音楽を通じて、“あなた”と心を通わせることをいちばんに考えるバンド、それがSUPER BEAVERである。TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期オープニングテーマを飾る、新曲「ひたむき」(2022年11月30日発売)にもそんな彼らの想いが強く根づいている。
▼『僕のヒーローアカデミア』ヒロアカ6期OP映像(ノンクレジット)/OPテーマ「ひたむき」SUPER BEAVER/MY HEROACADEMIA 6th Season OP
なぜ、彼らは全身全霊で心を通わせようとするのか。これを機に、改めてバンドのプロフィールや人気曲について紹介したい。
■高校の先輩後輩と幼なじみで結成した、ロックバンドの軌跡
SUPER BEAVER(スーパービーバー)
・結成:2005年4月
・メンバー:渋谷龍太(Vo)/ 柳沢亮太(Gu)/ 上杉研太(Ba)/ 藤原“34才”広明(Dr)
・OFFICIAL SITE https://super-beaver.com/
・Twitter @super_beaver
・Instagram superbeaver_official
・YouTube https://www.youtube.com/channel/UCB3pkYGb_ykRHniDx8Jftsw
・TikTok superbeaver_official
SUPER BEAVERは、2005年4月、メンバー4人の出身地である東京都にて結成。高校の先輩・後輩という関係性だった渋谷、上杉、柳沢に、柳沢の幼なじみである藤原を加えた4名で歩み始めた。学生時代から様々なコンテストで頭角を現し、2007年12月には1stミニアルバム『日常』をリリース。さらに2009年6月にはシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。
2011年に所属していたレーベル・事務所を離れ、年間100本を越えるライブ活動を行う。そして、2012年4月に自主レーベル“I×L×P× RECORDS”を立ち上げ、「歓びの明日に」をライブ会場限定で発売。
▼SUPER BEAVER 「歓びの明日に」 MV
2014年2月からは、東京・渋谷eggman内に発足した新ロックレーベル[NOiD]とタッグを組み、フルアルバム『361°』をリリース。
▼SUPER BEAVER「ありがとう」MV(バンドver.)
結成10周年を迎えた2015年のツアー『愛する Release Tour 2015 ~愛とラクダ、10周年ふりかけ~』では、東京・恵比寿LIQUID ROOMを含む10公演以上でソールドアウトを記録。この頃から多数のフェスにも呼ばれるようになる。
▼SUPER BEAVER「愛する」MV
2016年6月にリリースされたフルアルバム『27』は、オリコン週間CDアルバムチャートで自身初となるTOP10入り。2018年4月30日には、初となる日本武道館単独公演を開催、チケットはソールドアウトした。
▼SUPER BEAVER「LIVE VIDEO 3 Tokai No Rakuda Special at 日本武道館」トレーラー
結成15周年を迎えた2020年に、Sony Music Labels Inc.とメジャー再契約を発表。2021年にはフルアルバム『アイラヴユー』をリリース。その後も、映画『東京リベンジャーズ』主題歌「名前を呼ぶよ」のリリース、3都市6公演のアリーナツアー『SUPER BEAVER 都会のラクダSP 〜愛の大砲、二夜連続〜』など、精力的に活動。2022年2月にはフルアルバム『東京』をリリースした。
現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、今年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーを開催中だ。
■ストーリー、歌詞、ライブから見える不屈の精神
◎バンドストーリー
上記のように、SUPER BEAVERは学生時代からコンテストなどで頭角を現し、若くしてメジャーデビューするという華々しいスタートを切った。
