■楽曲が一切リリースされておらず、未だメンバーも明かされていない謎多きプロジェクト「METALVERSE」
マルチバースプロジェクト「METALVERSE」が、ワンマンイベント第2弾となる『METALVERSE #2-THE END OF THE INNOCENCE』2DAYSを2月10日・11日に豊洲PITで完遂した。
■「METALVERSE」とは
2023年1月に開催されたBABYMETALの復活公演『BABYMETAL RETURNS -THE OTHER ONE-」に突如として“出現”した3つの謎の生命体が、まるでBABYMETALのミラーのような存在としてその後の4月公演『BABYMETAL BEGINS -THE OTHER ONE-」にも再び“出現”。その“METALVERSE現象”を目の当たりにしたファンの間では様々な憶測が飛び交っていた。
改めて「METALVERSE」とはどんなプロジェクトなのか? を振り返ってみると、数少ないティザームービーなどで語られている内容は決して多くはない。“ELEMENTと呼ばれる「METALVERSE」のカケラの数だけストーリーが存在し、登場するキャストや内容はつねに変化を重ねる、ひとつの形だけではない多元的なマルチバースプロジェクト ”という文章から読み解くくらいしか術はなく、真意は語られぬまま、謎に包まれていた。
そんななか、2023年夏、ついに「METALVERSE」というマルチバースプロジェクトとして単独で“初出現”することがアナウンスされる。デビュー前にも関わらず、『SUMMER SONIC 2023』東京公演の2日目、MOUNTAIN STAGEのOPENING ACTという大舞台に抜擢され、メンバーや楽曲など一切の情報が未公開のまま、果たしてどんなパフォーマンスになるのか? という期待と不安が入り混じるなか、朝イチのトップバッターという時間帯にも関わらず、約2万人を収容する会場を満員にし、“METALVERSE現象”を巻き起こしたのだった。その翌週には初のワンマンイベント『METALVERSE #1-UNBOXING」をSpotify O-EASTで開催し、2DAYSをSOLD OUTさせた。
3つだった謎の生命体は5つへと変化し、BABYMETALとは異なる世界線に存在する、謎に包まれた新プロジェクトが、ついにそのベールを脱いだ瞬間であった。
そして今回の『METALVERSE #2-THE END OF THE INNOCENCE』と題されたワンマンイベント第2弾開催のアナウンスと共に、あらたなティザームービーが次々とアップされ、そこには初めて耳にする楽曲やあらたなビジュアルの断片が随所に散りばめられていった。まるで謎解きやパズルゲームのように、ELEMENTと呼ばれる「METALVERSE」のカケラを繋ぎ合わせ、マルチバースの答え合わせをするような感覚で公演当日を迎えることになった。
■『METALVERSE #2-THE END OF THE INNOCENCE』豊洲PIT 2DAYS “出現”!!
舞台となった豊洲PITの会場内に入ると、そこには通常のメインステージに加えて、客席内に迫り出したもうひとつのフロントステージが用意されており、前回の公演とはまた違った“現象”が起こるのかと期待が膨らむのであった。
オープニングムービーがスタートし「METALVERSE」のストーリーが語られるなか、映像などでたびたび登場していたELEMENTと呼ばれるクリスタルに輝く5つのオブジェが、なんと映像ではなくリアルな立体物となって天からステージ上に降りてきたのだ。
ムービーが終わり暗転となると、今度は5つのELEMENTが輝き出し、インダストリアル調のサウンドに合わせてELEMENTが宙へと舞うと、新しいバトルスーツに身を包んだ5つの生命体が“出現”した。
「Hello World」というAIロボのような掛け声をキッカケに、バッキバキなヘヴィかつハイパーポップなサウンドのオープニング曲「Welcome to the METALVERSE」がスタート。飛び交うレーザービームの中をシルエットが泳ぐようにダンスをしながら客席内に迫り出したフロントステージへメンバーが移動してくると、「Welcome to the METALVERSE」の掛け声とともに会場の熱量はどんどんと増していった。
