■「みんなの中に、hideはちゃんといるんだ!」(Kiyoshi)
今年もこの日がやってきた! hideを愛する仲間たちが集まって、hideの誕生日を祝う『hide Birthday Party 2022』。hide MUSUEMが2000年にオープンしてから開催が続けられてきた、ファンの間では「年末の風物詩」的なイベントである。
2020年と2021年はコロナ禍で配信ライブだったので、今年は3年ぶりの有観客ライブである。まだ声を出しての声援はNGだったが、会場は満員御礼。久しぶりに生のステージで開催されるパーティを、たくさんのファンが心待ちにしていたのだろう。
会場には、hideのコスプレで全身ドレスアップしたり、hide人形を持ったコアなファンが散見される一方、ごく一般的なファッションのお客様も多い。今年は映画『TELL ME ~hideと見た景色〜』が公開されたこともあり、今までhideを知らなかった人たちも、たくさん会場に集まっていた。
来てくれたお客様をいかに楽しませるかを、つねに考えていたhideのスピリットを受け継いだ今年の出演アーティストは全10組。開演が14時45分、終演予定が21時過ぎとかなりの長丁場である。途中で、「長いので休みをとりながら、楽しんでください」というアナウンスがあり、ステージセット転換時間を十分にとっていたり、恒例のバー・スペースがあったりと、集まったファンが最後までイベントを楽しめるようにいろいろな配慮がなされていた。
開場と同時に、ステージでは桃知みなみとパンザブロウがDJをスタート。フロアに入場するお客様をhideの楽曲で盛り上げている。開演時間になると映像で本日の出演者が紹介され、DJ・浅井博章の「さぁ、皆さん、パーティの準備はできていますか? It’s show time!」という高らかな声でイベントの開催が宣言された。
トップバッターは、全員赤いスーツに身を包んだ8人組のCalmera。客席に背を向けてジャジーなhideの「Cafe Le Psyence」にのせて、「ようこそおいでくださいました。トップバッターをつとめさせていただくCalmeraです」と挨拶。4人のホーンセクションが迫力あるサウンドを生み出すインストゥルメンタルバンドである。ジャズコンサートも多くやっている彼らだが、ジャンルにとらわれず、自由な感覚で音楽をプレイしている姿が、オープニングから声援に代わり、大きな拍手を浴びている。「皆さん、怒らないでくださいね。最後のhideチルドレンだと思っているCalmeraです」と西崎ゴウシ伝説がhideとの繋がりのエピソードをMC。一見するとhideの音楽とは対極にあるように思える彼らだが、その自由なスピリットはまさにhideが追い求めていた精神とリンクする。hideのカバーである「ever free」では、そんな彼らのアティチュードが伝わってきて、会場をあたたかい空気に染めていた。
4人組ロックバンド、heidi.のステージは、hideの「Beauty & Stupid」のカバーからスタートした。これは出演したどのバンドにも言えることであるが、カバーとはいえ、オリジナル曲のようにしっかり自分たちのものにしているので、とても聴き応えがある。この日のheidi.のセットリストは、オリジナル曲2曲、hideのカバー2曲という構成であったが、その流れに違和感がまったくないのがすごい。「昨年は配信ライブだったので、今年はたくさんの人の前で演奏できてうれしい。時間の許す限り、思い切り暴れていきましょう」とボーカルの義彦が観客をあおり、バンドの代表曲である「月光ショータイム」「一瞥」をプレイ。間奏で義彦と共に大きくヘドバンしている観客を見て、「ああ、やっとこういう光景が見られるようになったんだ」とちょっと感慨深かった。
