DISH//がニューシングル「沈丁花」をリリースした。
フィジカルCDとしては、人気TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」の第5期オープニングテーマを収録した前作「No.1」から約半年ぶり、通算14枚目となるシングルの表題曲は、2020年8月に配信リリースされた「僕らが強く。」に続き、はっとり(マカロニえんぴつ)との再タッグで、現在オンエア中のドラマ『二月の勝者―絶対合格の教室―』(日本テレビ系)の主題歌として書き下ろされた、行進曲のようなエールソングとなっている。
ボーカル&ギターの北村匠海がはっとりとふたりでスタジオに入ったところからスタートしたという制作過程や彼らが込めた思い、初披露の場となったコニファーフォレストでの野外ライブの感想などをたっぷりと語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 藤城貴則
■次からの指標になるライブだった
──2年ぶり2度目の開催となった富士急ハイランド・コニファーフォレストでの野外ワンマンライブ「DISH// SUMMER AMUSEMENT ‘21 -森羅万象-」を終えたばかりの感想から聞かせてください。
北村匠海(以下、北村):だいぶ前の僕らは、ライブというものを構築せずに突っ込んでいって、奇跡が起こるのを待っていたんですけど、ここ数年はライブを組み立てて、建築するという土台作りの時期を過ごしていたんですね。でも、コニファーでは両方が組み合わさった瞬間があって。ライブというものを組み立てたうえで奇跡も起こった。次からの指標になるライブだったなっていうことを、ライブが終わった後に、みんなの共通認識としてもあったので、すごいライブだったなと感じてますね。
橘柊生(以下、橘):すごくいいものができたし、これからの士気も上がった、自分たちのハードルを高めたライブでもあるなって思いましたね。
泉大智(以下、泉):すごく楽しかったし、めちゃくちゃいいライブでしたね。自分的には、いい意味で、客観的にドラムを叩けていたなと思っていて。「モノクロ」はかなり久しぶりにやったんですけど、やり始めた当時は、勢いだけだった。でも、コニファーでは、ちゃんと音楽を理解して、もっと俯瞰的に見ながら叩けたなと思ってて。それが全体を通してあったんですね。ちゃんとライブを作れたし、音楽をより俯瞰で見れたし、成長したなっていうのを実感した一日でしたね。
矢部昌暉(以下、矢部):楽曲的にも挑戦的なものがいくつかあって。匠海と柊生がふたりで前に出て歌う「星をつかむ者達へ」があったり、「rock‘n’roller」と「Newフェイス」をマッシュアップさせたりとか。ちょっと前のDISH//では成立できなかったことも、もうできるようになってきて。だから、ライブをやりながら、どんどん進化していってるなと感じてて。個人的には、今までのライブは終わってからもピンピンしてたんですけど、このライブは本当に出し切ったというか、後半は魂が抜けてて。終わってからも余韻に浸って、ずっとぼーっとしてるっていうのは初めてだった。初めての経験をさせてくれたライブでしたね。
──今、何曲か出てきましたが、それぞれが特に印象に残ってるパフォーマンスは?
北村:ものすごく酸素が薄かったんですよね。自分の声をセーブして、綺麗に歌うことはいくらでもできるんですけど、なんか、出し切らなきゃっていう感覚にずっと襲われてて。MCでも「倒れる寸前までいった」と言ったんですけど、最終的に口から魂が出る!と思ったのは、センターステージでやった、「rock‘n’roller」と「Newフェイス」のマッシュアップ。あのときはもう意識が飛んでましたね(笑)。
──4人で向かい合って演奏しながら、激しいヘドバンを繰り出してました。
北村:最終的に僕、気づいたときには、床に這いつくばって歌ってましたからね(笑)。ああなったのは本当に久しぶりだったし、うまく歌うとか、ちゃんと演奏するというところから、ひとつ抜け出すことができた感覚があって。それは、あの場に集まってくれたみんなの思いとか、いろんな環境とか、ものすごい大きなエネルギーのおかげだなって思ってます。
橘:あのセンターステージは、俺も久しぶりにアドレナリンが出過ぎましたね。もう、メチャクチャにしてやろう!みたいな(笑)。最近はそれがなかったから、久しぶりに“あ、楽しい!”ってなって。ドーパミンというか、脳汁が出てました。
──その後の「愛の導火線」もかなり盛り上がってましたね。
橘:そうですね。あのセクションは、DISH//っていう感じがしてすごく良かったな。
泉:結構、ハイライトが多かったよね。最初のブロックもめちゃくちゃ良かったし。1曲目の「星をつかむ者達へ」をバンドバージョンでやったのは初めてだったんですけど、いいなっていう瞬間が結構あって。「Rock Your Body Rock」では匠海と柊生の2MCの可能性が見えて良かったですね。
──ふたりのマイクリレーが生バンド版のビースティーボーイズのようでカッコ良かったですね。矢部さんは?
