カナダからポップパンクの歌姫として登場したアヴリル・ラヴィーン(AVRIL LAVIGNE)が、デビュー20周年を迎える。
8年ぶりの来日公演も間近に控えたアヴリルが、いかに稀有な存在なのか。20年の歩みや代表曲を、ライブの情報と共に解説していく。
■『AVRIL LAVIGNE Love Sux TOUR 2022 JAPAN』
◎二度の公演調整を経ての開催
『AVRIL LAVIGNE Love Sux TOUR 2022 JAPAN』は、コロナ禍により、二度の公演調整を経て開催される、待望の来日公演だ。
アヴリル自身も熱望しており、2021年に公演が再延期された際には「世界中での感染拡大の影響で、日本のファンの皆さんに会えない日々が続いて、とても寂しいです。でも、絶対すぐにみんなに会いに行くからね!」というメッセージを寄せ、『SUMMER SONIC 2014』のライブ映像を公開するという粋な計らいも。
▼AVRIL LAVIGNE at SUMMER SONIC 2014 【J-Lod Live】
◎ツアー日程
11/07(月)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
11/09(水)東京・ガーデンシアター
11/10(木)東京・ガーデンシアター
11/12(土)愛知・Aichi Sky Expo Aホール
11/14(金)大阪・インテックス大阪6号館
本ツアーは、2022年2月25日に発売された、逞しくてカッコ良い、なによりキュートなロックプリンセス・アヴリルが詰まった最新作『Love Sux(ラヴ・サックス)』を引っ提げて行われる。
加えて、公演直前の11月2日にはこの『Love Sux』に歴代の代表曲と9月に公開され、大きな話題を呼んだ『THE FIRST TAKE』の音源を初収録した来日記念盤とデビューアルバム『Let Go(レット・ゴー)』20周年記念盤が日本限定カラーのアナログ2枚組でリリース。ライブでも懐かしい楽曲や代表曲がたっぷりと披露されるのではないか? という期待が高まっている。
■ロックプリンセス、デビュー20周年の軌跡
アヴリル・ラヴィーン(AVRIL LAVIGNE)
・生年月日:1984年9月27日
・出身:カナダ・オンタリオ州ベルビル
・デビュー作品:2002年アルバム『Let Go』
・JAPAN OFFICIAL SITE https://www.sonymusic.co.jp/artist/avrillavigne/
・Twitter(JAPAN)@avriljp
・Instagram avrillavigne
・TikTok avrillavigne
アヴリルのデビューは2002年、弱冠17歳の時だった。デビューアルバム『Let Go』からの1stシングル「Complicated」は、リリースされるやいなや世界中で大ヒット。収録曲「Sk8er Boi」などもシングルカットされ、アルバムは世界的大ヒットを記録。2000年代初頭のポップパンクムーヴメントも後押しし、同世代のロックキッズに熱狂的に迎えられた。
2004年には2ndアルバム『Under My Skin(アンダー・マイ・スキン)』を発表。「Don’t Tell Me」「My Happy Ending」のシングルヒットにより、アルバムは全米チャート初登場1位、日本でもオリコン総合ランキング初登場1位、2週連続1位に。日本のアルバムセールスは200万を記録した。
2007年には3rdアルバム『The Best Damn Thing(ベスト・ダム・シング)』を発表。アヴリル旋風はやむことを知らず、全米1位シングル「Girlfriend」は、日本で400万ダウンロードを記録する空前の大ヒットに。アルバムは米英含め15カ国で1位、日本でもオリコン総合ランキング1位。アルバムセールスは120万枚を突破し、デビュー以来3枚連続ミリオン達成という快挙を達成した。これは日本の洋楽史上、いまだ破られていない記録である。
2011年3月には、ヒットシングル「What The Hell」を収録した4thアルバム『Goodbye Lullaby(グッバイ・ララバイ)』を発売。2012年2月には、さいたまスーパーアリーナでの2公演を含む待望の来日公演を実施。“ロックプリンセス”という揺るぎない地位を確立したキャリア10年の軌跡を、パワフルなパフォーマンスで堪能させてくれた。
2013年11月には、初のセルフタイトルアルバム『Avril Lavigne』を発表。「Rock n Roll」「Here’s To Never Growing Up」を収録した同アルバムは、全米トップ5位となり、米ゴールド・ディスクを獲得。リリース翌年(2014年)の2月には、武道館公演を含む来日公演、さらに同年夏には『SUMMER SONIC 2014』で再来日を果たす。
しかし、アヴリルは2014年のワールドツアー中から体調不良に苦しんでいた。同年12月にライム病と診断されてからは病と闘い、音楽活動を一時的に休止。そんな苦難を乗り越え、2019年にアルバム『Head Above Water(ヘッド・アバーヴ・ウォーター)』でパワーアップした姿で復活を遂げる。
音楽で人々を魅了し続けるアヴリルだが、実は2010年に慈善財団“アヴリル・ラヴィーン・ファンデーション”を設立し、ライム病を始めとする難病患者支援のためのチャリティ活動を精力的に行っている。
そして、デビュー20周年を迎えた2022年。ロックプリンセスの本領を発揮した最新作『Love Sux』を発表し、精力的にライブを開催。2014年以来の来日公演は、間もなくだ。
■アーティストをも惹きつける、その魅力とは?
