巧みなラップやボーカルを武器に、タイを拠点に活動するCDGuntee。彼は、ヒップホップ、R&Bを中心としたサウンドで高い人気を誇る若手アーティスト。そんなCDGunteeが、タイ人アーティストとして初めて『THE FIRST TAKE』に出演した。CDGunteeは、タイのオーディション番組から音楽キャリアをスタート。そこからラップを磨き、本格的なアーティスト活動を行ってきた。彼とDAWUTのユニット・THE OLD I$Eで発表した「MICROPHONE」は、MVがYouTubeで1億7千万再生されるほどの大ヒットナンバー。彼は今年3月に1stアルバム『OMW!』を発表し、さらに勢いを増している注目の存在だ。では、これまでのキャリアと『THE FIRST TAKE』出演の思いなどを聞いていこう。
■生きていく中で感じた思いを、メッセージにして皆さんに伝えられたら
──まずは、CDGunteeさんの自己紹介からお願いします。
CDというのはニックネームで、本名の下の名前がガンティと言います。今はソニー・ミュージック・タイランドに所属してまして、今年の3月に1stアルバム『OMW!』を出しました。音楽のジャンルは、ヒップホップがメインで、R&Bやポップなどいろいろやってます。
──歌詞はどんなテーマが多いんですか。
曲は自分で作っているんです。以前はクラブ系のパーティノリの歌詞が多かったんですけど、最近は、今までの自分の人生経験をもとに書くことが多いです。なのでラブソングもありますし、自分の夢を実現したいという思いや、人を励ますような歌詞も作ってます。生きていく中で感じた思いを、メッセージにして皆さんに伝えられたらいいなと思ってます。
──ライブではどんなパフォーマンスを心掛けていますか。
ライブのときは、毎回“このライブは自分にとって初めてのライブだ”って気持ちと、逆に“今日が最後のライブになるかもしれない”ってことを考えて臨みますね。いろんなタイプの楽曲を通じて自分の思いが皆さんに伝わったらいいなと思いますし、常に精いっぱいの力で、自分のエネルギーが皆さんに届くように頑張ってます。
──では、CDGunteeさんのこれまでの歩みについてお聞きしたいのですが、どのようなきっかけで音楽の道に進んだんですか。
僕は、幼い頃お父さんと一緒に音楽を聴くのが大好きだったんです。よく車の中で聴いて、音楽っていいなと思ってました。歌手を目指したのは11歳の頃です。その頃、僕はバンコクではなく、地元のアユタヤに住んでいたんです。アユタヤに新しいダンススクールができて、自分にとっていいチャンスだなと思ってダンスと歌の練習を始めました。
──実際に活動を始めたのは?
GMMグラミーという、タイで一番大きな事務所の次世代型タレント養成プロジェクトみたいなオーディションを受けて練習生になったんです。G-Juniorというチームで活動して、そのあと『The Star』というオーディション番組に出て3位になりました。GMMグラミー所属の頃にも、アルバム『Boom』を出したことがあるんです。それはポップ系の音楽だったんですけど、自分としてはラップが好きだったんです。もう少し自分の好きな音楽を作りたいなと思って、2018年に『The Rapper』というタイのラッパーのオーディション番組を受けたんです。そこからラッパーとして本格的に頑張ろうと思いました。
──どんなアーティストに憧れたんですか。
自分の憧れのアーティストは、全員タイ人で3人いるんです。ひとり目はCHIN Chinawutさん。もともとG-Juniorの先輩で、アユタヤでライブを観たときにすごい衝撃を受けて憧れました。いつか自分も彼みたいになりたいと思いました。今は一緒にジャムったりコラボしたりしてます。兄みたいな存在で、すごく仲がいいです。2人目は、Twopee(Pitawat Pruekkit)さん。プーケット出身の方で、タイではとても有名なラッパーなんです。Twopeeさんのライブを観たときにすごくかっこよくて、そのときに僕はヒップホップに目覚めました。3人目は、ILLSlickさん。タイではレジェンダリーなラッパーで、僕は小さい頃から曲を聴いてました。今でも大好きなアーティストです。
■Twopeeさんのライブを観たときにすごくかっこよくて、そのときに僕はヒップホップに目覚めました
