■「2日間にわたって04 Limited Sazabysが進めたものは、大袈裟に言うのならば、日本のロックフェスの未来だと思う。」(※ライブレポートより)
前に前に進むために、諦めることを諦めて、耐えて耐えて超えてきた景色。04 Limited Sazabysが、彼らの地元である愛知県は愛・地球博記念公園(通称モリコロパーク、約2万人動員)で4月8日・9日の2日間にわたり開催した『YON FES 2023』で目の前に広がった光景こそ、誰もがこの数年待ち侘びたものであり、フォーリミがたくさんの仲間たちと共に取り戻したかけがえのないものであった。
フォーリミも出演者も口々に言葉にしていた「反撃の狼煙」は確実に『YON FES』で上がったと断言できる。思えば『YON FES』開催を断念しなければいけなかった2020年、2021年という先の見えない時期があって、そのなかで模索しながら行った『YON EXPO』で光が射し、新しい歩幅で進めた2022年の『YON FES 2022』を経てアルバム『Harvest』リリース、ツアーと、一歩ずつ着実と踏み込んできたこの数年の出来事が、すべて地続きとなって、2023年の『YON FES』を作り上げたのだと思う。なかったことにしない。しゃがみこんだ日々を忘れない。そのうえで先に進むこと。2日間にわたって04 Limited Sazabysが進めたものは、大袈裟に言うのならば、日本のロックフェスの未来だと思う。
■DAY1
初日である4月8日には04 Limited Sazabys、キュウソネコカミ、See You Smile、My Hair Is Bad、Age Factory、クリープハイプ、SHANK、ウルフルズ、FOMARE、SUPER BEAVER、KUZIRAが出演。
『YON FES』の、フェスシーンのあらたな幕開けを筋斗雲に乗ってフロアに飛び込んで「予感」から「確信」に変えたキュウソネコカミ、ポップパンク真正面からぶん投げることでフロアを笑顔でいっぱいにしたSee You Smile、不安と焦燥のなかでじゃあ何が好きで何が大切なのかを再確認させられたMy Hair is Bad、鼓動を高め心を走らせる轟音を優しく熱く鳴らしたAge Factory、こんがらがった愛の糸も意図も、解けないままその言葉と音でえぐるクリープハイプ、導火線に火を付けたと思った瞬間に大爆発させるようなバチバチのライブを見せた『YON FES』皆勤賞のSHANK、とにかく笑えればって願い続けてきたこの数年を、前を向いて胸をはってパワフル魂で笑い飛ばす勇気をくれたウルフルズ、当たり前だった毎日を当たり前に抱きしめることを思い出させてくれたFOMARE、心のずっと奥のほうまで潜り込んできて一人ひとりに独りじゃないと叫んだSUPER BEAVER、憧れと敬意を大爆殺させて、初出演にしてLAND STAGEトリを飾った海を泳ぐKUZIRAと、計10バンドが04 Limited Sazabysに思いを繋ぐ。
『YON FES』初日、04 Limited Sazabysが1曲目に選んだのは「Every」だった。メロディを以って光を放つと宣言するこの曲は、この数年間をもがきながらそれでも前に進もうとしてきた04 Limited Sazabysと僕たちの「同志」としての決意の歌だ。「Keep going」だってそう。誰も置いていかず、一緒に前に進むための約束を『YON FES』でしっかり果たす4人の姿に感情的にならないわけがない。約束といえば「My HERO」で歌っている“未来で合図を待ってて”のその未来ってきっと今日のことだったんだろうなって思う。2018年に発表されたこの曲を、2023年の4月に『YON FES』で聴くと、すべてが今この瞬間のためのメッセージに聴こえるから面白い。先に進むだけ、さらに進むだけ。そのために僕らはでっかい宝島をアドベンチャーし続けるのだ。じゃあ探していたお宝は見つかったかって、モリコロパークに広がるこの光景こそ、何よりもキラキラに輝く宝物なんだと思う。
容赦ない決断を迫られ続けたなかで僕らが手に入れた新しい価値観。その新しい自分が新しい歩幅で進むことを「Jumper」では歌っているけれど、それってきっとこの先何が起きたってこの考え方を忘れなければ乗り越えていける気がする。何回だって何十回だって軌道修正すればいい。GENが「『YON FES』が帰ってきた」と言っていたけれど、それだって軌道修正だ。開催を断念したあの2回だって、開催はできなかったけれど意味がなかったわけじゃない。その2年があっての2022年の『YON FES』だし、2023年の『YON FES』なのだ。受け入れることが難しい出来事もあった。悲しい別れもあった。そのたびに救ってくれたのが音楽だ。音楽が力をくれる。大人になって随分経って夢みたいなこと言ってるんじゃないって笑われるかもしれないけれど、夢だけじゃなく、その何倍も現実をくらって、それでも音楽に夢を見ているんだ。そしてそのうえで見ているのが「音楽が力をくれる」という現実なのだ。
フォーリミ的「笑えれば」(ウルフルズの曲)とGENが告げて歌った「Honey」が今でも頭の中で鳴っている。悲しまなくて良い。とにかく笑えれば、最後に笑えれば。僕らはそうやって生きていく。僕らはみんなで生きていく。アンコールで披露した「Harvest」と「Squall」でも歌っていたように、あの頃には戻れない。だって失ったものがあるから。だけど僕らは、人間は、何度も変わることができる。進むことができる。そう思わせてくれるのだって、やっぱり音楽の力なんだと思う。色づき始めた日々に青を塗って白を塗って、04 Limited Sazabysと僕たちの気持ちを塗って、取り戻した日々。完全前進宣言といえる『YON FES』初日。新しい時代の幕開けを感じた。
■DAY2
