■「このアルバムの制作で私はパワーを与えられ、自分のなかの悪魔と向き合うことができました」(RAYE)
全英No.1歌姫、大逆転で成功を掴んだ話題のシンガーソングライター・RAYE(レイ)のアルバムデビューが決定。1stアルバム『My 21st Century Blues』を2月3日にリリースした。
メジャーからインディーに移籍して大成功したRAYE。先行シングル「Escapism. (feat. 070 Shake)」は、既にイギリスで1位を記録。これまでの逆境を赤裸々に歌ったアルバム『My 21st Century Blues』で世界の音楽シーンを塗り替える。
これまでにシンガーとしてデヴィッド・ゲッタやジャックス・ジョーンズ、ジョナス・ブルーらのヒット曲に歌声を提供し、ソングライターとしてリトル・ミックスからメイベル、チャーリーXCX、ビヨンセ、他多数のアーティストに楽曲を提供してきたRAYE。
あらゆる想いを込めて作られたエモーショナルな楽曲が並んだ1stアルバム『My 21st Century Blues』は、そんなRAYEが自身のために作った楽曲集であると同時に、様々な逆境に立ち向かい、乗り越えてきた全ての人々のためのアルバムでもある。
RAYEいわく、「『My 21st Century Blues』は、私のデビューアルバム。過去7年間の私の人生で、壊れてしまったガラスの破片によって形成された、醜くて複雑で美しい私のモザイクです。私の治療薬、私の不安とトラウマ、私の嘘偽りない思考です。最も辛い時期に私に寄り添ってくれた音楽でもあり、怯えたり恐れることなく愛と涙で作られたブルースです。そして今、私が救われたように、これを聴いてくれた人々にも同じ効用があることを願っています。まるで夢のようです。遂に私の1stアルバムが完成です」
昨年、RAYEの音楽シーン復帰を取り巻く状況は、加速度的に成功を収めた。TikTokでバイラルヒットとなった「Escapism.」は、先月までに2億1,600万回超えの累積ストリーミング数と、3,500万人の月間Spotifyリスナーを記録。そして英国でNo.1を記録すると、すぐさま世界的にも大ヒット。現在オーストラリア、ノルウェー、アイルランド、ドイツ、オランダでトップ10入りを記録。アメリカではビルボードHot 100のシングル・チャートで、トップ20入りを狙う状況だ。失恋の傷を癒すために用いられたアルコールとドラッグ、セックスなどの自己治療の日々が赤裸々に歌われており、先行リリースされた「Black Mascara」、「Hard Out Here」、「The Thrill Is Gone」に続いてのヒットとなる。
アルバムに収められたプライベートな体験が綴られた渾身の13曲には、あらゆる事柄が網羅されている。音楽業界での辛かった体験から、性的虐待、性的暴行、身体醜形障害、依存症、男尊女卑まで。さらには気候変動も。新たな傑作「Buss It Down」、「Ice Cream Man」、英国オルタナR&Bボーカリスト、マヘリアとの共演曲「Five Star Hotels」も収録。
「ずっと以前から書き溜めていたこれらの曲は、私が表現して共有する必要があったもの。不快すぎるし、オーディエンスはこんなの聴きたくないと言われたこともありました。音楽にゴールなどありません。私は伝えたいストーリーに相応しい作品をクリエイトするだけ。とても自由を謳歌しています」
RAYEは、長年苦しんできた身体醜形障害について「Body Dysmorphia」で率直に歌い上げ、「Mary Jane」では薬物乱用についての過去を詳細に綴っている。「私の依存症へのラブソングです。女性はこうした問題をあまり語らない。私たちは口を閉ざしているからです」と彼女は語る。鼓動するリズムが特徴的なセカンドシングル「Black Mascara」では、リアルな苦悩が打ち付ける催眠的なダンスビートに乗せて、トラウマが次第に解き放たれていく。
「治療薬のように私はあの曲を使っていました。私の苦痛に寄り添ってくれる、ある種のリズムが聞こえてきます。それをどこかで使ったり、動かしたり。私は正直な歌詞を歌っているけれど、サウンド的にはそれほど悲しくない、そういう音楽が大好きです」