中盤でチルアウトするシーンからメインステージ背面に設置されたスクリーンに再び火が灯ると、3DCGで型取られたクリスタルのELEMENTの中から3DCGのメンバーが生まれ、さらにそれらが合体して第6のあらたな生命体が誕生する、というストーリーへと繋がっていった。再び激しいサウンドが鳴り響くと、ダンスもさらに激しさを増していき、さらにパワーアップした「METALVERSE」の”出現”を飾るオープニングとなった。
続いてスウィングジャズのドラムに合わせて「Hello! 豊洲PIT! 盛り上がる準備は出来てる?」と早くもオーディエンスを煽り、「Hey! Hey!」とオーディエンスも声と拳を上げ、一気に会場のボルテージがヒートアップすると、2023年の『サマソニ』でも披露された「METALVERSE」オリジナルの“スウィングメタル”とも言えるアッパーチューン「Crazy J」がスタート。照明もいちだんと明るくなり、前回から一新されたレイクブルーとエメラルドグリーンを基調としたバトルスーツや、インナーカラーがアップデートされたヘアースタイルなどもはっきりと見分けがつくようになった。中盤のコールアンドレスポンスで5人のメンバーが迫り出したフロントステージへ出てくると、「一緒にSwingしよう!」と呼びかけ、早くも会場がひとつになって盛り上がる。
先程とはガラッと雰囲気が変わり、4つ打ちのラテンビートをベースにしたサウンドと食べ物がたくさん登場するユニークな歌詞が印象的な「Si Si」へと続く。カラフルでかわいらしく、コミカルなフォーメーションダンスで一瞬にして景色を変えてしまうパフォーマンス力はまさにマルチバースプロジェクトの本領発揮というところだろう。
HIP HOPを彷彿とさせるトラップのBGMと照明がフロアを煽ると、ライブ初披露となる「Get Down」へとステージは移動する。乾いたギターサウンドに気だるい雰囲気のボーカルでスタートすると、先程のかわいらしい表情から一瞬にして大人びた表情へと変化するメンバーたち。まさにイベントタイトルにもなっている「THE END OF THE INNOCENCE」を象徴するようなパフォーマンスにドキッとさせられる。
“キュン!”というキャッチーなフレーズとダンスがリフレインする「Qn」では、青春ど真ん中なかわいらしい内容の歌詞と「バキュン!」とオーディエンスを打ち抜くダンスパフォーマンスにZ世代の彼女たちの等身大の姿が見え隠れする。80’s POPSと80’sハードロックサウンドが行ったり来たりするようなサウンドアレンジもユニークだ。
ハリウッド映画を彷彿とさせる重厚感のあるサウンドをバックに「THE END OF THE INNOCENCE」をテーマにしたストーリームービーを挟み、ダウンチューニングのヘヴィなリフとトラップのリズムが異次元のブルータルなグルーブを生み出す「GIZA」へと突入する。LEDスクリーンに映し出される映像やレーザーや照明によって真っ赤なワールドへと染まったステージで、キレッキレのダンスとハイトーンボイスが絡み合う彼女たちの世代を超えたパフォーマンスに思わずフロアから「カッコイイ!」と言葉が漏れる。
続く「Endless World」はライブ初披露だったが、エネルギッシュなロックサウンドをベースに力強いダンスパフォーマンスとキャッチーなメロディが印象に残った楽曲で、儚げな世界の中にひと筋の光が差し込むような、見る者聴く者に勇気と希望を与えるような、そんな爽快感に溢れていた。
メンバーはいったんステージを離れると、LEDスクリーンにはクリスタルのELEMENTが擬人化したようなCGキャラクターが登場する。HIP HOPのトラックにのせてダンスを披露すると、続けて左右のステージサイドから交互にメンバーがひとりずつ登場しスポットライトを浴びる。メンバーそれぞれのキャラクターが際立ったソロダンスパートに、CGキャラクターがシンクロしながらリアルタイムでダンスを踊るという、まさにダンスバトルさながらの演出にオーディエンスからは大きな歓声が上がった。
ダンスバトルラストでは5人全員とCGキャラクター5体がシンクロしたダンスを披露し、そのままこちらもライブ初披露となる「Naked Princess」へと突入。サビの部分がティザームービーで使用されていたこともあり、初披露にも関わらずオーディエンスの盛り上がりも最高潮に。HIP HOPのトラックと2-stepのダンスにピッタリなバンドサウンドが目まぐるしく展開する楽曲構成に、サビの“裸のお姫様”というキャッチーなリリックをパワフルに歌い上げるボーカルラインが際立った。
