌詞出来上がってそのデモをチームのみんなに送ったときに、ほんまに内々で「あ、ちょっと何か開けた感じが今回します」っていうのを自分からも思ったし、すごいみんなにも言ってもらえたという感じがしますね。
DJ 松永:何か多くの人に届くようなとか言うとすごい安っぽいんですけど…何だろうな。
R-指定:俺の自分の感覚で言うと、ずっとこう俺と俺が向き合って俺に向かって歌詞を書いていたんですよ。この「かつて天才だった俺たちへ」はやっぱり自分と向き合って歌詞を書いているんですけど、ちょっとこう横というか、何か別の自分と自分以外の外にいる人とちょっと目が合ったような気がしたというか。歌詞を書いているときにパッと。
谷中:それはすごい詩的な表現ですね。
■2:41 曲作りのヒント
谷中:この曲自体は帝京平成大学のテーマソングということで、それでその楽曲が欲しいですというところから始めた部分もあったんですか?
R-指定:そうですね。
DJ 松永:でもね、結構ねもう、だいぶお任せで自由に作ってくださいという感じだったんですよ。
谷中:あ、そうだったんですね。
R-指定:オーダーが本当に別になくて。
DJ 松永:そうそう。
R-指定:自分的にはどうしたもんかなってすごい迷って最初。何のヒントもまず自分の中で見つけられてない状況のときに、先にMVを作っていこうみたいな話になったときに、そのMVの打ち合わせであの監督さんたちが出してくれたこの「道」っていう。
谷中:「道」?
R-指定:そこで「道」か。「道」というか 、「道」といえば大学といえば進路か…みたいな感じで考え、それでこうどんどん思考が考えがこう、いろいろ飛び火していって感じになりまして。
谷中:他の曲でも取っ掛かりがパッと見つかったらそこからワーッと行くほうなのか、 じわじわなのか、作っていく過程も知りたいですけど。
R-指定:じわじわですね。
谷中:じわじわですか。
R-指定:でもその取っ掛かりが見つかるまでが、すごい毎回、この苦戦してしまうんですけれども。多分ごちゃごちゃになっているところはありますね、頭の中は。そんなに整理されてない状況というか。その整理されてないこの…いろんなところにある考えとかが、多分歌詞に出ていったりするのかなみたいな。こう言葉にすること自体…。
DJ 松永:ノートとかすごいもんね。
谷中:ああ。すごそうですね。
R-指定:そうですね。
DJ 松永:ノートね、もうバラッバラなんですよ。
谷中:うわぁ。
R-指定:歌詞を頭書き出しから歌詞の最後までをちゃんとした順番でノートに書いたことないというか。何かもうバラバラにこう何か、思い付いた言葉とか、考えていることをこうほんまにいろんなところに書いて。
谷中:メモ力が必要でしょうね、やっぱね。
R-指定:そうですね。
DJ 松永:すごい大学ノートを見て。最近の使っているノートは見てないけど、 数年前に大学ノートに書いているのを見て。線が引いてあるじゃないですか。もうその線を無視して言葉の断片がダンダン ダダンって書いてあって。むちゃくちゃ自由帳みたいに使っているなとか思った(笑)。
谷中:ハハハ(笑)。
DJ 松永:大学ノート買うなよ! とか思うぐらい、むちゃくちゃグチャーって。いい意味で。何かもう何かね、本当に自由に断片がサーって乱れ打ちされて。
谷中:字が大きかったり小さかったりとか。
R-指定:全然あります。
DJ 松永:もう言葉も汚すぎて読めなかったり、これは読めたりとか。
谷中:そうやっていろんなことをやっぱりメモしながら、自分で構築して考えるわけですけど。
R-指定: はい。
谷中:でも最終的にこの曲もそうですけど、他の曲も僕は聴かせてもらったときに、受け取る印象がすごく分かりやすいというか。
R-指定:あぁ。
谷中:「あ、この曲こういう曲なんだな」っていうことがはっきりと伝わる部分が幾つもあるので。
DJ 松永:たしかに。
谷中:それがね、有機的に立体的に迫ってくるのがすごいいいなと思って。二次元的じゃないんですよね。
DJ 松永:それ分かります。
谷中:メッセージの伝わり方が三次元で伝わってくる。
