ワールドワイドな支持を得ているメタルダンスユニット・BABYMETAL。『THE FIRST TAKE』出演で、改めて注目を集めているBABYMETALのこれまでの軌跡と独創的な魅力、おすすめしたい必聴楽曲を紹介する。
■世界で活躍する、メタルダンスユニット
BABYMETAL(読み:ベビーメタル)
PHOTO BY Taku Fujii
・結成年:2010年
・メジャーデビュー:シングル「イジメ、ダメ、ゼッタイ」(2013年1月9日)
・メンバー:SU-METAL(Vo、Dance)、MOAMETAL(Scream、Dance)、MOMOMETAL(Scream、Dance)
・OFFICIAL SITE https://www.babymetal.com
・Twitter https://twitter.com/BABYMETAL_JAPAN
・Instagram https://www.instagram.com/babymetal_official
・Facebook https://www.facebook.com/BABYMETAL.jp
・TikTok https://www.tiktok.com/@babymetal_japan
・YouTube https://www.youtube.com/@BABYMETAL
2010年にSU-METAL(Vo、Dance)、MOAMETAL(Scream、Dance)、YUIMETAL(Scream、Dance)によって結成されたBABYMETAL。2018年10月以降は、SU-METAL、MOAMETALを中心とした体制で活動。
2012年にヘヴィメタルの聖地として知られるライブハウス、東京・目黒鹿鳴館に立つ。同年8月には『SUMMER SONIC 2012』に登場し、10月には初のワンマンライブ『I、D、Z~LEGEND“I”』を開催。ライブ活動を活性化させたBABYMETALは、2013年1月9日、ライブでも披露してきた「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でメジャーデビュー。高速のメタルサウンド、ドラマチックなボーカル、それらに共鳴するダンス、3人のパフォーマンスが注目を集め、瞬く間に知名度を上げた。
2014年2月26日に1stアルバム『BABYMETAL』を発表。この年から海外での活動も盛んになり、大型メタルバンドフェスティバル『Sonisphere Fesitval UK』に出演したほか、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨークでのワンマンライブ、さらにレディー・ガガのサポートアクトをつとめるなど、存在感を高めていった。
2016年4月にはイギリス・Wembley Arenaで日本人初のワンマンライブを敢行。2019年6月には世界最大規模の音楽フェス『Glastonbury Festival』に出演し、大きな話題を集める。
2019年10月11日に3rdアルバム『METAL GALAXY』を世界同時リリースし、同日、アメリカでの初めてのアリーナワンマンライブをロサンゼルスのThe Forumで開催。『Billboard Top 200』の総合アルバムチャートで13位にランクイン、ロックアルバムチャートではアジアアーティストとして史上初の1位を獲得。また、ニューヨーク公演を含むアメリカツアー『METAL GALAXY WORLD TOUR』を成功させるなど、結成10周年を目前にして大きな成果を上げた。
2021年1月から4月にかけて行われたBABYMETAL史上初の日本武道館10公演『10 BABYMETAL BUDOKAN』を完遂。同年10月ライブ活動を“封印”。2023年1月に幕張メッセで約1年9カ月ぶりとなる国内ライブ『BABYMETAL RETURNS – THE OTHER ONE – 』を開催し、復活を遂げた。同年3月24日にコンセプトアルバム『THE OTHER ONE』のリリース、4月にはぴあアリーナMMにて『BABYMETAL BEGINS – THE OTHER ONE – 』の2DAYSを完遂し、SU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALの3人体制による新生BABYMETALがキツネ様によって召喚され、新章をスタートした。
■BABYMETALのメンバーは?
