■「この2日間、いろんな角度から俺自身にも刺さる特別な時間でした」(TAKUYA∞)
結成23周年を目前に控えたUVERworldが、自身が主宰する恒例の対バン企画『VSシリーズ』を4月12・13日の2日間にわたって神奈川・横浜アリーナで開催した。
初日はBiSHを迎えて異種格闘技戦とも呼びたい熱いバトルを展開。2日目に予定されていたOfficial髭男dismの出演は急遽、見合わせとなってしまったが、代わりにギターの小笹大輔をゲストに全身全霊のパフォーマンスを見せつけ、詰めかけたオーディエンスのべ2万4,000人を魅了した。
■4月12日公演
初日の先攻を務めたBiSHはメジャー2ndアルバム『THE GUERRiLLA BiSH』に収録された「My landscape」のMV内で着用している赤の衣装に身を包んでステージに登場。「サヨナラサラバ」「GiANT KiLLERS」「NON TiE-UP」と切れ味鋭いアッパーチューンを立て続けに投下、自身のファンのみならずUVERworldファンを容赦なく圧倒する。
BiSHは今年6月29日に行われる東京ドームでのライブを持って解散することがすでに決定しており、UVERworldとの対バンはこれが最初で最後。ロックバンドの雄・UVERworldと、“楽器を持たないパンクバンド”を標榜するBiSHという組み合わせは意外にも思えるが、かねてよりBiSHの音楽性をリスペクトしていたUVERworldが彼女たちの解散を前にぜひ対バンをとオファーしたことから今回の共演が実現したという。
ただし、これまでは音楽フェスなどで顔を合わせたことはあるもののプライベートでの面識はほぼ皆無だという。
MCではそれをネタにハシヤスメ・アツコが「呼んでいただけて光栄なんですけども、私たち、UVERworldさんとはあんまり絡みないですよね?」と冗談めかしてぶっちゃけ、リンリンが「あるよ。モンバス(『MONSTER baSH』、毎年香川県で開催される夏フェス)でうどんを食べているときにTAKUYA∞さんが“おいしいかい?”って」となけなしの交流エピソードを明かして、場内の爆笑を誘うひと幕も。
また、今回のライブでは観客のマスク着用義務を解除、それに伴って声援などの発声も解禁されており、久々に浴びる大歓声に「今日は声も出せて顔も見られる。こんな最高な日はないです」とメンバー一同、歓喜にはずむ場面もあった。
また、3月にリリースされた「Bye-Bye Show」を披露したあと、この曲のサビの振り付けが花をモチーフにしていると語り、「皆さんと一緒に東京ドームで花になって、きれいに散っていきたい。よかったらきてくれませんか?」と呼びかけるアイナ・ジ・エンド。小学生の頃からその音楽を耳にしてきた大先輩、UVERworldへの尊敬と感謝、そして観客への「ありがとう」を改めて口にすると、BiSHの代名詞と呼ぶべき「オーケストラ」に突入。
ラストはセンチメンタルなムードを一蹴するかのようにセントチヒロ・チッチが叫んだ「横浜アリーナ! BiSHと一緒に踊れますか? いけるか!」を起爆剤に彼女たちの始まりの1曲「BiSH-星が瞬く夜に-」へとなだれ込み、エンディングまで一気呵成に駆け抜けて、UVERworldへとバトンを渡した。
興奮冷めやらぬまま、後攻のUVERworldを迎え入れるや、横浜アリーナはさらなる熱狂の坩堝と化した。ボーカル・TAKUYA∞が「のっけから全力でぶっ飛ばしていくんで、よろしくどうぞ!」と不敵に告げ、その言葉どおりバンドは「Don’t Think.Feel」「畢生皐月プロローグ」「ODD FUTURE」とライブに欠かせない鉄板チューンを連投。BiSHファンを“清掃員”とその総称で呼び、「俺らもおまえらと一緒なんだよ。純粋にBiSHの音楽をリスペクトしてるから誘いました」とこの対バンへの意思を明かしたTAKUYA∞。「そのリスペクトの形がこれ。清掃員のみんなも、いつもどおり暴れていいんだぜ!」と煽ると演奏はBiSHのカバー「GiANT KiLLERS」へ。
敬意は音で表すと言わんばかりに叩きつけられるハードでやんちゃなUVERworldバージョンの「GiANT KiLLERS」にはBiSHファンもUVERworldファンも大喜び。ジャンルの壁はもとより、ファン同士の壁もみるみる取り払われていく。
リンリンの“うどんエピソード”を受けて、「あれはリンリンがまったく同じうどんを2個、交互に食べていて。そりゃ“おいしいの?”って聞くでしょ?」と補足を加えたり、BiSHの衣装で何が好きかを問われ「My landscape」はカッコいいねと答えたところ、今日の衣装になっていたことや彼らのマネージャーがハシヤスメの大ファンであることを明かすなど、ファンの心情に寄り添ったフレンドリーなMCからも彼ら自身、この日の対バンを心から楽しんでいることが伝わっきた。
ドラマ『アバランチ』の主題歌としても大きな話題を呼んだ「AVALANCHE」やアニメ『約束のネバーランド』のオープニングテーマ「Touch off」といったメジャーな楽曲から「誰が言った」「One Last Time」など反骨精神とユーモアを綯い交ぜにしたオリジナリティ溢れるナンバーまで幅広い音楽性とアジテーティブなパフォーマンスでオーディエンスのハートを鷲掴みにするUVERworld。
