宮崎 駿監督作品の映画『千と千尋の神隠し』が、アカデミー賞で長編アニメ賞を受賞。日本を代表する文化都心のシンボル、六本木ヒルズがグランドオープンした、2003年。
音楽シーンにおける大きな出来事といえば、SMAPの「世界に一つだけの花」の超絶ヒットだろう。その年の『NHK紅白歌合戦』では、SMAPが大トリをつとめ、国民的アイドルとして不動の地位を築いた。
今回はそんな2003年のヒット曲を、その背景とともに振り返っていきたい。
■2003年男性ボーカルのヒット曲10選
「世界に一つだけの花」SMAP
「虹」福山雅治
「さくら(独唱)」森山直太朗
「涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~」サザンオールスターズ
「HERO」Mr.Children
「大切なもの」ロードオブメジャー
「IT’S SHOWTIME!!」B’z
「Choo Choo TRAIN」EXILE
「上海ハニー」ORANGE RANGE
「ロストマン」BUMP OF CHICKEN
「世界に一つだけの花」SMAP(スマップ)
元々、2002年発売のアルバム『SMAP 015/Drink! Smap!』の収録曲としてリリースされたが、その翌年にフジテレビ系ドラマ『僕の生きる道』の主題歌となったことで、ドラマ放送開始直後から問い合わせが殺到。2003年にシングルカットされ、空前の大ヒットとなったのが「世界に一つだけの花」である。SMAP初のダブルミリオン200万枚を突破し、社会現象に。
作詞・作曲は槇原敬之。“NO.1にならなくてもいい/もともと特別な Only one”という歌詞が多くの人の心を掴んだ。メンバーそれぞれに個性を輝かせることで、ひとつのグループとしてまとまった時、さらなるパワーを生み出すSMAPが歌うことで、より楽曲のメッセージに説得力が増したといえるだろう。
歌いやすいメロディーで、合唱曲としても愛されている。
「虹」福山雅治(ふくやままさはる)
2003年8月に福山雅治の18枚目シングル「虹/ひまわり/それがすべてさ」として発売。フジテレビ系ドラマ『ウォーターボーイズ』の主題歌でもあり、作品と共に大ヒット。オリコンシングルチャートでは5週連続1位を獲得し、2000年代最長を記録。さらに、2003年のオリコンチャートでは、2位をマークした。
“行くのさ”“飛び立つのさ”といった歌詞は前向きさを表現している。ドラマ内のシンクロナイズドスイミングにかける青年たちの青春を見事に描いた楽曲だ。軽快なポップ調で、幅広い世代に愛された。躍動感みなぎる爽やかなサビも魅力。
「さくら(独唱)」森山直太朗(もりやまなおたろう)
森山直太朗ブレイクのきっかけとなった楽曲で、2003年3月に発売。オリコンチャートでは、登場9週目にして1位を獲得。
元々は森山直太朗の友人の結婚式に制作されたもので、バンドアレンジ収録曲からピアノ独唱バージョンとしてシングルカットされた。本人の歌声とピアノ伴奏のみというシンプルな構成。飾り気のないMVも歌詞の切なさを煽る名曲だ。現在は、桜の季節や卒業式の定番ソングとなっている。
「涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~」サザンオールスターズ
2003年7月に47枚目のシングルとしてリリース。再始動後最初のオリジナルソングで、フジテレビ系月9ドラマの『僕だけのマドンナ』主題歌となった。オリコンチャートでは初週で1位を獲得。翌年の『第18回日本ゴールドディスク大賞』では、ソング・オブ・ザ・イヤーを受賞している。
サザンオールスターズのパブリックイメージである“夏”がテーマのアップテンポナンバー。過ぎゆく夏の情景が表現されている。70年代のアイドル歌謡曲を彷彿とさせるような風情のある楽曲だ。
「HERO」Mr.Children(ミスターチルドレン)
2002年12月リリース。オリコンチャートに32週チャートインするロングヒットを記録。
“大事な君にとってのヒーローになりたい”と親から子に送るラブソング。NTTドコモ『NTT DoCoMo Group 10th Anniversary』のキャンペーンCMソングにも起用された。ファルセットから、最後は地声で歌い上げる歌声が心に刺さる名曲だ。ミスチルとしては初めてクレイアニメを採用したMVも話題になった。