ステージにグランドピアノがセットされて、DIEがひとりで登場した。打ち込みのオーケストラ演奏にのせて、最新アルバムの1曲目「NO GRAVITAS」をエモーショナルにプレイする。hide with Spread Beaverや他の活動のときはシンセサイザーをプレイしているので、グランドピアノでのソロ演奏はとても新鮮である。今までのソロ活動は歌も歌っていたし、曲調もロック/ポップスだったのだが、最近は「寝れる」音楽を創っているのだそう。「寝れるっていうのは安心してリラックスできるということ」と、現在、取り組んでいる音楽についてMCで説明してくれた。hideのカバー「FLAME」とオリジナル曲のメドレーでは、ボーカルを披露。最後に自身のルーツであるビートルズのポール・マッカートニーの「MY LOVE」をしっとりと歌い上げて、ステージを降りた。
初っ端から、「3,2,1!」「クラップユアハンド!」とお客さんを巻き込んで、会場を盛り上げたのはSPEED OF LIGHTS。このイベントではMCとしての実力も存分に発揮しているボーカル/ギター・CUTT率いる3人組である。スピード感溢れる「S.E.T.I.」では、間奏に「ROCKET DIVE」のギターフレーズを取り入れるなど遊び心も満載である。軽快な曲が終わったあと、「hideさんの誕生日をお祝いして、スペシャルゲスト」と紹介されて、歪んだ音で「HAPPY BIRTHDAY」を弾きながら登場したのは、Kiyoshi。会場の空気が一気に引き締まり、演奏が始まったのはzilchの「ELECTRIC CUCUMBER」である。ベルゼブブという、いかついギターを低く構えてプレイするKiyoshiと、それまでの爽やかなボーカルとは一転して凄みのある歌を披露するCUTT。意外な組み合わせのように思えたが、一気に会場をダークな世界へと染め上げる。残念ながらhideが参加してのzilchのライブは行われていないので、貴重なシーンだった。
セットチェンジが終わり、次の出演者「Chirolyn」と紹介されてからもなかなか幕が上がらない。幕の後ろにスタンバイしていたChirolynが「何だよ、この間は」といって笑いをとると、ようやく幕が開いた。アクシデントも味方につけ、一気に観客の心を掴んでしまうキャラクターは流石である。Chirolynも、ステージの上にたったひとり。椅子に座って両足でリズムをとりながら、ちょっと掠れた声で歌う独特のスタイルで、ソウル、R&B、ラテン風アレンジをした楽曲を披露。今までのレパートリーとは違うアプローチで、彼の違った一面を見せている。「どーも。ロック界の松岡修造です」と言いながら、「新しいアルバムには、ロックのロの字もありません。自分が好きなフィラデルフィアサウンドのアレンジをしたら、昭和歌謡になってしまうことがわかりました」とMC。
確かにその後に歌った「暇乞い」は昭和歌謡のムードがぷんぷんで、思わずニヤリとしてしまった。ラストは、アルバムに収録されている「PINK SPIDER」をゲストのNOBUYA(from ROTTENGRAFFTY)と熱唱して、熱いステージが終了した。
続いてステージを飾ったのは、MADBEAVERS。ロックなSEにのせて、ステージに走って出てくる登場の仕方から、まさに「ロック」である。hide with Spread BeaverのKiyoshi、JOE、サポートの寺沢リョータから成る布陣で、スリーピースという最小限のバンド編成で重圧感溢れるロックンロールな音を叩き出している。hideのカバー「FISH SCRATCH FEVER」から始まり、「突然炎のように」「A walk in the sky」と怒涛の演奏が続く。KiyoshiはMCで、hide MUSEUMに何回も行った話やhideのコピーバンドを見た話を語ったあと、「みんな本当にhideが好きなんだ!」「みんなの中に、hideはちゃんといるんだ!」とシャウト。盟友hideへの想いを胸に、ギターを掻きむしるように弾く姿は強く印象に残った。
そして、hideが惚れ込んでいたバンドZEPPET STOREの登場である。hideの楽曲「FLAME」はこの曲からインスピレーションを得て作られたというエピソードがある「FLAKE」から、彼らのステージがスタート。「今日も空にまで届くように、全力でやらせていただきます」というボーカルの木村。今回はギター3本、ベース1本、2020年末にドラマーを引退したYA/NAはRhythm Trackerとしてエレドラムパッド、さらにサポートドラマーを迎え、重厚な音で曲を奏でている。サウンドは分厚いのにどこか軽やか印象を残すのは、木村世治のしなやかな歌唱法によるのだろう。楽曲中に何回も足を蹴り上げる華麗なパフォーマンスも、観客を盛り上げた。hideのカバー曲「GOOD BYE」は、凛とした音の厚さの中に優しい暖かさを内包していて、ZEPPET STOREならではの演奏だった。
