活発化するVTuber界で、高い人気を誇る“にじさんじ”。様々なコンテンツで目にする機会が増えたにじさんじの注目ライバーや人気楽曲をピックアップしながら、その人気の秘密に迫る。
■躍進する、VTuber
VTuberとはバーチャルYouTuberの略称で、主にインターネットやメディアにおいて2DCGや3DCGを用いて活動するキャラクターや配信者のことを指す。
VTuberの代表格であるキズナアイがYouTubeで活動を始めた際に、自身のことを“バーチャルYouTuber”と名乗ったことで広く使われるようになった。
時に、バーチャルのライブ配信者を表すVライバーと呼ばれることも。明確な位置づけはないが、VTuberは主にYouTubeなどのメディアで活動し、Vライバーは主にライブ配信に特化したスマホアプリで活動しているという認識が広まりつつある。
VTuberと言ってもアイドル活動、ゲーム配信、趣味布教など、活動内容は多岐にわたり、各キャラクターが好きなもの・得意なことを、自身が好きなかたち(キャラクターのコンセプト設定もその一貫だろう)で行っている。
2017年から拡大し続けるVTuber業界。2022年6月に上場したVTuberの事務所・ANYCOLOR株式会社の時価総額が一時3100億円にまで上昇。
さらに、ゲームやアパレルなどの企業タイアップも続々と増え、地上波のテレビ番組にも出演。その勢いは日本国内だけでなく、韓国、アメリカ、インドネシアといった海外発VTuberも増加している。
■バーチャルライバープロジェクト“にじさんじ”
なかでも、注目を集めているのが今回紹介する、にじさんじだろう。
にじさんじとは、ANYCOLOR株式会社が運営するVTuber/バーチャルライバープロジェクトだ。
▼にじさんじ – Virtual to LIVE [Official Music Video]
2023年1月現在、 日本を中心に活動するにじさんじの所属人数は141名に加え、英語圏で活動するNIJISANJI EN(にじさんじ いーえぬ)が31名、中国の動画共有サイト『bilibili』との共同プロデュースで展開するVirtuaReal(バーチャリアル)で42名が活動している。
▼Luxiem – Hope in the dark (Official Music Video) | NIJISANJI EN
▼【bilibiliX腾讯音乐】国风年度巨献《夭夭》
にじさんじ所属のVTuberは、趣味趣向を隠さない赤裸々トークや体を張った企画を積極的に行うなど、VTuberの新しい形と可能性を見せているという意味で“尖った”メンバーが多く、多様性に富んでいるのが強みだ。
さらに歌唱力の高さを生かしたアーティスト活動を行うライバーも多く、持ち前のパフォーマンス力を歌やダンスでも存分に発揮してリスナーを楽しませてくれる。
また、ライバー同士の繋がりも強く、グループ内でのコラボ配信も盛んに行われており、大人数でのゲーム企画やリアルで同じ場所に集まって行われるオフコラボも人気。一人ひとりの際立った個性とライバー同士の仲の良さは、ファンを惹きつける大きな魅力のひとつだ。
▼【マリオカート8DX】第5回マリオカートにじさんじ杯 本戦【#マリカにじさんじ杯】
■にじさんじ発の音楽活動
前述のように、ソロやユニットとして音楽活動を行っているライバーも多く、歌ってみた動画の投稿や歌枠配信から、新規のファンがつくケースも少なくない。
▼ヤンキーボーイ・ヤンキーガール -《楓刀京明千葛》Cover
さらに、2022年10月からはソロシングルCDプロジェクト『FOCUS ON – NIJISANJI SINGLE COLLECTION -』が始動。毎月2名のライバーがピックアップされ、新規オリジナル楽曲によるCDが続々とリリースされた。
また、2022年も開催された年末恒例の大型イベント『にじさんじユニット歌謡祭2022』。
▼にじさんじユニット歌謡祭2022 無料パート総集編
12月29日~31日の3日間で総勢80名以上(史上最大数!)のライバーが参加し、ARステージや新3Dステージなど、パワーアップした舞台でパフォーマンスを披露。歌謡祭限定ユニットによる歌唱もあり、2022年を締めくくるにふさわしい盛り上がりを見せた。
