■「今を生きる人たちにとっては何かの助けになる作品だと思うし、世の中を変えられるのは若者です」(北村匠海)
人生の“マジックアワー”を描いた20代の青春譚『明け方の若者たち』が、12月31日に全国公開となる。11月14日には東京のTOHOシネマズ日比谷にてプレミア上映会舞台挨拶が行われ、主演の北村匠海、共演の井上祐貴、原作者のカツセマサヒコ、松本花奈監督が舞台挨拶に出席した。
明大前の飲み会で【彼女】(黒島結菜)に一目ぼれする【僕】役の北村は、「カツセさんに僕の人生を覗かれていたのではないか? と錯覚したくらい、僕自身の思い出が詰まっている原作でした。21歳くらいの当時に聞いていた音楽や行っていた場所などを思い出して、社会に出て絶望しながらも毎日をキラキラと楽しく生きてやろうと模索していた時代を思い出しました」と思い入れたっぷり。
演じる上では「芝居をしないところから始めました。描かれている感情が生々しいので、ドキュメンタリーに近いリアリティというか、体感したものを言葉にしようと思いました」と等身大を意識したという。
新入社員の【僕】の同期で、後に親友となる【尚人】役の井上は「カッコよくいようとするところを意識」と演じる上での意識を語ると、すかさず北村からは「1ヵ月くらいバッティングセンターで練習したんだよね?」との情報が。それに井上は「僕は全然打てないので、バッティングセンターでのシーンがあると知ったときは寒気がした。尚人は何をやってもある程度できてしまう人なので、打たなければ! と練習しました」と熱のこもった役作りを回想した。
松本監督はそんなふたりに「北村さんは自然体で演じてくれて、撮影しながら芝居なのか本当なのかわからなくなる瞬間がありました。井上さんは歌の練習も含めて、細かいところまで努力をたくさんされる方でした」と感謝。一方、デビュー小説の映画化にカツセは「驚きと喜びがあるけれど、実感が湧いていないまま今に至ります。これがドッキリだったらどうしよう」と原作映画お披露目に戸惑っていた。
撮影場所は、若き日の北村にとってゆかりのある場所だったようで「下北、高円寺、明大前、バッティングセンター。すべてに思い入れがあった。悶々としていた学生時代に唯一自分を許してくれる場所。高校時代はみんな渋谷に行くのに、自分はあえて下北に行くという、はたから見たら変なひねくれ方をしていました」と若気の至りに思い出し笑い。しかも「当時はサブカルがすべてだ、サブカルで生きてやるぜ! と思っていたので、前髪パッツンのテクノカット。学校に対するアンチテーゼのつもりだったけれど、校則規定にはぴったりとハマっていたので、先生からは『北村を見習え!』と言われていました」と意外なオチで笑わせた。
また映画の内容にちなんで“沼だった時期”を発表。松本監督は「高校時代はストレス発散でひとりカラオケ沼だった」、カツセは「中学時代は男子校。今でいう出会い系サイトで必死に出会いを求めていた」と答えた。井上は「ゲームアプリで課金沼。ほしいアイテムがあるとついつい」と苦笑い。これに北村も共感し「僕も重課金勢なのでわかります。ファッションではいいものを長く使うという思考になって買い物をしなくなる。それで浮いたお金はどこに行くのかというと、ゲームアプリでの課金になる。お金の使い方は人それぞれです」と現在も課金沼にどっぷりの様子。
さらに北村は「漫画や小説のアプリも8個くらい入っていて、しばらく待てば無料で読めるのに『120円』と書かれているボタンを押す。次の話を無料まで待てない」とトークも止まらず「大人になったと感じる時は、ゲームを初めて買ったとき。それまではお母さんやサンタさんにお願いするものだった。それが自分のお金でカセットを買って、商品が入った袋をもらったときに…大人になったなあと思った」と実感を込めていた。
また自身の“マジックアワー”については「20歳、21歳くらいの頃は仲間たちと下北で傷を舐め合い、わかりやすい泣ける曲で涙を流す時もありました。歌って飲んで、朝になって食べる牛丼が本当に美味しかった。ねぎ玉牛丼におしんこをかけて食べる。あのときが青春でしたね」と駆け出し時代のエピソードを懐かしそうに披露していた。
最後に主演の北村は「若者たちが集まって作れたのがうれしい。今を生きる人たちにとっては何かの助けになる作品だと思うし、世の中を変えられるのは若者です。自分自身前向きなエネルギーを持ちながら生きているので、この映画を観てみんなで仲間になろうじゃないかと、そうして明日を迎えようじゃないかと、そんな思いを込めて作りました。自分と重ね合わせられる人もいるのではないかと思うので、ぜひ楽しんで」と同世代に向けてアピールしていた。
映画情報
『明け方の若者たち』
12/31(金)全国ロードショー
出演:北村匠海
黒島結菜 井上祐貴
山中崇 楽駆 菅原健 高橋春織
三島ゆたか 岩本淳 境浩一朗 永島聖羅 木崎絹子 寺田ムロラン 田原イサヲ
わちみなみ 新田さちか 宮島はるか
佐津川愛美 高橋ひとみ /濱田マリ
監督:松本花奈 脚本:小寺和久
原作:カツセマサヒコ『明け方の若者たち』(幻冬舎文庫)
主題歌:マカロニえんぴつ「ハッピーエンドへの期待は」(TOY’S FACTORY)
制作プロダクション:ホリプロ
製作:「明け方の若者たち」製作委員会 配給:パルコ
(C)カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会
R15+
■あらすじ
「私と飲んだ方が、楽しいかもよ?笑」
その16文字から始まった、沼のような5年間。
明大前で開かれた退屈な飲み会。そこで出会った“彼女”に、一瞬で恋をした。
下北沢のスズナリで観た舞台、高円寺でひとり暮らしを始めた日、『フジロック』に対抗するために旅をした7月の終わり…。
世界が“彼女”で満たされる一方で、社会人になった“僕”は、“こんなハズじゃなかった人生”に打ちのめされていく。
息の詰まる会社、夢見た未来とは異なる現在。夜明けまで飲み明かした時間と親友と彼女だけが、救いだったあの頃。
でも、僕はわかっていた。
いつか、この時間に終わりが来ることを…。
『明け方の若者たち』公式サイト
akegata-movie.com