■興奮に巻き込まれる観客、精緻な世界観を生み出す凛として時雨
凛として時雨が全国ツアー『aurora is mine tour 2023』のファイナル公演をZepp Shinjuku(TOKYO)で開催した。
2018年にリリースされた『#5』以来、約5年ぶりとなるニューアルバム『last aurorally』を携えた今回のツアー。最終公演で凛として時雨は、新たな進化を証明するステージを繰り広げた。
18時少し過ぎた頃にステージに登場したTK(Vo/Gu)、345(Vo/Ba)、ピエール中野(Dr)は冒頭からニューアルバム『last aurorally』の収録曲を5曲続けた。
鋭利なギターフレーズと切迫感と解放感を同時に放つメロディが響き合う「Neighbormind」(映画「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」日本語吹替版主題歌)。イントロのギターが鳴った瞬間に観客が手を挙げ、強靭な4つ打ちビートとともに身体を揺らしまくった「Marvelous Persona」。タイトル通り、“ビュン!ビュン!”と放たれるギターに導かれ、緻密に構築されたアレンジ、ドラマティックな旋律がダイナミックに表現された「laser beamer」(“僕は君のもの”“もっと縛って”というTK、345の掛け合いも刺激的だ)。「凛として時雨です。新宿が“Aurora”不足だということでやってきました」(TK)のあとは、「Super Sonic Aurorally」へ。まさにオーロラを想起させるような神秘性をまといながら、ラウドに尖りまくった音像が疾走するこの曲は、アルバム『last aurorally』を象徴する楽曲のひとつであり、このツアーを通してライブアンセムとして完全に定着していた。そして「竜巻いて鮮脳」でライブは最初のピークに。興奮に巻き込まれる観客、大迫力の轟音で精緻な世界観を生み出す凛として時雨の関係性は、“爆音ミラージュ 無敵と溶け合いませんか?”というフレーズと完璧に一致していたと思う。
■スリーピースバンドとしての魅力が真っ直ぐに伝わる、ソリッドな演奏
「ラストダンスレボリューション」(ミニアルバム『Feeling your UFO』収録/2006年)からは初期の楽曲を3曲。ベースによるイントロが放たれた瞬間に「おお!」という歓声が沸き、中野が立ち上がって煽りまくった「DISCO FLIGHT」(アルバム『Inspiration is DEAD』収録/2007年)では、切れ味鋭いギターフレーズと爆発的なダンスビートが観客の高揚をさらに引き上げる。さらに美しい透明感を想起させるサウンドデザイン、抑制の効いたメロディが心地いい「secret cm」(アルバム『just A moment』収録/2009年)へ。スリーピースバンドとしての魅力が真っ直ぐに伝わる、ソリッドな演奏にも心を打たれた。3曲とも15年以上前に発表された楽曲だが、メンバー3人のプレイヤーとしての進化に伴い、さらに奥深い魅力が引き出されていたのだ。
■3人が生み出す音楽は言うまでもなく、他のどこにも存在しない
「abnormalize」(シングル/アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』主題歌/2012年)も、観客が強く反応した楽曲のひとつ。圧倒的なスピード感と強烈なダイナミズムを同時に放つドラム、テクニカルなフレーズを織り込みながら退廃的な興奮を描くギター、楽曲のボトムを支え、美しいグルーヴへと繋げるベース。3人が生み出す音楽は言うまでもなく、他のどこにも存在しない。そのことを改めて実感できる場面だった。
アルバム『last aurorally』のなかでも、TK、345のボーカルがもっとも際立つ(と個人的には感じている)「self-hacking」を披露し、中野のMC。
「こんばんは!今日はツアーファイナル。必ず良いライブにしようという強い気持ちでやってきました。Zepp Shinjukuよろしくおねがいします!」と叫び、観客と一緒にお約束の“Xジャンプ”。「こういう尖りに尖ったバンドがメジャーデビュー15周年、結成20年。『PSYCHO-PASS』の主題歌をやらせてもらって、それも10周年。来年はピエール中野が加入して20周年を迎えるということで、バチバチにやっていこうと思います。ファイナル、最後までぶっ飛ばしていこうぜ」という煽りとともにライブはクライマックスへと進み始める。
曲が始まると同時に驚きの声が上がった「make up syndrome」(アルバム『I’mperfect』収録/2013年)の後は、これもライブアンセムのひとつである「Telecastic fake show」(シングル/2008年)、繊細なアンサンブルと独特の浮遊感が重なり合い、最後は快楽的なカタルシスへと誘われる「感覚UFO」(ミニアルバム『Feeling your UFO』)によってフロアのテンションは一気に頂点に向かった。
「声を出していいツアーは久しぶりで。こういう光景を何度も見ることができて、本当にうれしいです。皆さんぜひ、またライブハウスで会いましょう。凛として時雨でした」という345のMCを挟み、ラスト2曲はアルバム『last aurorally』の楽曲。
ずっしりとしたヘビィネスをたたえたサウンド、シリアスな手触りのメロディ、“わずかな重力だけがまだ生きてる”というラインが溶け合う「滅亡craft」、そして、「アレキシサイミアスペア」(『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』主題歌)へ。凄まじい爆音と透き通るギター、祈りに似たボーカルと歌詞に強く心を揺さぶられた。
■刺激的な進化を強く実感できる、圧巻のステージ
緻密に組み立てたれたサウンドスケープの美しさと激しさ、そして、いつ崩壊するかわからないのほどの緊張感。結成から20年経った現在も凛として時雨は、圧倒的な独創性を誇示しながら、今もなお刺激的な進化を続けている。その事実を強く実感できる、圧巻のステージだった。
TEXT BY 森朋之
凛として時雨 aurora is mine tour 2023
6月4日 Zepp Shinjuku(TOKYO)
SET LIST
1.Neighbormind
2.Marvelous Persona
3.laser beamer
4.Super Sonic Aurorally
5.竜巻いて鮮脳
6.ラストダンスレボリューション
7.DISCO FLIGHT
8.seacret cm
9.abnormalize
10.self-hacking
11.make up syndrome
12.Telecastic fake show
13.感覚UFO
14.滅亡craft
15.アレキシサイミアスペア
凛として時雨 OFFICIAL SITE
https://www.sigure.jp