矢部:曲も良かったんですけど、MCも良くて。匠海の伝える言葉がまたさらにパワーアップしたなと思ってて。匠海のこれまでの経験や今の年齢もあって、言葉一つひとつにちゃんと重みと説得力があるんですよね。僕もライブ中、普通に聞き入っちゃって、気づいたら、曲フリされてて、“あ、やべ”みたいなことが何回かあって。ここ最近やってたライブのMCはずっといいなと思ってたんですけど、コニファーはどの言葉も良かったですね。
■“明日への希望”が少しでも持てるといいなと思ってました
──「DAWN」の曲中では、“ひとりぼっちじゃない”という言葉を投げかけてましたね。その後のMCでも「何もかも一人で抱え込んで生きることはないんだって思います。もしひとりぼっちと思ってる人がいたら、そんなことないよ、やっぱり。僕は今、実感してます」と語ってました。
北村:僕もそうだったし、友人にもそういう話をされたこともあったんですけど、今、やっぱりすごく心細い人が多くて。音楽をやってる僕らが作り出す空間が、その捌け口になっていたらいいなと思いつつ、やっぱり僕は、“ひとりぼっちはいない”と思ってて。僕らは必ず誰かから生まれてくるし、必ず誰かと出会ったり、別れたりする。ひとりぼっちを作り出すのは自分自身しかいないなと思ってるんですね。
──自分で“自分はひとりぼっちだ”っていう空間を作り出してるんじゃないかってことですよね。
北村:そうですね。僕もその経験があって。中学生のときなんですけど、親の言葉は耳に入ってこないし、友達とは目も合わせないし、誰よりも早く校門から出るタイプだった。でも、今、振り返ってみると、それを作り出していたのは自分だなと思って。そういう思いが曲中にブワッと湧き上がってきたんですよね。違う環境で生まれ育ってきた人たちが同じ場所に集まって、他人かもしれないけど、今、ひとつのものに向かって、隣り合わせで同じ気持ちを共有している。それって、すごいことだよなと思ったら、「ひとりぼっちじゃない」っていう言葉が溢れたし、ライブを通して、“明日への希望”が少しでも持てるといいなと思ってましたね。
──そして、アンコールでは新曲「沈丁花」を披露しました。
北村:改めて、DISH//のエネルギーというか、DISH//に近い明るさを感じましたね。4人で作った曲で、アンコールの最後にやった「乾杯」と同じように、曲自体に前向きさがあって、みんなで歌うところもあって、DISH//らしい。ファンの人たちが思う“DISH//らしい曲”に新たに立候補するような曲になりました。そして、アンコールも似合う。
──そうですね。ホールツアーだったら、大智さん先頭で4人でフロアを練り歩きながら歌ってほしいなと思いました。
泉:それはちょっと(笑)。
矢部:あはははは。昔、「D・A・I・ C・H・I」っていうソロ曲でやってたな。
泉:でも、行進曲、みんなでやってる感じがあっていいですよね。小学校のときから鼓笛隊で小太鼓をやってたけど、あれ、すごい楽しかったし。そういうエネルギーがこの曲に詰まっている気がするので、まだ歌えないですけど、ライブで一緒に歌えたり、みんなで作り上げていけたらいいなと思います。
橘:本当にアンコールっぽいし、正直なところ、早くお客さんが声を出せる状態で披露したいですね。「乾杯」についで、みんなでハッピーに一緒に歌える曲になりそうだなっていう感じがしますね。
■受験を頑張る人たちが花を咲かせるまでの、あったかい道のりに
──改めて楽曲の成り立ち、スタート地点からお伺いできますか。
北村:はっとりくんとアコギを持ち寄って、あぐらをかきながら作っていたんですけど、最初はもう、世間話から入って。
──少しだけその様子が映像で公開されてますよね。どうしてふたりで共作しようと思ったんですか?
