■「ふたつのバンドじゃなくて『ワニパチ』というひとつのバンド」(MONGOL800・キヨサク)
月にリリースされたスプリットEP『愛彌々』を引っさげて始まったMONGOL800とWANIMAのツアーが9月11日、MONGOL800の地元・沖縄のコンベンションセンター (劇場棟)でファイナルを迎えた。ただの対バンではない、この2組だからこそ実現した濃厚なライブは、とんでもなく特別なものだった。
ステージに張られたスクリーンにMONGOL800・髙里悟(以下:サッシ)が書いた「愛彌々」の文字が映し出される。SEとともにスクリーンの向こう側にWANIMA、MONGOL800のメンバーが登場すると、会場は手拍子に包まれた。
そこから鳴り響いたのはWANIMA・KENTAの声。オープニングはWANIMAの「THANX」だ。
ツインドラムにツインベース、5人体制の「WANIMA800」でいつもよりも分厚く聞こえるサウンドに載せてKENTAが叫ぶ。「始まりました! 『愛彌々』始まりました!」。そしてキヨサクとKENTAでボーカルをパスし合いながらいきなり熱演が繰り広げられていく。サッシも、KO-SHINとFUJIも、ステージ上の全員が笑顔を浮かべている。
KENTAが「愛彌々」タオルを掲げる横で「ワニパチと一緒にあそびーましょー!」とキヨサクが叫ぶ。そして始まったのはMONGOL800「あなたに」。誰もが聴いたことのある、あのリフとメロディがいっそうパワフルに突き刺さってくる。ときおりアイコンタクトを取りながらキヨサクのボーカルにコーラスを重ねるKENTA。『愛彌々』の制作、そしてこのツアーを通して培ってきた信頼関係と親密感がステージから伝わってくる。
早くも汗だくのKENTAが「やったー!」とマイクなしで叫んでいる。「今日は本当にありがとうございました!」ともうライブを終えるかのような挨拶をすると、場内は温かな雰囲気に包まれる。「沖縄ファイナルでございます! もう、終わりたくないです」というキヨサクも満面の笑みだ。
ここからはWANIMAとMONGOL800の単独パート。どちらが先にやるかはここまでジャンケンで決めてきたらしく、今回もサッシとFUJIのドラマーふたちがジャンケン。サッシが勝ち、先攻はMONGOL800に決定だ。
再びのキヨサク「あそびーましょー!」を合図にSEが鳴りだすと、なんとステージが回転して、先ほどのワニパチセットからモンパチセットに切り替わる。そしてステージ上にはキヨサクとサッシ、そしてサポートメンバーとしてギターを弾くのは、そう、WANIMA・KO-SHINである。
1曲目は「PARTY」。軽快なロックンロールのリズムをKO-SHINのギターがさらに盛り上げる。歌い終えたキヨサクが「沖縄、サンキュー!」と叫んで「Love song」へ。心を揺さぶるようなメロディを情感豊かに歌うキヨサクの声、笑みを浮かべながらタイトなビートを叩くサッシ、そしてコーラスを取りつつ軽快にリフを鳴らすKO-SHIN。3ピースの醍醐味みたいな濃厚なサウンドが真っすぐに放たれる。
「アロハイサイ! 沖縄!」と挨拶をすると「今日はKO-SHINのライブと言っても過言ではないくらい、ずっと出ますから」とKO-SHINを称える。「このツアーめちゃくちゃ楽しくて。トータル5本、あっという間でしたけど、まだまだ終わらないんじゃないかな説が……」と早くも期待させるようなことを言いつつ、今回のセットリストがWANIMAのメンバーからのリクエストをもとに組まれていることを明かす。
そして「KENTAからのリクエストです」と披露したのはモンパチらしさの詰まった名曲「愛する花」だ。KO-SHINも一部ボーカルを取って喝采を浴びると、続いてはそのKO-SHINのリクエスト曲「リリー」へ。ギターが引っ張ってパンキッシュに疾走する楽曲で、KO-SHINらしいチョイスだ。そこから一転、メロウに歌いかけるラブソング「星の数 月の数」(FUJIからのリクエストだったそう)をしっとりと聴かせる。「なかなかハードルの高いリクエスト3曲、ありがとうございました」とおどけるキヨサクだが、その表情はとてもうれしそうだ。