DJ 松永:非常に言っていることがめちゃくちゃ分かる。すごい一聴しただけで、その曲の目的は分かるんだけど、でも超単純じゃなくて、むちゃくちゃいろんな方向からいろんな表現で来て。それはもう意味は分かっているけど、何周もできる。どんな味わい方もできるし。全く分かりやすい味ではないというか、すげぇ何層にもなっている。でも、それがどういう目的の曲かはもう最初にバチコン分かるみたいな。
谷中:そうなんですよね。
DJ 松永:そのポップスさとその奥深さ両方持つ人だなっていうのはむちゃくちゃ横にいて思います。
谷中:行きたい方向の矢印がはっきり分かる感じがするんですよね。
R-指定:あー。
※DJ 松永が大きくうなずく。
谷中:だから聴いているほうはすごく聴きやすいですよね。
■6:35 歌詞ができる時
DJ 松永:「むっちゃいいワードが思い浮かんだときに歌詞が進む」ってRが言っていたときがあって。
R-指定:あ、そうそう。
DJ 松永:そのワードってむっちゃキャッチーなんですよね。キャッチコピーと一緒、フレーズとして見事だなっていうのがRからポンと出てきて。「これが出たから書き進められます」って聞いて、そこからバーッとできてくるんですよね多分それが。
R-指定:だからこの楽曲もそうですね。その「道」とか、進路って言っていたけど 、「かつて天才だった俺たちへ」ってワードが出てきた後にやっと「道」とつながったというか。それまでは 「道」といえど、散々いろんな表現が出てきているから、何か俺だけの言葉がないかなと思ったときに、この進路は前を見るものなんですけど、この前を見るにあたっていったん後ろを向いてみようかなみたいな思考やったのかな? ちょっとね、もうその書いたときの詳しい脳みその順番はちょっと分かんないんですけど。
谷中:ハハハ(笑)。それはそうですよね、きっとね。
R-指定:何かその先に進んでいくっていう進路って、別に大学に限らず、生きている段階でいつでも目の前にいろんな進路があると思うんですけど。やっぱり昔よりは自分の目の前の選択肢っていうのは当然ですけど、自分でいろいろ絞って狭まっていっているなと。ただこれが 「今これじゃなかったらどうなっていたんやろ」とかっていうのはもう皆考えるじゃないですか。で、 自分で可能性を当然狭めている部分もあるし、逆に言うとこの世の中に出て得手不得手とか向き不向きとか身の丈とか学んでいくのが年を重ねていく、それで道が狭まっていく…これは普通の成長の形やと思うんですけど。 生まれた瞬間は多分土ついてなかったというか、負けてなかったし、比べられてなかったから多分マジで何でもできたんやろなみたいな。その状態を自分的には「無敵感」「万能感」「天才」というふうに1個ちょっと言い換えて、それで「ああ、でもそれ天才やったっぽいな」みたいな。そういえば俺昔絵を描くのも好きやったし、スポーツもやってみて自分が苦手やと思う前は何かいけそうな気がしてた。
谷中:ボールと友だちになれた。
R-指定:ただほんまにそれを苦手やとか、自分が下手やとか気付いてしまったことによって 「あ、もうやめとこう」って閉ざしたことが多いなみたいな。
谷中:身の丈知り過ぎちゃう部分もね、ありますもんね。
R-指定:そこを何とかこの年でもう一回身の丈っていうのを知った上で 、でももう一回あのときの感覚を自分で想像してみて、いろんな「道」を見てみるのもいいのかなっていうことで「かつて天才だった俺たちへ」。
谷中:これって全員が心に刺さる言葉ですよね、そういう意味では。やっぱり言い当ててもらっているっていうことを感じてうれしいわけですよね。僕らも全員が思っていたし、言いたかったけど、Rさんがそれを言葉にしてくれた。そういうときは本当に発明ですよ完全に。
R-指定:今、谷中さんが言ってくれた“言い当てる”。“言い当てる”っていうのがもしかしたら結構ラッパーとか歌詞書きの人の何か根源的な、特に楽曲になるものを歌詞を書いている人は何かあるのかなと思ったのは。
谷中:そうですね。
R-指定:同じヒップポップグループで札幌のTHE BLUE HERBっていうグループがいて。THE BLUE HERBのILL-BOSSTINOさん、MCのBOSSさんが「毎回ライブとか、楽曲を作っていくお客さんの前で言葉を発するときは言い当てたいんだよ」みたいな。MCでも曲でも僕としゃべったときも言ってくださっていて。
谷中:それってバトルとかでもそうだったりするわけですか? やっぱり。