北村:「僕らが強く。」のときも、僕らの思いを曲に乗せたいというのを伝えて、はっとりくんにメンバー全員からメッセージを送って。僕ら自身が音楽を届ける側として、僕らも責任を背負いたいんですね。どの曲にもDISH//の血が流れていてほしい。それは、2020年からの僕ら4人の共通認識としてあって。だから、はっとりくんと、「じゃあ、一緒にやろうよ」っていう話から入りましたね。
──受験をテーマにした日本テレビ系土曜ドラマ『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』の主題歌にもなってます。ふたりでどんな話をしましたか。
北村:受験生だけじゃなくて、一人ひとりに共通してある、お母さんの作るご飯とか、家族や友人とか。絶対にあるバックグラウンドっていうものの背中を押したいと思ったんですよね。それが最終的に、受かる/受からないはあるにせよ、受験を頑張る人たちが花を咲かせるまでの、あったかい道のりになればっていう話をしてましたね。
──ちなみに、皆さんは受験の思い出はありますか。
北村:僕、本当は大学受験をしたかったんですけど、諦めたんです。だから、大学への憧れはあったし、高校受験のときも塾には行ってましたけど、苦労という経験は自分にはなかった。8歳のときから普通じゃない人生を歩んでるっていうのもあって、受験に関しては、友達の話とか、その顔を思い出しながらという感じでしたね。
橘:僕は塾に行ってましたね。好きだった子と一緒の高校に行こうと思って頑張ってたんですけど、そこを落ちて。でも、俺、そこに行ってたら、確実にDISH//をやってないんですね。滑り止めで受けたほうに行ってからDISH//が始まった。滑り止めのほうの高校に通いながらDISH//の活動もできたけど、最初の志望校に受かっていたらDISH//に入ってなかった。塾で勉強をもうちょっと頑張ってたら、今、ここにいないって思うと、ちょっと不思議な感じがしますね。
泉:俺も高校受験しか経験がないんですけど、本当に勉強が嫌いだったので、中学の成績が酷くて、行けそうな高校が1〜2校しかなくて。そのときから芸能をやっていたので、自分が行けそうでいて、しかも、融通がきくところに行くには自分の成績じゃ足りなかったんですね。だから、最後の数ヵ月かで塾にぶち込まれて。
矢部:ぶち込まれて(笑)。
泉:親にぶち込まれた。そこで追い込んだんですけど、塾にお金を払ってくれたのは親だし。行くからにはやらないとなって思ってましたね。
矢部:僕は中学、高校、大学受験、全部、経験してて。
橘:中学校も受験なの?