「大切なもの」ロードオブメジャー
ロードオブメジャーのデビュー曲。2002年8月リリースながらも、インディーズでは異例のオリコン19週連続でトップ10入り。2000年代以降では最高週数で驚異的な大ヒットとなった。
速いビートとシンプルなリフのパンクロックに、人との出会いや絆など友情を描いた歌詞。今では卒業式ソングの定番になって長く愛されている。歴史に名を刻んだ応援ソングといえるだろう。
「IT’S SHOWTIME!!」B’z(ビーズ)
B’zデビュー15周年となる2003年3月に発売された34作目のシングルで、同年のツアーのタイトルにもなった楽曲。ANB系『SUPER BASEBALL』のイメージソングにも起用され、30作連続オリコン1位の記録も更新。
イントロが印象的なB’zらしいロックチューン。ド派手なサウンドに“招待”と“SHOWTIME”の歌詞で韻を踏むあたりで、さらにテンションが上がる。
「Choo Choo TRAIN」EXILE(エグザイル)
リーダー・HIROがかつて所属していたダンス&ボーカルユニットZOOの名曲をカバーした、2003年11月に発売された10作目のシングル。着うた(R)の1位獲得回数でレコチョク史上最多記録を更新した。
イントロにあわせて、縦一列の先頭から順に、上半身を時計まわりでスライドさせていくダンスをマネする人々が続出。“誰もが自由に楽しくできるもの”として、ダンスの間口を広げた楽曲でもある。
「上海ハニー」ORANGE RANGE(オレンジレンジ)
ORANGE RANGEを一躍有名にした横ノリの代表曲。2003年7月に発売されると、ノンタイアップながら売上が20万枚以上に。全国21局のラジオ局でパワープレイを獲得!
“君を知りたいよ”“何かトキメいてます”などの開放的にさせる夏特有の雰囲気が詰め込まれた歌詞に、ノリの良い軽快なメロディで、現在も夏フェスやライブの定番曲として演奏され続けているキラーチューンだ。
「ロストマン」BUMP OF CHICKEN(バンプ・オブ・チキン)
2003年3月に発売されると、初動売上で10万枚を突破。オリコンチャートでは初登場2位を記録した。
リバーブが効いたシンプルなギターリフに、重層感のあるツインドラムで楽曲の世界観に浸らせる。作詞に約9ヵ月間の期間が費やされたことが逸話として語り継がれ、BUMP史上最高の泣き歌と賞賛される神曲だ。
作詞・作曲を担当する藤原基央は、失敗した今の自分と失敗しなかった場合の自分がいつか再開を約束する曲だと語っている。
■2003年女性ボーカルのヒット曲10選
「月のしずく」RUI
「明日への扉」I WiSH
「COLORS」宇多田ヒカル
「Greatful days」浜崎あゆみ
「地上の星」中島みゆき
「もらい泣き」一青窈
「Grip!」Every Little Thing
「元気を出して」島谷ひとみ
「シャボン玉」モーニング娘。
「雪の華」中島美嘉
「月のしずく」RUI(ルイ)
女優で歌手の柴咲コウが、RUI名義で2003年1月に発売したシングル。映画『黄泉がえり』の主題歌および劇中歌に使用された。劇中に登場する歌手RUIの役名がそのまま採用されている。オリコンシングルチャートでは1位を記録した。
情緒豊かなミディアムナンバー。古典的な言葉回しの歌詞にRUIの神秘的な歌声が乗り、切ない恋心をしっとりと聴かせる。
「明日への扉」I WiSH(アイウィッシュ)
シンガーソングライターの川嶋あい(ai)とキーボディストのnaoによる音楽ユニット・I WiSHが2003年2月にリリースしたデビュー曲。フジテレビ系で人気を博した恋愛観察バラエティー『あいのり』の、2002年10月~2003年9月度の主題歌に起用され、大ヒット。
恋に落ちる瞬間を表現した歌詞からはじまるこの楽曲。曲の中で描かれるストーリーに甘酸っぱい思いを抱く人も多いのでは? 透き通るような歌声がピュア感たっぷりで、ラブソングの王道と評されている。
「COLORS」宇多田ヒカル(うただひかる)
2003年1月に発売されるとオリコンシングルチャートで1位を獲得しヒット。ファミリー層から人気の高い『トヨタ ウィッシュ』のCMに起用された。