中盤ではメインステージからメンバーがフロントステージへと移動すると、さらにオーディエンスを煽っていく。ここからが本日のハイライトでもあるのだが、強烈なブレイクダウンパートを経たところで、ボーカルが力強く天に向けて手を掲げ、会場全体を一瞬にしてフリーズさせる。一時停止したステージ上で緊張した時間が過ぎるなか、マイクを通さずに「ハァ~ッ」と唸り声を轟かせ、その声が頂点に達したところでフリーズしていたステージが一気に動き出した。メンバーのかわいらしいキャラクターからは予想だにしなかった展開に、例えるならば「あらたなモンスターが誕生した」瞬間を目の当たりにしてしまったような、衝撃的なインパクトをオーディエンスの記憶に焼き付けたのだ。オーディエンスのボルテージは最高潮に達し、メンバーも最後の最後まで煽りまくると、ライブ本編ラストを飾るクライマックスを迎えた。
メンバーがステージをあとにしてもアンコールを求める鳴り止まない拍手が続くなか、ストーリームービーが始まり、「METALVERSE」のアイコンである5つのELEMENTがスクリーン上に甦ると、前回の『METALVERSE #1-UNBOXING」でも披露された「KIRA☆」のサウンドに合わせて再びメンバーが登場した。曲名のとおりキラキラしたサウンドとパフォーマンスによって、まさにINNOCENCEを象徴するようなクリアで澄み切ったワールドに会場は包まれた。
2度目のアンコールが巻き起こるなか、ファンにとってはお馴染みとなったスウィングドラムが再び鳴り響き、メンバーが「まだまだ盛り上がれるよね!」と呼びかけると「Crazy J」を再演。「Swing Swing Swing Hey! Hey! Hey!」とコールアンドレスポンスを重ね、楽曲も終盤に差し掛かると、オーディエンスの歓声はいちだんと大きくなりエンディングを迎えた。
「Thank you 豊洲PIT! またお会いしましょう!」と言葉を残し、メンバーはステージから姿を消すと、スクリーンには『METALVERSE #3-GARDEN OF EDEN』が予定されていることがアナウンスされた。
終わってみると、まるでオムニバスの短編映画を観終わったような、あっという間の出来事に感じられた。「METALVERSE」が提唱する「マルチバースプロジェクト」が繰り広げるバラエティ豊かな楽曲とパフォーマンスによって、観るものをひとつのワールドに留まらせるのではなく、楽曲のテーマごとにキャストやストーリーが変化し、それに合わせてメンバーも表情や声色を自由自在に使い分けるような、このプロジェクトのもつ表現力とパフォーマンス力の無限の可能性を感じることができたイベントであった。
そして忘れてはいけないのが、「METALVERSE」の楽曲は一切リリースされておらず、メンバーも明かされていないままである。そんなタフでレアな状況下で開催された今回のイベントは、メンバーにとってもオーディエンスにとっても、宝探しのような時間であっただろう。どこに、どんな宝物が埋まっているのか? 宝物に辿り着くには少々時間が掛かるのかもしれない。しかしながら着実に宝物に近づいていると感じられたイベントであった。
今のところ我々はELEMENTと呼ばれる「METALVERSE」のカケラを頼りに答え合わせを続けていくしかないのだが、今回の『METALVERSE #2-THE END OF THE INNOCENCE』を経て、いよいよその答えが明かされる時が近づいているのかもしれない。次回『METALVERSE #3-GARDEN OF EDEN』の詳細発表はこれから予定されているそうなので、「METALVERSE」の次なる展開に注目していこう。
PHOTO BY Taku Fujii
<セットリスト>
2024年2月10日・2月11日(日)共通
01. Welcome to the METALVERSE
02. Crazy J
03. Si Si
04. Get Down
05. Qn
06. GIZA
07. Endless World
08. Naked Princess
09. KIRA☆
10. Crazy J
METALVERSE OFFICIAL SITE
https://metalverse-world.com/
BABYMETAL OFFICIAL SITE
http://www.babymetal.com