矢部:受験して受かったんだけど、「天てれ」(「天才てれびくん」)が決まって。勉強についていけないから、普通のほうに行ったの。特に大学受験はDISH//の活動をセーブせずに臨んだので、大変でしたね。ちょうど反抗期も重なっていたので、親にはすごい迷惑をかけて。僕もいっぱいいっぱいでしたけど、親も大変だったろうなって思ったので。「沈丁花」は当時を思い出して刺さる曲ですね。
──特にどのへんが刺さりますか。
矢部:とりあえず、母ちゃんに「ありがとう」なんて言えなかったから。全部、自分の中に溜め込んで、親にも相談できずに、溜めて溜めて爆発して、親に変なこと言っちゃうようなことばかりだった。今となっては、もっと弱音をちゃんと言えてたらなと思うし、帰る場所があるって素敵なことなんだなって思いましたね。当時の自分に聴かせてあげたいですね。
橘:僕は親に対して、日頃から「ありがとう」と言っていたんですけど、親に向けてのものが弱いんですよ。CMで味噌汁を作るアニメがあって。お母さんに感謝をする題材なんですけど、それを見ただけで泣いちゃう(笑)。だから、この曲でいいなと思うのは、親に対して感謝を言うっていうところですね。改めて、親を大事にしようっていう気持ちになりますね。
泉:親への感謝みたいなところの大事さがすごく伝わってくる曲ですよね。僕も10代のときは、小っ恥ずかしくて、親に対して、なかなかそういうことを言えなかった。でも、僕らが二十歳を過ぎてくると、親もそれなりの年齢になってくるわけじゃないですか。そうなってくると、意識も変わってきて。親は当たり前に存在するものではないし、時間は限られてるなと思う瞬間があって。今、生きているうちに感謝しなきゃっていう意識になる。10代だとそれに気づけないですよね。親がいて当たり前という感覚だと思うんですけど、そこを気づいてもらえたらいいなって思いますね。
■親の姿というか、家族というものへの応援ソングに
──受験生への応援ソングだけど、家族への感謝の曲になってるんですよね。
北村:受験生と一括りでいっても、それぞれ抱えているものも違うし、ひと言では応援できないなっていう話をして。あまり限定してしまうのも違うので、受験生に共通してあるものってなんだろうねっていう話になったときに、家族の風景が浮かんだんですよね。僕も中学生のときに、毎朝、母が「行ってらっしゃい」って送ってくれて。そこで一回、手を上にあげるんです、絶対に。振り返って、手をあげて、「行ってきます」って言う。帰ってきたら、「ただいま」がある風景が残ってて。中学校のとき、本当に暗かったので。それにうなずくだけの日もあったりしたけど、その時間がすごく好きだったんですね。あんまり行きたくなかった中学校に送り出されるんだけど、あれがなかったら、どこかで擦れてたと思う。きっと、形は違えども共通してある親の姿というか、家族というものへの応援ソングにしたいなと思って。多感な時期でお母さんのほうもむきになってしまうこともあるだろうし、笑顔で温かく抱きしめてくれる人もいるだろうし、大人になってみて、自分のお母さんはこうだったなって振り返ってもらえたらうれしいし、今、まさに受験生の人たちは、改めて、家族へのありがたさを感じてほしいですね。
──レコーディングはどうでしたか?
矢部:今回、久々に4人で同じマイク一本に、ガヤみたいなものを入れたのが、すごい楽しかったですね。「乾杯」以来かな?
橘:最近はコロナもあって、ガヤも個々に録ってたからね。「沈丁花」は4人で入ったっけ?
