■10月24日、日本武道館で追加公演も開催!
ジャーニーの7年ぶり、通算12回目のジャパン・ツアー『JOURNEY FREEDOM TOUR JAPAN 2024』が初日10月19日のAsueアリーナ大阪、21日のパシフィコ横浜を経て、23日、日本武道館で開催された。
アンコールなしのノンストップ全22曲&2時間強の怒涛のライブに、場内は8,000名(満員)のファンが酔いしれた。来日公演は、24日に日本武道館で追加公演も開催され、大阪・横浜公演を含む計4公演で2万5,000名を動員予定。本稿では23日に開催された日本武道館公演のオフィシャルレポートを掲載する。
■ライブレポート
19時ジャスト。定刻どおり客電が落ち、ニール・ショーンがステージに現れギブソン・シグネチャーでギターをかき鳴らし始めると、ジョナサン・ケインもキーボードの前に座りギターを追奏、聴き慣れたアルペジオが響き渡ると会場は喝采に包まれる。アーネル・ピネダの第一声、「コンバンワ、ブドーカン、トーキョー!」。
最初の1行を歌いだすと客席から歓声が巻き起こる。「Only The Young(オンリー・ザ・ヤング)」だ。ジャーニー結成50周年を記念するジャパン・ツアーはスティーヴ・ペリー監修の最新リマスターも話題となった『GREATEST HITS(グレイテスト・ヒッツ~永遠の旅)』 の1曲目からのスタートとなった。一気にボルテージが上がったまま間髪入れずに「Be Good To Yourself(トゥ・ユアセルフ)」になだれ込んでいくと客席は大興奮。もはや黄金のセットリストの予感だ。
バンド加入から17年、日本でのお披露目からすでに15年の月日が経つボーカルのピネダはすっかりバンドのフロントマン、ジャーニーの“顔”だ。圧巻のボーカルにはさらに磨きがかかり、数々の名曲の言葉とメロディが抑揚をつけてなぞられていく。ハイトーンがマックスになった瞬間にクリアになるオリジナル・ボイスは「57歳という年齢とは思えない」という常套句の次元を遥かに超えた歌唱だ。ピネダの横で嬉しそうにギターを弾きまくるショーンの笑顔も印象的だ。
栄光のキャリアを総括するかのように連続される演奏のなかで、時おり武道館を見渡しニヤリとするショーン。日本独特の反応、武道館の空気をこの夜も楽しんでいるようだ。アーティストや関係者は周知、武道館はステージ側から見ると1、2階スタンド席が壁のようにそそり立ち巨大なすり鉢の中にいるようで、自然なエコーが終始発生する。武道館の迫力のある一体感をこの夜も満喫しているかのようだ。
82年、『ESCAPE(エスケイプ)』ツアーの凱旋再演となったジャーニー初の武道館公演オープニングとなった「ESCAPE(エスケイプ)」や、日本から始まった『FRONTIERS(フロンティアーズ) 』 ツアーでのやはりオープニングだった「Chain Reaction(チェイン・リアクション)」の時を超えた客席の好反応はわかりやすい。「わかっているよ」と言わんばかりに大きく拳を突き上げるファンの近くまでショーンが歩み寄り、ギターで呼応する旧友との再会ともいえるようなキャッチボールはやはり微笑ましく、その姿はアメリカ最強のロック・バンドのリーダーとして、洋楽ファン不変の憧れのギター・ヒーローとしても力強い。
ジョナサン・ケインの流麗なピアノ・ソロから 「OPEN ARMS(オープン・アームズ)」のイントロ演奏に流れていき、会場のあちこちからため息と歓声が交わるこの夜最も美しい時間は、ピネダがケインの前で熱唱する瞬間からハイライトを迎えた。客席のスマホのライトのなかで永遠のジャーニー・ザ・バラードが響きわたる。このまま時間が止まってくれればいい−−筆者の後席の夫婦は寄り添って目に涙を浮かべていた。気が付けば武道館は静かな合唱が起きていて、その歌声は 「FAITHFULLY(時への誓い)」まで続いて行く。ケインの 「オーサカ、今夜も来てくれてありがとうー」 に 「トーキョー、トーキョー(笑)!」と客席のあちらこちらから突っ込みが入っていたが、これは日本を知りつくしたベテランのもはやお約束の愛嬌だろう(天然ボケかもしれない…)。
