■『Twinkle』『Nightmare』の2部構成で、アイドルらしいきらめきと彼ら特有の攻撃性を表現
原因は自分にある。(通称・げんじぶ)が、12月23日にZepp DiverCity(TOKYO)、25日にZepp Namba(OSAKA)で『GNJB Christmas Live Twinkle/Nightmare』を開催した。
各日『Twinkle』に『Nightmare』の2部構成で行われた今回のライブでは、ファンと一体になれるアイドルらしいきらめきと、彼ら特有のアンニュイな翳りと攻撃性の両方が露わに。12月4日にリリースされたコンセプトEP『テトラへドロン』の楽曲も全曲披露され、“観測者”と呼ばれる彼らのファンたちと共に2024年最後の美しい夢を見た。
11月には横浜・ぴあアリーナMMでのアリーナワンマンを完売させるなど、人気の止まるところを知らない原因は自分にある。。全国ツアーもホールが当たり前の彼らをライブハウスで観られる貴重な機会ということで、東阪のZepp4公演はすぐにソールドアウトとなった。
観測者がスタンディングでひしめくフロアに荘厳な鐘が鳴り、メンバーカラーの7色に照らされるミラーボールにスレイベルの音が入ったマーチングトラックがクリスマスムードを醸すなか、紗幕が振り落ちると白をベースにしたシックな装いの7人がステージ2階に登場。紅白のドレープ幕とクリスマスツリーに彩られたステージで、長野凌大が「ようこそ! 一緒に楽しんでいこうぜ!」と号令をかけるや、まずは有名クリスマスソングと同名の「Joy to the world」が『Twinkle』公演の幕を開ける。
軽快なエレクトロスイングの紳士的かつ自信に満ちた小気味よいステップで、げんじぶワールドへと観測者たちを招けば、杢代和人は「最高の1日にしようぜ、よろしく!」と煽動。さらに、大倉空人が「もっと声、聞かせてくれ!」と、おなじみのライブチューン「ギミギミラブ」で痛快なラップを届けて、フロアに“炭酸水!”の大合唱とクラップの嵐を湧かせていく。小泉光咲の「みなさん、Twinkleっぽく歌ってください!」という無茶ぶりにも、観測者はひとつになって声をあげ跳ね飛んで、満杯のフロアは一気に沸騰。
続く「ネバーエンドロール」では、大倉が“好きだよ”という歌詞で桜木雅哉の頬にキス真似をしたり、杢代が何度も小泉の頭を撫でたりして、たとえ結末は同じでも何度でも恋に落ちるというロマンティックかつ悲しいナンバーを、愛らしい仕草で温かく昇華していく。
一方、リーダーの吉澤要人が「最高のクリスマスの時間を過ごしましょう!」と告げた「夢に唄えば」では、ブロードウェイを思わせる歌詞にうやうやしくお辞儀してみたりと、ミュージカル風のパフォーマンスで魅了。歌詞が哀しかろうとハッピーだろうと、涙をきらめかせながらも観測者に声をかけて“共に楽しむ”のが『Twinkle』の見せ方のようだ。
一方『Nightmare』公演のほうでは、YOASOBIのAyaseが提供した「スノウダンス」で、オープニングから“別れ”をフィーチャー。ステージの上と下を繋ぐ階段を効果的に使い、哀愁味のあるトラックに乗って届かない想いを全身で表しつつ、7人が入れ替わるようにボーカルを担当していくパフォーマンスもうまい。
続く「J*O*K*E*R」ではピンク色のライトのなか、エレクトロなビートで不穏にスイングして、4人と3人に分かれる間奏のダンスでも目を奪う。ダークかつ華やかなナンバーで“Nightmare”らしさを表したところで、桜木の高速ラップから「犬と猫とミルクにシュガー」へ。次々に展開の変わる挑戦的なナンバーで7人は突き放すような表情を見せ、さらにパイプオルガンの荘重な音色が「Mania」のイントロを鳴らすと、場内からワッと歓声があがる。この曲が主題歌として起用されたドラマで主演した長野は、口の端を上げて危険な微笑みを見せたり、衣装の長い裾を翻して舞ったりと、後戻りできない危険な物語を狂おしく表現。ここまでの4曲でメンバーが観測者たちを煽ることは一切なく、どうやら『Nightmare』は “魅せる”ことに重きを置いた公演のようだ。
