■渋谷も天を指差し、この舞台を楽しんでいるように映った
2018年4月30日。SUPER BEAVERにとって初の日本武道館公演が行われた。そのアンコールで渋谷は「今日をゴールにしないために、泣かないと決めているんだ」と発言。その言葉がずっと筆者の頭には残っている。当時ライヴを観ていて、初の武道館ならば少しくらい浮かれてもいいだろうし、泣いてもいいじゃないかと心の中で感じたものだ。しかし、彼らはもっともっと先の景色を見ていたし、この規模感で終わるバンドではないという確信があったに違いない。今日はそれを見事に証明してくれた。
あれから5年以上の歳月が流れ、武道館を終着駅にしなかった彼らが辿り着いた場所は、富士急ハイランド・コニファーフォレストである。バンド自身最大キャパとなる野外ワンマンライブ「都会のラクダSP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~」を7月22、23日の2デイズにて開催。ここでは最終日の模様をレポートしたい。この日は開演17時半スタートだったが、ライヴエリアとは別にアミューズメントエリア「ラクダランド」が設けられ、柳沢亮太(Gu)レコメンドのドリンクを販売した「やなPUB」を筆頭にメンバーそれぞれが考案したブースもあり、10時から18時までほぼ丸一日エリア内で楽しめることができる。自然に囲まれたエリア内はフジロックを思わせる最高のロケーションだった。
開演17時半を10分ほど過ぎた頃、SEと共に柳沢、上杉研太(Ba)、藤原“35才”広明(Dr)のメンバー3人がイントロダクションとして息の合った演奏を披露。それから渋谷龍太(Vo)が姿を見せると、「→」〜「361°」でショウの火蓋を切った。青い空に爽やかな風が吹き抜け、野外ならではの心地良さに気分は高揚するばかりだ。渋谷も天を指差し、この舞台を楽しんでいるように映った。「全部見えてるからな!」と会場にいる観客に声をかけると、「青い春」へ。柳沢と上杉はステージ両端に分かれて移動し、大舞台を有効活用。渋谷は花道の先端で「お手を拝借!」と呼びかけ、熱いクラップで会場を一つに束ねていった。
■「最高の時間を一緒に作りましょう!今日はゴールでも通過点でもない、あなたと会えた到達点!俺たちようやくここまで来たぜ!」
上杉と藤原のリズム隊がグルーヴ感のある演奏を披露すると、「予感」に突入。白いスモークが噴き上がり、サビでは観客全員がジャンプしている。「最高の時間を一緒に作りましょう!今日はゴールでも通過点でもない、あなたと会えた到達点!俺たちようやくここまで来たぜ!」と歓喜の言葉を放つ渋谷。「美しい日」に入ると、最初の歌詞を観客が歌い上げ、祝福ムードは高まっていく。「“美しい日”って曲です。こういう日のことを言います!」と演奏中に付け加える言葉がまたニクイ。
「らしさ」をやり終え、「もっと楽しくさせちゃっていいですか?」と呼びかけると、「irony」をプレイ。ロックンロール調のノリのいいナンバーは、いい意味でライヴの雰囲気を変える明るさを発揮。ただ、花道にいた柳沢がソロに入る前に機材トラブルに見舞われ、ギターを鳴らせないならばと咄嗟に「オイ!オイ!」と掛け声で切り抜ける場面があった。次の「名前を呼ぶよ」はライヴを重ねるたびに成長を遂げてきた曲だ。サビの圧倒的なパワーは抜けるような青空と共鳴していた。
「自慢になりたい」を届けた後、スペシャル・ゲストに井上薫(Key)を招き、「人として」を渋谷とデュエット形式で披露する。その歌声は繊細にして雄大なスケールを放ち、静かな感動を呼んでいた。これだけでは終わらない。続いて、井上と8名のストリングス隊を従え、「グラデーション」をプレイ。緊張感を帯びた歌声と演奏、そこに美しい鍵盤と華やかなストリングスが絡み合い、楽曲のドラマ性を何倍にも増幅させる。また、渋谷は正座したままステージに頭を付けて全身全霊で歌うシーンもあった。その後、「一緒にいられることの尊さ、音楽にして伝えたい」と前置きしてバラード調の「儚くない」に繋ぐ流れも素晴らしかった。
「マジでやばい2日間ですね。今日は富士山の頭が見えます。またバンドが大きくなった気がする」(上杉)
「今日も最高に楽しい!機材トラブルもあって、しっかり悔しいけど、助けてくれるあなたがいる」(柳沢)
「ラクダランド行った?最高じゃない?こういうのは初めてと富士急の人も言ってた」(藤原)
「俺たちの19年、山あり谷あり。ライヴハウス至上主義じゃなく、現場至上主義。あなただけじゃなく、俺たちも楽しみたい。全員を当事者にしたい。ライヴハウスにしたい。あなたの日だぜ!あなたが作っているんだよ!わかってんのか?」(渋谷)
■すっかり辺りが暗くなると、ここで「東京流星群」が炸裂。野外にこれ以上に合う曲はないだろう
さんざん煽った後に「秘密」に移ると、富士急は巨大なライヴハウスのごとき熱気に包まれる。間髪入れずに「嬉しい涙」、大量のパイロが噴き上がる中で「ひたむき」と続き、観客の興奮を押し上げていく。すっかり辺りが暗くなると、ここで「東京流星群」が炸裂。野外にこれ以上に合う曲はないだろう。観客による巨大なシンガロングが富士急の夜空に吸い込まれていった。
ショウも佳境に差し掛かり、「アイラヴユー」、「ロマン」、「最前線」と畳み掛け、魂を投げ打つ渾身のパフォーマンスで本編を締め括った。アンコールでは2024年に日本武道館3デイズを行うことも発表。渋谷は「これからもかっこ良くいきますので、よろしくお願いします!」と告げ、「ありがとう」、「愛する」を続けて披露。全21曲2時間20分に及ぶライヴを駆け抜けた後、花火が打ち上がる感動のフィナーレで幕を閉じた。ライヴハウス、ホール、アリーナ、配信ライヴなど様々な場所で経験値を積んできた彼ら。今日の野外ワンマンはそのすべてを集約させた内容となり、間違いなく過去最大級の感情を爆発させていた。
TEXT BY 荒金良介
PHOTO BY 青木カズロー/浜野カズシ(メインカット)
SUPER BEAVER 都会のラクダ SP ~真夏のフジ Q、ラクダにっぽんいち~
2023年7月23日 富士急ハイランド・コニファーフォレスト
SETLIST
0.introduction
1.→
2.361°
3.青い春
4.予感
5.美しい日
6.らしさ
7.irony
8.名前を呼ぶよ
9.自慢になりたい
10.人として
11.グラデーション
12.儚くない
13.秘密
14.嬉しい涙
15.ひたむき
16.東京流星群
17 アイラヴユー
18.ロマン
19.最前線
-ENCORE-
EN1.ありがとう
EN2.愛する
SUPER BEAVER OFFICIAL SITE
https://super-beaver.com/