■“梟note”は、歌い手・弱酸性がシンガーソングライターとして活動する際の名義
梟note(ふくろうのーと)が、5月5日にZepp Haneda(TOKYO)にて開催した自身初となるワンマンライブ『Diluculo(ディルクロ)』のオフィシャルライブレポートが公開となった。
【ライブレポート】
「学生時代に肉体的にも精神的にもしんどい日々が続いていたのですが、そのなかで唯一リラックスできるタイミングが夜でした。夜の象徴として“梟”という存在を選び、自分の書いた音楽で世の中の人たちを少しでも明るくできたらと思って、“人生を綴る”という意味で、“note”という言葉を付けました」
歌い手・弱酸性がシンガーソングライターとして活動する際の名義である梟note。この名称に関して、当日のMCでは上記のような内容で語られた。
忙しい生活において穏やかに過ごせる時間というのは、夜や深夜という人は多いはず。その時間のなかで彼が音楽に救われたように、彼の音楽・歌声に救われた人もいるだろう。それほど梟noteの楽曲や歌声には、どこか元気や活力をリスナーに与える成分が含まれているようで、聴くと心にスッと溶け込むような感覚になる。これまではスマートフォンやPCの画面越しでしか知ることができなかった彼の歌声を、ついに1stライブで直接体感することになった。
結果、「世の中の人たちを少しでも明るくできたら」という彼の想いを体感することになった。なぜなら、ライブ終演後、観客の誰しもが満面の笑顔で、どこか元気そうに会場をあとにしていたからだ。生のライブだからこそ、彼の想いを実現することができたのだと感じた。
5月5日、会場はZepp Haneda(TOKYO)。梟noteの1stライブのタイトルは『Diluculo(ディルクロ)』。ラテン語で“夜明け”を意味する。
開演前のステージの前面には紗幕が降りており、そこに夜空が投影され、開演時間になるとバンドメンバーを率いて、梟noteが登場した。
大歓声が上がるなか、ライブがスタート。1曲目に選曲されたのは、「Temptation」。2023年、自身の誕生日である8月17日に弱酸性として配信リリースした楽曲だ。冒頭の“Dancing night”というフレーズに、まさに“この夜を楽しもう”という気持ちが乗った選曲となった。梟noteのリズミカルかつ透き通った歌声に、自然と観客も手拍子を重ねていく。スタートから会場に一体感が生まれ、楽曲が終わると盛大な拍手と歓声が巻き起こった。
そして、MCで最初の挨拶。だが、少し驚きの内容であった。
「皆さん、こんばんは。弱酸性です。今日は最高の一日にしましょう」
梟noteのライブのはずが、なんと弱酸性として挨拶を行ったのだ。ここからは歌い手・弱酸性として、バンドを率いた壮大な“歌ってみた”カバーを披露していく。紗幕には楽曲の世界観を表現した映像と歌詞が表示され、そこに弱酸性の歌声と、バンドの演奏がシンクロする。
「ロウワー」「ドーナツホール」「独奏」と、3曲続けてボカロP楽曲を披露。観客はライブで聴けた驚きと喜びで歓声を上げながら、弱酸性の世界観を楽しんでいた。
続くMCで、「今回のライブタイトルは“明日への希望”という想いで名付けました」と話し、学生の頃、唯一リフレッシュできる夜に、“音楽”と過ごす時間が自分を救ってくれたこと、そして“音楽”に恩返ししたい旨が伝えられると、観客も拍手と歓声で彼の言葉に応えた。
ここから、さらに細かいテクニックを使った弱酸性の歌唱技術が如何なく発揮される。「メーベル」では、様々な心の変化を歌声で演じ、オリジナル曲「Distortion」では、静けさを経て力強く歌い上げるサビで、一気に心を奪われるようであった。「ヤミタイガール」では、ブレスまで使った色気を声に乗せ、「余所事」では、ファルセットやフェイクを入れ、楽曲の雰囲気をグッと膨らませていた。
彼はどんな楽曲でも、会場にいる全員を弱酸性、梟noteの世界に連れていってしまう。楽曲や歌詞に合わせて様々な歌唱技術を駆使するからこそ、曲の世界観がよりリスナーに届くのではないだろうか。そしてライブ会場という生の現場だからこそ、楽曲がより心に浸透するように感じられた。
続いて披露されたのは、椎名林檎の名曲「丸の内サディスティック」。弱酸性のセクシーな歌声が会場中に響きわたり、観客は音に身体を預けながら揺れていた。「それがあなたの幸せとしても」では、声の強弱を変えることにより、祈るような内容の歌詞を表現。オリジナル楽曲「綻び」では、語りかけるような歌声が、切なさと愛しさのような感情を増し、「ワールド・ランプシェード」では、伸びのあるハイトーンボイスを響かせた。
そして、のちのMCで「夜明けとともに幕が上がり、1羽の梟が降り立ちました」と語っていたように、いよいよ紗幕がなくなり、生身の梟noteが姿を現した。