しかし、メジャーデビューはあくまでスタートライン。スタートラインに立ったものの、思うような活動に繋がらず、メジャーからインディーズへと戻り、そこからはメンバー主導でライブを軸とした活動を行っていくことに。
オーディエンスと顔を突き合わせるライブという場所で、ありのままの自分たちをぶつけることで、楽曲やバンドの魅力が伝わるようになり、彼らの人気は高まっていく。SUPER BEAVERが鳴らしたい音楽は何か? 誰に届けたいのか? ライブで経験値を積み、改めて自分たちの理想とするバンドのビジョンを描けた時、10年近くのインディーズ時代を経て、メジャー再契約という異例の状況に至ったのである。
彼らの歩んだ道のりそのものが、“何度でも、いつだって、どこでだってやり直せる”“一歩一歩、自らの足で進んでいくことが重要である”といったメッセージとなり、見ている側にも大きな力を与えている。
◎歌詞
溢れ出るエネルギーをどう発散すべきか、迷ったり、焦りを感じる多感な時期を描くこともあれば、人生経験を重ねてきたことで見えてきたこと、感じ方の変化やあらたに芽生える思いについて触れてみたりと、彼らの人生そのものが歌詞にも反映されており、SUPER BEAVERが歳を重ねるごとに円熟味を増している。
嘘偽りない、彼らの経験から出た言葉に、リスナーは自らの様々な場面に重ね合わせることができ、“自分の歌”として噛みしめることができるのだと思う。
例えば、「らしさ」では、よく聞かれる「自分らしさ」という言葉について “自分らしさってなんだ?”と真正面から問いかける。大人になるほど、自分自身をさらけ出すことに恥ずかしさや怖さが出てしまうのは、“らしさ”を考えると同時にその“らしさ”が“万人に受け入れられるかどうか”を考えてしまうため。このことこそが大人であるという解釈もできるが、元々生まれ持った自分自身の好きな感覚そのものを大切にすればいい、と大きな心で歌っている。
▼SUPER BEAVER「らしさ」MV
また、“ぱっと一言じゃ 言い表せないのが 愛だ”とズバンと言い切る「愛しい人」でも、多くの人が一度は考えたことがあるだろう、愛ってなんだ? という命題に向き合っている。このまっすぐな姿勢が、たくさんの共感を呼んでいるのだろう。
▼SUPER BEAVER「愛しい人」MV
そして、カート・コバーンなど、数多くのロックスターが亡くなっている年齢をタイトルに掲げた「27」では、“ロックスターは死んだ まだ僕は生きてる”と、生き続けることでの変化、それでも揺るがない思いといった、現在地を歌っている。
▼SUPER BEAVER「27」LIVE MV
さらに「東京」は、“愛されていて欲しい人がいる なんて贅沢な人生だ”と、出会ってきた人たちがそれぞれに大事な人ができていたらいいなと願う、人との出会いや、そこから生まれる愛を歌っている。
▼SUPER BEAVER「東京」MV
◎ライブ
近年は非常に集客力があるバンドとなった、SUPER BEAVER。しかし、アリーナだけではなく、ホールやライブハウスなど、規模に関わらず全国各地を回り続けている。
その細やかさと、どんな会場でも近くから歌い鳴らしているように思える距離感は、彼らの大きな魅力である。フロントマン・渋谷の“その時、その場のだけの思い”を言葉にするMCも心掴まれる要素のひとつだ。
現在もツアー『都会のラクダSP 〜東京ラクダストーリービヨンド〜』の真っ最中で、12月10日、11日には東京・有明アリーナや12月24日、25日に愛知・ポートメッセなごや新第一展示館でライブを開催。2023年にはホールツアーに加え、アコースティックツアーやZeppでの自主企画イベントを行うことも発表している。
これだけ名と音が広まっても、まったくブレないどころか、ますます精力的にライブを続ける彼ら。その誠実さは目を見張るものがある。
■メンバープロフィール
渋谷龍太(しぶや りゅうた)
・担当:ボーカル
・生年月日:1987年5月27日
・愛称:ぶーやん
・ソロ名義:澁谷逆太郎
・Twitter @gyakutarou
・Instagram gyakutarou
