『呪術廻戦』第二期「懐玉・玉折」OPキタニタツヤ、ED崎山蒼志。それぞれのセンス、描く世界、重なる情景を読み解く

7月6日より毎週木曜23時56分からMBS/TBS系列全国28局にて放送中となるTVアニメ『呪術廻戦』第二期「懐玉・玉折」OPテーマをキタニタツヤ、そしてEDテーマを崎山蒼志が担当。放送前から大きな注目を集めている。

悲しみ、怒り、憤り、屈辱などの人間の負の感情から生まれる呪いを呪術で祓う役割を担った“呪術師”の戦いを描いた『呪術廻戦』（原作/芥見下々）。独特な世界観、呪術師と呪霊の過酷なバトルアクション、主人公・虎杖悠仁を中心とした群像劇としての魅力が重なった本作は、2020年10月に初めてTVアニメ化。翌年12月には劇場アニメ『劇場版呪術廻戦 0』が公開され、いずれも大ヒットを記録した。

TVアニメ『呪術廻戦』第二期「懐玉・玉折」は、主要キャラクターである五条悟、夏油傑の高専（『東京都立呪術高等専門学校』）時代の物語が軸になっている。

呪術界御三家・五条家の現当主であり、現代最強の呪術師と称される五条。そして、一般人（非術師）を大量に呪殺して、高専を追放された最悪の呪詛師・夏油。青春と呼ばれる時期、互いに切磋琢磨してきた二人はなぜ違う道を選ぶことになったのか──。正義と悪、理想と現実の間で葛藤する両者の姿も今シリーズのポイントであり、それはキタニ、崎山が制作した楽曲にも反映されている。

■「青のすみか」は現代的なポップ感覚とオルタナティブなセンスを兼ね備えたキタニタツヤの新たな代表曲になることはまちがいないだろう

キタニタツヤが手がけたOPテーマ「青のすみか」は、鋭さと切なさを併せ持ったギターフレーズ、そして＜青の季節＞の情景描写からはじまる。青春と呼ばれる時期には、それが錯覚だったとしても、無限の可能性を含んでいる。かけがえのない友人（きみ）と出会い、大切なものを共有することもあるだろう。しかし、大人になる時期が近付くにつれて理想は少しずつ色褪せ、“きみ”との関係も徐々に変化し、やがて大きな喪失感へと結びつく──おそらくは多くの人が経験しているはずの出来事をキタニは、「懐玉・玉折」のストーリーとも重ねながら、普遍的な魅力を備えたロックチューンへ昇華してみせた。特に“「また会えるよね」って、声にならない声”というラインには強く惹きつけられた。

シャープな手触りのギターを軸にしたアレンジ、繊細にして大胆なサウンドデザイン、構成を緊張感と解放感が交互に訪れるメロディなど、音楽的なオリジナリティも色濃く反映された「青のすみか」。現代的なポップ感覚とオルタナティブなセンスを兼ね備えたキタニタツヤの新たな代表曲になることはまちがいないだろう。

■「燈」には、崎山の尖った音楽センスもしっかりと刻まれている。独創的なギタープレイは、まさに彼のアイデンティティ

そして崎山蒼志によるEDテーマ「燈」(あかり)は、夏油傑の経験と苦悩、そのなかで生まれる心情の変化、そして、彼を取り巻く人々の思いをテーマにした楽曲だという。

善意や好意がそのまま受け止められ、誤解や軋轢を感じずに生きられる人間は（本当に残念なことだが）ほとんどいないだろう。繊細で壊れやすい心はちょっとしたはずみで暗い場所へ押し込まれてしまう。その現実を受け止めつつも崎山は、“ここにしかない／君に触れたい”と歌うことで、リスナーの存在を肯定し、尊重しようとしているのだと思う。

透き通った抒情性を感じる旋律、リリカルな表情を感じさせる歌を中心にした「燈」には、崎山の尖った音楽センスもしっかりと刻まれている。独創的なギタープレイは、まさに彼のアイデンティティ。素朴にして純粋なボーカリゼーションとクラシカルな弦の共鳴もこの曲の聴きどころだろう。8月9日にリリース予定の3rdアルバムへの期待がさらに高まる名曲だ。

■キタニ、崎山がOPテーマ、EDテーマを担当することがアナウンスされると、SNSでも話題沸騰

キタニ、崎山がTVアニメ『呪術廻戦』第二期「懐玉・玉折」のOPテーマ、EDテーマを担当することがアナウンスされると、SNSでも話題沸騰。「キタニさんはBLEACHのOPも原画展の曲もよかったから信頼しかない呪術のOPも早くフル聴きたい」「崎山蒼志くん呪術廻戦のテーマソングやるのかヒロアカに続いて売れちまうなこりゃ」といったコメントが数多く寄せられている。これまでにも「廻廻奇譚」（Eve/TVアニメ『呪術廻戦』第1クール・オープニングテーマ）、「一途」（King Gnu/映画『劇場版　呪術廻戦 0』主題歌）などの名曲を送り出してきた同シリーズ。キタニタツヤ、崎山蒼志と「懐玉・玉折」によるコラボレーションをぜひ堪能してほしい。

TEXT BY 森朋之