ここから改めて梟noteのステージの開演である。最初に披露されたのは「オボツカナシ」で、ちょうど1年前の5月5日に配信リリースされた自身初の楽曲だ。夜にぴったりのクールで疾走感溢れるサウンドに合わせて、ロートーンの声から始まり、サビで一気にテンションを上げる歌声に、会場の高揚感もどんどん増していった。改めて、梟noteの魅力がライブでこそ、より実感できることがわかっていく。披露されるオリジナルの楽曲を、耳だけでなく、身体全身で味わうことができ、その魅力がひしひしと伝わってきた。
ここからラストまでオリジナル楽曲を次々と披露。「New Style」では、ハイトーンかつソウルフルなボーカルが映え、ファンキーな演奏がグルーヴィな楽曲を完成させていく。「愛ばっかり」では、どこか妖艶な雰囲気を漂わせながら、より低音の効いたボーカルを披露。「粛清」では、様々なジャンルを組み合わせたかのような、唯一無二の梟noteサウンドを見せつける。AメロとBメロで異なる歌唱を聴かせ、サビでは豪快なシャウトを聴かせたが、この変幻自在ぶりも彼の凄みだろう。
「patience」では、一転して爽やかでポップな一面も覗かせる。「一緒に歌ってください」と始まったこの楽曲では、歌詞にもあるような“幸せ”が感じられるサウンドとボーカルを届け、観客も幸せを感じるように歌い、手を振っていく。本編ラストに披露されたのは、4月にリリースされた新曲「私欲」。爽やかさと壮大さを感じさせるサウンドと、生き抜く覚悟を綴った歌詞。“人を明るくできたら”という梟noteの想いが、メロディとして乗った、ラストにふさわしい曲となった。
これで梟は飛び立って行った…かに思えたが、ある道具を持って帰ってきた。
アンコールに応えて戻ってきた梟noteは、なんと1本のギターを抱えていた。そして、弾き語りを始める。これまで名義を隠して“フクタロウ”として弾き語りライブを行ってきたが、ついに自身のライブで披露することとなった。
届けられたのは、本公演の1曲目に披露した「Temptation」、そしてSaori Sawadaの楽曲「きみのかみ」のカバー。観客にとってうれしいサプライズとも言えるこの演出だが、梟noteが自分自身に対しての挑戦や覚悟を現しているかのようでもあり、努力し成長することで表現できる“音楽への恩返し”の方法を模索し、辿り着いた回答のひとつにも見て取れた。
演奏中、静まり返る会場。曲が終わると、拍手と歓声が巻き起こりを送り、観客は感動の表情を浮かべていた。
再度バンドメンバーを一人ひとり呼び込むと、ライブ当日に配信された楽曲「女王」を披露。ジャズとロックを融合させた楽曲で、梟noteの声がリズミカルかつダイナミックに響きわたり、会場中がハイテンションになっていく。間奏ではスキャットも聴かせ、ボーカルテクニックにまだ奥の手があったのかと圧倒されてしまう。
そして、ラストは「REBORN」。観客はビートに合わせてクラップし、それに呼応するかのように梟noteもバンドメンバーも、会場と一体となって、最後の曲を存分に楽しんでいた。そのなかでも、メッセージを届けるように、音楽を届けるように歌唱する梟noteの歌声は、心にスッと入ってきた。
終演後、外は暗かったが、観客の誰しもが“夜明け”のような表情を浮かべていた。
ふと気がつくと、梟noteはどこかへ飛び立っていったみたいだ。ただ、梟noteには帰省本能があるらしい。次は場所を変えて、8月17日、豊洲PITの巣に戻ってくるとのこと。明日へ頑張るための活力が欲しい人は一度、梟noteに会いに来てみてはどうだろうか。おそらく、心が軽くなって、笑顔満載の夏を過ごせることになるだろう。
PHOTO BY Kosuke Ito
<セットリスト>
1.Temptation
2.ロウワー(cover)
3.ドーナツホール(cover)
4.独奏(cover)
5.メーベル(cover)
6.Distortion
7.ヤミタイガール(cover)
8.余所事(cover)
9.丸ノ内サディスティック(cover)
10.それがあなたの幸せとして(cover)
11.綻び
12.ワールド・ランプシェード(cover)
13.オボツカナシ
14.New Style
15.愛ばっかり
16.粛清
17.patience
18.私欲
[ENCORE]
1.Temptation(梟noteギター弾き語り)
2.きみのかみ(梟noteギター弾き語り)
3.女王
4.REBORN
ライブ情報
『梟note 2nd Live-Virtus』
08/17(土)東京・豊洲PIT
梟note OFFICIAL SITE
https://cloud9pro.co.jp/artist/profile/jyakusansei/