(L→R)MOMOMETAL/SU-METAL/MOAMETAL
PHOTO BY Taku Fujii
SU-METAL(読み:スゥメタル)
BABYMETALのメインボーカル。
スラッシュメタル、デスメタル、メロディックハードコアなどを取り入れた重厚なサウンドをしっかりと捉え、ドラマチックかつキャッチ—な旋律を響かせる彼女のボーカルは、まさにこのユニットの核と言っていい。
キャリアを重ねるごとに表現力とスケール感を増し、ロックボーカリストとしても高く評価されている。
ステージにおける存在感もSU-METALの魅力。今やドームやアリーナクラスの会場でもライブを行っているが、壮大な演出やストーリー性の中心を担っているのは、やはり彼女の凛とした佇まいだろう。
MOAMETAL(読み:モアメタル)
スクリームとダンスを担当しているMOAMETALは、BABYMETALのパフォーマンスの要だ。
キレのいいダンス、キュートな表情、そしてオーディエンスを煽るようなスクリームが彼女の魅力だ。
結成当初からパフォーマー、エンターテイナーとしての資質が際立っていたが、YUIMETAL脱退以降は、ダンサーとしても大きく成長。ヘヴィかつダークなロックチューンからポップでカラフルな楽曲まで、どんなテイストの楽曲も“魅せる”センスとスキルを身につけている。
ライブにおいては観客と積極的にコミュニケーションを取り、一体感を演出。BABYMETALとファンを繋ぐ役割も担っている。
MOMOMETAL(読み:モモメタル)
新生BABYMETALとして、2023年4月1日にキツネ様に召喚されたMOMOMETALは、スクリームとダンスを担当。4月2日に開催されたぴあアリーナMM公演で3人体制の新しいBABYMETALとして初ライブを開催し、MOAMETALとの息の合ったパフォーマンスを披露している。
■海外からの反応、熱狂ぶり
◎本格的なメタルサウンド
PHOTO BY Taku Fujii
オーセンティックなヘヴィメタルを軸に、スラッシュメタル、スピードメタル、ラップメタル、グラインドコアといったジャンルを融合。さらに楽曲によってはポップでキャッチ—なメロディ、コミカルでキュートな歌詞もあり、きわめて独創的なミクスチャーが成立している。
“激しくて強い、そしてかわいい”という独自のバランスを持ったBABYMETALの音楽性は海外でも支持され、ヘヴィメタルのコアファンやジャパニーズカルチャーに興味を持っている層などを中心に多くのファンを獲得することに。
アメリカ、ヨーロッパの大型メタルフェスへの出演、アリーナクラスの単独公演、先述したレディー・ガガのほか、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのツアーに帯同したことなども、海外での評価の高さを証明している。
◎こだわり抜いたライブパフォーマンス
PHOTO BY Taku Fujii
BABYMETALが世界的な人気を持つに至った理由として、唯一無二のライブパフォーマンスも外せない。
ライブの規模が拡大するにつれて、演出、セットなどもスケールアップ。神話的な世界観に沿った舞台美術やムービングステージをはじめとする大がかりな仕かけも登場し、彼女たちのライブは今や一大エンターテインメントと化している。
その中心にあるのは、もちろん圧倒的なパワーと繊細な表現力を共存させたSU-METALの歌声、そして、楽曲の世界観を全身で表現するMOAMETALのパフォーマンス。
彼女たちのステージングを生演奏で支える“神バンド”の超テクニカルな演奏、そして、ウォール・オブ・デスやサークルモッシュといったオーディエンス参加型の演出も、BABYMETALのライブの楽しさに繋がっている。
◎壮大なストーリー性
PHOTO BY Taku Fujii
メタルの神である“キツネ様”に憑依され、ヘヴィメタル復権のために立ち上がる(=メタルレジスタンス)…そんな設定から始まったBABYMETALのストーリー性は、キャリアを重ねるごとに拡大を続けている。
例えば、2016年4月1日、アメリカ、ヨーロッパ、日本で同時リリースされた2ndアルバム『METAL RESISTANCE』での“メタルレジスタンス”は、“世界各地から一斉にその火の手をあげる”。物語性に沿って楽曲やライブを制作することで、オーディエンスの没入感を高めているのもBABYMETALの特徴だろう。
メタルレジスタンスは全10章で幕を閉じたが、2022年4月には、新展開としてバーチャルワールド『METALVERSE』を通じ、“我々の知らなかったBABYMETAL”を復元させる計画“THE OTHER ONE”の始まりを発表。
■『THE FIRST TAKE』で披露した「Monochrome」
▼BABYMETAL – Monochrome – piano ver. – / THE FIRST TAKE
BABYMETALは、一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取るYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に初登場し、コンセプトアルバム『THE OTHER ONE』から先行配信された「Monochrome」を披露。
SU-METALが作詞を手がけた第1弾楽曲「Divine Attack – 神撃 -」に続くこの曲は、壮大なスケール感をたたえたロックサウンド、ドラマチックに広がるメロディを軸にしたミディアムチューン。北欧神話における“終末”を意味する“ラグナロク”と、復元されたパラレルワールド“MONOCHROME”が折り重なる歌詞は、ダークファンタジー的な世界観を引き継ぎながらも最後には“虹色“や“笑って”など、未来や希望を示しており、彼女たちのあらたなストーリーとも強く結びついている。
▼BABYMETAL – Monochrome (OFFICIAL LYRIC VIDEO)
楽曲のイメージに合わせ、モノクロームに近い雰囲気のスタジオに置かれたのは2本のマイクのみ。クラシカルなピアノの旋律が聴こえてくると同時に、SU-METAL、MOAMETALが姿を見せ、“空を彩る ナナイロの夢/ずっとこのまま 見ていたかった”というフレーズからパフォーマンスをスタートさせた。
まず特筆すべきは、SU-METALのボーカリゼーション。抑制されたAメロから徐々に熱量を上げ、サビに入った瞬間に圧倒的なカタルシスをもたらす歌声はまさに圧巻だ。ピアノとストリングスによるアレンジも、彼女のシンガーとしての魅力を際立たせている。
SU-METALを支えるように響く、MOAMETALのイノセントなコーラスも絶品。
2度に渡って映し出された、白い衣装に身を包んだ“3人”の後ろ姿にも注目が集まっている。この3人の存在は、今後の活動で明かされていくのだろうか?