■注目アーティスト5組をピックアップ
◎葛葉(くずは)
・誕生日:11月10日
・Twitter @Vamp_Kuzu
・Instagram @kuzuha_ig
・YouTube @Kuzuha
ゲーム配信を中心に行う吸血鬼で、気まぐれな子どもっぽい性格と独自のワードセンスで愛される、140万人を超えるチャンネル登録者数を誇る男性VTuberの筆頭格。
叶とのユニット・ChroNoiR(クロノワール)としての活動も注目を集める。2022年3月9日に1stミニアルバム『Sweet Bite』でメジャーデビューを果たした。
▼【MV】Bad Bitter/葛葉
繊細さと力強さを兼ね備えた歌声は、危うさやセクシーさを醸し出す。それでいて少年っぽさも表現できて、曲の世界観に自分を合わせる感覚が鋭い。
歌詞の一語一音を鮮明に聴かせる滑舌とリズムをとらえる技術は天才的。
◎叶(かなえ)
・誕生日:7月7日
・Twitter @kanae_2434
・Instagram @kanae_2434_official
・YouTube @Kanae
甘い声とふわふわした話し方が特徴の超癒し系男子。歌唱力の高さでも知られ、2022年7月27日に1stミニアルバム『flores』でメジャーデビュー。
優しく穏やかな歌声は、切なさや儚さを表現した楽曲とよくマッチする。耳になじむ澄んだ低音と天使とも称される甘い高音で、エモさを表現するのも得意だ。
その反面、ダークな曲では内に秘めた狂気すら感じさせる。その振り幅の大きさに叶の魅力の底知れなさが伝わってくるに違いない。
同年12月21日に2ndミニアルバム『夜明かし』をリリース。2023年3月16日には初のソロイベントの開催を控えている。
▼叶 2nd mini album「夜明かし」 試聴動画
◎ROF-MAO(ロフマオ)
・メンバー:加賀美ハヤト(かがみはやと)/ 剣持刀也(けんもちとうや)/ 不破湊(ふわ みなと)/ 甲斐田晴(かいだ はる)
・結成日:2021年10月21日
・OFFICIAL SITE https://www.rof-mao.com/
・Twitter @rof_mao
・Instagram @rof_mao
・YouTube @ROFMAO
男女どちらからも愛される面白くてカッコ良いユニットを目標に掲げる、男性ユニット。レギュラー番組『木10!ろふまお塾』では体を張った企画で笑わせてくれるが、歌になると空気を一変させる。
メンバーは荒々しく情熱的な歌声の加賀美ハヤト、パワフルなロングトーンとラップが武器の剣持刀也、ミックスボイスや高音に定評がある不破湊、4オクターブ級の音域で儚さと力強さを表現する甲斐田晴の4名だ。個人での活躍も目覚ましいが、この4名が集まった時の一体感とアーティスト力は凄まじい。
人を自然と笑顔にする底抜けの明るさや、歌詞のメッセージをリスナーの心に叩き込むような逞しさを感じるパフォーマンスに引き込まれる。
▼ROF-MAO – 前進宣言
◎Nornis(ノルニス)
・メンバー:町田ちま(まちたちま)/ 戌亥とこ(いぬいとこ)/ 朝日南アカネ(あさひなあかね)
・結成日:2022年6月23日
・OFFICIAL SITE https://www.nornis.com/
・Twitter @_Nornis
・YouTube @Nornis
にじさんじの中でも抜群の歌唱力を誇る、町田ちま、戌亥とこ、朝日南アカネからなるユニット。この3名にしか作り出せないハーモニーを届けることを目的に結成された。
▼Nornis – Transparent Blue
クリアで柔らかな声質を自在に操る町田ちま、深みのある落ち着いた歌声が心地よく響く戌亥とこ、優しさと強さを秘めたハリのある歌声を届ける朝日南アカネ。
本人たちも驚いたという意外な組み合わせだが、その歌声のハーモニーには心を震わせる奥深い美しさがある。
2022年12月28日発売の1stシングル「Transparent Blue」を引っ提げたワンマンライブ『Nornis 1st LIVE -Transparent Blue-』の開催を2023年3月15日に控え、いっそうの活躍に期待が高まる。
