■「地獄のアイドルとしての単独公演はきっとこれが最後になりますが、最後にここに地獄をぶち作ろうと思います!」(地獄のアイドル=ぁゔち)
7月3日、Zepp Hanedaにて女王蜂のワンマンライヴが行われた。テレビアニメ『推しの子』のエンディング主題歌である新曲「メフィスト」を携えての『女王蜂 全国ツアー「メフィスト召喚」』を、横浜・札幌・名古屋・大阪・福岡・東京・仙台の7本回ったあとの追加公演である。大会場でも週末以外にスケジュールを切る、それでも満員になる、という女王蜂の常として、この日も月曜開催だったが、フルハウスのオーディエンスが詰めかけた。
このツアーは、地獄のアイドル=ぁゔちが、アヴちゃんに替わってボーカルを務める、という趣旨で、本日はその最後の公演でもある。開演前に注意事項等を伝える影アナも、ぁゔちが担当。ぁゔち「セイ!」オーディエンス「ぁゔち!」「セイ!」「ぁゔち!」と、いきなり激しいコール&レスポンスが巻き起こった。
SEが止まると、客電が落ちてサッと幕が開き、ネイビーのローブに身を包んだアヴちゃんが、フロアに背を向けた形のまま、1曲目の「CRY」をラストまで歌いきる。
そして左を向いた状態で2曲目「ファウスト」を歌い始め、その中盤で正面に向き直り、ドラムがテンポアップすると同時に、ぁゔちが登場し、オーディエンスがワッと歓声をあげる――という形で、ライヴが始まった。
ぁゔちの衣装は、アヴちゃんがプロデューサーとして出演したオーディション番組『0年0組』の生徒たちの制服である。
3曲目「火然ぇるミ毎」では、やしちゃん(Ba)とひばりくん(Gu)が、楽器を手放してお立ち台に上がり、6月21日に公式YouTubeに動画がアップされたこの曲のパラパラを、ぁゔちと共に踊る。ふたりともその動画と同じ衣装である(やしちゃんは法被、ひばりくんはチェックのスーツ)。
6曲目では、アニメ『チェンソーマン』第11話エンディングテーマの「バイオレンス」が投下され、フロアが熱狂的に反応する。
10曲目「犬姫」は、メンバーがはけ、ぁゔちがひとりでアカペラで熱唱。衣装替えして戻って来たメンバーが「傾城大黒舞」を演奏し始めると、今度はぁゔちがいったん去って衣装替え。
12曲目「油」では、メンバーとオーディエンス全員で「返せ 返せ 借りたら返せ」の大コール。次の、女王蜂の中でも屈指のヘヴィーさを誇る「あややこやや」では、曲が終わっても拍手や歓声が湧かないほど、オーディエンスは曲に呑まれたようだった。
このツアーのテーマでもある「メフィスト」は、15曲目にプレイされた。ぁゔちが「セイ!」と呼びかけると「賭けるから!」「果たせたら!」と応じるオーディエンス、すでにこの曲をよく把握している。最後のヴァース、“星の子たちよ よく狙いなさい またたきを許さない あなたたちならば”を、ぁゔちは「わたしたちならば」と、変えて歌った。
ブレイクで「みんな大好きだよ!」とぁゔちが叫んだ18曲目「Serenade」を終えたところで、この日唯一のMC。2月に『0年0組』の演出家が「このままきれいに終わるのもいいけど、特大のヤバいのもってませんか?」と訊かれたアヴちゃんが、「とびきりヤバいのもってます」と応え、ぁゔちに白羽の矢が立ったことなどを明かす。
自分に会いにツアーに来てくれたことの感謝を伝えると、オーディエンスからものすごい歓声が返ってくるが、しばしの間のあと、「…泣きません!」と、跳ね返すぁゔち。そして、「女王蜂さんからお知らせがあります」と、秋のホールツアー『十二次元+01』が決まったことを伝えてから、「地獄のアイドルとしての単独公演はきっとこれが最後になりますが、ぁゔちが遺す最後の置き土産を、皆さん楽しみにしておいてください。特大です。それでは最後にここに、地獄をぶち作ろうと思いますので、皆さん、地獄に落ちれますか!」と、後半のブロックに突入する。
最新アルバム『十二次元』からの「ハイになんてなりたくない」では、「ねぇきみはどこに堕ちたい? 飛ぶのならどこに堕ちたい?」という、ぁゔちの、ドスの利いた問いかけが響く。
「催眠術」で、Zepp Hanedaを妖しい空気に染めた上で、初期から存在する屈指のダンスチューン「ヴィーナス」が放たれた瞬間。フロア、この日ピークの大爆発っぷりになる。ほとんどのオーディエンスが、手にしたジュリ扇を…いや、ジュリ扇だけでなく、このツアー限定のグッズであるペンライトも、ここぞとばかりに振りまくり、ぁゔちの歌う“Venus Venus”に声を揃えまくる。後半では、ぁゔちの「ひばり社長!」という号令で、猛烈なギターソロを聴かせた。
ラストは「失楽園」。地獄のアイドルであるぁゔちのライヴだから、サビのたびに“天国なんて行きたくない”と繰り返すこの曲で締めくくる、ということである。
“Where is paradise? 探さない? あるかもしれない/禁断の恋は報われない? やってみないと判らない”で、曲が終わった瞬間。ステージ上空から、赤い糸で吊られた8本の手首が降ってきた。ぁゔちがそのうちの1本と指切りを交わしたのと同時に、サッと幕が閉まり、ライヴは終了した。
なお、このツアーの初日の5月19日@KT Zepp Yokohamaのときは、降ってきた手首は1本だった。
TEXT BY 兵庫慎司
PHOTO BY 森 好弘
リリース情報
2023.05.17 ON SALE
SINGLE「メフィスト」
女王蜂 OFFICIAL SITE
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