Survive Said The Prophetのアコースティックツアー『something RAW -acoustic tour- 』東京公演が、10月13日に神田スクエアホールで開催された。7月15日の北海道を皮切りに全国5ヵ所をめぐるツアーだったが、メンバーのコロナ陽性により大阪、東京公演が延期となっていたこのライブ。これまで、ショーの1コーナーとしてアコースティックセットで見せることはあったが、アコースティックツアーはキャリア初ということで、いつもとは場所も雰囲気も変えて、サバプロの持つまだ見ぬ側面に光を当てたライブとなった。
会場となったのは、オフィス街にある神田スクエアホール。椅子が並んだ広いフロアから臨むステージには、ドラムセットや機材の他にソファやフロアランプが置かれ、たくさんの観葉植物が飾られている。普段のライブハウスでのステージはLEDによる演出やエッジィなバンドサウンドを引き立てるクールさがあるが、今回のテーマはリビングルーム。フロアランプが灯った中で登場した4人もいつもよりもリラックスした雰囲気で、Show(Dr)はドラムに、そしてIvan(Gu)とTatsuya(Gu)は椅子やソファに腰をかけ、Yosh(Vo)はアコギを抱えスタンドマイクの前に立ち「一緒に音楽を楽しんでいってください」と、「Win / Lose」からライブをスタートした。
“アコースティック”形態ではあっても演奏の熱量は高く、また音の構成がシンプルになるからこそサバプロの曲の骨格が引き立つ。アレンジが加わって曲の新しい魅力を発見する曲もアコースティックセットならではだろう。普段、ヘヴィなギターリフとダイナミックなドラムとの大車輪で熱狂を生み出していく「Your Head」では、ラテンの香りを漂わせるアレンジで、曲のウエイトを落としつつグルーヴィなYoshのボーカルを引き立てている。また美しくソウルフルなメロディとボーカルに注目させる「I don’t care」の抑えたアンサンブルもさえる。会場をも揺さぶる重厚なバンドアンサンブルと熱いメッセージで観客と一体化する、ステージとフロアとのエネルギーをぶつけ合ういつものライブの高揚感はもちろん素晴らしい。
■普段着のサバプロに触れ、日常会話を交わすようなライブ
ラウドでエモーショナルで、ロックバンドとしてタフさやスケール感を増していっている今だからこそ、こうした普段着のサバプロに触れ、日常会話を交わすようなライブは観客と音楽との距離をいちだんと近づけてくれる感覚がある。YoshはMCで、自分たちが作った音楽を使ってほしい、人生のBGMになればという話をしていたが、手作りの音楽をすっと手渡すカジュアルさがあるのが今回のライブだ。
この東京公演の前日、10月12日にはSurvive Said The Prophetの6枚目となるニュー・アルバム『Hateful Failures』がリリースとなった。後半では、普段なかなか言葉にして言えないけれどと、レコード会社であるソニーへの感謝を述べて、ニュー・アルバムから1曲、「624」を披露した。10月21日にはアルバム『Hateful Failures』を携えた全国ツアーをキックオフしたが、それに先駆けて「624」がアコースティック・バージョンでお披露目されるレアな状況に、観客もぐっと前のめりになってステージに集中。アルバムインタビューでも、作品中もっともエモーショナルな曲だと語られていた「624」。細やかなIvanとTatsuyaのギターアンサンブル、アグレッシヴにドラムを紡ぎながらコーラスでも歌を支えるShow、自らもギターをかき鳴らしてその歌を追体験するような激情に声を震わせるYosh。フロアを飲み込んでいくパワーに、ツアーへの期待も募る。
このヒリヒリとしたところから一転して、続くアヴリル・ラヴィーンのカバー「complicated」ではリラックスしたジャムセッションの感じで、ビールを嗜みながらプレイ。そして、バラード曲「prayer」が先に出来ていたために残念ながらアルバム『Hateful Failures』からは漏れてしまったと、Yoshが制作の裏話を語りながら未発表のバラード曲「Find You」に突入した。が、エモさ満点の余韻に浸るなかメンバー3人から「ちょっと待って、1曲忘れてない?」とYoshにツッコミが入る。リビングルームがテーマのリラックス感からか、「HI | LO」を飛ばしまったようだが、そんなハプニングも、いつにも増して素の笑顔や4人のキャッチボールが見えるフレンドリーさも、サバプロとサバプロの音楽を観客とより近づけてくれる。