今回の来日メンバーは、ニール・ショーン(Gu)、ジョナサン・ケイン(Key)、アーネル・ピネダ(Vo)、ディーン・カストロノヴォ(Dr)、トッド・ジェンセン(Ba)、ジェイソン・ダーラトカ(Key)の過去最多の6人編成だ。必然的にステージのサウンドに厚みが増したことはもはや一目瞭然。
この日、最新アルバム 『FREEDOM(フリーダム)』 から唯一の演奏となったブルージーな 「LET IT RAIN(レット・イット・レイン)」での長い演奏アプローチは、昨今の“お家騒動”や “SNS誹謗中傷”をものともしない現メンバーとの息の合ったバンドの在り方を実証、大きな拍手に包まれていた。歌える凄腕ドラマーがジャーニーに再合流したことで「LIGHTS(ライツ)」「KEEP ON RUNNIN’(キープ・オン・ランニン)」のリード・ボーカルはカストロノヴォ(現レヴォリューション・セインツ)が担い、ショーンお気に入りのダーラトカが鍵盤を操りながら「SUZANNE(スザンヌ)」を器用に歌うのはセットリストのアクセントにもなっていた。
終盤ハイライトの 「WHEEL IN THE SKY(ホイール・イン・ザ・スカイ)」の間奏ではピネダがアリーナ客席をまわり、ファンとハイタッチ。「SEPARATE WAYS(セパレイト・ウェイズ)」ではイントロから客席は総立ちとなり、カストロノヴォの強烈なドラム・ビートにファンも身体を預けることで、終始武道館が揺れていた(筆者は椅子に座ってメモを執っていたがペン先がずっと揺れていた)。
そして迎えた「DON’T STOP BELIEVIN’(ドント・ストップ・ビリーヴィン)」。2024年、全米レコード協会=RIAAに1800万枚相当セールスに認定され 「アメリカン・ロック史上最大のヒット曲」 となったアンセムだ。『ESCAPE(エスケイプ)』のオープニングを飾ったキャッチー&ポップ、緻密にロックするジャーニー・サウンドの金字塔。ふたつのプレ的なコーラスと3つのヴァースを経て、サビまで到達するのに3分以上を費やすドラマティック構成で、タイトルのフレーズは3回しか歌われないというクライマックスは、ライブではよりエモーショナルな時間を演出してきた。夢をあきらめなければ、性別や世代をも超越した誰もが主人公になれる。夢と未来を、心地よいリズムと躍動感あふれるメロディに乗せて「信じることをあきらめないで」 のサビに到達する4分間のドラマ。まさにアメリカン・ドリームそのものなのだが、そのことをいま目の前で全身全霊で体現するフィリピン人の現ボーカル、アーネル・ビネダの存在もまたこの曲を色褪せることのない永遠のロック・アンセムにしていることに間違いはないだろう。圧巻のパフォーマンスでアンセムを終え、モニターに立ち、武道館を見渡すピネダの目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。歌詞に出てくるサウス・デトロイトは実在しないが、この夜はトーキョー・シティと歌われていた。
一気に駆け抜けた2時間のステージのラストは 「ANY WAY YOU WANT IT(お気に召すまま)」。キャッチーなメロディをなぞるピネダの伸びやかなハイトーンとメンバーの厚いコーラス、ショーンの速弾きソロにも顕著なジャーニー・ザ・ロック然としたバンドの一体感の象徴だ。51年目に向けたDepature(出発)を武道館を客席を埋めつくしたファンと祝う大団円となった。
TEXT BY 安川達也
PHOTO BY Masanori Doi
リリース情報
2024.09.18 ON SALE
ANALOG『GREATEST HITS (グレイテスト・ヒッツ~永遠の旅) <2024年最新リマスター:180g重量盤>』
ジャーニー ベストヒットPLAYLIST
https://sonymusicjapan.lnk.to/JourneyJPTour24
※24日終演後は、武道館公演セットリストのPLAYLISTに更新予定