「WANIMAから素晴らしい楽曲を提供してもらいました。久々のモンパチの新曲ですって紹介できるのがうれしいです。もう返しません(笑)」とキヨサクが宣言して始まったのは、もちろんWANIMAが作りMONGOL800に提供した「てぃんがーら」。KENTAらしさ、WANIMAらしさとモンパチへの愛情が融合した優しくて大きな曲である。
「神様」を経てKO-SHINのギターソロも炸裂する「face to face」を勢いよく披露すると、「どうですか、KO-SHINさん」とキヨサクがKO-SHIN に問いかける。KO-SHINは「緊張しました……」と本音をポロリ。だがその顔はとても満足げだ。
さて、モンパチパートは次の曲でラスト。最後はもちろん「小さな恋のうた」だ。モンパチの、というか、もちろんWANIMAも含め会場に集まったすべての人にとって大事な大事なこの曲。曲の途中でキヨサクは思わずマイクを客席に向ける。しかしまだお客さんに歌ってもらうことは叶わない。
「本当は皆さんに歌ってほしいんですけど、そうはいかなくて。お客さんに頼りすぎていました。次のパート、5年ぶりぐらいに歌っています」と“夢ならば覚めないで”と歌い始めるキヨサク。オーディエンスは声の代わりに手拍子でその思いに応えてみせた。
そして訪れた静寂のなかに波の音が聞こえてくると、再びステージが回転。次はWANIMAか…と思いきや、またしてもWANIMA800のターンである。だが先ほどとは趣が違う。全員が椅子に座り、キヨサクはウクレレ、KO-SHINはアコースティックギターを抱えている。サッシとFUJIはパーカッションの前にスタンバイ。
そしてそのキヨサクが歌い始めたのはWANIMA「1106」だった。『愛彌々』でもモンパチがすばらしいカバーを聴かせていたが、ライブではKENTAとキヨサクの声が重なり、楽曲にさらなる温もりを加えていく。
先ほどまでのモンパチのライブを客席で観ていたというKENTAは「やっぱりモンパチが好きでよかったなって思いました。本当にかっこよかったです」と感想を口にする。すると今度はキヨサクが「『1CHANCE FESTIVAL』お疲れさまでした」と初の主催フェスを終えたばかりのWANIMAを労う。
さらにアコースティックセットでMONGOL800「あるがまま」を披露。ステージ上にいる全員がめちゃくちゃ楽しそうで、曲が終わった瞬間にKENTAは「幸せ」と口にしていたが、観ているこちらもなんだかうれしくなる。
1曲ごとにまったりMCをするいい感じにゆるいところも、このツアーのムードを物語っている。ライブの前に目の前の海でちょっと泳いできたというKENTAがKO-SHINに「沖縄にぴったりなやつ」とオーダーして始まったのは…アレンジがまったく違うので最初気づかなかったが、WANIMAの「SLOW」だ。
軽妙なバックビートを刻むギターに乗せて沖縄っぽい言葉を織り交ぜながら歌うKENTAは心からこの時間を楽しんでいるようだ。その証拠に曲を終えた瞬間「テンション上がるー!」と叫ぶKENTA。
キヨサクは「ふたつのバンドじゃなくて『ワニパチ』というひとつのバンド」と言っていたが、ステージで生まれているグルーヴは確かにコラボというよりもバンドそのものだ。改めて今回のコラボレーションがWANIMA、モンパチ双方にとってとても実りのあるものだったのだなと実感する。
そしてアコースティックセットの最後はWANIMA「りんどう」。KO-SHINの弾く繊細なギターに乗せて、最初はKENTA、続いてキヨサクが丁寧な歌を紡いでいく。5人の音とコーラスが重なり、アコースティックとは思えないスケールの風景が広がった。
