■“時間と空間を共有するコミュニケーション”を積み重ねる
音楽というものは“コミュニケーションそのもの”だと、常々思っている。
だから、歌の良さというものは、音程とかリズム感みたいな技術的な要素をクリアしたら必ず得られるようなものではないと思う。素晴らしい声を持っていること、その響かせ方を身体で会得していることはとても大きい。でも、それだけでもなくて、言葉とメロディをどう表現するか、歌の持つエネルギーをどう伝えるかということが大きなポイントになってくる。だからこそ、歌には、その人自身の“コミュニケーションのあり方”が深く反映される。
そういうことを実感したのが、yamaのここ1年の歩みだった。先日にインタビューさせていただいたときに語ってくれたことからも、それを強く感じた。知名度を増し、注目を集めたことだけでなく、有観客のライブやフェスのステージに立ったことが本人にとって大きなインパクトのある体験になったと、yamaは言っていた。きっと、ファンやリスナーにとってもそうだと思う。最初の謎めいたミステリアスな存在から、yamaというシンガーの言葉や想いや立ち姿を知ることで、よりくっきりとした輪郭をもって歌が届くようになったのではないだろうかと思う。
その歩みを改めて振り返ってみたい。
2020年4月に発表したソロ名義初のオリジナル曲「春を告げる」がヒットチャートを駆け上がり、その歌声の持つ力だけでたくさんの人たちの心を掴んだyama。最初にその姿を見せたのは、10月2日に行われた配信ライブ『Versus the night』だった。雰囲気のある空間で、ピアノのしっとりとした演奏と共に歌を届けるシンプルな構成。フードをかぶり、顔は見せずとも、その佇まいから伝わってくるものが確かにあった。
そして、12月と2021年1月には『THE FIRST TAKE』に出演。本人もインタビューで語っていたが、ここがキャリアのひとつのターニングポイントになったのは間違いないだろう。ちょうどセブン-イレブンのCMタイアップに起用されたりと、ネットを超えて幅広い世代にその歌声が届き始めていた頃だ。その圧倒的な歌声に胸を掴まれた人たちにとっても、yamaというシンガーの“実在感”を感じるきっかけになったはずだ。
2021年3月には、初の有観客ライブとなる1st LIVE TOUR『meaning of life』を東京・大阪で開催した。バンド編成でステージに立ったyamaにとっては、初めて目の前にいるオーディエンスに“歌を届ける”という体験になったはずだ。さらに5月には初の野外フェスとして『JAPAN JAM 2021』に出演を果たす。このことも大きなターニングポイントになった。それまでyamaの歌は、いわば“密室的なコミュニケーション”の象徴だった。が、ライブハウスやフェスの場は、いわば“空間を共有するコミュニケーション”である。そういう場で歌ったこと、オーディエンスの熱気を生身で体験したことは、yama自身にとっても大きな意味を持つ体験になったはずだ。
6月25日には第2回の配信ライブ『Versus The Night 0.0』も開催された。こちらは、舞台設計や演出などをより研ぎ澄まし、芯の強いyamaの歌の響きにフォーカスをあてたもの。タイトルが象徴するように、大きな月をバックにしたステージは夜のイメージだ。
きっと、スマートフォンやタブレットやPCを介してひとりでヘッドホンで聴いた人も多いだろう。こちらはオンラインならではの“距離を超えて時間を共有するコミュニケーション”の魅力を突き詰めたようなライブだ。“有観客”と“配信”では、同じライブでも体験の質はまったく違う。そのことをyama自身も、そしてチームもしっかりと認識しているのだと思う。
そして、9月29日から11月7日にかけて、1stアルバム『the meaning of life』のリリースを受け、初の全国ツアー『yama “the meaning of life” TOUR 2021』を開催している。
これまで多くのミュージシャンに取材してきたけれど、ツアーを経たことで、アーティストとしてのあり方が変わったという実感を語っていた人はとても多い。おそらく、ひとつひとつの場所で、一期一会の体験として“時間と空間を共有するコミュニケーション”を積み重ねることが、オーディエンスにとってだけでなく、アーティスト自身にとっても、とても大事な体験になるのだと思う。
『yama “the meaning of life” TOUR 2021』は、そういう変化を目撃する場にもなるのではないかと思っている。
リリース情報
2021.09.01 ON SALE
ALBUM『the meaning of life』
ライブ情報
yama“the meaning of life”TOUR 2021
09/29(水)TSUTAYA O-EAST
10/02(土)なんばHatch
10/03(日)DRUM LOGOS
10/14(木)高松festhalle
10/15(金)広島CLUB QUATTRO
10/19(火)PENNY LANE24
10/21(木)仙台Rensa
10/29(金)名古屋ダイアモンドホール
11/03(水・祝)金沢EIGHT HALL
11/07(日)Zepp DiverCity
yama OFFICIAL SITE
https://yamaofficial.jp/