──なるほど。さて、ラッパーとして活動を始めたCDGunteeさんですが、同じくタイのラッパーのDAWUTさんと組んだTHE OLD I$E名義で、2018年7月に「MICROPHONE」のMVを発表しました。このMVが現在1億7千万再生されていますが、どんなブレイクスルーがあったんですか。
その頃、僕は所属事務所を出てフリーになったんですけど右も左もわからない状態で、親友のDAWUTさんに相談して一緒に音楽を作ることになったんです。自分たちの音楽をどうするかすごく研究しました。それで作ったのが「MICROPHONE」だったんです。正直、こんなに人気になってすごく驚きました。バズったきっかけのひとつが、ファンの方にダンス動画を撮ってもらっていちばん良かった優勝者にプレゼントするって企画をやったんです。自分がMVで着た衣装とかをプレゼントして、とても大好評でした。そういうのもあったんですが、シンプルに曲がたくさんの方たちに受け入れてもらえたんです。それがとにかくうれしかったです。
──まさに大ヒット曲だったんですね。そして、2019年4月の「Trippin Trippin」から本格的なソロ活動を開始されましたが、当時はどんな思いがありましたか。
「Trippin Trippin」に関して言うと、本格的にソロになって初めての曲だったのでとにかく頑張ろうと意気込んでました。この曲はCMのために作った楽曲なんです。日本の資生堂のSENKAという洗顔フォームの、タイで放送されるCMだったんです。曲もそうですが、MVのストーリーとかも全部自分で考えたんですよ。そのときは、Esther SupreeさんとMook Worranitさんという女優さん2人とコラボして一緒に歌ったんです。とても有名な女優さんとお仕事ができてすごく楽しかったですね。
■自分を見つめ直して、軍隊が終わったら自分がやりたいことはやらないとダメだなと思いました
──幸先のいいスタートが切れたと。では、CDGunteeさんにとってキャリアのターニングポイントとなった出来事を聞かせてもらえますか。
タイでは2年間の兵役制度があるんですが、そのときは当然自由も無いですし結構つらかったんです。そのときに自分を見つめ直して、軍隊が終わったら自分がやりたいことはやらないとダメだなと思いました。あとアーティスト活動で言うと、SpatChiesさんというタイで有名なプロデューサーとお仕事がしたくてソニー・ミュージック・タイランドに入ったことが大きかったです。今、SpatChiesさんにプロデュースをしてもらっていて、1stアルバム『OMW!』の90%は一緒に作らせてもらってます。
──ではCDGunteeさんが、ここだけは誰にも負けないという自分のストロングポイントや自分のモットーを聞かせてください。
やっぱり、諦めないことが大事だと思います。僕は何があっても絶対諦めないし、やめないですね。自分の好きなことをずっとやり続けたいし、他の人にも負けたくないんです。そのためにも、もっともっと勉強しなきゃいけないと思ってます。常に情熱を持って活動してます。
■20代前半に作った若者の人生を語ってる「MICROPHONE」と、最近作センチメンタルで悲しい「Loneliness」は僕の両方のスタイル
──努力を怠らないタイプであると。では、『THE FIRST TAKE』の話題に移りましょう。今回「MICROPHONE」と「Loneliness」を歌われましたが、選曲の理由と、それぞれの楽曲の紹介をお願いします。
今回、それぞれの両方のスタイルの僕の音楽を楽しんでいただけたらいいなと思ってこの2曲を選びました。先ほど話にも出た「MICROPHONE」ですが、この曲を作ったのは20代前半で、お酒を飲んだり友だちと騒いだりするのが大好きなヤンチャな頃だったんです。なので、楽しいクラブ系の楽曲で、みんなで一緒に騒いだり、若者の人生を語ってるみたいな感じの曲です。「Loneliness」は、それとは真逆の雰囲気の楽曲なんです。1stアルバム『OMW!』に収録されているんですが、自分の中で、今まで作ったことないような歌詞を歌ってみたくて作った曲なんです。センチメンタルで悲しい曲なんですけど、ファンの皆さんに新しい自分をお見せしたいなと思いました。
──実際スタジオで歌って、どんな感想がありますか。
