■「初めての声出しワンマン、改めて初めてライブをしている感覚になって、声が届くってホントにうれしいことだなと思いました」(吉澤要人)
2019年のデビュー以来、次元を超える独自の存在感で新時代のエンターテイメントを生み出す7人組ダンスボーカルユニット・原因は自分にある。が、ワンマンライブ『LIVE 2023 -Loud & Shuffle-』の東京公演を4月14日にSpotify O-EASTで行った。
始動直後にコロナ禍に突入し、ずっと声出しが制限されたなかで活動を行ってきた彼らにとって、なんと本公演はキャリア初の声出し可能ワンマンに。
現在『仮面ライダー ギーツ』にレギュラー出演中のため、グループ活動を制限中の杢代和人は欠席となったが、オーディエンスの声が轟く“Loud”と、通常とは異なるメンバー構成で魅せる“Shuffle”を織り交ぜ、観測者と呼ばれるファンとともに「最高!」の声が溢れる空間を作り上げた。
昼夜2公演のうち、夜公演の最後には3年ぶりとなるCDシングルのリリースも発表。夏のホールツアー、11月には初のアリーナワンマンも決定し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの彼ら。
スタンディングのフロアを埋め尽くす観測者(ファンの呼称)たちのペンライトが色とりどりに輝くなか、茶系を基調にした大人のムード漂うドレッシーな装いの6人が現れ、ヘヴィーなオーバーチュアから投下されたのは、3月に配信されたばかりの新曲「Mr.Android(feat.izki)」。
“僕は何者なんだろうな”という問いかけが印象的な軽快ロックチューンで、タイトルどおりの紳士感を滲ませた無機質な動きとパワフルなダンス、温度感のない直線的なラップとサビのエモーショナルな歌唱など、“アンドロイドと人間”のギャップを体現したパフォーマンスは、これが初披露とは思えないほど研ぎ澄まされている。
そしてガクリと電力切れしたようなポーズから、2ndシングル「嗜好に関する世論調査」のイントロが鳴ると大歓声が。
「3年ぶりの“2択”をコールでやっていきましょう!」と、Bメロで繰り返される“2択! 2択! 2択!”をメンバーそれぞれにフロアとコール&レスポンスして、さっそく声出し解禁の喜びを分かち合う。
さらに「声出していこうぜ!」と大倉空人が号令しての「ギミギミラブ」では、コロナ禍前のイベントと同じように観測者はAメロの“炭酸水!”を大合唱。サビではメンバーのジャンプに合わせて“Hey! ”の声があがり、時計の針を一気に3年前まで巻き戻していく。
しかし、「今を楽しんで!」という大倉の巧みな煽りやラップ、場内に響きわたる歌声、キレ良く息の合ったフォーメーションダンス、曲中でハグし合うメンバーの信頼感。久々の声出しライブは、期せずして彼らの成長をも浮かび上がらせたようだ。
MCでは、2日前に21歳の誕生日を迎えたばかりの大倉に「おめでとう!」の声が湧き、「ハッピーバースデー」の合唱に「楽しい!」と破顔。桜木雅哉もメンバー名を客席とコール&レスポンスして、ワンマンでは初めてとなる“観測者の声”を堪能する。
続いて「温まってきたということで、次の曲へ行きましょう」と、小泉光咲が指を鳴らして始まったのは「魔法をかけて」。ブロードウェイを彷彿とさせるショー風ナンバーをドリーミングに贈ったところで、「次は『Loud & Shuffle』の『Shuffle』のパートをしていきたいと思います」という彼の宣言により幕を開けたのは、なんと通常とは異なる歌割とメンバー構成で楽曲を披露するメンバー内シャッフルメドレーだ。
口火を切ったのは妖艶なジャズチューン「In The Nude」で、普段はピュアなイメージの強い小泉、桜木、吉澤要人の3人が、赤い照明のなかで口元を撫で上げたり腰をうねらせたりと、セクシーな仕草を全開にすればフロアはテンションマックス。
さらに、開いたパネルの向こうから互いにしなだれかかり、顔を寄せ合う大倉と長野凌大が登場して、観測者たちを沸かせる。禁じられた恋を歌う「半分相逢傘」をふたりでムードいっぱいに届け、“これでどっちも悪いね”の決め台詞を大倉が呟けば、曲中に流れる女性の台詞も今日だけのスペシャルバージョンに。