バレエ作品『くるみ割り人形』より「金平糖の精の踊り」を用いた不穏なタイトル映像を挟んで以降は、両公演共に“別れ”が匂うラブソングで大人びた表情を垣間見せていくことに。
まずは7人がステージ上に散らばり、最新作『テトラへドロン』収録のバラードソング「小説ならば」を、このライブで初披露していく。それぞれのイメージカラーに灯るペンライトの光を浴びながら、泣き出しそうなほど表情を歪めて7人が順々に、サビでは全員で声を揃えて曲テーマである“愛惜”を切々と歌い上げ、東京の『Nightmare』公演では感極まった桜木が声を詰まらす場面も。
その後のMCでは「ちょっとね、入りすぎましたね、感情が。自分でもビックリしました。まさか歌っていて、くるとは思わなくて!」と、本人も驚いていた。
最後に小泉が“GNJB”のオーナメントをツリーに付けると、今度は“また会う日を楽しみに”という花言葉をモチーフにした「ダイヤモンドリリー」で、触れようとしても触れられない幽霊のはかない恋を、すれ違う動きで表していく。そしてセンターに立った桜木が手を広げ、小泉が透明感いっぱいに歌い出したのは「幽かな夜の夢」。ピアノとストリングス、さらにエレキギターが響く凛としたトラックで、疾走感いっぱいに“会いたい”というピュアな想いを届けるが、願っても叶わなかったり、終わった恋を振り返ったりと、どうにも哀しげな楽曲が似合ってしまうのは、この5年で彼らが積み重ねてきた繊細な世界観ゆえだろう。
また、クリスマスライブということで、メンバー同士でプレゼント交換をする時間も。プレゼントのテーマが「Twinkleっぽいもの」だった東京の『Twinkle』公演では、なんと7人のうち吉澤、桜木、武藤潤が同じ種類の犬のぬいぐるみをサイズ違いで持ってきて、吉澤は「げんじぶのTwinkleは犬しかない!」と笑いを誘った。
『Nightmare』公演では武藤潤が「いちばんサイズが大きい」と狙っていた小泉のプレゼントを見事に引き当て、袋の中から出てきた豚のぬいぐるみに「メッチャうれしい!」と大喜び。ステージに置かれた巨大なクマのぬいぐるみの横に並べてみたりと、大ハシャギであった。
そして桜木が「みなさんには曲のプレゼントを。素敵なクリスマスの思い出を作っていきましょう!」と気勢を上げてからは、今回だけのスペシャルユニットが登場する。まずはエレキギターの音色が激しく鳴り響くなか、なんとステージ2階にスタンドマイクを握る武藤、大倉、吉澤の3人が現れて、灼熱のロック曲「Lion」で大爆発。武藤のパッション溢れるサビ歌唱に大倉の歪んだボーカル、吉澤の低音は“キミへの道を邪魔するな”という歌詞の通り力強く、丁々発止でやり合って、フロアからも声とペンライトが突き上がる。
そのエモーショナルな空気をセクシーに一変させたのが、小泉、桜木、長野、杢代の4人による「美しい人」だ。ソファに座る長野の肩に杢代が腕を回したのを手始めに、それぞれ足を撫で上げたり、腰を抱いたり、指で手招きしたりと、四角関係を思わせるような妖艶な世界をジャジーかつアンニュイな曲調に乗せて展開。衣装も『Twinkle』では黒と白のトップスにデニムを赤チェックで飾ったものに、『Nightmare』ではドレッシーでビジューきらめく黒と緑のセットアップに着替え、歌詞にある“ファムファタール”ならぬ“オムファタール”ぶりを全開にして場内を黄色い歓声で満たす。激熱ロックから魔性のジャズチューンまで、2019年の始動からわずか5年で培ってきたふり幅の広さには驚かされるばかりだ。
再び7人揃って「貴方に溺れて、僕は潤んで。」でジワリと助走をつけてから、アッパーなラップ曲「ケイカクドヲリ」で一気に上昇する流れも痛快。大倉の巻き舌が炸裂すれば、小泉のロングトーンも血管が切れそうなほどの勢いで、ステージを駆け回るアグレッションの高さには圧倒される。
そこでダメ押しとなったのが、今回のクリスマスライブのテーマ曲として配信された新曲「アビスと清らな銀世界」の初披露。曲頭から長野が振り向いてニヤリと笑えば客席から悲鳴があがり、重厚なストリングスや鐘の音が鳴るサウンドに不穏なビートを交ぜ込んで、“アビス(=深淵)”を覗き見するようなダークファンタジーへと世界を塗り替えていく。