いろいろハプニングはありましたけど、楽しかったです。自分にとっていい経験になりました。世界中の有名なアーティストが出てる番組に自分が出られてうれしかったです。しかも、初のタイ人アーティストが自分というのもとても光栄です。
──やはり、普段のレコーディングとは全然違う感覚でしたか。
まさにそうでした。やっぱり特別な空気だったし、プレッシャーがありましたね。とても緊張してました。最後に「ありがとうございました」と日本語で言おうと思っていたんですが、間違えて「こんにちわ」と言ってしまいとても恥ずかしかったです(笑)。それくらい緊張してました。
──一発録りの緊張感があったと。
そうですね。でも楽しかったです。こういう1回切りの勝負ってアイデアは大好きですし、素晴らしいと思います。というのも、自分も普段のレコーディングで、ちょっとそれに近い感覚でやってるところがあるんです。普段のレコーディングでは、歌は何テイクか録るんですけど、でもやっぱり1回目に歌ったものがいちばんいいんですよね。採用するのも、1回目のテイクを使うことが多いんです。なので、録りは1回目が勝負だなっていうのは常に思ってます。実際に「MICROPHONE」の音源は最初のテイクを使ったんです。友だちとの話し声や笑い声も入ってるんです。「Loneliness」も最初のテイクですね。レコーディングのときに猫が遊んで物が落ちちゃったんですけど、音源をよく聴くと、その音がちょっと聴こえるかもしれないです。そういう自然さがいいなっていうのがありますね。
──では、今回の『THE FIRST TAKE』のパフォーマンスに自分で点数をつけるとしたら何点ですか?
もう100%の力で頑張ったので100点です!(笑)
■『キン肉マン』、『聖闘士星矢』、嵐さんが好きです
──納得いく勝負ができたと(笑)。ちなみに、CDGunteeさんが日本のカルチャーで好きなものはありますか。
あります! 『キン肉マン』はずっと好きですし、『ドラゴンボール』も大好きですね。あと『聖闘士星矢』は、お父さんが大好きなアニメで一緒に見てました(笑)。食べものだと、お寿司のサーモンが好きですね。アーティストだと嵐さんが好きです。叔母が大ファンで(笑)、その影響で小さい頃からよく聴いてたんです。あと、タイ人は牛肉が食べられない人が多いんです。ですが、日本で初めて和牛を食べたらすごくおいしくて、ハマってしまいました。今は牛肉が大好きになりました。タイの牛肉はあまりおいしくないので、全然食べたことがなかったんです。日本に来て“あ、日本のお肉はおいしいな”って思いました。
──日本のアニメから食までいろいろ知ってるんですね。そんなCDGunteeさんから日本のファンへメッセージをお願いします。
僕は今まで4回日本に来たことがあるんですけど、仕事で来たのは今回が初めてなんです。なので、とてもうれしかったですし、また機会がありましたらぜひ来たいです。僕は、日本が大好きなんですよ。日本の方たちは規律があって礼儀正しいし素晴らしい人が多いなって印象があります。気候も過ごしやすいし、空気がおいしいです。そして、ご飯もおいしいです(笑)。ぜひチャンスがあれば、日本での活動もしてみたいです。
INTERVIEW & TEXT BY 土屋恵介
PHOTO BY 増田慶
楽曲リンク
リリース情報
2023.3 ON SALE
ALBUM『OMW!』
プロフィール
CDGuntee
シーディガンティ/タイ出身のラッパー。チャーミングで遊び心のあるキャラクターで観客を魅了し、マルチな才能を持つ。Pop、R&B、HipHopなどのジャンルを自在に操り、多様な芸術的背景を持ち合わせ、音楽業界内で、傑出した存在を確立している。演技、ダンス、歌、作詞作曲のスキルをユニークに融合させ、卓越した楽曲制作と魅惑的なパフォーマンスが特徴的。YouTube登録者数は126万人を越え、ラップチーム”THE OLD i$E”時代に出した「MICROPHONE」のMVは1.7億回再生を突破。ソロとしての楽曲MVの多くもミリオン再生を超えるなど、タイの若手HipHopシーンにおける中心的アーティスト。
CDGuntee OFFICIAL YOUTUBE
https://www.youtube.com/@GunteePitithanOfficial