終盤戦、TAKUYA∞は「(BiSHの)東京ドーム、観に行こうぜ。挑戦の最後を見届けよう」と呼びかけ、あらたな旅立ちを控えた彼女たちにエールを送ると、ラストはダンサブルな「UNKNOWN ORCHESTRA」で明るく初日を大団円に導いた。
■4月13日公演
続く『VSシリーズ』2日目は、出演予定だったOfficial髭男dismのボーカル&ピアノ・藤原聡が声帯ポリープを発症、その療養のため、急遽、対バンは見送られた形となったが、それに代わる演出としてギター・小笹大輔をゲストに迎えたUVERworldにとっても異例のスタイルで開催。
冒頭、メンバー6人のみでステージに登場したUVERworldは「AS ONE」からアグレッシブモード全開でオーディエンスに迫る。その後、客席の期待感が最高潮に高まったところで小笹を呼び込むと、まずはOfficial髭男dismのカバー「宿命」を披露した。
この2日間は『VSシリーズ』と銘打ってはいるが、今日は“VS”ではなく“with”だと告げ、UVERworld with 小笹大輔(Official髭男dism)でヤバいものを見せてやるとバンドを代表してTAKUYA∞が宣言すると、そのまま「CORE PRIDE」「在るべき形」へとなだれ込んでいく。
この日、MCで公にされたところによれば、Official髭男dismの出演見合わせが決まった当初、2日目はスタンダードなワンマンライブに切り替えるつもりだったという。しかし熱烈なUVERworldファンでもあった小笹から弾きたい曲があるからとの申し出があり、このようなスペシャルな形での出演が実現。しかも事前にリハーサルはしておらず、ぶっつけ本番の共演だというから驚かされた。
加えてUVERworldのライブはセットリストが直前で大幅に変更されることも常であり、小笹もまんまとその洗礼を受けたらしい。にもかかわらず「(変更になった)今のセトリのほうが最高なんです。世界一のエンターテイナーだと思う。好きすぎる!」とUVERworld愛を叫ぶ小笹。
UVERworldはUVERworldでOfficial髭男dismのカバーをするために相当に練習を重ねたとのこと、「トリビュートを出すときは声かけて。俺ら、ヒゲダンの曲、8曲ぐらいできるから」とTAKUYA∞もラブコールを贈るなど、相思相愛のムードで客席を和ませる。
さらにOfficial髭男dismの「Pretender」をカバーした直後、本来ならここで小笹の出番は終了となるはずだったところ、「でも、もう1曲やりたいんだよ。大ちゃん、いっぱい練習してくれたんでしょ? やりたい曲やろう」と突然、TAKUYA∞が言い出したのだからオーディエンスは大騒ぎ。
小笹も目を丸くしていたが、TAKUYA∞に促され「俺がUVERworldと初めて出会った曲!」と「SHAMROCK」をタイトルコール、7人が一丸となって渾身の演奏を轟かせるというライブらしいサプライズも。
その後、ライブ終盤にも再び小笹を招いて「ナノ・セカンド」をともにするなど、UVERworldにとっても、おそらく二度とないだろうこの形での共演が心はずむものであったことは間違いない。
同じボーカルという立場から喉を痛めた藤原を気遣い、「バンドを10年やっていれば、こんなこともあるよ。俺だって喉を何回潰したか。何が起きても前向きに進んでいればそれは復活したときにロマンチックの材料にしかならないから大丈夫」とわざわざ足を運んでくれたヒゲダンファンも励ましたTAKUYA∞。
ラスト直前にも「この2日間、いろんな角度から俺自身にも刺さる特別な時間でした。みんなにとっても今日という日はきっと特別な時間じ変わっていくから、みんなであいつ(藤原)の復活を待っていましょう」とも呼びかけた。
そしてUVERworldが7月29・30日に神奈川県・日産スタジアムという彼ら史上最大規模のライブが控えていることに触れ、「俺らも自分自身に負けないように今年はでっかいハードルを掲げました。もちろんライブ自体も成功させたいけど、それ以上に、掲げた目標に向かって日々成長していきたいし、その姿をファンに見せたい」と宣言。そんな力強いメッセージを今、彼らがもっとも大切にしているという曲「EN」に託して、まさに一期一会な『VSシリーズ』の2日間に幕を下ろした。
前述のとおり、7月29日には『UVERworld premium THE LIVE at NISSAN STADIUM』、7月30日には『UVERworld KING’S PARADE 男祭り Reborn at NISSAN STADIUM 6 VS 72000』と銘打ち、神奈川県・日産スタジアムに臨むUVERworld。バンド史上最大級のハードルを彼らはいかにして超えていくのか、その瞬間をぜひとも目撃してほしい。
TEXT BY 本間夕子
PHOTO BY 森好弘
リリース情報
2023.03.19 ON SALE
Blu-ray&DVD『UVERworld THE LIVE 2022.12.21 at Yokohama Arena』
UVERworld OFFICIAL SITE
https://www.uverworld.jp/
https://www.uverworld.com/