それに対し、「こっちおいで/どうするって? わかってるくせに」(大倉)、「お前しか見えない/俺のウチに来なよ。朝まで一緒にいたい」(長野)と公演替わりで殺し文句を放つ。
意外なメンバーセレクトで、“大人の男”の片鱗を見せたあとは一転、昨年春に発表された3部作を、それぞれのジャケットに映るメンバーにより等身大の瑞々しさで描写。小泉と杢代が映る「青、その他」では、杢代の代わりに吉澤が小泉と爽やかな歌声を聴かせ、その切ない心情を周囲で舞う4人が表現し、視覚と聴覚をフル活用して主人公の心象風景を映し出す。
「結末は次のトラフィックライト」ではメインの旋律を武藤、低音を吉澤が担当し、吉澤が得意とするバレエの要素も交えながら、極上のハーモニーを心地よい疾走感に乗せた。今度は桜木、長野、大倉がパネルの間から手を振って現れて「545」を涼やかに、伸びやかに歌い上げ、最後は全員の「キミヲナクシテ」でメドレーをフィニッシュ。
Z世代アーティスト・izkiによる甘さと一種のあきらめを併せ持つナンバーは、次元と世代の狭間でリアルを映し出す彼らと相性抜群で、難易度の高い細かい振り付けと相まってあらたな可能性を感じさせてくれた。
ちなみに1曲目の「Mr,Android」や、テレビ東京系アニメ『デュエル・マスターズWIN 決闘学園編』のエンディングテーマにも起用された4月発表の新曲「放課後ギュッと」も、同じくizkiの手によるもの。そこからも、彼らのチャレンジングな姿勢が窺えるだろう。
中盤戦は「僕たちの世界観をお見せします」(桜木)と、巨大なバックスクリーンに映像を映し出し、その前でパフォーマンスするという、実に“げんじぶ”らしいパートに。一面の銀河や青空に明朝体の歌詞が浮かぶ「幽かな夜の夢」では、小泉の情感豊かな歌声を中心にスピード感あるダンスが彩って、なんとも幻想的な世界が広がっていく。
回る時計と天球儀技が時空を巻き戻していく「無限シニシズム」でも、大倉や吉澤を筆頭に、吐き出すようなボーカル&ラップが楽曲のシニカルな色をアピール。映像と音楽、パフォーマンスが三位一体となって生み出される奥深い世界観は、げんじぶならではのものだ。
そのぶん、「盛り上がる準備できますか?」という長野の問いかけから突入した再びの“Loud”パートは、効果的なメリハリでより熱くフロアを巻き込み、曲のイントロが鳴るたび歓声があがる熱狂空間に。
「いつもはクラップだけど今日はみんなの声聞きたいです!」「僕たちに、そして(杢代)和人に届けてください!」と長野が呼びかけた「原因は君にもある。」でも、“ららら…”の大合唱に、大倉が「観測者、愛してるぜ!」と感謝を露わにする。
加えて夜公演では、桜木が“好きだ、好きだ、メッチャ好きだ!”と歌詞を歌い替え、
観測者たちを盛り上げた。
そこから全員で「1、2、3、4!」と吠え、新曲「放課後ギュッと」へと雪崩込めば、客席は瞬時に“ハイ! ハイ!”と声をあげて歓喜。学園生活への想いを赤裸々に描いた共感度120パーセントのロックナンバーを少年の愛らしさ、そして十代の若さとエネルギーいっぱいにステージ初披露する彼らに、事前にファンクラブで公開されていた振り付け動画の甲斐もあってか、間奏では客席のペンライトが見事なリズムで振るわれていく。
続いて、げんじぶ随一の熱いロックナンバー「Lion」では、燃え盛る炎を背に、武藤の直情的な歌声がスモークとともに噴出。それぞれが首筋や唇に手を添わせる冒頭のポーズといい、ライオンのような咆哮といい、ギリギリまで前に出てフロアを煽り立てる仕草といい、まさしく肉食獣を思わせる獰猛なパフォーマンスに大歓声が起きる。
そんなムードを直後、ラブソング「チョコループ」で容赦なく壊していくのも鮮烈。笑顔いっぱいでハシャぎ、「踊るよ!」と誘いかける彼らの見事な変身ぶりに、観測者から「かわいい!」の声が飛ぶのも当然だろう。
曲中に限らず、桜木が衣装のお気に入りポイントにベストの薔薇柄を挙げたり、武藤が「放課後ギュッと」のMVで本当の学校を借りた話をしたりと、この日のMCのみの特別な話題が満載であった。
「いかがでしたか?」と感想を求められるたび、フロアからは「最高!」の声が返っていたが、3年ぶりに想いを直接声で伝えられるというシチュエーションが互いにとって「最高」なのは当然だろう。