シリアスな曲調でスタートするも、サビから一気に爽快な展開に。自動車をイメージさせる疾走感のある歌詞に、独特なメロディとリズムがマッチ。ハイクオリティーなMVは、まるで映画のようなロマンチックな世界観と話題に。
「Greatful days」浜崎あゆみ(はまさきあゆみ)
浜崎あゆみが2003年7月に発売した3曲A面のシングル。CX系の音楽バラエティー『ayu ready?』のテーマソングとして起用。オリコンシングルチャートでは1位を獲得した。
夏の訪れのワクワクする気持ちを、明るい歌詞とメロディーで表現した夏ソング。最後のサビでは夏の終わりを惜しみながらも、 “なんて事ない毎日こそが/何よりも素敵だって知ってるから”と、日々を彩る素晴らしいメッセージが込められている。
「地上の星」中島みゆき(なかじまみゆき)
2000年7月に発売されたシングルだが、2002年末の『NHK紅白歌合戦』で歌唱したことをキッカケに、2003年1月で130週目にして1位を獲得する快挙を成し遂げた。なんと発売以降174週連続でオリコンチャートの100位圏内にランクインしたロングヒット曲だ。NHK総合テレビ『プロジェクトX~挑戦者たち~』の主題歌として制作された。
圧倒的な重厚感のある楽曲。中島みゆきらしい深みのある歌詞で、どんな人でも光があることを表現している。番組の主要視聴者である中高年から絶大な支持を得た。奮い立たせてくれる名曲だ。
「もらい泣き」一青窈(ひととよう)
2002年10月に発売された一青窈のデビュー曲。
作詞はすべて本人が担当。“ええいああ”という斬新な歌詞で始まり、幻想的なサウンドが交わることで独特な世界観を演出。同年の12月には1stアルバム『月天心』が発表され、1stシングルと共にオリコンチャートの同じ週に同時にトップ10入りする偉業も成し遂げている。
「Grip!」Every Little Thing(エヴリ・リトル・シング)
2003年3月リリース。読売テレビ・日本テレビ系列アニメ『犬夜叉』オープニングテーマに起用された。
世界的にも評価されている大人気アニメに使用されたことで、世界中のアニメファンからも認知された楽曲だ。これまで恋愛ソングをメインに発表し続けていたELTのイメージを一新した。“強く願えばいい本物になれる日まで”と明るくポジティブな人生観を歌うポップな一曲。
「元気を出して」島谷ひとみ(しまたにひとみ)
2003年6月に発売された、薬師丸ひろ子のカバーシングル。NHKテレビドラマの23時連続ドラマシリーズの主題歌にも起用された。
失恋で傷心の友人を励ます女の子同士を描いた楽曲で、世代を超えて愛され続けている。カバーでは、ポップにアレンジすることで島谷らしいカラフルな仕上がりに。同年の『第54回 NHK紅白歌合戦』では、同曲で自身二度目の出場を果たす。
「シャボン玉」モーニング娘。(モーニングむすめ。)
モーニング娘。が2003年にメインパーソナリティをつとめた『27時間テレビ』のグランドフィナーレにて初披露され、同年の7月に19枚目のシングルとして発売。6期メンバーとして新加入した藤本美貴・亀井絵里・道重さゆみ・田中れいな初参加曲。
シャボン玉という、一見爽やかなタイトルだが、同曲で描かれているのは恋愛における嫉妬や劣等感。美しいと思える恋も、シャボン玉のようにあっけなく割れてしまう…だからこそ、悔いのないようせめて自分らしい恋をすべきだという、恋に盲目になりがちな女性へ贈る叱咤激励的な恋愛のススメである。
「雪の華」中島美嘉(なかしまみか)
本人が出演した明治製菓の『boda』『galbo」のCMソングに起用され、2003年10月に発売された。
ウィンターバラードの定番ソングとして認知され、日本だけでなく韓国などでも、数多くのアーティストがカバー。第45回日本レコード大賞では金賞受賞し、同年と2005年に『NHK紅白歌合戦』で歌唱。2019年2月には、本曲のテーマで実写映画も公開されている。
■2003年ヒット曲のプレイリスト
2003年のヒット曲は、長く愛され続けている名曲ぞろい。どの曲を聴いても、思わずあの頃を思い出してしまうだろう。
“当時のヒット曲を懐かしみたい!”そんなあなたは、ぜひ『THE FIRST TIMES』のプレイリストを楽しんでみてほしい。
TEXT BY peekaboo
▼2003年男性ボーカルのヒット曲10選
▼2003年女性ボーカルのヒット曲10選