こうした対照的なものを並べる感覚は、「Buss It Down」にも通じている。ピアノに先導されてオルガンが鳴り響くゴスペル楽曲のなかで、RAYEはセックスと未来の恋愛に関して自身の見解を歌い上げる。「誰のために腰を振るのか、誰のために時間を割くのか、優先順位を決めたいだけなの」と、女性合唱団をバックに彼女は歌う。
「エンパワーしてくれる曲です。女性なら聞こえる……いえ、みんなに聞こえるはず。力を与えてくれる曲」と、彼女は微笑む。
ゴスペルの文脈で率直に綴られる歌詞に関しては、つまり彼女が上層の偉大なる存在と話す必要があったという。「私と神様とで一緒に話をしました。“ええ、ゴスペル調の曲でセックスについて歌うつもり”とか私は言って。でも、それって2人の秘密、一緒に解決策を見出してるところ」と彼女は笑う。「エキサイティングなのは、すごくクールな方法で表現できることだと思います」。
本作はメジャーからインディーに移籍したRAYEにとって2度目の門出となり、彼女が思い通りに取り仕切れた作品。もちろん彼女自身は変わらないが、リロードというわけだ。
「このアルバムの制作で私はパワーを与えられ、自分のなかの悪魔と向き合うことができました。たくさんの人に連絡して“あなたって、私にこんなことをした。私に、あんなことをしたけど、覚えていますか? 私に謝罪すべきだと思うし、2度と他の女性には同じことをしないでほしい”と告げたり。このアルバムでは具体的な名前は挙げていないけれど、私はそうした体験を語っていくつもり。はっきり言い放ってやりたいです」
活動休止後の2022年にRAYEは痛烈なパンチを伴いながら絶賛されたシングル「Hard Out Here」で音楽シーンに復帰。英国BBCのRadio 1と1Xtraのプレイリスト曲に選ばれ、PAPERマガジンには「とことん悪びれず、正直で、信じられないほど傷つきやすい楽曲だ」と絶賛された。
2022年、彼女はBRITアワード2部門とIvors Songwriter Of The Yearの両音楽大賞でノミネートを受け、Radio 1のBrit List入りを確保すると共に、BBC Live Loungeでケイト・ブッシュの「Running Up That Hill」を見事なアレンジで歌唱。BBC Twoのプログラム『Later… with Jools Holland』では「Escapism.」と「The Thrill Is Gone」を披露した。昨年末には、アムステルダム、ロンドン、ベルリン、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルスを巡るソロツアーを実施。ピアノ演奏をバックに親密度の高いセッティングで、過去と現在、未来の彼女の楽曲で構成されたパフォーマンスで魅了した。
今月から、RAYE自身がヘッドライナーの『My 21st Century Blues World Tour」がスタート。英国とヨーロッパと、既にソールドアウトの北米ツアーが予定され、11〜12月に掛けては、再び英国とヨーロッパでのツアー予定も今週発表されている。
ポップ界での活躍と成功を既に収めているRAYEは、今後はジャンルを越えて活躍するアーティストとしての軌跡を歩みたいと望んでいる。ヒップホップ、ダンス、ゴスペルなどのジャンルを行き交いながら、それらの品位を失わない楽曲によって。「私のこれからの野望は、確かなファンを築いていくことです」と彼女は語る。
「そして誰も観たことがないようなクレイジーなライブショーを行うこと。私の目標は、アーティスティックな卓越さを引き出して、私ができる限り素晴らしくあることです。上手く波に乗れたらそれは素晴らしいけれど、それでビックリしたり、計画を変更したり、目標を変えるつもりはありません」
つまり、その目的とは? RAYEは、深く息をしてから「私が愛して信じる音楽を世に出すこと」と言って微笑んだ。
そして、そのミッションはこのアルバムで見事に大成功、インディー界に花開いたサクセスストーリーは始まったばかりだ。
PHOTO BY Callum Walker Hutchinson
リリース情報
2023.02.03 ON SALE
ALBUM『My 21st Century Blues』