■「声がなくても、お前らの気持ちは絶対にわかるからな。みんな、思い思いに今日を楽しんでくれ」(INORAN)
9月11日、LUNA SEAのギタリストINORANが、自身のソロツアー『TOUR BACK TO THE ROCK’N ROLL 2022』を、東京・渋谷WWW Xからスタートさせた。
2022年はソロ活動25周年の節目の年。この『TOUR BACK TO THE ROCK’N ROLL 2022』は、INORAN、Yukio Murata(Gu)、u:zo(Ba)、Ryo Yamagata(Dr)のバンド編成による、2019年以来3年ぶりのツアーとなる。
INORANは、7月にアコースティック編成でソロの代表曲をリアレンジした最新アルバム『IN MY OASIS Billboard Session』をリリース。2022年夏には、Billboard Live Tour『IN MY OASIS Billboard Session』を行ったばかりだが、今回の『TOUR BACK TO THE ROCK’N ROLL 2022』は、よりロックな初期衝動と躍動感に満ちた内容となるのがポイントだ。
ライブ後の談話でも、INORANは「今の自分たちはとても青春しているし、それが音にも現れている」と話していたが、10年以上続いてきたこのバンドに対する“確かな自信”が、この日の演奏からも、ひしひしと伝わってきた。
印象的なタイトルの“BACK TO THE ROCK’N ROLL”は、2021年秋のソロ公演『INORAN -TOKYO 5 NIGHTS- BACK TO THE ROCK’N ROLL』から掲げられてきたものだが、それに対して、INORANは「自分がこれまで出会ってきた人たち、バンドメンバー、スタッフ、ファン、それらを繋ぐライブ会場、そのすべてが最高にロックしている。そういう気持ちをもっと押し出してもいいと思った」と語ってくれたが、この“BACK TO THE ROCK’N ROLL”というワードは、本ツアーを象徴する重要なテーマのひとつだ。
“Episode ZERO!?!?!!?!”と銘打たれたツアー初日の本ライブは、8thアルバム『Teardrop』から、12thアルバム『2019』にかけてINORANが磨き上げてきた、グランジ/オルタナティブな要素がストレートに表現され、全編を通して荒々しくも疾走感に溢れた、ダイナミックなアンサンブルが存分に楽しめる。
開演時刻を少し過ぎた頃、ステージにINORANが登場。Murata、Ryo、u:zoと共に円陣を組んだあと、「ヘイヘイ東京、元気だったか? 1年ぶりに帰って来ました」と、うれしそうに観客に語りかけ、9thアルバム『Dive youth, Sonik dive』の「One Big Blue」で、ライブはスタートした。
リハーサルでも、つねに確かな手応えを感じてきたという「One Big Blue」は、u:zoとRyoのパワフルなリズム隊のコンビネーション、INORANとMurataの呼応し合う絶妙なギターワークなど、このバンドで長年鍛え上げることで結実した鉄壁のアンサンブルに、INORANのエモーショナルなボーカルが合わさり、圧倒的なエネルギーと熱量を誇る。そんなバンドサウンドに刺激されるように、ライブ開始直後から、会場のボルテージも一気に上がっていく。
印象的だったのは、今も続くコロナ渦の影響で観客に対する声出しの制限があったものの、大勢のオーディエンスは手拍子やウェービングをしたり、ジャンプをしたりして、見事にコールアンドレスポンスを行っていたことだ。
演奏中、INORANは「声がなくても、お前らの気持ちは絶対にわかるからな。みんな、思い思いに今日を楽しんでくれ」と観客に語りかけていたが、会場に広がったその堂々たる光景を見て、ライブの一体感は、声以外の行為でも十分に共有が可能なのだと実感した。
ツアー中につき詳細な記載は控えるが、『TOUR BACK TO THE ROCK’N ROLL 2022』で披露される曲たちは、どれも“ロックらしい強烈なエネルギー”をしっかりと宿していた。そして、バンドのポテンシャルがフルに発揮されていく前半から、INORANがステージ中央でマイクを持って歌でオーディエンスを煽りまくる中盤までの2段階で、ライブはより大きな盛り上がりをみせていった。
