■“新世代のネクストブレイク最右翼”
4naから1stフルアルバム『a Beast』が届けられた。2020年から音楽活動をスタートさせ、瞬く間に知名度を上げた4naは、“新世代のネクストブレイク最右翼”と称される注目のニューカマー。本作を聴けば、幅広いリスナー、様々なシチュエーションに似合う楽曲のクオリティを実感してもらえるだろう。
2020年からYouTubeやSNSで楽曲を発表。2021年3月に配信した「hazama」がSpotifyバイラルチャート(日本)の年間ランキング31位にランクインし、Apple Musicが日本国内の有望なアーティストを紹介する企画『Up Next Japan』に選出されるなど、いきなり大きな注目を集めた。その後も、楽曲ごとに歌い手と作り手が変わる プロジェクト「MAISONdes」の新曲「ダンボールの色 feat. 4na, もっさ(ネクライトーキー)」の作詞・作曲・アレンジを担当、気鋭のギターレスバンド“新東京”とコラボした「hazama(新東京Rearrange)」を発表するなど、活動の幅をひろげてきた4na。「踊ってたのは」「BURU」「白魔法」「ミーエンミー」「Bジャンプ」「某夜(faet.紫 今)」「そぐわな」「Weissbier(feat.春野)」「position talk」などの配信シングル、さらに初期の楽曲「Fickle Girl」「suzume」のニューバージョン、「ダンボールの色」のRock Ver.などをコンパイルした『a Beast』は、活動スタートから2年間の集大成であると同時に、4naの才能をさらに大きなフィールドに浸透させるきっかけになるはずだ。
■決して熱くはなく、あくまでも自然体のテンション
アルバムのオープニングを飾るのは、「Bジャンプ」。ギターのストロークと素っ気ないボーカルからはじまり、ビートが重なった瞬間に心地よいグルーヴが広がる。何も起こりそうにない下らない日々を送りながら、すべての希望を捨てるわけではなく、“僕ら向かう夜明けの次章へ”というラインを奏でる。決して熱くはなく、あくまでも自然体のテンションを保ちながら、リスナーに“もうちょっとやってみるか”という気分を与えてくれるポジティブソングだ。
「BURU」はネオソウル系のテイストを取り入れた楽曲だ。軸になっているのはギターと歌。ブラックミュージックとJ-POPが自然に混ざり合ったメロディとともに描かれるのは、着飾った女性が抱える後悔や嘆き。多くのリスナーが“あるある!”と共感できるテーマを置き、“Night&Dayの投資論/悩んでも もういっしょ”といったフロウを交えることで上質なポップソングに仕立てている。
■1回聴けば耳から離れない中毒性もまた、彼の楽曲が急速に拡散している理由
この季節にぴったりと映えるのは、「白魔法」。冬の景色を背景に、“君”への思いを描き出したミディアムチューンだ。カノン進行を応用したコード進行や転調の使い方はきわめてオーソドックスなのだが、“よくある感じ”ではなく、新鮮なイメージをまとっているのはやはり、4naのボーカリゼーションと歌詞。“君に渡したいもので君の心を/満たしてあげるから”というキャッチーなフレーズ、そして、“謳歌しちゃいましょうか”のリフレインなど、1回聴けば耳から離れない中毒性もまた、彼の楽曲が急速に拡散している理由だろう。
個人的にもっとも印象に残ったのは、ヒップホップの要素を色濃く取り入れた「初進者」。歌詞のほとんどは日本語なのだが、チルいトラックに心地よくなじむフロウとラップによって、ゆったりと体を揺らしたくなるダンサブルな楽曲に結び付けている。言葉の響きと“人生ってそう甘くはないよな”的なストーリーを融合させたリリックも絶品。特に“埋まらない問い合わせ/くだらないそう言わせて ほら/結局は本人の動向”は絶妙なパンチラインだと思う。
■“ただの獣”をタイトルに冠したアルバム『a Beast』によって、その才能を証明した4na
シンガーソングライターの春野をフィーチャーした穏やかで切ないオルタナR&Bチューン「Weissbier feat.春野」、自身で発掘した女性シンガー“紫 今”(Mulasaki Ima)を招き、ある夜の出来事を官能的に描いた「某夜 feat.紫 今」など、有機的なコラボレーションを楽しめるのも本作の魅力。“ただの獣”をタイトルに冠したアルバム『a Beast』によって、その才能を証明した4na。ここから彼は(おそらく本人自身も把握していないほどの)天性の音楽的ポテンシャルをさらに大きく進化させることになるはずだ。
TEXT BY 森朋之
楽曲リンク
リリース情報
2022.11.23 ON SALE
ALBUM『a Beast』
4na OFFICIAL SITE
https://twitter.com/4namusic