そんな超スペシャルなアコースティックセットが終わると、今度はWANIMAのターンだ。ステージチェンジとともにSEの「JUICE UP!!のテーマ」が鳴り響けば、さっきまでのムードを一掃するようにKENTAは客席を煽り、FUJIはズバズバと鋭くドラムを叩き、KO-SHINはゴリゴリのリフを弾く。
「沖縄にWANIMAが帰ってきたぞ! ノンストップでついてくるんやぞ!」と「Japanese Pride」でスタートを切ると、「Cheddar Flavor」でさらにギアを上げる。ワニパチですでに温まりきっている3人はすでに汗まみれ。のっけからクライマックスのような熱いパフォーマンスだ。
切先鋭い「リベンジ」で「沖縄手を叩け!」とオーディエンスのアクションを求め、「いいから」でさらなる一体感を生み出していくと、FUJIのキックが手拍子を呼び起こし、「めちゃめちゃ今日の日を楽しみにしてきたぞ! ありがとう! 誰に支えられて今日このステージに立っているのか、何のために3人が音楽をしよるのか、忘れかけていたときにできた歌です」と「眩光」へ。WANIMAの根っこと幹をさらけ出すような、ひときわ熱く響く。このツアーに向けた彼らの気合と喜びがステージで爆発している。
その後も「エル」、そして「雨あがり」とWANIMAの全力のライブは続く。「Hey Lady」で一面のジャンプを巻き起こして客席を揺らすと、最後は「僕ら3人が迷ったときに出会えた大切な曲です」と『愛彌々』でカバーしたMONGOL800「rainbow」。9曲にすべてを注ぎ込むような全力のライブは、それだけで2時間のワンマンライブを観るような濃密さだった。
WANIMAがステージを去ったあと、スクリーンには今回のコラボのきっかけとなったラジオ番組収録時のKENTAとキヨサクの会話の模様、レコーディングやMV撮影の様子が映し出される。とくにスタジオでの5人の雰囲気は、リラックスした和気藹々としたムードのなかにもプロフェッショナルどうしの緊張感があって新鮮だ。
そしてその映像が終わると再び幕が上がり、ワニパチによる「愛彌々」が始まった。MONGOL800とWANIMA、ふたつのバンドの個性がすべて詰め込まれた渾身のコラボ曲が、ライブの場でその本領を発揮する。KENTAの声に合わせてサッシがキメ。KO-SHINも「愛彌々―!」と叫ぶ。「痺れるー!」とKENTA。キヨサクも「楽しいですよ、本当に。1つのバンドになれてるかなって思います」と手応えを口にする。
そしてKENTAが「じゃあちょっと、キヨサクさんにベースお願いしようかな」と自分のベースを下ろし、ハンドマイクで客席を煽り立てながら「BIG UP」に突入する。身軽になったKENTAはステージ狭しと駆け回り、ダイナミックにパフォーマンス。レアな光景に客席も沸騰状態だ。
その沸騰状態にさらに油を注ぐのはMONGOL800のキラーチューン「DON’T WORRY BE HAPPY」。ステージにはモンパチのライブでおなじみの粒さんこと粒マスタード安次嶺も登場し、最高のスマイルとダンスで盛り上げる。
そのパフォーマンスを至近距離で見たKENTAは「WANIMAにもほしい!」とひと言。しかし驚いたことに粒さん、モンパチが呼んだわけではなく、勝手に押しかけてきたらしい。いろいろと奇跡である。
最後はKENTAが再会を誓って、このツアーを締めくくる最後の曲へ。演奏されたのは5つの音が熱く重なり合い、出会えた喜びと未来への希望をキラキラと輝かせる「ともに」だった。まさにキヨサクが言ったように「ひとつのバンド」になった5人によるメッセージは、どこまでもまっすぐに届いてきた。
そしてツアー完走を祝っての集合写真を撮影し、KO-SHINの一本締めで大団円。WANIMAにとってもモンパチにとっても、そして目撃したお客さんにとっても特別づくしだったツアーはこうして幕を下ろした。
TEXT BY 小川智宏
PHOTO BY SARU(SARUYA AYUMI)、Takimoto“JON…” Yukihide
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