そこから、アコースティックな楽曲を挟みライブは少しクールダウンし、終盤でさらにドラマチックな展開へと向かう。『TOUR BACK TO THE ROCK’N ROLL 2022』は、ライブの流れが非常に緻密に練られていた。
セットリストは、INORAN、Murata、u:zo、Ryoという、現在のメンバーが集結した『Dive youth, Sonik dive』、そこから10年もの歳月を経て、音の世界観をさらに研ぎ澄ましていくなかで完成した充実作『2019』まで、このバンドを象徴する様々なスタイルの曲をバランス良く内包。それにより、INORANの音楽性とこのアンサンブルの進化が、より明確に把握できる仕組みになっていた。
アンサンブルのロックな魅力が最大限に発揮されたライブ序盤で特に感じたが、今回のバンドサウンドはさらに骨太でタフな仕上がりになっており、INORAN、Murata、u:zoの厚みのあるコーラスワーク、オーディエンスを躍動させるRyoの巨大なバスドラムやタムによるグルーブなど、アレンジ面でも、ライブバンドとしてよりいっそうの深化を感じさせる。
ライブ中盤には、ソロのキャリアを集約した人気曲が並ぶ。このセクションで、INORANは「ライブを通してみんなと繋がることは、ライブハウスでもアリーナでも、どんな場所でも変わらない。自分は音楽が、ライブが好きだという気持ちを今日ここに持って来ました。これまで、結構ルーティンになっていた部分もあって反省して、今、ここでやりたいと思い持って来た曲です」と語り、『Dive youth, Sonik dive』にも収録され、今も根強い人気を誇るFAKE?時代のナンバー「LEMONTUNE」をプレイ。より屈強なバンドアレンジで鮮やかに甦った「LEMONTUNE」のイントロでは会場からひと際大きな拍手が起こり、ここから終盤へと向かってバンドのパフォーマンスは、さらにスケール感を増していった。
終盤、INORANは「このバンド、カッコ良いでしょ? ライブ前、久しぶりに1年ぶりに音を出したんだけどさ、そのとき、このバンドは家族みたいなものだって。ケンカをしない家族というか(笑)、スタッフも今日来てくれたみんなも含めてさ、そういう人たちがいてくれるから、自分はこのバンドをもっと続けていきたいと思っています」と感謝の念を述べる。そして、彼が「声じゃなくても、気持ちは伝わるからな」と語るなか、オーディエンスがウェーブでその気持ちに応え、ファンとバンドが強固な絆で結ばれた「All We Are」のピークを経て、ライブは感動的なラストを迎えた。
終演後、会場からは鳴り止まない拍手が巻き起こり、INORANはそれを満ち足りた表情で眺めながら「ありがとうございました、渋谷! ここから大阪、名古屋、水戸とツアーを回って、最後は東京の恵比寿に帰ってきます。いろいろな会場で、そしてラストの恵比寿でまた会おうな。どうもありがとう!」と自身の想いを伝え、笑顔でステージを後にした。
INORANらしいロックな音楽性が最大限に発揮され、ライブならではの大迫力なバンド演奏がたっぷりと堪能できる『TOUR BACK TO THE ROCK’N ROLL 2022』。このツアーは、これから9月18日に梅田CLUB QUATTRO、19日に名古屋CLUB QUATTRO、25日に水戸LIGHT HOUSE、29日&30日に恵比寿LIQUIDROOMの5公演が行われ、これらのライブを経ていくなか、彼らのパフォーマンスは、より密度の濃いものになっていくことは間違いない。本ツアーでINORANと彼のバンドの音楽性がどのように変化していくのか、リアルタイムで追いかけて体験してみてよう。
TEXT BY Takahiro Hosoe
PHOTO BY Yoshifumi Shimizu
リリース情報
2022.06.29 ON SALE
ALBUM『IN MY OASIS Billboard Session』
INORAN OFFICIAL SITE
http://inoran.org/
https://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=33839