今の時代には貴重な、グラマラスなロックスターの佇まいが魅力的な渋谷。そのキャラクターが見出され、2017年4月~2018年3月には『渋谷龍太のオールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティに、2020年~はスペースシャワーTVの『スペシャのヨルジュウ♪』に抜擢された。
また、文筆家としても才能を発揮しており、雑誌でエッセイの執筆を行うほか、自身のバンドストーリーを綴った長編小説『都会のラクダ』も上梓している。さらに、調理師免許を持っているという一面も。澁谷逆太郎という名義でソロでも活動中。
▼sakayume / 澁谷逆太郎(Prod.George from MOP of HEAD)
柳沢亮太(やなぎさわ りょうた)
・担当:ギター
・生年月日:1989年2月21日
・愛称:やなぎ
・Twitter @yayayayayanagi
・Instagram yayayayanagi
SUPER BEAVERの、ほとんどの楽曲の作詞作曲を手がける。小学6年生の頃に初めてバンドを結成し、中学生の頃からオリジナル曲の制作を開始。これまでSCANDAL「会わないつもりの、元気でね」、ジャニーズWEST「つばさ」や「僕らの理由」などの楽曲提供も行っている。
▼ジャニーズWEST – 僕らの理由 [YouTube Original Recording]
所属していたレコード会社と事務所を離れた際には、バンドの事務的な役割も担った。才能がありながら努力家でもある、SUPER BEAVERの土台を支える存在だ。
上杉研太(うえすぎ けんた)
・担当:ベース
・生年月日:1988年1月26日
・愛称:リーダー
・Twitter @kentauesugi
・Instagram kentauesugi
SUPER BEAVERの結成は、上杉が高校のクラスメイトだった渋谷に「一緒にバンドをやらないか?」と声をかけたことがきっかけ。後輩の柳沢を誘ったのも上杉であり、そういった経緯から、彼はバンドのリーダーをつとめている。渋谷の歌を支えるだけに留まらない、華やかで力強いベースプレイが持ち味。
さらに、以前からファッションを注目されることが多かった中で、新プロジェクト「LEADER」を立ち上げ、アパレルブランドとコラボレーションを行うなど、幅広い活躍を見せている。なお、彼も渋谷と同じく調理師免許保有者である。
▼GEORGE COX / WIZZARD / LEADER / FULL ver
藤原“34才”広明(ふじわら ひろあき)
・担当:ドラム
・生年月日:1988年6月1日
・愛称:ヒロ、ひろぽん
・Twitter @hiroakifujiwara
・Instagram hiroaki_drums_superbeaver
柳沢とは、幼稚園からの幼なじみであり、小学校~中学校と、彼と共にバンドのキャリアを歩む。別々の高校に入るものの、柳沢に誘われてSUPER BEAVERへと加入。
なお、その当時、10代からおじさん顔だったため、名前の間に年齢を入れて自己紹介することになった。ライブで、ひとたびスティックを握れば、とても雄弁で的確なドラムを叩く。SUPER BEAVERを縁の下から支えるなくてはならない存在である。
■ストレートな歌詞に注目したい、人気曲5選
「名前を呼ぶよ」
2021年7月にリリースされた、映画『東京リベンジャーズ』主題歌。“名前を呼ぶ”という、あまりにも日常的な行為の尊さを、改めて感じずにはいられなくなる。“命の意味だ 僕らの意味だ”“会いに行くよ 何度だって”の他、温かなシンガロングに結実する展開も含めて、リリースされたコロナ禍という時期も相まって、この楽曲が、家族や友達、大切な人たちのことを強く思うきっかけになったという人は、少なくないだろう。
「突破口」