イベントのトリを飾るのは、defspiral。デジタルなSEで楽器隊がステージに出て、最後にTAKAが両手を大きく広げて登場。最初の瞬間から、イベントのラストを盛り上げるぞという気合満載の登場シーンである。まずは代表曲の「AURORA」で、会場中の観客が手を挙げながらジャンプ。2曲目の「PLUSE」も激しい楽曲で、一気に会場をdefspiralの世界に染め上げていく。安定の演奏力とパフォーマンスで、イベントのトリにふさわしい存在感を放っている。
「今日はhideさんのバースデーで、会場の一体感がすごい。スペシャルな夜なので、ゲストを呼びたいと思います」というTAKAの紹介で姿を見せたのは、Calmeraのホーンセクション4人。間奏では、辻本美博のサックスとMASATOのギターの競演もあり、defspiral +Calmera の怒涛の演奏で奏でる「BLUE SKY COMPLEX」は、まさに圧巻だった。
続いて、DIEがゲスト参加して「FLAME」。前半はキーボードでしっとりと、後半に楽器隊が加わると音がラウドに変化。コントラストが強いぶん、楽曲の二面性が如実に出ていて、興味深かった。
さらに、このイベントにはいなくてはいけないふたり、I.N.A.とPATAが登場。defspiralと一緒に「ピンク スパイダー」を演奏して、クライマックスを大いに盛り上げた。
ラストは、出演者全員がステージに集合し、「TELL ME」の大セッション。hide with Spread Beaverのメンバーも楽器を持って、大暴れである。上手ではKiyoshiがステージから落ちるというハプニングも発生。その一方、ステージのあちこちで談笑しているミュージシャンの姿も見られ、和気あいあいと楽しいエンディングを迎えた。
セットメニューがすべて終了したあと、ステージバックのスクリーンに2023年に向けての数々のお知らせが映し出される。2023年はhideソロデビュー30周年となるので、続々とプロジェクトが決定しているとのことである。
・東京・名古屋で開催された特別企画展『PSYCHOVISION hide MUSEUM Since 2000』2023年春・大阪 にて開催決定!
・『1000人ROCK FES.GUNMA』開催!「ROCKET DIVE」を1000人編成のバンドが同時に演奏(参加者募集!)
そして、注目すべきは、なんと2023年、hide with Spread Beaverが25年ぶりのワンマンライブを行うことが決定したこと。当初は21年ぶりというアナウンスがされていたが、実はそのときはKAZが参加していなかったことから、正式には25年ぶりなのだという。スクリーンには、ツアー中でこのパーティに参加できなかったKAZからの、「一瞬一瞬を素敵な時間に塗り替えていきましょう」というメッセージが映し出された。
ライブ中、メンバーも来年のhide with Spread Beaverについて、MCで触れていた。
「来年のhide with Spread BeaverはJa,Zooのときとは違うことができるんじゃないかと思うので、期待してる」(Kiyoshi)
「これが最後になるのかな。みんな還暦だからね。まずは筋トレしなくちゃ」(DIE)
この日のライブでは、現在進行形の音楽スタイルを披露したhide with Spread Beaverのメンバー。信念を貫いて信じた道を進むメンバーもいるし、新しいことに挑戦して変化し続けるメンバーもいる。そんな彼らが25年ぶりにhideと共演して、どんな素晴らしい化学反応を見せてくれるか、音楽の奇跡の目撃者になる日が待ち遠しくてたまらない。
TEXT BY 大島暁美
PHOTO BY 大武ひろあき(株式会社LINKSOLU)
特設サイト
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