「ラストスパートです。最後まで声出して楽しんでいきましょう!」と小泉が呼びかけての「桜Ground」では、満開の桜を背景に“先”へと進もうと約束。“ハイ! ハイ!”と声を出しながらペンライトを振り上げる観測者たちを、メンバーはジッと見つめ、ユニゾンで歌い上げながら共に拳を振り、確かな一体感を作り上げていく。
ここで改めて今後のライブ予定が伝えられるが、さらに夜公演では6月7日に3rdシングル「Foxy Grape」が発売されることを発表。これまですでに3枚のアルバムを発表し、新曲の配信も頻繁に行ってきた彼らだが、CDシングルをリリースするのは2020年1月の「嗜好に関する世論調査」以来、なんと3年ぶりとなる。
イソップ童話の『酸っぱい葡萄』がモチーフだという楽曲が、はたして、どんなに仕上がりになるのか? 発売を楽しみに待ちたい。
現在、彼らは所属するEBiDANの一員として、4月5日にリリースした全体曲「前略、道の上より」「New day! New wave!」のプロモーション活動も精力的に展開中。夜公演では、その合言葉ともいえる「ソイヤ!」を観測者も合わせた全員で大合唱し、「何のライブ?」と笑い合える空間がうれしい。
昼公演で吉澤は「初めての声出しワンマン、改めて初めてライブをしている感覚になって、声が届くってホントにうれしいことだなと思いました。笑い合って、声をぶつけ合っていけば、もっと素敵な空間が生まれるんじゃないか」と語ったが、まさしくそのとおり。
夜公演でも「皆さんの声を聞いたのは、2ndシングル『嗜好に関する世論調査』のリリースイベントぶり。“炭酸水!”が僕たちが受け取った最後の言葉でした」と場内を笑わせた大倉も、「こうやって3年間で成長して、また声を出して一緒に空間を作ることができて、僕たち7人本当に幸せです。これからのげんじぶが、今日で見えたなと思いました」と、頼もしい言葉をくれた。
そして、この日最後の曲として、1stシングルに収録されていた「ラベンダー」を小泉がカットインで歌いだすと、懐かしの選曲に歓声が。失った恋をエモーショナルに綴る小泉、武藤、長野の歌唱に対し、サウンドは躍動的なダンスチューンというレアな取り合わせも、彼らが標榜する“新時代のエンターテイメント”に相応しいものだろう。
今回の『Loud & Shuffle』は5月28日に大阪・GORILLA HALLでも行われるが、セットリストは東京公演とはまったく異なるものになるとのこと。MCでの武藤の言葉を借りれば、どうやら「セトリもシャッフル」されるらしい。
7月からは全国4都市を回るホールツアー『LIVE TOUR 2023 -G=ø-』、11月5日にはぴあアリーナMMで『因果律の逆転』が決まっており、初のアリーナ公演ということで湧いた「おめでとう」の声に、「うれしい、もう1回!」と大倉がせがむ場面も。21歳初のステージに最後の最後まで残り、「素敵なライブを作りましょう」と約束した彼の言葉は、2023年、きっと叶え続けられていくだろう。
TEXT BY 清水素子
PHOTO BY 米山三郎
■『LIVE 2023 -Loud & Shuffle-』
2023年4月14日に(金)東京・Spotify O-EAST
<セットリスト>
01. Overture
02. Mr.Android
03. 嗜好に関する世論調査
04. ギミギミラブ
05. 魔法をかけて
06. In the Nude(小泉・桜木・吉澤)
07. 半分相逢傘(大倉・長野)
08. 青、その他(小泉・吉澤)
09. 結末は次のトラフィックライト(武藤・吉澤)
10. 545(大倉・桜木・長野)
11. キミヲナクシテ
12. 幽かな夜の夢
13. 無限シニシズム
14. 原因は君にもある。
15. 放課後ギュッと
16. Lion
17. チョコループ
18. 桜Ground
19. ラベンダー
リリース情報
2023.04.03 ON SALE
DIDITAL SINGLE「放課後ギュッと」
2023.06.07 ON SALE
DIGITAL SINGLE「Foxy Grape」
原因は自分にある。OFFICIAL SITE
https://genjibu.jp/