◎ロックプリンセスの道を切り拓く
2000年代にポップパンクやオルタナティブロックをオーバーグラウンドに浮上させたのは、間違いなくアヴリル・ラヴィーンの存在が大きい。キャッチーさとロックなエモーションをオリジナルな楽曲に昇華するスキルで、“ロックプリンセス”と呼ばれる道を切り拓いた。
そこには、同世代の心を掴み続ける等身大のメッセージも関わっている。恋愛や生きることへの悩み、そして病気までも…弱さをさらけ出しながら、強くあろうと前へ突き進んでいくその姿に、アヴリルは全世界から共感を得たのだ。
◎ファッション
ラフな着こなしでも、ラグジュアリーなドレスでも、アヴリルのファッションはいつも“ロック”を感じさせる。音楽もファッションもパーソナリティも、すべてが繋がっていることにより、アヴリルは唯一無二の存在感を放つのだ。
以前の彼女のトレードマークだった、ピンクのメッシュ入りのヘアスタイルは、日本でも多くのオーディエンスがマネしていた。スタッズやネクタイ、迷彩柄といったメンズライクなテイストを、タンクトップなどを取り入れてガーリーに着こなすテクニックも、彼女ならではのもの。
自分自身が良いと感じるファッションを貫く美学、だけど圧倒的にキュートでチャーミングなそのスタイルは、彼女の生き様とも結びついている。その影響は今も大きく、ムーヴメントを巻き起こしているY2Kファッションの源流とも言われている。
◎ファンを公言する、アーティストたち
アヴリルは後輩アーティストにも大きな影響を与えている。ビリー・アイリッシュは大ファンであることを公言し、オリヴィア・ロドリゴのライブにはアヴリルがサプライズ出演。HUENINGKAI(TOMORROW X TOGETHER)が「Sk8er Boi」をカバーするなど、アヴリルを聴いて育ったアーティストが、今の時代を牽引する存在になっていることがわかる。
▼HUENINGKAI’s Sk8er Boi (Original Song: Avril Lavigne) – TXT (투모로우바이투게더)
その状況は日本においても同じで、ヘアメイクやファッションからも影響が垣間見える、日本のロックヒロイン・LiSAは「Avrilに出会って、私の世界は自由になった。彼女の音楽と一緒に大人になれて幸せです」と発言している。
Avrilに出会って、私の世界は自由になった。彼女の音楽と一緒に大人になれて幸せです。おかえりなさい。 https://t.co/meDkE0ICRe
— LiSA (@LiSA_OLiVE) February 12, 2019
他にも、2012年の来日公演でオープニングアクトをつとめた縁もある阿部真央や、Aimer、 YUI、穴見真吾(緑黄色社会)、HARUNA(SCANDAL)など、アヴリルからの影響を公言。
女性アーティストのみならず、男性アーティストへも、さらにジャンルを越えて愛され、リスペクトされているのだ。
⭐️#MyFirstAvril ⭐️
アヴリルの㊗復活と新作発売を記念してアーティストの皆さまからもアヴリルやアヴリルの曲への想いをメッセージでいただきました!supported by Skream!(@skream_japan)
⚡緑黄色社会 / 穴見 真吾さん(Ba/Cho)@ryokushaka @basShin_Goro#緑黄色社会 pic.twitter.com/hE1JvowEY5
— アヴリル・ラヴィーン【JP公式】 (@AvrilJP) February 8, 2019
■『THE FIRST TAKE』出演
今年9月には『THE FIRST TAKE』で2本の動画を公開。1本目は「Complicated」。
▼Avril Lavigne – Complicated / THE FIRST TAKE
スタッズがちりばめられたピンクの革ジャン姿でマイクの前に立つと、「こんにちは、ハロー、もしもし」と照れくさそうにキュートに挨拶。しかし、歌い始めると空気は一転する。
アコギ1本をバックに、葛藤をエモーショナルに吐き出していく、その歌声には確実に、彼女の20年間の重みが刻まれていた。2002年に1stシングルとしてリリースされた原曲には、10代ならではのみずみずしい葛藤がパッケージされていたが、“Complicated=複雑”というタイトルに込められた意味合いは、20年を経た今こそ伝わってくるものがあった。
▼Avril Lavigne – Complicated (Official Video)
続く2本目では、最新アルバム『Love Sux』収録曲の「Bite Me」を披露。オーバーサイズの黒いパーカーという、「Complicated」の時とは打って変わってラフなファッションでマイクの前へ。