2020年10月に、「自慢になりたい」との両A面でリリースされたシングル。人気TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クールのオープニングテーマに決定し話題を呼んだ。メジャー再契約後、2枚目のシングルということもあって、SUPER BEAVERの現在地が刻まれているように思える歌詞が並ぶ。特に“威風堂々 正面突破がしたいな”という、改めての所信表明に聴こえるフレーズが象徴的だ。“今をやめない”という、今に食らいつく姿勢も、未来が見えないコロナ禍において、多くの人を支えることとなった。
「人として」
2016年6月にリリースされたアルバム『27』に収録。誰もが一度はぶつかる命題“人として”というところに、真正面から向き合った楽曲。“人は騙す 人は隠す それでも笑える”と、ネガティブもポジティブもさらけ出す、嘘も飾りもない冒頭から、“人として かっこよく生きていたいじゃないか”というラストまで、目指すべき道を指し示す。ストリングスが響き渡る荘厳なトラックも、彼らの世界観を大きく広げている。
「ありがとう」
2014年2月にリリースされたアルバム『361°』に収録。[NOID]とタッグを組んで初めてのリリースということもあり、彼らが“改めて言っておきたいこと”が詰まったアルバムだったが、この楽曲はその極みと言える。子どもの頃から何万回も口にしてきた“ありがとう”という言葉について、考えずにはいられなくなる。特に“言わなきゃね 死んじゃうから僕らは”は、SUPER BEAVERならではの決定的な一節だ。
▼SUPER BEAVER「ありがとう」を深掘り – SIDE A | FUKA/BORI
「アイラヴユー」
2021年2月にリリースされた、メジャー再契約後としては初めてのアルバム『アイラヴユー』に収録。まっすぐな言葉を歌い続けてきた彼らが、大切なタイミングで、それを突き詰めたところで出てきたのが、この一言だったのだろう。“アイラヴユーを贈りたい 愛してる 愛してる ただそれだけなのかもしれない”――今、彼らがバンドをやる、音楽をやる、もっと言えば生きるということを集約したかのような楽曲だと思う。
■『ヒロアカ』新OPで盛り上がりを見せる新曲「ひたむき」
TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期のオープニングテーマの新曲「ひたむき」。
▼SUPER BEAVER「ひたむき」MV
多くのアーティストの飛躍するきっかけとなった、『僕のヒーローアカデミア』主題歌においても、もちろんアニメと世界観を重ね合わせながらも、やはりSUPER BEAVERはSUPER BEAVERを貫いている。
タイトルを見ただけでもわかるだろう。これまで、まっすぐな言葉を尽くし続けてきて、まだしっくりくる言葉があったのか! と驚かされる“ひたむき”。その発想力は、やはり無限だ。
それでいて歌詞には、大人から子どもまで理解できるわかりやすさがある。“一生懸命”“あと一歩”という言葉は、間違いなく彼らの歴史から生まれてきたものだろう。
ただ、“どれだけ愛を謳っても 悪意は未だ消え去ってない/どれだけ面と向きあっても 想いすれ違うかもしれない”と、愛を謳い、面と向き合ってきた彼らが歌うと、ドキッとするような一節も。しかし、抗いを見せつつ“自分は自分だからってのはさ/言い訳の そのための 決意じゃなかったろう”という問いかけ。この“揺れ”も含めて表現する人間臭さが、楽曲に説得力をもたらしている。
また、耳を惹くリズムパターンや、挟み込まれたアコースティックな音色、そしてシンガロングしたくなるコーラスなど、アレンジは聴きやすくもシンプルではないところも、歌詞の世界観を後押ししている。その手腕にも注目して聴いてみてほしい。
■リスナーに向き合い続ける、SUPER BEAVER
リスナーと誠実に向き合い続けるSUPER BEAVER。
彼らはこれからも自分たちの生き様をそのまま音楽として鳴らし、リスナーと心を通わせていくのだろう。幸せに過ごせる日ばかりではないが、それでも少しでも多く笑顔の瞬間が増えるように…その揺るぎない姿勢のまま、さらなる進化を遂げていく、彼らのこれからに期待したい。
TEXT BY 高橋美穂
LIVE PHOTO BY 青木カズロー
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