■それぞれのパートが果たす役割、その音がそこにある意味合い
終盤、アコースティックセットならではの、ボサノバアレンジで聴かせたのは「SPINE」。今回のアコースティックツアーを行なうにあたって、楽曲のリアレンジ、アンサンブルを解体、再構築するという作業が重ねられたと思うが、そのプロセスはアルバム『Hateful Failures』の制作とも作用しあっていたのでは、とも感じる。それぞれのパートが果たす役割、その音がそこにある意味合いや、Survive Said The Prophetだからこそのグルーヴやアンサンブルの黄金律など、一から丁寧に組み上げていくプロセスを踏んだアルバム『Hateful Failures』。
未だ続くコロナ禍で、ライブを楽しんでもらうひとつの企画としてのアコースティックツアーでもあったと思うが、研ぎ澄まされたシンプルなサウンドを大きな会場でも説得力を持って響かせるライブができるのも、また今だったのだと思う。大きな手拍子であふれた「Right and Left」から、軽やかなビートと刻まれるギターに観客が大きく手を振る「Last Dance Lullaby」へと会場を明るいテンションで満たして「また最高の音楽があるところで一緒に会いましょう」と、Yoshはピースサインを掲げた。
■リラックスした雰囲気とは違った景色を生むアルバムツアーがスタート
大きな拍手で迎えられたアンコールでは改めて、このツアーでの楽しさや最高の景色だったことを述べると「When I」を披露。この『something RAW -acoustic tour- 』を経て、ニュー・アルバム『Hateful Failures』を引っ提げた全国ツアーをスタートしたSurvive Said The Prophet。感情豊かな内容のアルバムで、ここでのリラックスした雰囲気とは違った景色を生むツアーになると思うが、音への感覚を研ぎ澄まし、またライブだからこその表現や醍醐味を磨いてきたからこそのステージを見せてくれるはずだ。
TEXT BY 吉羽さおり
PHOTO BY かわどう
セットリスト
『something RAW -acoustic tour- 』
2022年10月13日 神田スクエアホール
1.Win / Lose
2.Your Head
3.I Don’t Care
4.The Happy Song
5.Again
6.624
7.Complicated
8.Find You
9.HI | LO
10. Mukanjyo
11.SPINE
12.Right and Left
13.Last Dance Lullaby
EN.When I
ライブ情報
Hateful Failures Tour
10/21(金)Hateful Failures Tour Day1 石川県 金沢 EIGHT HALL
10/22(土)Hateful Failures Tour Day2 新潟県 新潟LOTS
11/4(金)Hateful Failures Tour Day3 愛知県 ダイアモンドホール
11/19(土)Hateful Failures Tour Day4 宮城県 仙台Rensa
11/25(金)Hateful Failures Tour Day5 大阪府 Zepp Osaka Bayside
11/27(日)Hateful Failures Tour Day6 福岡県 BEAT STATION
12/3(土)Hateful Failures Tour Day7 広島県 広島クラブクアトロ
12/4(日)Hateful Failures Tour Day8 香川県 高松オリーブホール
12/8(木)Hateful Failures Tour Day9 北海道 PENNY LANE24
12/10(土)Hateful Failures Tour Day10 北海道 苫小牧ELLCUBE
12/20(火)Hateful Failures Tour Day11 東京都 EX THEATER ROPPONGI
Survive Said The Prophet OFFICIAL SITE
https://survivesaidtheprophet.com