■地元・中野でのワンマン、そして全国ツアーからはじまる2023年へ
ちょっと早めに中野についたので、中野ブロードウェイ(“サブカルの聖地”と呼ばれる商業施設)をブラブラしていると、ザ・リーサルウェポンズのTシャツを着た人と何人もすれ違った。平日の夕方、漫画やフィギュアを眺めながら、ライブまでの時間を過ごす。こんなにも豊かな時間があるだろうか、とちょっと大げさに思ってしまう。
ザ・リーサルウェポンズが9月30日、東京・中野サンプラザで単独公演『大コンバンワンマン 〜 オレたち中野を大事にするぜ!地元のライブはハンパねぇ 〜』を開催した。改めて説明しておくとザ・リーサルウェポンズは、80年代〜90年代の音楽、映画、ゲームなどのカルチャーをルーツに持つロック・ユニット。メンバーはアメリカ出身のボーカリスト“サイボーグジョー”と、彼を“発明”したプロデューサー“アイキッド”だ。
2019年に発表した「80年代アクションスター」で本格始動。星野源にも絶賛された「きみはマザーファッカー」、今年2月にカプチューン(カプコン公式バンド)とコラボが実現した「昇竜拳が出ない」などで話題を集め、2020年にメジャーデビュー。今年3月にメジャー1stアルバム『アイキッドとサイボーグジョー』を発表した。
80年代〜90年代をリアルタイムで体験している大人から、サブカル感たっぷりの楽曲やMVに興味を持った10代まで幅広い層のファンを獲得。キャリア最大規模のワンマンとなったこの日のライブにも、年齢やジェンダーを超えた──80年代風のロックファッションでキメた女性、サイボーグジョーのコスプレをした親子連れ──様なオーディエンスが集まった。
ライブ前の注意事項アナウンスは、ザ・リーサルウェポンズが出会ったブックマート都立家政店(中野区)の河村陽介氏が担当。東京の夜景をモチーフにした絵がステージに映され、“アニキ!アニキ!”コールからはじまる「80年代アクションスター」、そして、ユニットのテーマソング「ポンズのテーマ」でライブは幕を開けた。
「中野サンプラザ、すごいよ!ホントに感謝だヨ!」(サイボーグジョー)と喜びを爆発させながら、月給日の悲哀をド派手なサウンドに乗せた「シェイキン月給日」、“DJってどうなの?!”という鬱憤をぶちまける「押すだけDJ」、夜のスーパーで繰り広げられる争奪戦を描いた「半額タイムセール」など、アルバム『アイキッドとサイボーグジョー』に収録された人気曲を次々と披露。トラックを流しながらメンバーふたりがパフォーマンスを繰り広げ、曲中の合いの手や歓声もすべてスピーカーから出す(コロナ対策のため)というスタイルは変わらずだが、サウンドのクオリティ(特に低音の厚み)はさらに向上し、サイボーグジョーのボーカルも確実に進化。なによりも客席を埋め尽くした(チケットはソールドアウト!)オーディエンスの熱いリアクションにグッと来てしまった。
特別なライブとなったこの日はゲストも豪華。まずはシンガーソングライターの眉村ちあき。和服姿で本物の殺陣の方々とチャンバラを繰り広げた後、刀を掲げたまま「こんばんは!眉村ちあきです!」と笑顔で挨拶。じつはアイキッドは、眉村の活動をはじめた当初からチェックしていたという古参ファン。さらにザ・リーサルウェポンズが初ライブを行ったライブハウス“阿佐ヶ谷家劇場”が、眉村も何度も出演していた会場だったことから縁がつながり、コラボ曲「サムライディスコfeat.眉村ちあき」のリリースに至った(しかも8センチCDで)。“シンセウェイブ3部作・第2弾”として制作されたこの曲は、“サイバー演歌”と呼ぶべきナンバー。眉村の圧倒的な歌唱力(コブシ回しもうまい!)とレトロフューチャー的なサウンドはこの日のステージでも鮮烈な化学反応を生み出した。
中野区長の酒井直人氏が“中野大好きナカノさん”(人形)を持って登壇からの「特攻!成人式」(中野区の成人式の会場はもちろん中野サンプラザ)、さらにホッピーへの愛を歌い上げた「ホッピーでハッピー」でガッツリ盛り上げた後は、声優、俳優、歌手として活躍している上坂すみれが登場。両者がつながったきっかけは、アイキッドが上坂に「快走!ラスプーチン」を楽曲提供したこと(アルバム『アイキッドとサイボーグジョー』にはこの曲のセルフカバーを収録)。この日は“シンセウェイブ3部作・第1弾”として発表された「ねこねこヘヴン feat.上坂すみれ」。作曲・編曲を担当したShinnosuke(ex. SOUL’D OUT)もショルキーを持って登場し、80’sシンセポップの進化系と呼ぶべきサウンドを響かせた。“ねこねこヘヴン ニャンちゃって”というリリックを歌う上坂のボーカリゼーションも超キュート!
Shinnosukeも参加し、ミラーボールの光とともに中野サンプラザをディスコに変貌させた「マハラジャナイト」、エドワード・ヴァン・ヘイレンへの強い思いを込めた「さよならロックスター」で本編は終了。ザ・リーサルウェポンズのライブの“凖レギュラー”のBANBANBAN・鮫島一六三のグッズ紹介を挟み、サイボーグジョー、アイキッドが再びステージに登場し、告知コーナー。2023年1月から全国ツアー『Back to the 80’s Tour 2023』を開催、シンセウェイヴ3部作第3弾「シューティングスターレディオ feat.宇多丸, スーパー・ササダンゴ・マシン」(8cmシングル/10月26日発売)のリリースが発表されると、会場からは大きな拍手が巻き起こった。
アンコールでは「昇竜拳が出ない」、そして、ゲスト陣が全員登場した「きみはマザーファッカー」をぶちかまし、ライブは大団円を迎えた。快進撃を続けるザ・リーサルウェポンズ。全国ツアーからはじまる2023年はさらなる飛躍の年になりそうだ。
TEXT BY 森朋之
PHOTO BY 片岡光正/kimi
ザ・リーサルウェポンズ「大コンバンワンマン 〜 オレたち中野を大事にするぜ!〜地元のライブはハンパねぇ〜」
2022年9月30日(金) 中野サンプラザ
ゲスト:上坂すみれ、眉村ちあき、中野区長、Shinnosuke(ex SOUL’d OUT)
SET LIST
1.80年代アクションスター
2.ポンズのテーマ
3.パーティースーパースター
4.シェイキン月給日
5.押すだけDJ
6.半額タイムセール
7.Super Cub is No.1
8.プータロー
9.サムライディスコ (w/眉村ちあき)
10.東海道中膝栗毛
11.雨あがる
12.デンジャーゾーン
13.特攻!成人式
14.川中島の戦い (w/殺陣)
15.ホッピーでハッピー
16.ねこねこヘヴン (w/上坂すみれ、Shinnosuke)
17.マハラジャナイト (w/Shinnosuke)
18.さよならロックスター
EC-1.昇竜拳が出ない
EC-2.キミはマザーファッカー (w/ALLゲスト)
ライブ情報
『Back to the 80’s Tour 2023』
[2023年]
1/28(土) 大阪・梅田シャングリラ
2/12(日) 愛知・新栄シャングリラ
2/25(土) 東京・下北沢シャングリラ
3/3(金) 北海道・札幌キューブガーデン
3/11(土) 福岡・福岡DRUM SON
ザ・リーサルウェポンズ OFFICIAL SITE
https://tlw80s.com/