月ノ美兎(つきのみと)
・誕生日:9月24日
・Twitter @mitotsukino
・YouTube @TsukinoMito
にじさんじの1期生として業界を牽引するレジェンド。清楚で生真面目な学級委員長キャラでありながら、中身はコアなサブカル女子高生というギャップに惹きつけられる。
活動初期から歌声を披露しており、2020年10月7日に1stシングル「それゆけ!学級委員長」でメジャーデビューを果たした。
かわいらしく澄んだ歌声で、伸びやかな高音や大人っぽいウィスパーボイスを駆使しながら楽曲に合わせて様々な表情を見せてくれる。
アイドルらしいポップな楽曲からラップまで生き生きとこなすさまからは、委員長の器用さと実直さが垣間見えるはずだ。
▼月ノ美兎「ウラノミト」MV
■人気10曲:ファン激推し曲から最新曲も
「甘噛み」葛葉
2022年2月25日に先行配信リリースされた1stミニアルバム『Sweet Bite』の収録曲。シドのマオが作詞を、明希(作曲名義は御恵明希)が作曲と編曲を手がけた作品で、同日公開のMVは300万回再生(2023年1月31日現在)を記録している。
女性目線の歌詞を艶っぽく歌い上げていて、儚くも鋭さを秘めた高音の美しさにはハッとさせられる。孤独感を吐き出すようなほどよく力の抜けた歌い方と、願望をぶつけるような迫力のある声の両面で、楽曲の主人公が抱く葛藤を見事に表現している。
“甘噛の狂犬”というふたつ名で呼ばれる、葛葉の持つ甘さや素直さも覗かせた一曲。
「【】歌ってみたKING 【】」葛葉
2020年11月10日に公開されたKanaria feat.GUMIによる「KING」のカバーであり、葛葉の人気を盤石なものとした。再生回数は現在も伸び続け、ついに3996万回再生(2023年1月31日現在)を突破した。
ハスキーなのに透明度の高い声質が楽曲の雰囲気にぴったりで、静かな出だしから心を掴まれる。
サビに向けて力強さが増していくが、持ち前のリズム感と滑舌の良さで歌詞がするすると耳に入ってくる感じもたまらない。自信や余裕を垣間見せる圧倒的な存在感はまさに“KING”。時折入る笑い声はやんちゃさも感じさせ、この1曲で葛葉の様々な魅力を知ることができる。
「Kids」叶
1stミニアルバム『flores』に収録された、尾崎雄貴(Galileo Galilei、Warbear、BBHF)による提供曲。2022年10月10日に公開されたLyric Videoは、すでに12万回再生(2023年1月31日現在)を記録している。
大人になることへの不安を受け止める歌詞は、VTuberとしての心情を切り取ったようでもある。優しい歌声が切なさや儚さを繊細に表現し、リスナーの心を温かく包み込む。
不意に声に力が込められているのは、歌詞が叶自身の感情と重なるからなのかもしれない――。寂しくはあっても信念を持って生きていこうとする凛とした姿勢が、メリハリの効いた歌声から伝わってくる。
「チューリングラブ」叶&星川サラ
“かなえぼし”のコラボ名で知られる叶と星川サラによる、ナナヲアカリの「チューリングラブ」のカバー。2020年8月19日に公開され、682万回再生(2023年1月31日現在)を突破している。
個人や男性ライバーとの歌唱の場合は甘さが際立つ叶の歌声も、女性ライバーの声と合わさると男らしさやカッコ良さがよりアップして感じられるだろう。
ふたりの声質の波長が合っているため、低く優しい声と高くかわいい声が調和して相乗効果を発揮。どこを切り取っても癒されるのは、安定した歌唱力の高さがあってこそだ。キュートで楽しそうな歌い方も楽曲のポップな雰囲気にぴったり。
「一撃 ( #にじフェス2022_Day2 LIVE Special Edit Ver.)」ROF-MAO
結成1周年記念日の2022年10月21日に配信された3rdデジタルシングルで、『木10!ろふまお塾』season3のエンディングテーマ。
11月3日に公開され150万回再生(2023年1月31日現在)を記録している『にじフェス2022』でのパフォーマンス動画を観れば、リアルとバーチャルの垣根はもはや感じない。