だが、あとのMCで「曲調はNightmare、振りはTwinkle」とネタばらしされたように、人形のような動きを交えたダンスは愛らしくキュート。大倉も「7人であんなにキラキラ踊るのは初めてだから新鮮だった」と話してくれた。
曲終わりに全員で蹴りをかまして、クリスマス独特の高揚感をティープに味わわせると、MCでは2024年の思い出について振り返る。
武藤は11月のぴあアリーナMM公演、杢代は写真集の撮影をした沖縄のホテルでのどんちゃん騒ぎ、小泉は地元・宮城での久々のワンマンライブをピックアップ。吉澤は初めて7人でご飯に食べに行ったことを挙げ「ひと言で言うと本当に“絆”の1年だった。クリスマスに観測者と会える環境にいられるのは幸せなこと。来年のクリスマスもぜひ一緒に過ごしましょう」とメッセージをくれた。
桜木も「今年は観測者と会える機会が多くて、観測者のことをより好きになった。言葉を直接もらえると“頑張ろう”と思えるし、より観測者が大切だなと思えた1年でした」と告白。長野は「今年は観測者やライブ、メンバーそれぞれの活動にも向き合えた。来年は、その成果が発揮できる年になると思うし、ライブというステージがある限り、あなたが来てくれる限り“今日のパフォーマンスがいちばん良かったね”って言ってもらえるように覚悟を決めてやってます。それは来年も変わらないので、目を逸らさずに対峙してくれたらうれしいなと思います」と、2025年への想いを吐露する。
また、大倉は来年の春ツアー『嘲笑倫理学のすゝめ』について「げんじぶのすべてが、このライブでわかりますよ! っていうスターターパック。げんじぶの良さの詰まったツアーになる」と予告してくれた。
最終ブロックは『Twinkle』と『Nightmare』で再び別物となり、『Twinkle』では新旧のライブ定番曲でクライマックスを盛り上げる。まず、ピアノロックという個性を最初に築いたデビュー曲「原因は自分にある。」で、笑顔から真顔への完璧な表情管理も交えて躍動すると、2024年のリリースながら早くもライブ定番曲になった「P-P-P-PERO」と「推論的に宇宙人」を投下。
前者は大倉が声優として参加したアニメ『エグミレガシー』の主題歌だが、ここでも「金平糖の踊り」の音がサンプリングされており、その点でもクリスマスにふさわしい。キュートな空気感をシュールに煮詰めていくような曲の最後に、センターでウインクした大倉が「声出していきましょう!」とつないだ「推論的に宇宙人」でも、観測者とコールのやり取りを交わしてハッピーにヒートアップ。
最後に「来年も一緒にこのクリスマス楽しみたいです。これからもよろしく!」(長野)と贈られた「Go to the Moon」は『テトラへドロン』収録のスカ曲で、地球を超えて宇宙までも行こうという彼ら自身の“野望”を、タオルを振ってブチ上げていく。吉澤が「みんなの声を聞かせてください!」と求めれば観測者もペンライトを掲げて大合唱。満面の笑顔のなかで、にぎやかに『Twinkle』公演を締め括った。
対する『Nightmare』公演は「原因は自分にある。【別解】」でラストブロックをスタート。発売からちょうど5年後にまったく別のアレンジでリリースされたデビュー曲は、よりサイバー味を増して、直前のMCで長野が告げた通り「過去に向き合った新しい挑戦」をしてみせる。
そして観測者に衝撃を与えたのが『テトラへドロン』収録で、「メズマライザー」などで知られるボカロPのサツキが手掛けた「Operation Ego」だ。異星人による“支配”とそれに対する“抵抗”という実に特殊な、けれど彼ららしいテーマを掲げた高速ナンバーで、ラップパートのBPMはなんと200。メカニカルな動きと“踊らない”立ち姿で異星人の支配を表現する一方、サビでは武藤から大倉、桜木から小泉、そして長野と生々しい歌声をエモーショナルに爆発させ、最後はユニゾンになって抵抗を表す流れもスリリングだ。間奏では円形になったメンバーのセンターで桜木が大きくジャンプしたり、腕を広げて十字の体勢になった杢代をメンバーで抱えあげたりとダイナミックなフォーメーションも。