■知っておきたい!BABYMETALの聴くべき5曲
「THE ONE」
2016年リリースの2ndアルバム『METAL RESISTANCE』に収録。大スケールの旋律、メタルとプログレが共鳴するサウンド、そして、“私たちはひとつになる”というメッセージを感じさせる。BABYMETALのストーリー性、独創的な音楽性がダイレクトに体感できる名曲だ。軸になっている、SU-METALのボーカル。すべてのフレーズに強い感情を込め、リスナーを引き付けると同時に奥深い物語を描き出す歌は、ライブ(最後に演奏されることが多い)でも大きな感動を生み出し続けている。
「Road of Resistance」
2015年リリースの配信シングル。UKのメタルバンドドラゴンフォースのサム・トットマン(Gu)、ハーマン・リ(Gu)がレコーディングに参加したスピードメタルチューン。攻撃的なバンドサウンド、エモーショナルな歌声、BABYMETALの軌跡と繋がるリリックがぶつかり合うこの曲は、彼女たちのコンセプトと直結したアンセムのひとつだ。ライブのクライマックスで披露されることも多く、冒頭ではSU-METALがウォール・オブ・デスを促すなど、熱狂と一体感を高める楽曲としても知られている。
「ギミチョコ!!」
2014年リリースの1stアルバム『BABYMETAL』収録。超高速のヘヴィメタルサウンドとかわいさ満点のサビのメロディライン、チョコレートをテーマにした歌詞を融合させた初期の代表曲。ライブパフォーマンスを収録したMVの再生回数は1億7000万回を突破し、メタルダンスユニットとしての独創的なコンセプトを強烈に印象づけた。この曲でBABYMETALを知った海外のリスナーも多く、彼女たちにとって最初のブレイクポイントとなった。
「PA PA YA!! (feat. F.HERO) 」
2019年リリースの配信シングル。タイのヒップホップシーンを代表するF.HEROをフィーチャーした楽曲。グランジ、オルタナ、ヘヴィメタルなどを織り交ぜたニューメタルの流れを感じさせるサウンド、南国風味のリズム、アジアンテイストのメロディに“祭りだ!祭りだ!”“踊れ!踊れ!”という歌詞が響き合う、祝祭感に溢れたナンバーだ。ライブでは盆踊り風の振り付けを披露。観客はタオルを回しながら盛り上がることでも知られる。
「メギツネ」
2013年リリースの2ndシングル。
ラウド&ファストなメタルサウンドを軸に、和楽器の音、民謡風のメロディなどの要素をふんだんに散りばめた和洋折衷なアッパーチューン。メタルコアと“和”を融合させた音楽性からは、BABYMETALの特異なスタンスがはっきりと伝わってくる。日本の伝統的な歌曲をモチーフにしたパート、祭囃子的なかけ声も楽しい。“咲いて散るのが女の運命よ”といった演歌的なムードを感じさせる歌詞と、SU-METALの鋭いボーカルのコントラストもこの曲の聴きどころだ。
■進化し続ける、最新のBABYMETAL
2021年10月10日をもって“LEGEND(=ライブ)”を封印したBABYMETAL。
その封印が解かれたのは、2023年1月28日・29日に行われたワンマンライブ『BABYMETAL RETURNS – THE OTHER ONE -』だった。
10年間の活動を経て、“LIVING LEGEND”になったBABYMETALが、バーチャルワールド“METALVERSE”を通じ、もうひとつのBABYMETALを復元させる計画“THE OTHER ONE”の最終局面へと突入する…というコンセプトのもと、本格的な活動を再開させる。
3月24日には、初のコンセプトアルバム『THE OTHER ONE』を世界同時リリースしているが、それに先駆け、先行配信曲を次々と発表している。
「METAL KINGDOM」
1月に配信された「METAL KINGDOM」は、重厚なストリングスから始まる。研ぎ澄まされたバンドサウンド、力強い意志を刻んだ旋律、透明感と凛とした鋭さをたたえた歌声を高らかに響かせるバラードナンバーだ。自らを奮い立たせ、信じる友と未知なる道へ踏み出す覚悟を描いた歌詞も、BABYMETALの再出発と強くリンクしている。“THE OTHER ONE”の幕開けを告げる、あらたなアンセムと言えるだろう。
「Light and Darkness」
続く、2月にリリースされた「Light and Darkness」は、しなやかな4つ打ちのビート、エレクトロとメタルが結合したトラックが印象的だ。切なさと憂いを抱えながら飛び立つようなメロディを含め、BABYMETALの新機軸と呼ぶべき楽曲に仕上がっている。歌詞のテーマは、復元されたパラレルワールド“LIGHT AND DARKNESS”。“光があるから闇があり、闇の存在によって輝く世界がある”という現実を描きながら、その先にあるはずの愛に溢れた世界を希求する——真摯なメッセージもまた、BABYMETALの進化を証明している。
■BABYMETALの名曲たちをチェック
ニューアルバム『THE OTHER ONE』を軸にした、あらたなストーリーを繰り広げているBABYMETAL。10年以上におよぶキャリアが刻まれた楽曲の数々をぜひチェックしてほしい。
TEXT BY 森 朋之