▼Avril Lavigne – Bite Me / THE FIRST TAKE
原曲はアグレッシブでパワフルなバンドサウンドで、やはりロックプリンセスのアヴリルは最高! と思えるが、『THE FIRST TAKE』バージョンは、また違った印象で、より歌詞の物語が伝わってくる。男女の関係の破綻を爽快なほど強気に歌いながら、随所に滲む悲しみや後悔。これは今のアヴリルだからこそ生み出せた、繊細な表現力と歌唱力をもとに成り立っている楽曲だと思える。
▼Avril Lavigne – Bite Me (Official Video)
■YouTube再生回数1億超えの16曲
アヴリル・ラヴィーンの楽曲の中でも、知っておきたい16曲をセレクト。こちらは公式YouTubeでの再生回数が1億回を超えている人気曲だ。さらに、その中から絶対に外せない5曲について解説する。
「Girlfriend」
YouTube再生回数6億回を超える、名実ともにアヴリルの代表曲。2007年にリリースされたアルバム『The Best Damn Thing』に収録。アップテンポなビートとキュートなメロディ、すぐにハンドクラップでジョインできるポップな曲調で、とにかくノリが良い。しかし、実はかなり歌詞は強気な女の子のラブレターのよう。ポップなかわいらしさの奥に熱いパッションが秘められているという意味でも、とてもアヴリルらしい楽曲と言える。
「What The Hell」
2011年にリリースされたアルバム『Goodbye Lullaby』に収録されている。奔放な女の子を、元気いっぱいに軽やかに、ちょっぴり毒を交えながら表現したような楽曲。聴いていても、すぐに飛び跳ね、歌い出したくなるような、キャッチーなパワーに溢れている。MVでも、こっちがヒヤヒヤしてしまうほど、自分の気持ちのままにアヴリルは行動しているけれど、それはある種、すべての女の子の憧れを体現した姿なのかもしれない。
「My Happy Ending」
2004年にリリースされたアルバム『Under My Skin』収録曲。骨太でメロディアスなバラードの中で、エモーショナルな歌声が響き渡る。聴こえてくるのは、深く愛していたからこそ、別れ際に湧き上がってくる突き放すようなメッセージ。アヴリルは本音で生きていて、本音で歌っていて、その思いを誠実に楽曲に落とし込むことができる人なのだ。そんなアーティスト性が、まざまざと表れた楽曲になっている。
「Sk8er Boi」
2002年にリリースされたデビューアルバム『Let Go』からの、2枚目のシングル。街中の自動車の上でやんちゃにライブをするMVのイメージも含めて、ストリートカルチャー×アヴリルの表現が結びついているということを知らしめた。心地いいアップテンポのビートに乗って、夢や恋や憧れが入り混じった物語が軽やかに歌われる。それは見事に10代のハートを打ち抜き、アヴリル・ラヴィーン初期の躍進を決定づけた。
「Head Above Water」
2018年にリリースされたアルバム『Head Above Water』に先駆けてリリースされたシングル。ライム病を乗り越えてアルバムを完成させるまでの、病魔と闘っているリアルな状況を映し出した楽曲だ。ずっしりとした曲調の中で、凛と響く美しい歌声は、まるで荒波を抜け出す航路を指し示す光のよう。正直な自分自身はそのままに、シリアスな表現者として高みに登ったことを感じさせる。
「Complicated」
「When You’re Gone」
「Wish You Were Here」
「I’m With You」
「Smile」
「Let Me Go」
「Here’s to Never Growing Up」
「Hello Kitty」
「Hot」
「Nobody’s Home」
「Rock N Roll」
■憧れの的であり、同じ時代を生きる同志
これだけ多くの名曲を生み出し続けてこられたのは、20年一貫して己の思いに耳を傾け、まっすぐにありのままを歌ってきたからだろう。笑顔の日も、そうでない日も…彼女は音を鳴らし、言葉を紡ぎ、そうすることで一歩ずつ着実に歩んできたのだ。
それは今後も変わることなく、きっとアヴリルの等身大のメッセージが今後も私たちの人生を豊かに彩ってくれるに違いない。
TEXT BY 高橋美穂
LIVE PHOTO BY Salma Bustos
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