矢部:やったよ。あと、口笛オーディションがあって。柊生が選ばれたんですけど。
橘:ああ、やったわ。口笛オーディションで勝ったら、ディレクターの方がソロでおいしい焼肉に連れてってくれるって聞いて頑張った。今はそれを楽しみにしてます(笑)。
泉:めちゃくちゃいいな。楽器Recに関していうと、僕はビートルズを意識して、ネオ・リンゴスターという感じでドラムを叩きました。あと、毎回、レコーディングのたびにベーシストが違くて。それが、いい意味で、勉強になるというか。どの曲もほぼほぼ違うので、アプローチが全然変わってくるし、いい経験になってますね。
北村:はっとりくんと作ってたときに、「ビートルズじゃん」っていう話もしてたので、そこが言わずとも伝わっててよかったですね。ビートルズも、「ヘイ・ジュード」のように誰かひとりに向けての曲もあるけど、まるっと愛!みんなでひとつみたいな曲もたくさんあって。今、こういう世の中だからこそ、みんなで歌いたいっていう願いを込めた曲を作りたかったんですね。ドラマの背景も考えて、ひとりじゃなく、みんなで一歩一歩進んでいく行進曲で、みんなで歌う楽曲にもなってる。受験は一人ひとりの戦いかもしれないけど、やっぱりひとりじゃないっていうメッセージはこもってますね。
──MVはどんな内容になってますか。
北村:DISH//の演奏パートがありつつ、3組のドラマがあって、その全シーンを花が見守ってるっていう。僕らの立ち位置としては、前向きに背中を押すメッセンジャーですね。久々にわいわい騒ぎながら歌ったり、遊んだりしてる。オアシスの「ワンダーウォール」のような狭い画角の中でみんながキュッとなって歌ってて。そういうレトロ感もあって、すごく好きなMVです、僕。
橘:それぞれが別のストーリーのようで、ひとつのストーリーになっていたりもしますね。僕らも久しぶりに、ワイワイしながら撮って。最近、演奏シーンが多くなったから、なんのMVぶりかな。「No.1」や「僕らが強く。」も熱いシーンが多くて。
北村:「Starting Over」(2018年7月)くらいから重めのMVが多かったからね。
矢部:「HIGH-VOLTAGE DANCER」(2016年6月)以来じゃない?
泉:むちゃくちゃ前だね(笑)。
橘:いや、ワイワイ系は本当にそれくらいぶりな気がする。「僕たちがやりました」(2017年8月)もストーリーあったし。久しぶりにそういうシーンがあるのでお楽しみに!
泉:まじでカッコつけてないし、いい意味で素っぽい感じ。4人が仲良く楽しんでる感じがすごい出てるし、ドラマもグッとくるMVになったんじゃないかなと思いますね。
──DISH//も家のようではありますよね。
北村:たしかに。もう一緒にいすぎてなんだかなっていう(笑)。こんなに関係性が変わらないのが不思議ですね。
矢部:この曲には“帰ってくる場所があるのが素敵だ”っていうテーマもあって。僕らはそれぞれ個々でも活動していて、4人で集まって音楽をやってる。それこそDISH//っていうのは、僕たちにとっては、どこに行ってもいつでも帰ってこれる家みたいな場所という感覚がありますね。
──ありがとうございます。ここからカップリングについても聞かせてください。今回は配信済みの「ありのまんまが愛しい君へ」を含むメンバー制作の4曲が収録されています。ヘヴィーなラウドドック「Shout it out」は、映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の日本語吹替版主題歌になってます。
北村:僕、映画を観て、ヴェノムよりも、対するヴィラン側(カーネイジ)に共感して。すごく悲しい敵なんですよ。その最愛の人が、叫ぶことを武器とする女性なんですよ。そこもまたすごく悲痛な叫びで、悪に染まっていくんだけど、すごく切なくなって。何が正義なのかもわからないんですけど、僕はそっちに感情移入した。そもそも、そこに孤独というものが存在して、そのふたりが夢見る世界も必ずあって。悪者かもしれないし、決して肯定できるものではないかもしれないけど、灰色の世界に寄り添える希望もあるんじゃないか。そこに声は届くのかな?と思いながら書いた感じですかね。
──柊生さん作詞、作曲、編曲の「B-BOY」ではマイクリレーが聴けます。ハードコアパンクとラップを融合させた曲は今のDISH//に合いますよね。
橘:好き勝手に自分の好きな曲を作ってやろうと思って書いて出したら、まさかで通って。自分でもびっくりしてます。
矢部:最初のギターから掴まれるし、言葉めっちゃ詰まってるのにあっという間に終わるのもこの曲の良さだなって思いますね。