続く「灼けゆく青」では、失われた青春をポエトリーリーディングで詩的に嘆き、2曲続けて“歌う”のではない表現でエキセントリックに魅せると、スモークが立ち込める中に消えていく…のかと思いきや、なんとスモークが晴れてメガネ男子の7人が登場。引き籠もりのハッカー集団を演じたMVでのビジュアルに合わせたニクい仕掛けに観測者たちから悲鳴にも似た歓声があがり、「お前ら、これが最後だ! ブチ上がろうぜ!」と大倉が叫んで、今度は“反骨”をテーマにしたバンド曲「遊戯的反逆ノススメ」でアッパーに駆け抜ける。
大倉と吉澤が挑発的なラップを放てば、小泉と桜木は高音からフリーフォールのように心地よく落ちるサビを聴かせ、吉澤の主旋律&武藤の高音ハモりも聴きごたえ満点。さらに、間奏のダンスでは3人と4人に分かれて躍動したり、長野がメガネを外してひらりと投げ捨てたりと、目も耳も釘づけにして“げんじぶ”の最新型を提示していく。最後は全員でメガネの弦を指で押さえ、その堂々たる仕草に場内は喝采の嵐に。彼らにしか綴れない物語と表現で、後に武藤が告げた「Nightmareですが、みなさんとは素敵な夢を見て過ごしたい!」という言葉を現実のものとしてみせた。
アンコールでは再びステージ2階に現れた7人が「原因は君にもある。」を披露し、観測者たちとクラップでつながりながら「皆さま、メリークリスマス!」「今日はありがとう!」と口々に感謝を表す。杢代は「メリークリスマス!」と『Twinkle』では指ハートを、『Nightmare』では投げキスを贈って「一緒に歌おう!」と観測者にリクエスト。湧き上がる大合唱に「ありがとう! 最高です!」と大きく腕を振り、そんな7人に向けられるペンライトの光がクリスマスにふさわしい美しい光景を作り出した。
ステージからの去り際に「最後に何か言って!」とメンバーにお題を出されたリーダーの吉澤は、東京の『Twinkle』では「原因は自分にある。はワンちゃん大好きグループです」と伝え、『Nightmare』では「右も左も下も上も、まとめて全員愛してる」と殺し文句で観測者をメロメロに。リーダーとしての責務をしっかり果たしてみせるのはさすがだ。
MCでは「着実に新しい扉を開いているので、あらたなフェーズには入れたらいい」と2025年への抱負を述べていた吉澤だが、その言葉通り春ツアー後の7月12日・13日には彼ら史上最大規模のワンマンとなる国立代々木競技場 第一体育館2デイズ『ARENA LIVE 2025 序破急』が決定している。「信念と感性の芸術が織りなす史上最大の戯曲」というキャッチフレーズも、これまでの彼らの活動を見ていれば納得。アートとエモーションを生みだすソウルを磨き上げて、6年目の“げんじぶ”は、さらに濃密な物語を描き続けていく。
TEXT BY 清水素子
PHOTO BY HannaTAKAHASHI
<セットリスト>
1.(1部)Joy to the world (2部)スノウダンス
2.(1部)ギミギミラブ (2部)J*O*K*E*R
3.(1部)ネバーエンドロール (2部)犬と猫とミルクにシュガー
4.(1部)夢に唄えば (2部)Mania
5.小説ならば
6.ダイヤモンドリリー
7.幽かな夜の夢
8.Lion <大倉空人・武藤潤・吉澤要人 ユニットver.>
9.美しい人 <小泉光咲・桜木雅哉・長野凌大・杢代和人 ユニットver.>
10.貴方に溺れて、僕は潤んで。
11.ケイカクドヲリ
12.アビスと清らな銀世界
13.(1部)原因は自分にある。 (2部)原因は自分にある。【別解】
14.(1部)P-P-P-PERO (2部)Operation Ego
15.(1部)推論的に宇宙人 (2部)灼けゆく青
16.(1部)Go to the Moon (2部)遊戯的反逆ノススメ
EN.1原因は君にもある。
リリース情報
2024.12.04 ON SALE
EP『テトラへドロン』
原因は自分にある。OFFICIAL SITE
https://genjibu.jp/