R-指定:そうですね。バトルの部分でも言い当てることによって、盛り上がる瞬間もやっぱり確かにありますね。
DJ 松永:バトルの言い当てるは言われて嫌なほうの言い当てです(笑)。
谷中:ハハハ(笑)。
DJ 松永:言われて嫌な…
R-指定:痛いところを…
DJ 松永:痛いところを言い当てるから(笑)。
谷中:そうですよね(笑)。
R-指定:その対戦相手の、何かみんなが「あっ」とか何か「ん?」って思っているところをバンと言い当てたときにドカンとなる。
谷中:そうですよね。
R-指定:それ逆もありますから。やっぱり盛り上がっているときは、やっぱり言い当てられたというかね。「あっ」となるときはね、お互いあったりします(笑)。
谷中:すごいですね。あのバトルの動画も見させていただいたんですけど、圧倒的にリズムがいいですね。やっぱ当たり前でしょうけどリズム本当にすごいですね。
DJ 松永:いやこの人、マジリズムすごくて。
※恐縮のあまり、頭をかくR-指定。
DJ 松永:レコーディングしてコントロールルームから波形を見ていると分かるんですよ。例えば「耳無し芳一Style」って曲があって。むちゃくちゃリズムに対してシビアな曲、超ラップがハイレベルな曲なんですけど、あれ1ヴァース それこそツルッと録ったんですよ。
谷中:うわぁ(驚愕)。
DJ 松永:ツルッとバーって一本録りでツーってとって。「じゃあ次のテイク行きます」といってもう一本録るじゃないですか。録って2本重ねたらほぼ一緒だったんです位置が。その波形がほぼ一緒なんですよ。
谷中:もう全部ボーカルダブルにしても大丈夫なぐらい。
DJ 松永:それはダブル目的でとったわけじゃなくて、もう一本言葉のニュアンスとかリズムはまんま、キーとかそこら辺のピッチ感を変えようと思って歌ったテイクがリズムを同じにしようと思って歌ったやつが本当にリズムが同じだったっていう。
谷中:すごいですね。
DJ 松永:ちょっとみんなゾワってエンジニアが「何これ」みたいになるっていう。
■11:56 新たな音へのトライ
谷中:トラックの部分もお話しさせてもらいたいんですけど。作り方はいろいろ読まさせてもらってて、サンプリングとかもずっとやっていたのを生演奏でバンドで演奏してもらってトラックを作るというやり方に変えている部分もあったりとか、両立されているんですか?
DJ 松永:それってね曲によるんですよ。でもサンプリングは今はやっぱりやってないですね。パソコンでの自分での打ち込みと生演奏の配分がそれぞれ違うみたいな、完全生演奏もあれば、完全打ち込みもあるし。本当に曲によって違くて。この曲に関しては本当に音楽理論とか知識がなくて、俺この曲を作るまでコードっていう概念を知らなかったんですよ。楽譜はおろかコードを知らなくて、コードっていうもんがいまいちピンと来てなくて。ちょっとそれを教えてもらって初めて意識的にコードを付けた曲がこれなんです。でも普通にコードを付けて曲を作ったら何かね、すっごい俺が嫌な大衆臭さになってしまって。それをどうしようと思って、その自分たちのもともと持っているあの臭みだったりみたいなところの煙たさみたいなところを、このコードを付けることによってもう一回振り払われたものをもう一回自分がどう色付けしていくかみたいなものをトライした結果ちょっとエスニックな感じに。怪しいイントロとか結構試行錯誤したんですけど…ちょっとYouTubeをガーッと、休憩中にバーッと見ているときに楽器屋さんに行ってみた動画みたいなやつがあって。そこで初めてエレキシタールを見て「あっこれ初めてだ」「弾いてみよう」みたいな感じでエレキシタールの音むちゃくちゃかっけぇなと思って。シタールを聴いたけどシタールではねぇなと思って。最終的にこのエレキシタールによっていい感じの臭みが。出て。
R-指定:何かそれが結構俺の中で「かつて天才だった俺たちへ」のビート感というのがちゃんとCreepy Nutsのまんま開けたというのがすごいあって。その出会ったときに最初ビートをいろいろ聞かせてもらっていて。松永さんの持っている当時はサンプリングやったんですけど出会ったときは。その持ってくるセンスというかが、いびつやったり不気味やったり変なんですよ。やのにめっちゃキャッチーみたいな。そこに多分俺のラップがすごい相性がいいというところに、一番最初楽曲を制作しているときに思っていて。それでその方向性でずっと俺らは来ていてサンプリングからこのバンドの皆さんに弾いてもらってもう一回それを組み直すという方向になっているので、さらに今回このコードってなったときに、そこがどうなっていくのかというのは多分俺以上に松永さんはめっちゃ不安やったと思うんですけど。
