■「4年間振り返ると観測者に支えられたところが多かったんで、次の4年は逆に恩返しできるように頑張りたい」(桜木北斗)
7月7日に結成4周年を迎えた7人組ダンスボーカルユニット・原因は自分にある。が、ファンクラブイベント『ゲンジブ観測所 Presents 私立げんじぶ学園∽天の川学園』を東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で行った。
昨年7月7日のFCイベントでは、会場を年に一度開校する“私立げんじぶ学園”に見立て、趣向を凝らしたライブ構成で観測者(げんじぶファンの呼称)との距離を縮めた彼ら。
2年目となる今年は、げんじぶ学園と似て非なる“天の川学園”をテーマに、グループでは初挑戦の朗読劇やグループ内のタレコミ企画、ゲームコーナーと、通常ライブとはひと味違う要素を交え、メンバーや観測者との絆の物語を描き出した。
開演のブザーが鳴り、昨年のFCイベントの模様から星空へとモニター画面が移り変わると、モノクロの制服に身を包んだメンバーによる朗読劇からライブは幕開け。
1年前を懐かしく思い返しつつ、「今、見上げている違う星のどこかで、げんじぶにそっくりな7人が、げんじぶにそっくりなグループを作っていたら?」という想像から、私立天の川学園で活動し、全員が“北斗”の名を持つ銀河一のユニット“北斗七星”が現れる。
底抜けに明るいフェミニンキャラで場内に“かわいい!”の声を湧かせる大倉北斗、優雅にラーメンを愛する小泉北斗、ウインクで悩殺するフレッシュ担当・桜木北斗、どんな光にも柔軟に合わせる謎のマジメ担当・長野北斗、大人の余裕と子供心のギャップで笑わせる武藤北斗、そしてエレガント担当のイケボリーダー・吉澤北斗と、自己紹介から個性の強さは明らか。
各々が己の輝きこそいちばんと主張してケンカになり、渋滞に巻き込まれて到着が遅れている自撮り担当・杢代北斗もナレーションで参加して、以降、私立げんじぶ学園と天の川学園を行き来する“げんじぶバース”が繰り広げられていく。
まずは「別世界のそっくりさんに負けず、俺たちもこの特別な日を最高にしていこう!」(大倉空人)と、げんじぶ学園の教室に戻って新入生となった観測者たちを祝してからは、1限目“じぶペディア”の授業がスタート。
これはウィキペディアに載るかもしれないグループ内のマル秘情報をメンバー同士でタレコミし、公式情報として認めてOKか解釈違いかを観測者がペンライトを振って判定するというものだ。
最初に「どこの現場へ行っても必ず“僕のスマホどこですか?”というメンバーが現れる」というタレコミが上がるが、実際、この日は吉澤要人が探していたらしく、「スマホをなくすグループです!」とタレコミ主である武藤潤は断言。
「(前身グループの)BATTLE STREETなりたてのときに、 いちばん一緒にいた時間が長いトリオは空人、(杢代)和人、(小泉)光咲である」と小泉が証言した際には、「4年前のデビュー発表の日、何かあると聞いていたから、3人で“もし改名だったら先輩グループに倣ってアルファベットじゃないか”という話をしてたんですよ。そしたら、まさかの漢字だった!」(大倉)という裏話も。
また、「大倉空人は桜木雅哉にラーメンを奢ってもらったことがある」という話では、ラーメンマニアの小泉が「どういう系?」と食いつき、「長野凌大は最近、単語帳をようやく買った」という桜木のタレコミには、客席から唯一“解釈違い”の判定が下された。
その長野は、企画の趣旨を勘違いして「小泉光咲は『萩の月』を常備してある」「武藤潤はサウナで見知らぬ人に代謝を良くする方法を聞かれた」など嘘の証言を用意してきたことが判明。
「“長野凌大はポンコツ”を公式情報にしていいと思う人!」という吉澤の問いに、当然ながら満場のペンライトが振られた。
