TEXT BY 森朋之
■どこまでも真摯、どこまでもまっすぐ。ゾクッとする唯一無二のパフォーマンス
『THE FIRST TAKE』第172回には、MOROHAが初登場。彼らの代表曲であり、音楽的なスタイル、メッセージ性が最も強く表れた楽曲「革命」を披露した。
ラッパーのアフロ、アコースティックギターのUKにより2008年に結成されたMOROHAは、2010年にSUMMER SONIC主催の『出れんの!?サマソニ!?』にエントリーし、審査の過程で追加された「曽我部恵一賞」を受賞したことをきっかけに注目され、同年10月に曽我部恵一(ex.サニーデイ・サービス)が主宰するROSE RECORDSから1stアルバム『MOROHA』をリリースした。
生々しい感情や経験をダイレクトに刻んだ歌、“アコギとラップの2人組”という異色のスタイルから繰り出される、鋭利にして叙情的なパフォーマンスによって徐々に存在感を高めながら、ヒップホップシーンだけではなく、シンガーソングライターやロックバンドなどジャンルレスに対バンを繰り返し、音楽性とステージングを磨いていく。交流のあるアーティストは、SUPER BEAVER、阿部真央、竹原ピストルをはじめ、俳優の生田斗真や東出昌大がバラエティ番組の企画で“今、会いたい人”としてMOROHAの名前を挙げるなど、その波紋はボーダーレスに広がりを見せる。さらに、ゆずの楽曲「カナリア」にはUKがギタリストとして参加、アフロが「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」の楽曲提供に参加するなど、活動の幅も広がり続けている。
MOROHAは今や“知る人ぞ、知る”存在ではなく、年齢、性別、音楽の趣味を超えて、数多くの人を“1対1”で突き刺しまくる稀有なアーティストと言っていい。そのすさまじいインパクトは、『THE FIRST TAKE』の「革命」からもしっかりと感じてもらえるはずだ。
「革命」はアルバム『MOROHA II』(2013年)に収録された楽曲。やりたいことがあるにも関わらず、居酒屋でくすぶり続ける自分に嫌気が差し、“今日が終わる いや今が終わる/そう思えた奴から明日が変わる”と自らを鼓舞するこの曲は、前述したとおり、MOROHAの核を担う楽曲のひとつだ。
床に胡坐をかいて座ったUKが弦を拭き、カポをつける。アフロとUKが目線を交わした次の瞬間、フィンガーピッキングでアコギの音色が響き、楽曲が始まる。“乾杯! 誕生日おめでとう/いや〜しかしあっという間だよな/俺たちもう今年34だぜ”とアフロが語りかけるのだが、その数秒の間に自分が「革命」という楽曲の世界にグイッと引き込まれるのがわかる。
「革命」は、飲み会の席で友達に向かって放たれる“ごめんな友よ 俺はもう行くよ/居酒屋だけの意気込みじゃゴミだ”という言葉によって、いきなり感情の濃度とスピードが上がる。その根底にあるのは、夢を持ってがむしゃらに生きることの切なさ、恥ずかしさ、虚しさ、そして、どこかにあるはずの希望。
どこまでも真摯、どこまでもまっすぐに言葉を放ち続けるアフロ。そして、ひたすら同じフレーズを繰り返しながら、アフロの声と結びつくことで濃密にしてしなやかなグルーヴを生み出すUK。ふたりだけで驚くほど奥深い物語とメッセージを描き出すパフォーマンスは、まさに唯一無二。ラストの“半径0mの世界を変える/革命起こす幕開けの夜”を全身で絞り出すアフロの姿、息づかいは、ゾクッとするような迫力に満ちている。
プレミアム公開された直後には「MOROHAの音楽は別に救ってくれない。ただ現実を突きつけてくる」「MOROHAは自分と本気で向き合いたい人が、逃げずにとことん向き合うために聴くもの」といったコメントが寄せられた。そう、「革命」は聴く者に“おまえの生き方はどうなんだ?”と問いかける楽曲である。ある人は過去を悔い、ある人は現在の自分を責め、ある人は自身の存在に嫌気が差すかもしれない。自らに向き合うことは決して楽しいことではないが、目を向けさせる、覚醒させるということもまた音楽の力、歌の力なのだと思う。
2022年2月11日には、初の日本武道館単独ライブを控えているMOROHA。『THE FIRST TAKE』で「革命」を目撃した視聴者はおそらく、“このふたりの音楽は生で体感してみたい”という気持ちを覚えるはず。そのときあなたは、彼らの歌と音を浴びながら、自分自身と向き合うことになるだろう。
ライブ情報
“単独”日本武道館
2022.02.11(金)日本武道館
YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q
MOROHA OFFICIAL SITE
https://moroha.jp/