■「今回のツアーは、PSYCHIC FEVERの自己紹介になるようなライブにしたいと思っていて」(WEESA)
PSYCHIC FEVERが6月26日、初の単独ツアー『PSYCHIC FEVER LIVE TOUR 2023 “P.C.F”』の東京公演をZepp Haneda(TOKYO)で開催した。
1階はオールスタンディング。2階は座席がありながらも、立ち見の観客が大勢見守るなかで開催された今回の公演。
デビューアルバム収録の「PSYCHIC FEVER!!」(SE)が流れると、ForEVER(PSYCHIC FEVERファンの総称)は力強くフラッグを振り、7人の登場を待ちわびた。暗転したあとのステージには、センターから階段状に下るようにお立ち台が設置されており、お立ち台に5人、その前に2人という配置でメンバーがスタンバイ。各自にフィットするシルエットにこだわって制作したというドレッシーな黒い衣装も新鮮で、いつも以上に精悍な顔つきの7人がそこにはいた。
そして、5月にリリースしたEP『PSYCHIC FILE I』のリード曲「BAKU BAKU」でライブスタート。サビから始まるアレンジで、ボーカルの小波津志がパワフルかつ澄んだ歌声を響かせると、すぐさまフロアは熱を帯びた。
コロナ禍でのデビューということもあり、ライブでの声出し応援が禁止され、ここ数年、お互いにもどかしい想いを抱えてきたメンバーとForEVER。半年間にわたるタイでの武者修行を終えた今、やっとメンバーに生の声を伝えられる喜びが、すさまじい歓声の塊となってステージに雪崩れ込むさまは、毎回心臓を“BAKU BAKU”させながらライブに臨む7人を勇気づけたことだろう。
続いて、和テイストのサウンドとともにJIMMYが歌い始めたのは、このツアーで初披露となった「Up and Down」。『PSYCHIC FILE I』の取材時に剣が「僕らはタイでライブをやっていくにあたって、言葉の通じないお客さんに一緒に踊ってもらうにはどうしたらいいかをすごく考えていたんです」と語っていたとおり、サビではJIMMYと半田龍臣が振り付けしたダンスと笑顔で会場がひとつになっていく。
普段はやんちゃな笑顔がかわいらしい半田が、色っぽい視線で煽りながら肩をチラ見せすると、ひと際大きな歓声が上がる。それほど、一瞬たりとも油断できない、どの瞬間を切り取っても“Highlight”なライブが展開された。
本編前半には、映画『HiGH&LOW THE WORST X』の挿入歌であるエモーショナルなロックチューン「WARRIORS」や、小波津、WEESAによるボーカル曲「Snow Candy」「アシンメトリー」など、単独ライブならではの楽曲も歌唱。圧倒的な歌唱力で観客の心を鷲掴みにする。
そうかと思えば「Snow Candy」では、イントロのエレキピアノに合わせてJIMMYと半田がエアピアノを奏でたり、小波津が歌う“ずっと一緒に……おやすみ”で小波津、渡邉廉、中西椋雅が仲良くおやすみポーズをしたりと、素顔が垣間見えるおちゃめな姿に「かわいい~!」の声が。
WEESAが「昔は龍臣くんが、僕と志くんを間違える事件もありました(笑)」と語るほど、EXPG STUDIOで出会った頃は身長も雰囲気も似ていたというボーカルふたりが、アシンメトリーな歌声で美麗なハーモニーを届ける姿からは、彼らが歩んできた歴史と、タイでの武者修行を経て、今一度心の距離を近づけたいというForEVERへの深い愛が溢れていた。
ダンスショーケースは、6月にローンチしたPSYCHIC FEVERのアパレルライン「P.C.F APPAREL DEPARTMENT」でリリースしたセットアップジャージをツアー用にカスタムした衣装に着替えた剣、中西、渡邉、JIMMY、半田による息の合ったダンスから始まり、一人ひとりの個性を全面に出したソロパートへと続く。
グループの最年長であるムードメーカーの剣は、“神奈川ブラザーズ(かなブラ)”こと渡邉・半田ペアに呼び込まれ、愛嬌たっぷりのソロダンスを披露。JIMMYはキャップを巧みに操りながら。小波津はアクロバティックなパフォーマンスで全身に歓声を浴びる。
ちなみに、ここで使用されたダンスとタックや、セットリストを繋ぐSEはメンバー自ら作曲したものだという。そんなこだわりのショーケースから一転、暗くなったステージに響き渡るのは、ボーカルとラッパーの掛け橋を担うマルチプレイヤー 渡邉のビートボックス。鼓動のような音を発しながらセンターに歩み寄り、自身の体ひとつで観客をノせていく。
そこにラッパーのJIMMYとボーカルのWEESAが合流し、新鮮な組み合わせで届けた「Highlights」や、半田のラップを軸とした「Tokyo Spiral」も、身をもって世界を知り、一人ひとりがパワーアップして帰国したPSYCHIC FEVERの攻めの姿勢を象徴していた。