谷中:そうですよね。新しいやり方ですもんね。
R-指定:これはもともとのビートももちろんすごい奇妙やけど、ポップというビートやったんですけど。それに僕もラップを乗っけて、その後なんですよね、このエレキシタールが入ってきたのって。
DJ 松永:そう一番最後。もう結構ラリーが細かくて。打ち込みだけで作ったそのデモを送ってサビだけ作って、それの上にまた作り直して、ラップを乗っけて作り直して何チャラみたいなことを何回かやって。ドラムもガラッと変えたんですよ。
R-指定:だからラップが乗ってから、「ちょっと疾走感を足してみた」といってまた返ってきて。「おおっ」となって、そのラリーで毎回何か…
谷中:結構何回もやるんですね、ラリーを。
R-指定:そうなんですよ。
DJ 松永:そう、時間があればもう何回もやりたくなっちゃいますね。
R-指定:そのラリーがね、やっぱ僕の言葉とか僕のラップに対する松永さんのアンサーになっていて。
谷中:ああ、確かにそうかも。
DJ 松永:そうそう。そうそう。
R-指定:それで毎回結構膝を打つようなというか想像してないようなところと「ああ それなんすよ」みたいな、俺が言語にできなくて俺がこうしてくださいとは説明できなかったけど 「そうしてほしかった!このラップのところ」みたいな、そのばっちりのアンサーと想像を超えてくるアンサーが毎回来るからそれがほんまにお互い。
谷中:言葉に対して、音で反応してくれる松永さん。
R-指定:そうなんです。だからその効果音やったり、抜きやったりとか、何かほんまにうっすらとガッツリ入れてくるときもあるし、うっすらとその俺のワードに対して背景、音で絵を付けてくれるっていう感覚があって。だから多分俺らの楽曲を聴いて立体的に感じてくれるっていうのは、多分俺の言葉リズムっていうのをさらにビジュアライズしてくれる多分音やと思うんですよね。その音でより立体に(歌が)絵になって見えてくる。
■16:56 音のラリーが生み出すもの
DJ 松永:多分ラップってむちゃくちゃ情報量が多い歌唱法じゃないですか。
谷中:そうですね。
DJ 松永:トラックでいかに抽象化するみたいなのがやっぱり楽しいんですよ。具体性があるものを一回抽象化して、何か背景みたいなものを絵で描くみたいな。
谷中:全然変わりますもんね。響き方もね。
DJ 松永:そう。表紙を作るみたいなものに近いというか、アルバムジャケットを作るとかに近いにも通ずるところがあると思うんですよ。この曲じゃないんですけど、別の曲で結構多いのが、最近。ワンループひたすら5分ぐらいバーッとそれを延ばしたやつだけ送るんですよ。R-指定はそれに自由に泳いで。で、俺が展開つけてアレンジつけてもう上ネタも変えればドラムも変えたりとか、そうやって作っていくことが多いんですけど。一番最初に上げたものに対してラップが乗っかったときに、たまにね複雑すぎて意味が分かんないときがあるんですよ。こっちが、受け手が理解できないとき。
R-指定:ラップのリズムが複雑。
DJ 松永:リズムが何か「あれ? これ 変じゃない?」みたいな。「気持ち良くないよ」っていう瞬間があって。これをどうやってこっちで落としどころをつけたらいいんだろうな、また何か「R、ミスったんじゃねぇか」と思うぐらい俺はあんまり気持ち良くないようなリズムだったんですけど、ドラムを微調整しているときにバチンとはまった瞬間に「これやりたかったんだ!」みたいな瞬間が1回あったんですよ。
谷中:ミスっているんじゃないんだ。
DJ 松永:そう。やりたかったことをトラックで追い付かせてバチンとはまった瞬間に、そこが一番ヤバくなるんですよね。
R-指定:そうなんですよ。
DJ 松永:何これと思って「すみませんでした!」ってなって。
R-指定:いやいやいやいや(笑)。
谷中:ハハハ(笑)。
DJ 松永:「気持ち良くないと思ってすみませんでした!」ってなるっていう。