さらに、「長野凌大は別れ際、必ず2度振り返ってくれる」という吉澤のタレコミは、ステージ上で再現されることになり、桜木のうるさい駅員アナウンスや、電車のドアになって吉澤を挟む武藤に場内は爆笑の渦に。
趣旨から離れた“げんじぶ劇場”の小芝居に大盛り上がりとなったが、こんなメンバーのやんちゃな素顔が見える脱線ぶりも、観測者だけが観ているFCイベントならではのものだ。
2限目の“お絵描きワードウルフ”は、共通のお題を提示された市民のなかに、唯一異なるお題を持って紛れ込んだ人狼を当てるという、いわゆる人狼ゲームの推理を雑談ではなくお絵描きで行うもの。
お題そのものを描いてはいけないが、同じお題であれば通じ合える程度の絶妙なラインで描き、うまく相手をだましていくのがキモだ。
まず1回戦では“ライブ”という村人のお題に、“パーティ”で乗り込んだ人狼・武藤が見事勝利して高笑い。村人側の敗因は、桜木が描いた(東京)ドームがケーキやピアノのフタに見えてしまったことで、武藤は「勝ったらうれしいね! 人狼楽しいよ!」と胸を張る。
2回戦では観測者も推理に参加。天の川、短冊、織姫に彦星と七夕らしい絵が並び、人狼ではないか? と指名された小泉が見せたお題は“七月七日”で、短冊に“健康”と書いた吉澤が人狼だと明かされると、見事なポーカーフェイスっぷりに場内は騒然となる。
ちなみに人狼のお題は“願いごと”だったそうで、大倉は「要人の願いごとって健康なんだ…」と繰り返していた。
吉澤にしてやられた面々は「悔しい!」とやる気満々で3回戦に臨み、2回続けて人狼役を引き当てた吉澤を今度は正しく推理するが、村人側のお題が“犬と猫とミルクにシュガー”であったことを見抜いて、またしても吉澤の逆転勝利に。
「俺の大勝利じゃない?」と言う吉澤に拍手喝采が沸き、「探偵事務所に入ったほうがいい!」と勧められて鼻高々だった。
ちなみにリハーサルでは、画伯・長野が一人勝ちだったとのこと。画力ではなく駆け引きが重要となるゲームは、メンバーの様々な能力をあぶり出してくれて楽しい。
チャイムのあとは移動教室となり、レギュラー出演している『仮面ライダー ギーツ』の撮影のため、活動制限中でこの日は欠席の杢代和人が新グッズを紹介する“げんじぶショッピング”のVTRが上映。そして場面は、年に一度のライブ中だった“北斗七星”サイドへと移る。
自分だけが目立とうとして、それぞれ勝手なパフォーマンスをする彼らに悲しんだ天の川は、武藤いわく“神の涙=雨”を降らせてライブを中断に。しかし、反省した7人が団結して、客席の観測者たちにペンライトで晴れた天の川を再現してもらうと、見事に雨はやんで頭上には美しい星空が広がった。
それを見て、げんじぶ学園サイドの彼らも「北斗七星よりも強い絆を、ここにいるみんなに見せたい。7つの力を合わせて、さらに輝きを増していこう!」と、ライブパートに突入していく。
まずは最新シングル「Foxy Gape」のカップリング曲「夏の二等辺大三角形」のイントロが鳴ると、初めてのライブ披露に客席からは大歓声が。仲良し3人組のなかにカップルが生まれ、取り残されてしまった側の想いを、レンジの広いエモーショナルな歌声と情感のにじむ動きで切なく表していく。
3人を夏の大三角になぞらえ、自分以外のふたりを織姫と彦星に見立てたり、天の川というワードが登場する歌詞も、七夕の日のお披露目にはピッタリだ。
対照的に、最新アルバムのリード曲「無限シニシズム」では“ザ・げんじぶ”な世界観が爆発。ローの響くバンドサウンドと哲学的で言葉遊び豊かな言い回し、シニカルな表情が、思春期ならではの鬱屈とシンクロして、大きな共感を引き出していく。大倉と吉澤が切り裂くようなラップを畳みかけるクライマックスも迫力満点で、場内には感嘆の溜息が満ちた。
そして、「この曲で盛り上がっていきましょう! 俺たちの懐かしの曲です!」と最後に投下されたのは、2019年7月7日のデビュー発表以前、前身グループのBATTLE STEET時代に発表した「Burn Burn Bomb」。