泉:最高ですね、これ。デモを聴いた段階でよっしゃと思いました。遊び心があって、好き勝手にやってる感がめちゃくちゃ出てていいなと思いますね。
北村:柊生の好きな感じだし、僕らも聴いていた、2000年代の日本語ラップのような馴染みがあって、聴き心地が良かったですね。僕は2MCというか、柊生がラップしてるだけの曲があってもいいんじゃないかっていうのも言ってて。ソロ曲っていう立ち位置じゃなくて、普通にライブの中でやってもいいんじゃないって喋ってたんですけど、これをふたりで歌うのが楽しみですね。
■今、曲を作らないと!っていう衝動に駆られて
──早くライブで観たいです。さらにもう一曲、匠海さん作のミドルバラード「揺れてゆく」もあります。
北村:『フジロック』のライブ映像をボケーっと観ていたときに、“いま、やらないと!”と思って、2曲くらい作ったうちの1曲ですね。インスピレーションをもらったというよりは、感動があったし、今、曲を作らないと!っていう衝動に駆られて。イメージ先行だったんですけど、なんかこう、揺れてて…。揺れてたのがパッと入ってきて、「あ、揺れたんだ〜」っていうところから。
泉:あははははは。揺れてたんだ。
北村:そう、揺れたのは心ですね。僕は『フジロック』を観てて、揺れ動くものがあった。僕らが揺れ動かす側になるときもあるし、受け取る側になることもある。それは音楽に限らず、芝居の場でも、日常を生きていても、誰かと喋っていてもあるんですよね。それが、毎日を積み重ねていく中での“あのときのあれ”っていう“思い出の点”になっている感じがして。DISH//の思い出を振り返ってみても、ちゃんと自分の心が揺れたときに、すごく細かいことでも“あのときのあれ”という点が記憶に残ってる。そういう一瞬みたいなものを曲にしたっていう感じでした。
矢部:その曲を作ったメンバーが歌のディレクションをしてくれるんですけど、最後の“揺れた/揺れたんだ”って歌ってるところは、匠海に「草原にいる山羊だ」って言われて。そういうのを思い浮かべながら歌ったりしたり、それぞれディレクションの仕方が違うのも面白いなって感じてますね。
泉:これもめちゃくちゃ好き。クセになるし、メンバーの作った曲に、ドラマーに徹してドラムを叩いた感じがすごく楽しかったんですよね。バンドだなって感じて、めちゃくちゃ楽しくレコーディングしたし、早くライブでやりたいな、みたいな気持ちになりましたね。
■あくまでも“今の僕ら”が全て
──年末にはパシフィコ横浜での3デイズ公演が控えてます。
北村:10周年なので、必ず特別な3日間にしたいですね。僕らが10年を振り返っているなかで、いろんな過去があって。その過去を僕ら自身も噛み締めながらライブをすると思うんですけど、僕ら自身が過去にだけ顔を向けてしまってはダメだなって思う。インディーズデビューの「It’s alright」とか、メジャーデビューを発表したときの「I Can Hear」とか。そういう、自分の心が揺れ動いた、みんなの心が揺れた思い出の点みたいなのがライブの中に散りばめられているけど、あくまでも“今の僕ら”が全てであって。あの頃を知ってる人たちばかりではなかったりするし、どこに焦点当てるのかは難しいんですけど、僕ら自身がいちばんグッと噛み締められる3日間になるのかなと思ってますね。
プロフィール
DISH//
ディッシュ/北村匠海(Vo、Gu)・矢部昌暉(Cho、Gu)・橘柊生(DJ、Key)・泉大智(Dr)の4人で構成された、演奏しながら歌って踊るダンスロックバンド。2011年12月の結成以降、日本武道館での単独公演を4年連続で開催するなど着実に支持を集め、2020年YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にて公開された「猫」の歌唱映像が話題となり動画再生数1億5千万回を突破、ストリーミング総累計再生数は4億回を超えるなど大ヒット。映画やドラマ、舞台、モデルなど、4人は個々でも活動を行っている。
リリース情報
2021.11.17 ON SALE
SINGLE「沈丁花」
ライブ情報
『DISH// 10th Anniversary Live』
2021/12/16(木) パシフィコ横浜 国立大ホール
2021/12/17(金) パシフィコ横浜 国立大ホール
2021/12/18(土) パシフィコ横浜 国立大ホール
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