本編終盤。穏やかな笑顔と口調がその人柄を物語る中西は、たくさんのForEVERとともにこの日を迎えられた感謝を述べつつ、「ツアー自体は次の福岡公演で終わってしまうんですが、この先には、日本での活動もそうですし、海外での活動も控えています。何かのタイミングで東京の皆さんに必ずお会いできるように、また戻って来たいと思っていますので、引き続き温かい応援をよろしくお願いします!」と前向きな想いを語る。
とはいえ、残すはあと1曲。「最後の曲、いきますか? どうしますか?」(中西)、「やだ~~!」(ForEVER)のやり取りには、パフォーマンス中、大人びた表情を見せていたWEESAも「僕もめちゃめちゃ嫌です!」と素直な感想を口にした。その気持ちを胸に抱えて歌うラストナンバーは、中西が発案した歌詞がタイトルになっている「Nice & Slow」。メンバー全員で綴ったForEVERへのメッセージが、ゆるやかなリズムに乗って会場全体に広がっていった。
アンコールには、うれしいサプライズゲストも登場した。車のエンジン音が鳴り響き、13人分のシルエットがステージに現れると、大歓声が湧き起こる。1月にデビューしたタイの6人組ダンスボーカルグループ・DVIが、仲間のためにタイから駆けつけたのだ。
2022年8月末から海外に拠点を移し半年間タイで武者修行を行い、グローバルアーティストとして第一歩を踏み出したPSYCHIC FEVERは、2月にDVIとのコラボレーション楽曲「To The Top feat. DVI」を配信リリース。そんな思い出のダンスチューンを東京公演限定のスペシャルバージョンでパフォーマンスし、13人は楽しそうにアイコンタクトを交わした。
さらにDVIのデビュー曲「Sugar」には、途中からPSYCHIC FEVERも乱入し、一緒になってキュートにダンス。MCでは小波津がタイ語で通訳したり、DVIメンバーがこの日のために勉強してきたという日本語で「皆さん、大好きです!」(チーター)、「皆さん、楽しんでますか!?」(タン)、「とてもワクワクしています」(ポー)、「皆さん、とってもかわいいです!」(ウーウー)と話す場面も。
「今日はとても楽しかったです!」とかわいらしい笑顔を輝かせたのは、「To The Top feat. DVI」でDVIチームの歌い出しを担当している最年長のフランク。
サムイがタイ語でライブの感想を語る際には、予想外に長い発言に一瞬困惑の表情を浮かべた小波津が、清々しい笑顔で「楽しかったって言ってました!」と叫び、笑いを誘った。
だが、真面目な小波津がこれだけで終わるわけはなく、改めて長文を通訳し、着実にグローバルアーティストとしての力を蓄えていることを証明した。
その後披露された「Choose One」は、渡邉や半田が「CL」(LDHの動画配信サービス)配信用の自撮り棒を手に歌唱し、総勢13人がスマホの前にギュッと集結。仲良くはしゃぐメンバーたちをForEVERによる“Ey/Yay Yay Yay Yay Yay Yay Yay Yay”の大合唱が温かく包み込む。
実際は週明けの月曜日だったが、半田は自身のパート“BadなWeekend”で観客と声を重ね、口癖をそのまま歌詞に落とし込んだという剣パートも“何しちゃってもOK”のコール&レスポンスが楽しく、ライブ終盤の寂しさを陽気に吹き飛ばした。
そしてDVIを見送った7人は、順番にはけてグッズTシャツに着替えることに。「今日はどこで着替えようか?」という中西の発言を受けて、ステージ上でおもむろに衣装を脱ごうとするJIMMYに、歓喜の絶叫が充満。
少数でMCを回している間も、数少ない関東出身でる渡邉と半田が「ただいまー!」と叫び、それを上回る「おかえりー!」の声に圧倒されたり、髪の毛のツヤツヤ具合に磨きがかかった剣が「みんな、頭見ないの!」とおどけたりと、終始笑いが絶えない。
きっと、こうやって積極的にコミュニケーションをとり、ForEVERと歩幅を揃えて進んだ先に、メンバーが思い描く“もっと素敵な景色”が待っているのだろう。
再び7人揃ったステージで、WEESAは「今回のツアーは、PSYCHIC FEVERの自己紹介になるようなライブにしたいと思っていて。僕たちの楽曲、僕たちの音楽を120パーセント皆さんに伝えたいという想いから、“P.C.F”というツアータイトルをつけさせていただきました。改めて、皆さんの声を聴けて、皆さんとお会いできて幸せです。ありがとうございました」と語り、小波津が「これからもたくさんの夢を皆さんと一緒に…」と言い添えると、ファンネームをタイトルに掲げるラストナンバー「ForEVER」へ。
「Nice & Slow」と同様、メンバー全員で作詞を手掛けたミディアムナンバーが身体に染み渡り、じんわりと心を温めていく。また、曲の最後には、メンバーを代表するように小波津がアカペラで熱唱。それはまさに聴く人の心を震わせる“魂の歌声”で、息を飲んでステージを見つめていた観客が、ハッと我に返ったように力強い拍手を送るなか、東京公演は終幕した。
リリース情報
2023.05.17 ON SALE
EP『PSYCHIC FILE I』
PSYCHIC FEVER OFFICIAL SITE
https://m.tribe-m.jp/artist/index/262