R-指定:俺もね、それ。言語でここをビートをこうしてくれっていうのが伝えられないっていうのもあったりとか。多分分かってくれるやろなみたいなめっちゃ信頼という信頼という甘えもあるんですけど。それで結構複雑なフローをしてバッと返ってきたときに「あ、やっぱり分かってくれた」みたいな。そう、そうなんですよ。逆にそれ以上に「あ、そこ全抜き」全部ビートとかドラムをなくすことによって「あ、こここんな気持ち良うなるんや」みたいな。
谷中:何か俺この曲を聴いて思ったのは、“かつて天才だった俺たちへ”のところで、急に何かドラムのタム回しみたいになるじゃないですか。何か少し薄くなるというか結構そこはショッキングで。これ効いているなというか。そこがサビなのかと思いきやそこで一回下がっているというのがめっちゃ逆に興奮しました。
DJ 松永:あそこで1回広くして、広くかつ何か情報量を少なくしたかったんですよ。
谷中:うはは(※DJ 松永を意図を知り、うなるような歓喜の笑い声)。
DJ 松永:サビの頭でドンとこの全部楽器、音鳴ってってしたかったんですよね。
R-指定:それってリリック乗っかってからやったっけ? その広くしたいと思ったのって。
DJ 松永:いやでもあれはもともとかな。
R-指定:もともとか。
DJ 松永:もとかな。
R-指定:じゃあ…
DJ 松永:いや、サビ。あの一番最初のサビは上がってきてからだわ。ヴァース書く前やわ。一番最初のサビができてから、このサビに行くまでに一回広くしたいなと思ったんです。
R-指定:でもやっぱりそれが多分そこをこうしようって話し合いじゃなく、ラリーの中でまさしくそのサビで“いまだかつて”って来る前の…。
谷中:そこがサビですもんね。
R-指定:その前のブリッジが実はこの僕らの楽曲は結構タイトルがサビに入っていたりっていうこととかは結構あるんですけど、今回はねそのサビ前のいうたらブリッジ… 僕の言語で言うとあれはしゃがみって言うんですけど。
谷中:しゃがみ!おおっ!
R-指定:勝手にしゃがみとそうサビ前のしゃがみでタイトルに使ってる…
DJ 松永:ジャンプ前のしゃがみ。
R-指定:でもそのしゃがみで松永さんが広くしたい。で、情報量を少なくしたいというところに自分が書いてきた歌詞の中で一番広い言葉“かつて天才だった俺たちへ”“神童だった貴方へ”という自分以外の外に向けている俺の歌詞としても広くて、音としても広くてというのが、バチンとシンクロしているっていうのが多分ラリーとお互いへの信頼で生まれてくる楽曲のすごい妙というか。確かにそこでメッセージも広くなっているんですよね一気に。「苦手だとか 怖いとか 気づかなければ」「ボールと友達になれた」超俺のこと。で、「すれ違ったマサヤに笑われなけりゃ」ってマジで俺のことで、マサヤとかほんまに小学校中学校の同級生でもう地元の友達から「あれ、あいつのことやろ」みたいに来るぐらい個人的なことからそのしゃがみのところで“かつて天才だった俺たちへ”とバーッと音と言葉が開けるっていうのが、今3人で話しているときに「あ、そうなっているわ」と何か意図してやったというか何か自然とそうなった。
DJ 松永:あの歌詞カードでみんな1回読み物として読んでほしいわ、あれ。
谷中:確かに。
DJ 松永:あれ本当読み物としてマジで傑作だから。マジあれはもう映画だから本当に。
R-指定:映画(笑)。
谷中:本当にそう思う。
DJ 松永:映画、小説だから。
『FUKA/BORI』
第1回 Creepy Nuts
12/14 公開
SIDE A:「かつて天才だった俺たちへ」を深掘り
12/28 公開予定
SIDE B:Creepy Nutsが影響を受けた楽曲を深掘り
『FUKA/BORI』
https://www.youtube.com/playlist?list=PLi1F8vriz0_WL3yKBwFfP68Mkx7f8Y4KV
『THE FIRST TIMES』OFFICIAL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCmm95wqa5BDKdpiXHUL1W6Q
Creepy Nuts OFFICIAL SITE
https://creepynuts.com/
谷中 敦 OFFICIAL Twitter
https://twitter.com/a_yanaka