この楽曲は“心意気、泥臭さ、誠実さ”を表現しており、目標へ向けて全力で進む熱い想いがそれぞれの歌声にもこもっている。
見事に揃ったユニゾンは、ソロアーティストとしても個性を磨く、全員がエースのROF-MAO最大の強み。サビの決めポーズに撃ち抜かれないリスナーはいないだろう。
「I wanna! You wanna!」ROF-MAO
2022年4月13日発売の1stミニアルバム『Crack Up!!!!』の収録曲で、KEYTALKのボーカル&ベースをつとめる首藤義勝の提供曲。ベースは首藤、ギターに神はサイコロを振らない・吉田喜一が参加。『木10!ろふまお塾』season2のエンディングテーマでもある。MVは685万回再生(2023年1月31日現在)にのぼる。
首藤節とも言える、ノリの良い踊れるロックサウンドに、4人のカッコ良さの中にも無邪気さが残る歌声が似合う。
歌詞割りもそれぞれの性格や関係性に合わせているようで、誰がどのパートを歌っているかに注目するとさらに面白い。個性的な4人がひとつになって盛り上がるサビは、一緒になって飛び跳ねたくなる。
「Abyssal Zone」Nornis
2022年6月23日に配信リリースされたユニット初のオリジナル楽曲。同日公開されたMVの再生回数は463万回(2023年1月31日現在)超えだ。
壮大なオーケストラにも負けないNornisの透明感抜群の歌声が、楽曲の幻想的なイメージを作り出している。ふとした息遣いや声の揺らぎが、不安定な心を映すように切なく響く。
なかでも町田ちまのロングトーンは傑作。そしてそれを支える戌亥とこと朝日南アカネの深みのある低音のマッチも良い。歌姫たちの力強い歌声に圧巻のひと言。
「勘冴えて悔しいわ」Nornis
ずっと真夜中でいいのに。の「勘冴えて悔しいわ」のカバーで、2022年11月28日に公開されてから早くも50万回再生(2023年1月31日現在)を突破。
スピード感のあるメロディに乗せて畳みかけるように言葉が紡がれるのが特徴的だが、どの音もこぼさずクリアに発声していて楽曲へのリスペクトを感じる。
それでいてアレンジも効かせた、重めの歌詞をスタイリッシュで爽やかに表現している点がNornisらしい色として楽曲に違った魅力をプラスしている。
タイプの違う特性を持つ歌声の3名だからこそ、声が重なり混ざり合った時の美しさに心が沸き立つ。
「1000年生きてる」月ノ美兎
いよわ feat.初音ミクの「1000年生きてる」のカバーで、2022年5月30日に公開された動画は269万回再生(2023年1月31日現在)を突破。
特徴的なメロディを巧みに歌いこなす委員長。徐々に感情を吐き出していく一連の流れも素晴らしく、一つひとつの言葉を立てる歌い方もあってとても聴きやすい。
一聴した時の楽曲としての心地良さと、危うさを孕んだ歌詞を歌いこなすミステリアスさも魅力的。
「死ぬのが怖い」と明かしている委員長が抱く、“リスナーの心の中でいつまでも生き続けたい”という願いが歌詞の言葉と重なり、VTuberとしての生き様にも感じられた。
「それゆけ!学級委員長」月ノ美兎
委員長がかねてよりファンを公言するササキトモコ提供の1stシングル。発売日の2020年10月7日に公開された80年代アニメのオープニングを彷彿とさせるMVは、VTuber楽曲大賞2020にてMV部門第1位を獲得し、241万回再生(2023年1月31日現在)を超えている。楽曲自体も懐かしい雰囲気の曲調で、どの年代のリスナーもほっこりするはず。
歌詞にはヒーローのようなポジティブなメッセージが綴られている。リスナーというクラスメイトをまとめる学級委員としての心意気に感動を覚えるだろう。
ピュアな高校生らしさとかわいさ全開のアイドルっぽさが感じられる歌唱が癖になる、VTuber月ノ美兎を象徴する代表曲だ。
■勢いが止まらない!にじさんじ最新情報
VTuber激戦区の今、勢いに乗るにじさんじは音楽の分野でもリスナーを虜にしている。
業界の最前線を走るにじさんじがこれからどんな展開を見せてくれるのか、ぜひ今後の活躍を追いかけてほしい。
TEXT MarSali
▼にじさんじ 最新記事はこちら
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