ビートの利いたエレクトロなダンスチューンで、キビキビとパフォーマンスするさまは、現在の彼らのパブリックイメージからは遠く、それだけにレアなもの。
結成記念日という特別な日に、約4年ぶりにファンクラブ会員の前でだけ見せるというスペシャルな心遣いに、観測者たちも文字どおりの狂喜乱舞で踊り狂う。げんじぶのダンスリーダー・長野と、クラシックの基礎を持つ吉澤のソロダンスに、しっかりと進化が見えるのもうれしい。
そして、デビュー&改名発表をした2019年7月7日からの4年を振り返り、メンバーがそれぞれに想いを伝えていった。
2019年8月の『EBiDAN THE LIVE』ぶりに披露した「Burn Burn Bomb」のパフォーマンス中、そこからの日々を思い返して感慨深くなっていたという大倉は、「これからもどんどん大きくなっていきますし、来年は(本日欠席で)留年の杢代を含めた7人で素敵なイベントをやっていきたい」と表明。
小泉も「皆さんは留年しないでくださいよ! 僕たちの特別な日、皆勤賞を狙っていきましょう」と観測者に発破をかける。
最年少の桜木は「4年間振り返ると観測者に支えられたところが多かったんで、次の4年は逆に恩返しできるように頑張りたい」と頼もしさを見せ、デビュー発表の日を昨日の事のように感じているという長野は「みんなが応援してくれることが僕たちの活動の大きな原因なので、これからも“行きたいな”と思えるライブを見せていきたい」と真摯に告げた。
また、最年長の武藤は「メンバーもどんどん成長し、進化して変化したけれど、変わらないのは僕たちの仲の良さ。あとは観測者の皆さんの温かい笑顔と…」と上を向き、「いつも支えられてます。愛してるぜ! 観測者!」と涙をこらえ、長野に「デビュー発表日と同じ状態になってる」と突っ込まれることに。
5月末にリーダーに就任した吉澤も「俺は泣きませんよ」と壮大な振りをしながら、「7月7日という世の中的に特別な日が、僕らにとっても特別な日なのがうれしい。願いごとをする日ではあるけど、その前に何よりも感謝したい1日で…」と続けたところで、「ヤバい、俺も涙が出てきそう! こんな素敵なグループの一員でいられることが本当に幸せです!」と目を潤ませた。
結果、「今年は泣かないようにしてた」という桜木までが涙を見せたが、吉澤は「皆さんと素敵な1日を過ごせて、泣くほどうれしいメンバーでございます!」と巧みにフォロー。
武藤は「違うんだよ! まだ夏ツアーもあるから!」と弁解していたが、そんな状況で不意に流れた涙だからこそ美しく、本物だと言えるだろう。
今日の記念に学級写真の撮影を「杢代!」「和人!」のコールレスポンスで行い、2時間に及ぶイベントは幕を閉じたが、武藤の言うとおり夏ツアー『LIVE TOUR 2023 -G=ø-』で、彼らは7月19日から3日間、再びLINE CUBE SHIBUYAに帰ってくる。
長野が「目と目を合わせてライブしたい」と告げた4都市6公演に及ぶツアーの合間には、各種イベント出演もこなしつつ、11月5日には初のアリーナ公演『因果律の逆転』を神奈川・ぴあアリーナMMにて開催。4年目を迎えたげんじぶの勢いは、まだまだ止まるところを知らない。
TEXT BY 清水素子
PHOTO BY 米山三郎
■『ゲンジブ観測所 Presents 私立げんじぶ学園∽天の川学園』
2023年7月7日(金)東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
<セットリスト>
01.夏の二等辺大三角形
02.無限シニシズム
03 Burn Burn Bomb (BATTLE STREET)
リリース情報
2023.06.07 ON SALE
SINGLE「Foxy Grape」
原因は自分にある。OFFICIAL SITE
https://genjibu.jp/