『YON FES』 2日目、4月9日は04 Limited Sazabys、KEYTALK、TENDOUJI、緑黄色社会、Paledusk、HEY-SMITH、dustbox、Dragon Ash、Wienners、フレデリック、Makiが出演。
4月にも関わらずカラダが夏になるほどの灼熱のサマーアンセムを乱射したKEYTALK、ローファイもハイファイも押し込んで丸呑みして吐き出して天気すら操るTENDOUJI、メラメラとポップに今を鳴らしたフォーリミと同郷の緑黄色社会、メタルコアをダンスミュージックに昇華させ、フロアに地獄絵図を作るべく『YON FES』に降臨した悪魔超人群Paledusk、スカパンクのもつメッセージや希望や現実や、そして何より楽しさを体現して『YON FES』を盛り上げたHEY-SMITH、雲ひとつない空から降り注ぐような奇跡のメロディを炸裂させ、Dragon Ashのステージ袖では興奮してコーラも爆発させたdustbox、時の流れが激しくとも、その音楽で蹴散らし、『YON FES』に堂々と始まりの合図を鳴らしたDragon Ash、直射日光と音楽のビームを味方につけて愛で音楽を連打したWienners、踊ってない夜があったら教えてほしいくらいモリコロパークを巨大なディスコにしたフレデリック、たくさんの地元バンドの期待と思いを背負ってLAND STAGEトリを務めたMakiと、計10バンドの熱演を受けSKY STAGEに登場したのは04 Limited Sazabys。
『YON FES』をもってして、フェスカルチャーのあらたな扉が開いたことを確信したこの日の04 Limited Sazabysのライブ。僕らの日々を返せってずっと思っていたけど、取り戻したり取り返したりするんじゃなくて新しく作るのがこれからのやり方だ。「swim」でフロアが泳いでいる光景を観て、もうそのまま好きなほうへ泳いでいこうと何度も思った。もがいたって沈んだって息継ぎして泳いでいけばいい。大事なのは前に進むことを諦めないことだ。今ならうっかり大気圏を突破した流星群とだって一緒に泳げる気がする。
「fade」「fiction」とライブハウスシーン、フェスシーン、そして僕らの日常が日常としてドクドク鼓動が鳴り始めていることを実感するナンバーが続く。この数年で生活のサイクルも遊び方も変わったと思うけど、例え世界が終わったとしてもライブハウスでいつだって僕らを待っている。もしまだ少し怖いなって思うなら、それも全然否定しないからファインダーを覗いてみてほしい。そこには飛び出して踏み出した04 Limited Sazabysが待っているから。ライブハウスで待っているから。ここからはもう舞ってる未来しかないから。
Dragon AshのKjとWiennersの玉屋2060%を迎えてのDragon Ashカバー「crush the window」は、目の前で伝説の瞬間を観ているようだった。GENとKjが向かい合って歌う姿にはカルチャーを作り続ける男たちの絆を感じたし、ハンドマイクで歌うGENの代わりにベースを弾く玉屋2060%の存在感の大きさにも胸がパチパチするほど騒いでしまった。04 Limited SazabysとDragon AshとWienners。世代も活動する場も昔だったらみんな違ったのかもしれない。だけど2011年があって、2016年があって、コロナ禍を経て、大切な人を失って、そうやって少しずつ共有するものがあって、いつの間にかみんな仲間になっていた。そのひとつの形が今日の「crush the window」なのだ。連動したプラスとマイナス、ブレンドしたガイダンス、そうやって作り上げた光あるステージ。やっぱり2023年の『YON FES』で何かが大きく動いたのは錯覚なんかじゃなかった。
それが如実に表れていたのが「hello」だ。『YON FES』で聴く「hello」は本当に特別で、これまでも何度もこの曲でドラマが生まれてきたけれど、今日、本当に久しぶりに完全版「hello」を聴けた気がする。コロナ禍での「hello」は音源に近いアレンジでの披露が多かった印象だけど、この日の「hello」はこの数年、ずっと聴きたかった「hello」だった。これは憶測だけど、メンバーの表情を見ている限り、演奏しながらきっと阿吽の呼吸でアレンジというか曲の尺が変わったんだと思う。そうさせたのはきっと『YON FES』に集まったたくさんの人の声だと思うし、見守るたくさんの仲間の顔だと思うし、何より04 Limited Sazabysがそうしたくなったんじゃないかと、肌にこびりついてる感触がそうさせたんじゃないかと想像する。やっぱり「Feel」でも前に進むことを力強く宣言し、アンコールではバンドにとって幼馴染のような「Buster call」、そして「message」で大団円を迎えた。
この2日間でGENが何度も言っていた前に進むということ。そのためには一度壊してまた作り直すことが必要だったんだと思う。それがあの2年間だし、その過程の2022年の『YON FES』だし、作り直してあらたに前に進んだ2023年の『YON FES』なんだと思う。11月には武道館2DAYS公演の開催も決定した04 Limited Sazabys。これからまた予想もつかない何かが起きるかもしれない。日常が、当たり前が、奪われるようなこともあるかもしれない。だけどありふれた安心を、ありふれた感動を、そのたびに04 Limited Sazabysが僕らに与えてくれるはずだ。そして僕らも04 Limited Sazabysに与えていきたい。だって僕らは『YON FES』観戦同志だから。ここからが反撃開始だ。行こう。
TEXT BY 柴山順次(2YOU MAGAZINE)
PHOTO BY ヤオタケシ/藤井拓/日吉”JP”純平/ヤマダマサヒロ/かい
『YON FES 2023』公式サイト
https://yonfes.nagoya/feature/2023
04 Limited Sazabys OFFICIAL SITE
https://www.04limitedsazabys.com/